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劇場版『鬼滅の刃』LiSA「炎」が涙を誘う理由。歌詞に隠された炭治郎と煉獄の絆とは

カルチャーライターの曽我美なつめと申します。
アニメやマンガを愛するガチオタクである一方で、これまで約10年ミュージシャンとしても活動し続けるかたわら、現在は音楽ライターとしても活動している私。そんな私が音楽オタク&アニメオタクの両側面からご紹介していきたいと思います!

第二回目となる今回ピックアップしたのは劇場版『鬼滅の刃』無限列車編のテーマ曲であるLiSAさん『炎』です。

CD「炎」 (期間生産限定盤)画像

CD「炎」 (期間生産限定盤)画像

via CD「炎」 (期間生産限定盤)LiSA
劇場版の興行収入は2021年3月末時点で390億を突破。終映間近にしていよいよ大台の400億突破を目前とし、まさに映画史に燦然と輝く大記録を打ち立てつつある『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。
そんな本作の主題歌となった『炎』もまた、2020年の音楽業界に数々の記録を打ち立てた名曲ともなりました。

Billboard JAPANで6部門、オリコンチャートでも6部門での1位を獲得。日本レコード協会ではプラチナディスクに認定、第62回日本レコード大賞にて大賞受賞、ストリーミングチャートでは史上最速の2億回再生を突破したりと、その記録は枚挙に暇がありません。

私たちが無意識に落ちてゆく「無限」の涙活サイクル

この『炎』がここまで多くの人々に支持された理由は、端的に言えば一つ。
映画で描かれた主人公・炭治郎と炎柱・煉獄さんとの、衝撃の出会いと辛く悲しい別れ。炭治郎を通して私達観客も疑似体験することのできるその物語が、あまりにも鮮明な情景を以て歌詞に落とし込まれているからです。

楽曲の歌詞を読むだけで、テレビやラジオ、CDや各種ストリーミングでこの曲を聴くだけで。映画を見終えたあの時の気持ちを、非常に再現度高く呼び起こしてしまう。音楽に触れるだけで、思わず泣けてきてしまう。そんな方も、どうやら非常に多いようですね。

少し前に、ストレス解消法の1つとして「涙活」なんて言葉が流行りました。
映画やドラマを見て感動の涙を流すことで、日常生活で抑圧されていた感情を解き放ちカタルシス(快感)を得る事ができる。それによって、心の中にため込んだストレスを解消する活動。それを「涙活」と呼び、様々なメディアが取り上げたりもしていました。

その影響か一時は映画の宣伝文句などに「全米が泣いた」「感動の嵐」なんて文言もよく使われていましたし、一方でその言葉はもう見飽きた、なんて思う方も大勢いたことでしょう。

LiSA 『炎』 -MUSiC CLiP-

劇場版『鬼滅の刃』無限列車編はそのような感動作としてPR“しなかった”事も逆に功を奏していたと思います。
物語の展開上PRできない部分という大前提もありましたが、それ故に元々の鬼滅ファンだけでなく大勢の観客が、無意識に、意図せずして。涙活をするべく何度も劇場に足を運ぶ現象も、同時に起きているのではないでしょうか。

このストレスフルな閉鎖的社会状況の中、観客が悲しみの涙でストレスを緩和できる涙活の役割を、本作が担ったことが非常に大きかったのでしょう。

そして、その役割を担っていたのは何も映画だけではありません。
映画の内容と大きくリンクする歌詞が描かれているからこそ、この『炎』もまた映画の内容を彷彿とさせる涙活のトリガーとして、まさしくその役目を全うしていました。
『炎』を聞くことで映画を思い出し、疑似的に映画を見に行った時の気持ちを感じることができる。
あるいはその気持ちを思い出して、もう一度映画を見に行きたい。映画を見た時に感じたあのカタルシスを感じたい。

意識的に、あるいは無意識にそのような思考回路が働き、映画と楽曲が互いに発揮した相乗効果。それによって、どちらの作品も現在のような歴史的記録を打ち立てるに至ったのではないかと思います。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 特報

歌詞に隠された映画後の炭治郎と煉獄の絆

またこの『炎』の歌詞は映画の内容だけでなく、原作を読んでいる方はお分かりの通り、映画後の炭治郎と煉獄さんの描写についても実はわずかながら巧妙に触れている箇所があります。
原作をすでに読んでいる方の中には、そんな歌詞の小さなフレーズでこれまた涙が止まらなくなってしまう、なんて方もいることでしょう。

