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なぜ面白い?『呪術廻戦』は芥見下々のすべてを詰め込んだ傑作だ。王道かつ常識を破る独自性

いま『劇場版 呪術廻戦0』が大ヒットを記録しています。2020年の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』を彷彿させるその現象は、改めて現代におけるアニメ作品のクオリティの高さをうかがわせます。

しかしながら、『呪術廻戦』はタイトルにもある通り、“呪い”というものがテーマにあるため、思わず敬遠してしまったというアニメファンもいたかもしれません。それにも関わらず社会現象を巻き起こしている本作品。

『呪術廻戦』は、なぜ多くの人を虜にするのでしょうか?
ホラー的な要素を十分携えながらも、実は「少年ジャンプ」の“王道”として機能している『呪術廻戦』の面白さの秘密に迫ります。

ピアノ・ソロ TVアニメ『呪術廻戦』(シンコーミュージック)

ピアノ・ソロ TVアニメ『呪術廻戦』(シンコーミュージック)

via ピアノ・ソロ TVアニメ『呪術廻戦』(シンコーミュージック)

芥見先生の好きなものをすべて詰め込んだ『呪術廻戦』

『呪術廻戦』という作品を語る上で、まず触れておかなければならないのが、原作者の芥見下々先生について。
芥見先生は1992年に岩手県で生まれた漫画家です。幼い頃から絵を描くことが好きだったというわけではない珍しいタイプの漫画家です。
小学4年生の時に兄の「週刊少年ジャンプ」で読んだ久保帯人先生による『BLEACH』第1話の影響から漫画家というものを意識し始めました。
Blu-ray『呪術廻戦』Vol.1

Blu-ray『呪術廻戦』Vol.1

via Blu-ray『呪術廻戦』Vol.1
まさに雷に打たれたかのような衝撃を受けた芥見先生は、そこから『BLEACH』の虜になっていき、中学生の時には同作への想いを綴った詩集『雲の巨人』なるものまで執筆。

『BLEACH』から漫画の深淵なる世界の探求を始めた芥見先生は、その後、『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)、『NARUTO』(岸本斉史)といった王道のジャンプ作品から、『無限の住人』(沙村広明)、古谷実先生のギャグ漫画、伊藤潤二先生のホラー漫画、少女漫画に至るまで幅広いジャンルの作品から影響を受けることになりました。

そして高校卒業を間近に控え、周囲が就職活動を始めたぐらいのタイミングで本格的に漫画家を志すようになり、2014年『神代捜査』(少年ジャンプNEXT)でデビュー。以降は『No.9』(少年ジャンプNEXT)、『二界梵骸バラバルジュラ』(週刊少年ジャンプ)、『東京都立呪術高等専門学校』(ジャンプGIGA)を経て、2018年より週刊少年ジャンプにて『呪術廻戦』を連載をスタートさせています。
『呪術廻戦』の“呪いをもって呪いを制す”という世界観は2015年に読切として掲載された『No.9』の時点ですでに完成されており、そこから2017年の短期連載『東京都立呪術高等専門学校』を含めた同2作品を下敷きに『呪術廻戦』を発表したという経緯があります。
CD+DVD『廻廻奇譚 / 蒼のワルツ』呪術盤

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via CD+DVD『廻廻奇譚 / 蒼のワルツ』呪術盤
もともと『東京都立呪術高等専門学校』を連載作品にする気はなかったという芥見先生ですが、同作が好評だったことから連載作品へと昇華させ、芥見先生が好きなものをとことん詰め込んだ作品にしようという決意を固めたと言います。

したがって、これは先生自身も公言していることですが、「王道に向き合うために、いい意味でも悪い意味でも既視感のある作品になっている」(『呪術廻戦』公式ファンブックより引用)のです。

似ている…は批判にならない。『呪術』の独自性

そんな中で特に影響を受けているだろうなと推察できる作品が、冨樫義博先生の『HUNTER×HUNTER』と久保帯人先生の『BLEACH』です。

『HUNTER×HUNTER』に関しては言わずもがな、それぞれの能力にしっかりとした理由付けや設定が存在している点、大多数の登場人物たちを広大なフィールドに配置し、それらを見事に機能させている点などがあり、細部まで入り組んだ世界観は『HUNTER×HUNTER』のそれと大いに共通する部分であります。

CD『 VIVID VICE』(期間生産限定盤)

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一方の『BLEACH』からはキャラクター性という点で大きな影響を受けているように思います。

例えば芥見先生いわくキャラクターの退場のさせ方などは『BLEACH』の「破面篇」を参考にしているとのことですし、呪術高専京都校の東堂葵というキャラクターは、『BLEACH』の更木剣八を意識して作られ、楽厳寺学長は同作に登場する山本総隊長と共通する部分も多いのです。

しかしながら久保先生の「作家性」という部分でマネをするのは危険だとも語っており、芥見先生自身は『BLEACH』の真似をすることはあえて避けてきたとも語っています。
そういった意味でも好きな作品から受けた影響を見事に自分のものとして表現していると言えるのです。
SNSやネット上では類似点を指摘する声も見られますが、それは見当違いな批判でしょう。
なぜなら真似をするだけなら誰でもできますが、影響を受けつつもオリジナリティのある魅力的な作品に仕上げることは簡単ではないからです。
CD『呪術廻戦』オリジナル・サウンドトラック

CD『呪術廻戦』オリジナル・サウンドトラック

via CD『呪術廻戦』オリジナル・サウンドトラック
かの有名な画家パブロ・ピカソはこのような名言を残しています。
「優れた芸術家は模倣し、偉大な芸術家は盗むのだ」(原文:Good artists copy, great artists steal.)。

