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【第2回】「賢雄、オーディションへ行け!」で声優スタート/堀内賢雄さん60th独占インタビュー(1/3)

2017年7月に”生誕60周年”を迎えた声優・堀内賢雄さん。
1980年代から声優・ナレーターとして活躍し、2002年に独立して、事務所であるケンユウオフィス、さらに付属養成所であるtalkbackを設立、若手の育成に携わりつつ、自らも第一線を走り続けていらっしゃいます。

今回の特別連載は、アニメ、映画、ゲーム、舞台と、35年に及ぶ堀内賢雄さんの声優人生の軌跡を辿る、スペシャルインタビューの第2回(全4回)をお届けします。
野球少年から、DJ、そして声優へ。ダメ出しの嵐だったデビュー当時から、諸先輩方との出会いと絆、役作りへの取り組み方、次世代への期待、そしてご自身の新しい演技への挑戦など、楽しく熱いトークをお楽しみください!

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堀内賢雄

堀内賢雄

プロフィール
堀内賢雄(ほりうち けんゆう)
1957年7月30日生まれ。声優、ナレーター。
たてかべ和也氏のオフィス央より、特撮番組『アンドロメロス』のアンドロウルフ役(1983年)でデビュー。海外映画やドラマでは、ブラッド・ピットをはじめ、数多くの名優の吹き替えを担当。元DJらしい張りのある低音が魅力で、甘さと渋みを兼ね備えた大人の雰囲気を持つ役を演じるケースが多い。その一方、美形ながらもコミカルで残念な側面を持つキャラクターの役も増えているとか。

■主な出演作品/役名(役者名)
映画 ワールド・ウォーZ/ジェリー・レイン(ブラッド・ピット)
ドラマ フルハウス※フラーハウス /ジェシー・コクラン(ジョン・ステイモス)
ドラマ ER緊急救命室XI /ルシアン・ドゥベンコ(リーランド・オーサー)
ゲーム アンジェリーク/炎の守護聖オスカー、メタルギアソリリッド/雷電
アニメ ジョーカー・ゲーム/結城中佐
アニメ 鬼平/長谷川平蔵
アニメ グイン・サーガ/グイン

「賢雄はなんとか仕込める」居残り&ダメ出しで鍛えられた新人時代

――夏に行われたイベント60th Anniversary “生まれ直しやりなおし”も大盛況でした! キャリアとして35年目になりますが、これまでを振り返ってみていかがでしょうか?

堀内賢雄(以下、賢雄) 60歳ということで、この先どこまで生きられるかわかりませんが、還暦として”生まれ直す”ところまでたどり着いたことが、自分の中で偉いね! って(笑)。ちょっとほめての60歳。付き合う人が、俳優業界の方ばかりなので芝居環境の中で培ってきた30数年だったかなぁと思います。

――賢雄さんはどのような若手時代を過ごしたのでしょうか?

賢雄 若手時代は居残りばかりしていましたが、残されることが嫌ではなくて、「ますます俺、うまくなっちゃうんだな」っていう気持ちでやっていましたね。たてかべさん(※1)の事務所・オフィス央に入って、「賢雄、アンドロメロスのオーディションに行け!」と言われて行ったのが最初です。
元々DJをやっていたため歯切れのいいしゃべり方ができたためか、オーディションには受かるんです。ただ、演技経験はない。だからうまくもなければテクニックもない。「お前は何もわかっていない。明瞭にいい声だけでしゃべりやがって、芝居のしの字もわかっていない」と散々言われ続けて、歯切れよくしゃべることの何が悪いんだって、思っていましたね。

――賢雄さんにも、若手ならではの苦悩の時代があったんですね。

賢雄 20代は本当に居残りばかりでしたからね(笑)。今振り返れば、その頃は、自分をさらけ出すしかなかったんです。ものづくりという意味で欠落している役者だったので、監督がなんとかしなきゃいけないという、むしろ使命感をもってしごいてくださいました。現場で少しずつ一人前にしてもらったなと感じています。

――仕事に嫌気がさすことはなかったのでしょうか?

