すなくじら
下町育ちのエンタメライター。アニメ&映画ジャンルを中心に執筆活動中。ダークファンタジーやゴシックなテイストの世界観の作品が好きです。乙女ゲームの新作情報が生き甲斐。
2021年の始動以来、斬新な企画でファンを魅了し続けている「二者択一」バーチャルアイドルオーディション『VS AMBIVALENZ』(以下、『ビバレン』)。
オーディションを勝ち抜いた7人でデビューを果たしたXlamV(クランヴ)は、今年(2024年)春にKT Zepp Yokohamaにて「XlamV 1st LIVE -To You-」を成功させ、同オーディションから派生した2つのユニットfun4re(ファンファーレ)やilluvista(イルビスタ)も存在感を放っている。
プロジェクトの開始から約3年、常にファンの期待を超える展開を見せ続ける『ビバレン』が、2024年10月26日(土)にファン待望の2ndファンミーティングを開催。
会場となったベルサール渋谷ファーストは開演前から期待と熱気に包まれ、物販を求めるファンが長蛇の列を作り、入口には各アイドルをイメージした華やかなフラワースタンドが並んだ。
第一部では、稲元役の安元洋貴がMCを務め、本プロジェクトの総合プロデューサー・毛利泰斗、シリーズ構成の関根アユミ、キャラクターデザインの風李たゆ、音楽ディレクターの青山正太といった主要スタッフが登壇。
今年4月に開催したXlamVの初ライブの裏話や、6th Digital Single「About Us」をはじめとした人気楽曲の制作秘話など、『ビバレン』の裏側を知る貴重なトークが繰り広げられた。
第二部では、SUBARU・TAIYO役の土田玲央、ISSEI・MIO役の河西健吾、JINTARO・CION役の小林千晃、AUGURI・FUTABA役の村瀬 歩、LION・KAZU役の畠中 祐が出演。
『ビバレン』楽曲レコーディング時のエピソードを振り返り、「毎回楽曲の難易度が高くて、収録が大変!」と“ちょいギレ”状態で本音をこぼしつつ、過去3年間で発表された曲の思い出話など、これまでをファンと一緒に振り返った。
さらに、この日のために特別に描き下ろされた朗読劇「クイズ$イナモネア」や、“『ビバレン』あるある”が繰り広げられたクイズコーナーなど、REISENプロダクションのアイドルたちへの深い愛情が随所に感じられた2時間半。その模様を、本レポートでお伝えする。
INDEX
「ファンミーティングでしか聞けないお話もありますので、今回も楽しみにしてください!」ーー稲元役・安元洋貴の呼びかけで、ついに「VS AMBIVALENZ 2nd ファンミーティング」の幕が上がった。
期待に満ちた会場には、プロジェクトプロデューサー・毛利泰斗、シリーズ構成の関根アユミ(人形を身代わりに登場として登場)、キャラクターデザインの風李たゆ、音楽ディレクターの青山正太が登壇。
まずは2024年4月12日にKT Zepp Yokohamaにて開催された「XlamV 1st LIVE -To You-」の話題から。プロジェクトプロデューサー・毛利泰斗は、ライブ制作が長期にわたり、コストもかかる大きな挑戦だったことを振り返りつつ、「身の丈以上のことをやっている感覚はありましたが、やるべきことだと思っていました。オーディション時代の集大成として、砦アリーナでできたことは大きな意味があった」と語る。
安元が「すてきな空間でしたね」と話を振ると、毛利も「目の前で彼らが歌って踊る姿を見ることができた」と感慨深そうに応じた。
続いて、シリーズ構成の関根がコメント。彼女はMCパートについて、「XlamVのメンバーみんなと話し合って、(ライブMCの)セリフを決めていきました」と語り、「SUBARUくんが一番熱心に練習していて、NAGOMUくんが一番緊張していました」という、二人の性格の違いが垣間見える納得のエピソードも。会場からは自然と温かい反応が寄せられ、場内はさらに和やかな空気に包まれた。
キャラクターデザインを手がけた風李は、「You & Me」での特別な演出について紹介。「“ありがとう”というフレーズには手話の振り付けを取り入れ、メンバーからファン、そしてライバルたちへの感謝を表現しました。振り付け担当の緑喜一紗さんと相談しながら、最適な表現を追求していきました」と制作意図を語る。
さらに、「当日ステージ上で、LIONくんがAUGURIくんをサポートするシーンがあったことにも、お気づきの方がいるかもしれません。LIONくんは、舞台経験があるので視野が広いんですよね。(練習時に)AUGURIくんがつまずきそうになった際、すぐにフォローしてくれて……。そういうところにもカリスマ性を感じました」と振付の裏話を披露。