真似するだけではただのコピーで終わってしまいます。しかし、既存のものを独自の発想に落とし込み、新しい作品を生み出すことができるのが天才の所業。
『呪術廻戦』は、まさに芥見下々という漫画家が歩んできた“漫画道”が結実した作品なのです。

少年漫画の常識を打ち崩した描写の数々

ここまで『呪術廻戦』の王道と言える部分を紹介してきましたが、実は本作は少年漫画の常識を打つ崩した斬新な描写や設定も目を引く作品なのです。

その代表例が、自らの業つまりは術式を相手に開示して能力を高めるという設定。
必殺技の名称を宣言して発動させるというのはいわば少年漫画の常識のようなものでしたが、芥見先生はこの暗黙のルールに違和感を覚えたことから、しっかりと理由付けをしたというのです。
この設定は少年漫画のやり方を真っ向から打ち崩しにかかっているものであり、かなり斬新かつ衝撃的なものでした。

また、キャラクターの配置という点にも非常に面白いところがあります。
Blu-ray『呪術廻戦』Vol.2

Blu-ray『呪術廻戦』Vol.2

via Blu-ray『呪術廻戦』Vol.2
例えば、主人公の虎杖と共に行動することが多い伏黒恵というキャラクター。
クールな表情が印象的かつ呪術師のエリート家系の血筋である彼は、普通なら主人公のライバル的立ち位置なのかと考えるでしょう。

しかしながら伏黒は決して虎杖に敵対心を燃やすわけでも、虎杖に対して冷たい態度をとるわけでもなく、言うなれば同じ志を持ち、虎杖を気づかう姿まで見せるのです。
このギャップがまた『呪術廻戦』の魅力でもあり、推しキャラクターだけでなく、他の面子も推せる、いわゆる‘‘箱推し’’ができる作品となっているわけです。

さらにはヒロインという存在であろう釘崎野薔薇がキツめのセリフを常に口にしていたり、主人公が修行をこなしていくシーンが一切ない等、全く新しいアプローチでバトル漫画を描いている印象も強い作品なのです。

スピード感あるアクションシーンを見事に表現したテレビアニメ

『呪術廻戦』ファンの大多数が本作の魅力として、戦闘場面などのアクションシーンを挙げています。
原作の時点からまるで本当に動いているかのような臨場感ある描写が目を引くのですが、その原作の持つ魅力をしっかりと映像化しているのが、テレビアニメ版です。

原作の持つスピード感を圧倒的な作画で表現し、場面場面に適したスタイリッシュな楽曲をそこに加えることで、よりリアル且つダイナミックなものに仕上がっている印象を受けます。

『呪術廻戦』と言えば、テレビアニメの放送後に飛躍した印象があり、その要因としてやはりアクションシーンの魅力は欠かせないものだと言えるでしょう。
『劇場版 呪術廻戦 0』公式サイトより

『劇場版 呪術廻戦 0』公式サイトより

芥見先生自身もアクションの描写には非常にこだわっているようで、インドネシア産のアクション映画『ザ・レイド』や冨樫義博先生の映像表現を時間側からアプローチしてコマ割りに落とし込んでいくところなどを参考にしていると言いますし、芥見先生はもともとアニメの作画が好きで、普段から動きのある描写を意識しているからこそ、アニメーションになっても魅力ある映像に仕上がるのだと言えるわけです。

それは現在公開中の『劇場版 呪術廻戦0』でも健在であり、スクリーンで観るそれらの描写は、もはや神がかっていると言っても過言ではありません! 絶対に劇場で鑑賞することをおススメします。

すでに最終回や要所での結末などは決まっており、完結は近いとも言われている『呪術廻戦』。
しかしながら、映画の公開、アニメの2期の放送など、今後もますます盛り上がりを見せていくことは間違いありません。
ぜひとも、ブームに乗り遅れないように『呪術廻戦』の魅力にハマってみてください!

(執筆:zash)

『劇場版 呪術廻戦 0』作品概要

『劇場版 呪術廻戦 0』公開直前PV|12月24日(金)公開/主題歌 King Gnu 「一途」

集英社「週刊少年ジャンプ」で連載中の、芥見下々による漫画作品「呪術廻戦」。2018年3月から連載が開始され、人間の負の感情から生まれる呪いと、それを呪術で祓う呪術師との闘いを描き、12月25日発売の18巻でシリーズ累計発行部数は驚異の6000万部を突破。

2020年10月から2021年3月までは毎日放送・TBS系列にてテレビアニメが放送され、深夜アニメ枠ながら、高視聴率を獲得。定額制動画配信サービス全体の視聴者数週間ランキングでも約2カ月に渡って1位を記録し続けるなど、一大ムーブメントを巻き起こした。
(GEMランキングクラブ調べ/2021年1月23日~3月20日の毎週土曜に過去1週間の視聴作品を調査)

そして、2021年12月24日。『呪術廻戦』は映画となって新たなステージを迎える。
劇場版で描かれるのは、既刊単行本の中でも人気のストーリーの一つである『呪術廻戦』の前日譚、「呪術廻戦0 東京都立呪術高等専門学校」。
通称“0巻”。

『劇場版 呪術廻戦 0』
―これは、呪術廻戦の原点の物語であり、“愛と呪いの物語”。

(公式サイト:https://jujutsukaisen-movie.jp/ より引用)

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numan編集部

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