賢雄 現場でしごかれていると、はじめのうちはめげて、行くのが嫌になるんです。だって、行けば怒られますし(笑)。とくに、笑いや泣きがセリフにあると、なかなかうまくいかない。その当時は自意識過剰だったから、周りの人ばかり意識してしまい、恥ずかしくなって、笑えないし泣けないのです。そうすると監督から「ちゃんと笑えー!!」って怒鳴られる。怒鳴られて笑えるか、なんて思っていましたが(笑)。
ここであきらめて辞めてしまったらすべて終わりなわけでしょ? それがだんだん変わっていったのはやっぱりたてかべさんのおかげだなと思いますね。一緒にいてくれて、「いいんだよその感性で、突っ走れ、好きなように」って。心の支えになりましたね。

――たてかべさんに肯定していただけたんですね。

賢雄 鬼のような監督だと思っていた人も付き合っていくうちに、ああ愛情だ、ってどんどん思えていくんですよね。しごかれるのが光栄なことだと思えるようになったのは5、6年経ってから。僕は学生時代に野球をやっていたんですが、バッターボックスと同じなんですよ。何度も立てば、球筋が見える。ずーっとやっていれば、芝居がわかってくるんです。

――ご自身で芝居がわかってきたな、と実感した作品は何でしょうか?

賢雄 『アンドロメロス』(※2)は、全然わからないでしょ。『サイコアーマー ゴーバリアン』(※3)はひどくわからないでしょ。『超攻速ガルビオン』(※4)……あ、もうぜんっ然わからない(笑)! そのころは地獄の千本ノックと居残りでした。永井豪さんの『ゴッドマジンガー』(※5)、山寺宏一(※6)くんと共演した『チップとデールの大作戦』(※7)あたりでようやく芝居がわかってきたかなぁ。

――それまでの作品と、どこが違ったのですか?

賢雄 自意識過剰が少し直ってきたことと、お芝居は自分だけが目立っていてはだめっていうことがようやくわかってきたことでしょうか? DJ時代は、目立つために個性的なことばかり考えていましたから、その延長で、作品の理解やキャラクターづくりよりも、自分の声で演じようとか、自分を目立たせよう! という気持ちがあったんじゃないかな。あくまで作品の中のゾルバでありチップであり、と芝居の流れの中でのセリフだということが、わかってきましたね。

(※1)たてかべさん……たてかべ和也氏。1983年当時のオフィス央の社長で、賢雄さんをはじめ、『クレヨンしんちゃん』の野原しんのすけ役の矢島晶子さんら、多くの才能を見出した。また、自身は『ドラえもん』のジャイアン役の声優としても有名。2015年逝去。
(※2)『アンドロメロス』……1983年放送の特撮番組。賢雄さんは、その中のアンドロウルフ役でデビューを飾った。
(※3)『サイコアーマー ゴーバリアン』……永井豪とダイナミック企画原作による、1983年のロボットアニメ番組。
(※4)『超攻速ガルビオン』……国際映画社が手掛けた最後のロボットアニメ番組。1984年放送。
(※5)『ゴッドマジンガー』1984年放送の永井豪原作によるロボットアニメ。マジンガーシリーズの外伝作品にあたる。
(※6)山寺宏一……山ちゃんこと、七色の声を持つ男とうたわれる声優。
(※7)『チップとデールの大作戦』……『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』のこと。1989年から放送されたディズニーアニメ。

堀内賢雄

堀内賢雄

酒の席でつながれたベテラン声優たちとの縁~芋虫の声はわからない~

――オフィス央での新人時代では、そうそうたる先輩方がいらっしゃったのではないでしょうか?

賢雄 当時は振込ではなく事務所に直接ギャラを受け取りに行くのですが、役者たちが車座になっていて傍らに酒が置いてある。それで、「おう、座れ、新人。(つまみの)イカ買ってこい」と(笑)。
運動部育ちだから嫌でもないし、そこで先輩たちに、お前の芝居はここがダメだ、と朝までずーっと言われるんです。心の中では、「あれ? さっきと言っていることが全然違うけど」って思いながら付き合っている。

――たいへんですね……!

賢雄 お酒が入っていますからね(笑)。池田秀一(※8)さんもやさしくて厳しかった。子役からずっと俳優をやっていらっしゃった池田さんに「お前は芝居をわかっていない」って言われるということは、僕は本当にわかってないんだな、と思いましたね。
「この役はどういう風に作っている?」、「生い立ちがどうなのか自分で考えたことはあるのか?」とか、ガンガン言われましたね。やっぱりあの方たちのこだわりはすごいんですよ。そういうものがなければ演じてはダメだ、という考え方だから。僕はいい時代に育てられたなと思いますね。

――池田さんから直々にダメ出しされたのですか!?

