小澤廉、木津つばさらが熱演する‟孤独でなくなった天才”たち｜『あんステ』NBSゲネプロレポート

2015年4月にリリースされ、今春には大々的なリニューアルも告知されている人気アプリ『あんさんぶるスターズ！』。

その舞台化シリーズ、通称『あんステ』8作目となる今作は、イベントストーリーから構成された『エクストラ・ステージ』ですが、メインストーリーでも主人公を務めるユニット・Trickstarの明星スバル役：小澤廉さん、氷鷹北斗役：山本一慶さん、遊木真役：松村泰一郎さん、衣更真緒役：谷水力さんが初めて挑む『エクストラ・ステージ』として話題になっています。

また、魔法使いユニット・Switchが『あんステ』に初参戦。
逆先夏目役：木津つばささん、青葉つむぎ役：工藤大夢さん、春川宙役：世古口凌さんがどう“魔法”を表現するのかにも注目が集まっていました。

そして物語に華を添えるのが、かわいらしい癒し系ユニット・Ra*bits。
仁兎なずな役：大崎捺希さん、紫之創役：熊谷魁人さん、真白友也役：宮崎湧さん、天満光役：奥井那我人さんの4人は約1年前、Ra*bitsの結成も描かれた『あんさんぶるスターズ！エクストラ・ステージ』～Memory of Marionette～ぶりの『あんステ』出演となり、それぞれが成長した姿を見せました。

物語の第1幕では、Trickstarの4人が初めて共に舞台に立った1年生の頃のエピソードが描かれます。

その才能ゆえ、クラスで浮いた存在だった明星スバル（小澤廉さん）。
友達ほしさに日直の仕事を代わるなど涙ぐましい努力をするも、クラスメイトの逆先夏目（木津つばささん）からは「そんなふうに媚びを売っても、誰も君を愛さなイ」と指摘されてしまいます。

そんなスバルを気にかけてくれたのは、クラスの委員長である氷鷹北斗（山本一慶さん）でした。この頃の北斗は演劇部の日々樹渉に憧れ、同じような三つ編みをしています。
一方、ゲーム研究部で人目を避けるように活動しているのが、遊木真（松村泰一郎さん）。キッズモデル出身で心に病を抱えた真は、綺麗な瞳を眼鏡で隠しています。
生徒会の仕事を手伝っていた衣更真緒（谷水力さん）は、廃部が決まったゲーム研究部の部室の撤収にやってきます。泣きつく真に初めは冷たく接する真緒ですが、部のピンチを救ってくれることに。

スバルと北斗、真と真緒、それぞれが初めてまともな会話を交わしたその日の夜、偶然にもこの4人は公園の桜の木の下に集います。​
桜の木の根元に大事なものを埋めつつ願掛けをすれば、その願いが叶うと聞いて、飼い犬の大吉に地面を掘らせるスバルと、それを止める北斗……。
のちにスバルは、この日が不思議と印象的で忘れられなかった、と語ることになります。

2016年から公演されている『あんステ』で初演からTrickstarを演じてきた小澤さんたち4人のチームワークはすでに抜群で、北斗役の山本さんを中心にしたキレキレのアドリブも健在。
今作では初めて1年生の頃のスバルたちの様子が描かれるにあたり、それぞれが抱える不安や孤独が表現され、手探りで距離感をはかっていく4人の様子は新鮮であり、1年生だけの『金星杯』のパフォーマンスでの初々しい‟キラキラ“の笑顔からは、瑞々しさを感じました。

打って変わって第2幕では、成長したTrickstarによる『星霊祭』でのパフォーマンスが見られるのも、『エクストラ・ステージ』ならではのスピンオフ感です！

第1幕でスバルの心をかき乱した逆先夏目は、学院で“五奇人”として数えられる天才の1人でした。しかし天祥院英智の策略により、Valkyrieの斎宮宗らが次々と失脚し、‟五奇人”で唯一下級生だった夏目は”兄さんたち”に守られ、その終焉をただ見ていることしか出来なかったという後悔を抱えています。

そんな夏目がユニットを組むことになったのが、奇しくも英智を支えながらも最後には切り捨てられてしまった青葉つむぎ（工藤大夢さん）でした。
自分が身近にいる方がつむぎは罪悪感で苦しいだろう、耳元で恨み言を囁いてやる、という夏目に対しても「それは熟睡できそうです～」とマイペースに返すつむぎ。
この2人の過去のやりとりの、何かの歯車が狂えば刺し違えてしまいそうな絶妙な距離感には注目です。

そんな不思議な関係性の2人ですが、翌年には1年生の春川宙（世古口凌さん）が加わり、各学年から1人ずつが参加する3人組ユニット“Switch”に。

魔法使いユニット、という前評判を裏切らない映像演出を使用した派手なステージングは勿論のこと、ダンスパフォーマンスも、夏目の指先まで美しい挙措、背が高く手足の長いつむぎのしなやかな動き、宙の元気いっぱいの笑顔に心惹かれます。

物語の第2幕では、つむぎと宙がTrickstarやRa*bitsのメンバーたちの力を借りながら、占い師の仕事に忙殺される夏目との心の距離を縮めようと試行錯誤します。
かつては五奇人の中では弟分であった夏目ですが、いつしか1年生の宙の面倒も見る“兄”に変わっていく様子は非常に微笑ましく、心が温かくなります。
また宙が何故このユニットに入ったのかが語られるシーンでも“まるで魔法にかけられたかのように”、心ときめくものが！

「金星杯」を前座として行われたfineとのライブ対決で敗れたユニット・Valkyrie。この一幕が描かれたシーンは『あんさんぶるスターズ！エクストラ・ステージ』～Memory of Marionette～で語られたValkyrieのエピソードのリバイバルともいえます。

当時Valkyrieのメンバーとして活動していた仁兎なずな（大崎捺希さん）は絶望し、大きな喪失感を味わいますが、のちに入学してくる紫之創（熊谷魁人さん）、真白友也（宮崎湧さん）、天満光（奥井那我人さん）とともにRa*bitsを結成し、自分らしくいられる新しい居場所を得ます。

Ra*bitsのポイントはなんといってもそのかわいらしさ。膝小僧の見える半ズボンに、ジャンプするとおへそがチラ見えするサイズのセーラー服、加えて元気いっぱいの笑顔とパフォーマンスは今作でも多くのファンを魅了しました。
中でもリボンを使った振付は大変かわいらしく、華やかなステージングとなりました。

さらにいつも「ダッシュダッシュ！」とステージを走り回る光と、「Ha Hi Hu He Ho～☆」と駆け回るSwitch・春川宙はクラスメイトでもあり、気の合う同士。
2人のやり取りをはじめ、今までの『エクストラ・ステージ』の中でも特に下級生組が多い今作では、Ra*bits メンバーを中心とした“かわいい成分”が多いのも大きな見どころです。

このように今作は、物語の軸であるTrickstarの過去も分かり、SwitchとRa*bitsの魅力をさらに深めてくれる『エクストラ・ステージ』最新作となっています！

今作は1月16日～24日まで大阪公演、1月31日、2月1日は名古屋公演が行われ、大千秋楽にはライブビューイングも行われます。
新たなユニット・Switchも加わり、パワーアップしていく『あんステ』シリーズをお見逃しなく！

取材・執筆／通崎千穂（@tsu_otometsu）