また、「アイドルとしてのパフォーマンスには、手を振ったり目を合わせたりといったファンサービスも大切にするように、XlamVのメンバーみんなと約束して。39YEAH↗︎くんやISSEIくんは、最初からすごくお上手でした!」と2人のアイドル精神を絶賛した。
ライブのセトリについて、(音楽ディレクターの)青山は「始まりと終わりの曲は早い段階で決めていて。オープニングは『Said that』、フィナーレは『From Me』で締めたいという想いがありました」と振り返り、ファンの声援に応える形でアンコールの「From Me」を披露できたことに感謝を述べた。
また、中盤での「what about love」から「アワソラ」、「蜜柑」への流れについて、「振り付けも含めてメンバーたちが楽しそうに表現している姿を見て、ライブを見ている側も本当に楽しめました」と満足げに語った。
さらに、今回のイベントではなんと9月にリリースされたばかりの6th Digital Single「About Us」の制作資料を初公開。各歌唱パートの割り振りを示した資料がスクリーンに映し出された……が、びっしりとマーカーで書き込みがされた状態のそれに、会場のファンからは驚きの声が上がる。
安元の「(細かすぎるので)見えなくて大丈夫です。雰囲気でいいやつです」と冗談を交えた説明に、会場は笑いに包まれる。
青山は「この資料はキャストの皆さんも実際見ているもので、これを使ってレコーディングをしています。この楽曲では1人1バース担当という構成で、第2章のスタートにふさわしい、それぞれのキャラクター性が光る楽曲を目指しました。コーラスワークに関しても、バースを担当したメンバーが全部担当してるんです」と述べ、細部にまでこだわった制作過程を明かした。
なんとこの歌割り作業、夜の7時から始まって、朝の7時までかかっているという。全4ページにわたる資料を前に、青山も「歌唱資料の枚数が4枚になる楽曲は、これが初めてです」とコメント。『ビバレン』を彩る楽曲のクオリティの高さは言うまでもないが、スタッフの楽曲制作にかける熱意にも驚かされるばかりだ。
続いて、キャラクターデザイン担当の風李からはビジュアル制作の秘話が披露された。今回のファンミーティングのキービジュアルに込められた、それぞれのペアのポーズに隠されたエピソードが明かされると、会場のあちこちから歓声が上がる。
まずはSUBARUとTAIYO。意外にもSUBARUから「アイドルといえばハートだよね!」と提案し、TAIYOが照れつつも応じてくれたのが、このかわいらしいポーズの由来だそうだ。
ISSEIとMIOは、ISSEIが「2人でひとつのポーズにしよう」と持ちかけて、MIOが嬉しそうに応えたことで、この仲の良さが伝わるビジュアルが完成。JINTAROとCIONは、JINTAROがCIONの“丸メガネ”に注目して「俺も一緒にやりたい!」と提案……というように次々と微笑ましいエピソードが飛び出す。
NAGOMUは、CUCに「小動物らしい可愛らしさ」を活かしたポーズを提案し、CUCが得意げにドヤ顔で応じた微笑ましいワンシーンに。39YEAH↗とREYは風李からの「ほっぺつん♡」の提案に、照れながらもOKしてくれたことで、大人らしさとかわいらしさが絶妙に混ざったカットになったとのこと。
AUGURIがFUTABAの特徴的なアホ毛を活かしたポーズを提案し、普段から仲の良い2人ならではの可愛らしいショットが誕生したそうだ。一方で、LIONとKAZUの「特に何も言わず無言でポーズを決めて、あっという間に撮影を終えてました」というエピソードも、なんとも彼ららしいやりとりに思わず頬が緩んでしまう。
その後、風李はキャラクターデザインの工夫についても解説。今回は特にISSEIに焦点を当て、「サーフィンができそうなぐらい立ち上がった前髪や、右目寄りに重めにかかる前髪で色気を演出している」と話し、涙ぼくろの配置で表情を引き立てるコツと合わせて、ファンアートに役立つ技術を観客に伝授した。
さらに、ファンミーティング初出しの「秘蔵ビジュアル」も公開された。スクリーンに映し出されたのは、オーディション期間中のミュージカル課題のために制作された幻の制服デザイン画や、NAGOMUとKAZUの幼少期を描いた資料。
ミュージカル課題の初期案では、JINTAROとCUCが女装姿で描かれており、会場も思わずざわつく。幼少期のNAGOMUとKAZUのデザインには、天敵同士であるクジラとシャチのマークが施されており、「兄弟で抱えていたお互いのジレンマ」を表現した深い意図が込められていることが明かされた。