映画の内容を思い返して感動するだけでなく、原作を知っているとさらにもう一段この曲の歌詞の深みに気付くことができる。
そのような素晴らしい歌詞となったのは、やはりこの詞がシンガー・LiSAさんと作曲者・梶浦由記さんの共作であることも大きなポイントのように思います。

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編 特報第二弾

これまでも多くの名作アニメの主題歌編曲や作詞作曲を手掛けてきた梶浦さんですが、実は曲を歌唱するアーティストとの共作は非常に稀なこと。
またこの曲を歌唱したLiSAさんは、以前より『鬼滅の刃』では煉獄さん推しであることを多くの場で公表しています。
大きな才能を持ち、そして同時に『鬼滅の刃』という作品へ、劇場版『鬼滅の刃』無限列車編という作品へ強い愛情を持つ2人。

そんな2人のパワーが足し算ではなくまさに乗算となった末に生まれた曲であったということも、この『炎』がここまで大勢に支持を受ける曲となった理由の1つでもあるのでしょう。

(執筆:曽我美なつめ)

LiSAプロフィール

岐阜県出身。2011年ソロデビュー。

「Fate/Zero」や「ソードアート・オンライン」、「鬼滅の刃」など数々の人気テレビアニメ作品の主題歌を担当し、国内のみならず世界中にてヒットを記録。2018年5月には初のベストアルバム「LiSA BEST -Day-」「LiSA BEST -Way-」を2タイトル同時リリース、オリコン週間アルバムランキング(5/21付)にて1位・2位を独占した。

2019年末には、テレビアニメ「鬼滅の刃」OP主題歌「紅蓮華」にて「第70回NHK紅白歌合戦」に初出場。圧倒的な熱量を持つパフォーマンスと歌唱力、ポジティブなメッセージを軸としたライブが人気を集め、日本武道館やさいたまスーパーアリーナ、幕張メッセでのワンマンライブは即時完売。国内外問わず、アニソンシーンにとらわれず、数多くのロックフェスなどでも活躍するライブアーティストとして、その存在感を示している。

(プレスリリースより引用)

『鬼滅の刃』無限列車編

劇場版「鬼滅の刃」無限列車編
2020年10月16日(金)公開

■スタッフ
原作:吾峠呼世晴(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸・梶山庸子・菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二・矢中勝・樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記・椎名豪
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス

■キャスト
竈門炭治郎(かまど・たんじろう):花江夏樹
竈門禰豆子(かまど・ねずこ)※:鬼頭明里
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):下野紘
嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):松岡禎丞
煉獄杏寿郎(れんごく・きょうじゅろう):日野聡
魘夢(下弦の壱)(えんむ・かげんのいち):平川大輔

■イントロダクション
2019年4月より放送を開始したアニメ『鬼滅の刃』。家族を鬼に殺された少年・竈門炭治郎が、鬼になった妹の禰豆子を人間に戻すため、《鬼殺隊》へ入隊することから始まる本作は、人と鬼の切ない物語、鬼気迫る剣戟、そして時折描かれるコミカルなシーンも人気を博し、国内のみならず、全世界で大きな話題となった。
そして2020年、TVアニメ“竈門炭治郎 立志編”に続く物語“無限列車編”が、劇場アニメーションとして描かれる。
炭治郎たちが次に向かうは、闇を往く《無限列車》。
多くの人が行方不明になっているこの列車を舞台に、新たな任務が始まる―。

■ストーリー
果てなく続く
無限の夢の中へ―

蝶屋敷での修業を終えた炭治郎たちは、次なる任務の地、《無限列車》に到着する。
そこでは、短期間のうちに四十人以上もの人が行方不明になっているという。
禰豆子を連れた炭治郎と善逸、伊之助の一行は、鬼殺隊最強の剣士である《柱》のひとり、炎柱の煉獄杏寿郎と合流し、闇を往く《無限列車》の中で、鬼と立ち向かうのだった。

■ 『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎と宇髄天元の“死の価値観”とは。遊郭編は無限列車編との対比性に注目
https://numan.tokyo/anime/z3y87
■『呪術廻戦』ED曲は海外でも高評価。「LOST IN PARADISE」ALIはポスト米津玄師となるか?
https://numan.tokyo/anime/pQM5Q
■『うっせぇわ』Adoはニコニコ動画世代・最後のアーティストか。“あるオタク層”に共感を呼ぶワケは
https://numan.tokyo/anime/cBAfq

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numan編集部

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