賢雄 池田さんは熱さもすごかった。時代もありましたけど、当時は収録後でも、芝居について役者も監督も語り合っていましたよ。
例えば、『フィールド・オブ・ドリームス』(※9)という洋画の吹き替えの時は、収録後に「お父さん、キャッチボールをしよう」というセリフについて、池田さんと津嘉山正種(※10)さんと監督で話し合った結果、「じゃあ今からスタジオ戻って録り直すぞ!!!」なんてこともありました。そういうことが日常茶飯事でね。その頃、高木渉(※11)くんや森川智之(※12)くんが新人で、彼らもそういうものを垣間見て、継承している世代じゃないですかね。

――熱い世界ですね! 贅沢な時代にも思えます。

賢雄 だから今の若手が悩んでいることは、僕が悩んだことと同じなんですよ。筋骨隆々の外国人だったら、低い音を出して「よう!」(と、声をだして実演!)。でもそれは声で作っているだろうと。声ではなくて、内面の性格から発生するセリフではないんですよね。
新人の時に芋虫の役で「やぁ、ナントカカントカで」としゃべったら、「バカヤロー! お前は芋虫の声になってない!」と怒られる。芋虫ってどんな声なんだ!? って思うけど(笑)、今はわかりますよ。作品の流れの中で芋虫としてしゃべることと、芋虫の声を作って自分だけ目立とうとする違いが。そういう意味では、少し芝居のことはわかってきたけど、なかなか諸先輩方を超えられないんですよ。

――その中でも最も影響を受けた方はどなたになるのでしょうか?

賢雄 たてかべさんにも大きく影響されていますが、指針にもしているのは藤本譲(※13)さんです。「賢雄、死ぬまでやるんだ、死に枕でもやり続けるんだ。やりつづけるということは、人間として成長していかないといけない。そこに役者がある」と仰られ、その言葉には深く感銘を受けているんです。

(※8)池田秀一……NHKドラマの『次郎物語』の主役を務めるなど、子役から俳優として活躍。ジェット・リーの吹き替えや、アニメファンのあいだでは、『機動戦士ガンダム』のシャア・アズナブルの声優として知られる。
(※9)『フィールド・オブ・ドリームス』……1989年公開のアメリカ映画。ケビン・コスナーを主演に迎えた、野球を題材にした感動作で、第62回アカデミー作品賞ノミネート作品。「お父さん、キャッチボールをしよう」のセリフは映画のハイライトで、もっともエモーショナルなシーンのひとつ。
(※10)津嘉山正種……劇団青年座所属、俳優、声優。吹き替えではケビン・コスナーや、ロバート・デ・ニーロ役として知られる。趣味は麻雀。
(※11)高木渉……アドリブに定評あり。『名探偵コナン』の高木刑事・小嶋元太役や、ジャック・ブラックの吹き替え役などを務める。
(※12)森川智之……洋画の吹き替えではトム・クルーズやユアン・マクレガーを担当。前述の高木渉氏とは、勝田声優学院の同期。
(※13)藤本譲……『ミスター味っ子』の味皇。洋画吹き替えではジェームズ・アール・ジョーンズ(『スター・ウォーズ』のダース・ベイダー卿)の役として知られる。


さて、お話の途中ですが、ここまで賢雄さんの独占ロングインタビューをお送りいたしました! 
若手ならではの苦悩の時期が、賢雄さんにもあったのですね。
第3回は、2017年11月2日公開予定です。ご自身の事務所ケンユウオフィスの立ち上げから、忘れられないキャラクターのことなど、引き続き熱く&楽しく語っていただきます。
どうぞお楽しみに!

■祝! 堀内賢雄さん60th Anniversary特別連載企画(全4回)
【第1回】まるで親子!? 寺島惇太&堀内賢雄 ~新人vs社長の声優本音トーク~ ※2017年10月26日公開

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【第4回/最終回】『鬼平』や『ジョーカー・ゲーム』での挑戦、そして/堀内賢雄さん60th独占インタビュー(3/3) ※2017年11月7日公開

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