最後に、CUCの故郷の回で登場したグエンとの2ショットのイメージビジュアルが公開。お揃いのミサンガや、現在CUCが身に着けているピアスの由来など、細部にまでこだわった設定についても説明され、その丁寧で繊細な描写に再び大きな拍手を送った。
続いて、ファンから事前に募集した質問にスタッフ陣が答えるコーナーへ。
シリーズ構成の関根は、コンテンツ制作の流れを丁寧に解説し、企画立ち上げの段階からキャラクター設定の制作過程について明かした。なんと『ビバレン』の14名のキャラクターは、当初30名以上のキャラクター候補から絞り込まれたという。
関根は「必ず欠点があるキャラクターにする」ことにこだわり、人間らしさや愛おしさを表現したことを説明。さらに、各キャラクターにはそれぞれ「行動原理」を設定し、ストーリー展開において一貫性を持たせていると語った。
また、キャラクターの性格が途中で大きく変わることは少ないものの、関西弁を話す“Iくん”については、SNS投稿を通じて「ガチ恋」キャラとしての性格が強まっていったという興味深いエピソードも。
また、アイディアが浮かばない時の対策として「頭をマッサージする」「お風呂で頭を洗う」といった、まさかの物理的すぎる対処法も明かされ、会場には笑いが広がる。
一方、青山は楽曲制作に関する質問に応じ、「(作曲・作詞を担当している)作家の皆さんのアイディアが素晴らしい」と制作陣への感謝を述べた。特にライブを意識して楽曲選びを行っていると話し、ファンも青山が楽曲を生み出すクリエイターに信頼を寄せる様子に深く感心している様子だった。
続いて、毛利が新オーディションに関して「セカンドオーディションを年内スタートできるように進めています」と明かすと、ファンからは喜びの声が上がった。また今後のプロジェクトについて「10年、20年と長く続けていきたい」と展望を示し、XlamVには「開拓者として挑戦を続け、ほかのグループを引っ張っていく存在になることが期待されています」と語った。
そして、ほかグループについても「彼らが今後自分たちのカラーや達成すべきことを見つけ、プロのアイドルとしてのステージに立つことが重要」とし、XlamVやほかのグループが目指す未来に対する意気込みを熱く述べた。
最後に各スタッフからファンに向けたメッセージが贈られ、XlamVの新曲「The Chain」のミュージックビデオが初公開。安元の「お待たせいたしました!」の一言で会場の期待が一気に高まり、スクリーンに映し出された映像にファンたちは息をのむ。
青山曰く、ほんの数日前にレコーディングを終えたばかりという「The Chain」。エネルギッシュな7人の姿に会場の熱が冷めやらぬ中、こうして第1部は幕を閉じた。
スタッフトークの後は、キャストを招いて『ビバレン』の魅力を余すところなく語り尽くす第二部がスタート。
MCの安元洋貴(稲元役)を筆頭に、土田玲央(TAIYO・SUBARU役)、河西健吾(MIO・ISSEI役)、小林千晃(JINTARO・CION役)、村瀬 歩(AUGURI・FUTABA役)、畠中 祐(LION・KAZU役)が登壇し、それぞれ挨拶を述べた。
「2回目のファンミーティングって、なかなか嬉しいもんじゃないですか?」という安元の言葉に、土田は「会場も大きくなって……」と感慨深げに応える。先ほど会場に流れた新曲について、安元が「あなたたちはどうだったのよ?」と振ると、それぞれ収録時の思い出を始めとした「The Chain」についてのトークが展開された。
土田は、「『ビバレン』の曲が難しいのはいつものことなんですけど(笑)、この曲は今までのと違って、SUBARUとしてすごく歌うのが難しかった」と振り返り、特に挑発的なグルーヴ感のある楽曲性に悩んだという。
続いて河西も、「細かい合いの手がとにかく難しかった。これまで歌った中でもかなり高難度の楽曲だったと思います」と「The Chain」の難易度について触れた。ステージ上のキャストの全員の頷き方を見る限り、どうやら今回の新曲の難しさには全員が頭を悩ませていたようだ。
一方小林は、当初の収録予定日に喉を壊し、ファンミ直前での収録を余儀なくされたとのこと。「スタッフから『絶対に喉治せよ!』って圧がすごくて(笑)」と切迫した状況をユーモアを交えて語りつつ、最後の順番での収録に「みんなが支えてくれてる安心感があった」と話し、場は和やかなムードに。
そして、今回の収録のあまりの難易度の高さに“キレていた(?)”キャストも。
