【考察6】『おそ松さん』2期24話『桜』|“ちゃんとする”ってなんだよ?

バラバラにほどけ、“6つ子”ではなくなっていく6人

このように、終始シリアスな雰囲気をまとっていた2期24話『桜』。1期から見ているファンの中には、ギャグアニメであるはずの『おそ松さん』の突然の展開に、懐かしい不安を覚える人も多かったのではないでしょうか。同じく1期の24話『手紙』も、三男・チョロ松の就職をきっかけに6つ子が仲違いし、それぞれの道を歩みはじめるというシリアスなストーリーで視聴者を驚かせたからです。

1期24話『手紙』がケンカからの自立というややネガティブなストーリーであったのに対し、2期24話『桜』は6つ子が前向きに自立を目指すという、比較的ポジティブなお話です。
にもかかわらず、主人公・おそ松がトト子に「さびしい気持ちもあるんだよね。なんかみんなバラバラになっちゃってさ。いろんなことが前みたいにいかないっていうか」と語ったように、彼らの成長は視聴者にもさびしさと不安を感じさせます。

それは、彼らがこれまでどおり同じ屋根の下で暮らしていながら、“6つ子”ではなくなってゆく様子が描かれているからでしょう。

たとえば、一松がバイトするチビ太のおでん屋へやって来た次男・カラ松は、仲間の一人から「“松野”っていちいち発言がイタイんだよな」とからかわれます。
同様に、職場の仲間たちと飲み会へ出かけるトド松は、先輩から「おい“松野”! 早くしろ」と声をかけられます。
おそ松は、1期2話『就職しよう』で6人交代でバイトしていた中華料理屋にて、一人で働きはじめます。裏口からゴミを出し、桜の花びらを見つけたおそ松を、「松野〜!」と店の中から呼ぶ声が聞こえます。
このように、2期24話は、6人が6つ子の中の“○○松”という個性を離れ、社会の中で生きる“松野”という人間になっていく様子が描かれているのです。

また、6人が同じ行動を取らないことを強調するかのような描写も印象的です。
『おそ松さん』で食事といえば、6人そろってちゃぶ台を囲んで食べるもの。しかし、おそ松は台所のテーブルで夕食を食べ、松代から夕食がいるか尋ねられた五男・十四松は「いらない。(職場の)みんなと食べてきた」と断ります。「風呂行く?」という誘いを十四松に断られたおそ松は、かつて6人で一緒に向かっていた銭湯を一人で訪れます。
自立し始めてからの6人は、おそろいの服もほとんど着ていません。ジャージを着たまま疲れ果てて眠る十四松と、パーカーのままソファで眠る四男・一松。就寝のシーンであるにもかかわらず、“6人が同じ”ことを連想させるブルーのパジャマを着ている様子が描かれないことも、深読みしてしまいたくなるポイントです。


6つ子の区別がつかないことのおもしろさを描いた原作『おそ松くん』から、一人ひとりに個性が芽生えた彼らの姿にフィーチャーしてきたアニメ『おそ松さん』。2期24話『桜』は、そこからさらに、“6つ子”というアイデンティティを失ってゆく6人の様子が描かれているのです。

 

2期の隠れテーマ“ちゃんとする”ってなんだ?

松造が倒れたあと、6人が土手で会話をするシーンで、おそ松はこう言いました。

「どうしよっかなぁ、これから。いよいよ“ちゃんと”しなきゃいけないのかなぁ」

そして、雨上がりのベンチでトト子に自分の思いを打ち明けるシーンでも、こう語っています。

「俺、“ちゃんとした”のかなぁ。つか、“ちゃんとする”ってなんだよ。知らねえよそんなの」

おそ松が繰り返す“ちゃんとした”という言葉。そこで思い出すのが、2期1話『ふっかつ おそ松さん』です。落ちぶれた未来の自分たちの姿を見た少年時代のおそ松“くん”たちは、「今から“ちゃんと”努力すれば、きっとみんなに愛してもらえる立派なアニメになれる」と努力し、見事“ちゃんとした”アニメのキャラクターへと成長。お互いの変化した姿を見て、「ちゃんとしてる〜!」と讃え合います。
ここで登場した6つ子の合体ロボットは、第20話『こぼれ話集2』の『出動! チャントシター!!』でも再登場しました。

このように、“ちゃんとする”ということが隠れテーマのように根底に流れている『おそ松さん』2期。実は、『アニメージュ』3月号では、脚本家・松原秀さんがこんなことを言っています。

「第1期があんな風に話題になって嬉しいんですけど、同時にギョッとしてちょっと怖くなったとも思うんです。だから、より真面目になったっていうか「第2期、ちゃんとしなきゃな」みたいな雰囲気で(笑)。「浮かれないで行こうぜ! まず原作は『おそ松くん』、原作者は赤塚不二夫先生」「そう、そう。そこだよね、まずは」とか確認作業から改めて(笑)」

また、『月刊ニュータイプ』4月号では、藤田陽一監督がこんなコメントをしています。

「第1期の盛り上がりを受け、幸運にも第2期までやらせていただいた責務として、今考えうる限りで、赤塚不二夫作品っぽいことを、ちゃんと残したいと思っていたんです」

これらを踏まえると、製作陣が繰り返す“ちゃんとする”という言葉は、「赤塚不二夫先生が描いた『おそ松くん』に立ち返る」ということであるようにも見えてきます

2期24話『桜』で描かれたのは、社会の一員として“ちゃんと”しはじめた6人の姿でした。努力して稼いだお給料を手に喜ぶおそ松の前に現れたのは、探検隊の格好をしたイヤミ。彼はおそ松を、10億円相当の金銀財宝を探す宝探しに誘います。バイトがあるからとイヤミの誘いを断ったおそ松は、宝探しに出かけようと盛り上がるイヤミ、デカパン、ダヨーン、ハタ坊の姿をしんみりと見つめます。

社会人として“ちゃんとする”なら、地道に働き、お金を稼ぐ。しかし、ギャグアニメとして“ちゃんとする”なら、ありもしないような金銀財宝を探しにいくほうが正しいのかもしれない。
イヤミ、デカパン、ダヨーン、ハタ坊を見つめながらおそ松の気持ちが揺らいだのは、4人が赤塚不二夫作品として、ギャグアニメとしての“ちゃんとした”キャラクターたちだったからなのでしょう。

トト子に「大丈夫? まだちゃんと“おそ松”でいれてる?」と尋ねたおそ松。それは、この展開が『おそ松くん』『おそ松さん』という両方の作品にとって正しいことなのか、「まだちゃんと“おそ松(くん/さん)”でいれてる」のかを自問しているようにも聞こえます。

 
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Comment

2018-04-26杏ちゃん

おそ松さん25話で地獄落ちの意味はシェーWAVEで命を大切にしてるかの意味ですね。最後には復活して良かったです。

2018-03-23mi

1期25話でやったようなことは2期では22話でやっちゃったからなー

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