村瀬は前作「About Us」では数テイクで収録が終わったものの、「The Chain」ではトップバッターとしての収録に挑むなかで何度も指示が飛び、テイク数が10回を超えるパートもあったと語る。「AUGURIっぽさをもう少し」とディレクターとのやりとりを再現する小林に、「出してるつもりなんですけどね!」と苦笑する村瀬。最後には「機械の力でなんとかならない?」と冗談交じりに投げかけ、会場は笑いの渦に包まれた。
村瀬に続き、収録での苦労を明かしたのが畠中だ。畠中は、LIONのキャラクター感を高めるために、ディレクターの指示で収録前に一度LIONのセリフを読んでから収録に臨んでいるそう。
また、村瀬同様にディレクターからは「もう一回」という指摘が次々と飛び、テイク数が20を超えることも。「それで結局、最初のテイクが採用されたりするんですよ(笑)」と畠中が冗談まじりにぼやくと、キャスト陣からは“声優あるある”として共感の声が飛びかう。
第1部のスタッフトークでの歌割りトークの際、現場でも何度も微調整を重ねると青山が話していたが、こうしてキャストの声を交えた様子を見ていると、より妥協を許さない現場の熱意が伝わってくる。
そのまま話題は、3年前のプロジェクト始動から今まで発表された楽曲の振り返りへ。最も苦労した曲のパートを尋ねられた河西が、「やっぱり『ビバレンソング!』の『REYッ!』というパートですかね」と答えると、即座に「それ(古川)慎が苦労したところでしょ!」とツッコミが入り、会場に笑いが起きた。
一度聞くと頭から離れない、「ビバレンソング!」のREYのパートについては、キャスト陣から「あれはどうしても真似しちゃう」「一度はやってる(笑)」という声が。
さらに「サンライズ・イン・ジ・アイズ」のミュージカルパートでのエピソードも続き、安元は「台本読んでて、稲元さん(メンバーに)こんなことさせるの?って驚いた」と当時を振り返った。
畠中は「ミュージカルソングもけっこう本格的で、楽曲そのものが物語ってる感じなんですよね。終わった後に“1本の作品を観た”と感じてくれたお客さんもいるんじゃないかなと思います」とコメント。「みんながそれぞれ役を演じながら歌っていたから、自然にそういう風に仕上がったのかも」と感慨深げな様子だった。
村瀬も「まこにゃん(古川慎)と(畠中)祐がぐいぐい引っ張ってくれて、まさにミュージカルになったって思った!」と当時の現場の熱量に触れた。
土田は「歴代で思い入れのある楽曲」として「アワソラ」を挙げ、柔らかい雰囲気の歌唱が求められる中で、自身が「高音パートは力入れて押し上げるタイプ」であることに苦心し、「ごめんなさい、ここはちょっとこだわらせてください」と何テイクも重ねた思い入れのある1曲だったことを明かした。
河西からは「About Us」でのエピソードが。歌詞の「一斉に声上げろ」という部分を「ISSEIではこのキーは出づらい」と相談したところ、LIONのパートに変更するという「“ニクい”演出」で解決したという裏話も。
また、『ビバレン』が始動し始めた頃には、「まだあんまりこの歌唱コンテンツをやってなかった」という小林は、「Go My Own Way」で感じた1人2役で歌うことの難しさを吐露。キャラクター性の違いを出すよう求められる中で、徐々に慣れて適応できるようになっていった過程を振り返った。
2役を演じる上で求められる繊細な声質の調整については、村瀬も難しさを感じているという。特にバラード調の楽曲では「優しく声を包みすぎちゃうと、AUGURIよりもFUTABA寄りに聞こえちゃう」と説明。「楽曲のかっこよさというか、完成したものがかっこいいから。ここを乗り越えたらいいものをきっと作ってくれる」と信じて、時にはやはり“キレながら(?)”収録に挑んでいるそうだ。
畠中も、LIONとKAZUという対照的なキャラクターを演じ分ける中で、特にKAZUの繊細な表現に苦心したことを告白。KAZUの歌唱パートではLIONの表現と差別化をするために、「ビブラートをかけない」という“自主規制”を設けているという。
それぞれのキャラクターに合わせた絶妙な調整の難しさが語られる中、安元は「全キャラそれぞれが挑戦だと思うけど、みんなそれを乗り越えて素晴らしい作品を作り上げてくれている」とまとめ、会場は温かな拍手に包まれた。
すなくじら
下町育ちのエンタメライター。アニメ&映画ジャンルを中心に執筆活動中。ダークファンタジーやゴシックなテイストの世界観の作品が好きです。乙女ゲームの新作情報が生き甲斐。
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