『Thunderbolt Fantasy Project』総監修・虚淵玄インタビュー|魅力を増す美しすぎる人形たちの武侠譚

よりキャラクターに焦点をあてた──1期あってこその2期の見どころ

──『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀2』(以下、2期)の制作過程はいかがでしたか?
虚淵玄(以下、虚淵) まず、1期に比べて2期はそれほど親切な作りにしなくてもいいだろうと。話のわかりやすさ、敷居の低さといった点は、もう1期を観ていただいたという前提で開き直って脚本を書いています。
物語の展開や導入で視聴者を引っ張っていくよりも、キャラクターの掛け合いやアクションシーンといったところに集中してもらえるようにと意識していました。

──2期の制作過程で一番困難だったところは?
虚淵 しいて言うなら脚本がちょっと難航してスケジュールが押したぐらいですね。
他に関してはすごく順当に進めさせてもらえたので、制作に関しては全くなかったかな。

──脚本ではどの部分が難航したのでしょうか?
虚淵 続編が前提のシリーズは、自分にしては珍しいので試行錯誤はありましたね。すでに登場しているキャラクターをブレさせるわけにいかないですし、新しいキャラクターも、どの辺まで視聴者を裏切っていいものか、なかなかさじ加減が難しいところでした。伏線や公開する情報量、それぞれのキャラクターの出番の調整なども考えた部分ですね。

──2期を制作する上で、キャラクター設計など変更した部分はあったのでしょうか?
虚淵 キャラクターの掛け合いに注力しようという意識はありましたが、キャラクターに関しては特に変えていません。1期の段階で想定したキャラクターの延長線上で語られています。
1期は紹介編というか、凜雪鴉(りんせつあ※1)や殤不患(しょうふかん※2)といった、レギュラー陣の人となりが分かるまでをひとつの話にしていました。2期はそのパーソナリティがすでに分かっているところからの展開なので、逆にそこはもう出し惜しみなしです。

※1 凜雪鴉(りんせつあ)……CV:鳥海浩輔。Thunderbolt Fantasy Projectの主人公。気品漂う謎多き美丈夫。博識かつ狡知に長け、立ち振る舞いは常に優雅だが、その正体は神出鬼行の大怪盗。

以上が公式webのキャラクター紹介ですが、要するに、口八丁手八丁の嘘つきイケメン。絶対に友達にはなりたくない、かつ敵にも回したくないタイプナンバーワン。こういう男とは知り合ったが最後なので死ぬまで他人を貫きとおしたいものです(※主観的な感想です)。

※2 殤不患(しょうふかん)……CV:諏訪部順一。Thunderbolt Fantasy Projectのもう一人の主人公。厭世的な皮肉屋を装い、常に憎まれ口ばかり叩いているが、性根は義に篤い人情家。

以上が公式webのキャラクター紹介ですが、要するに、なんだかんだ言いながらも困った人を見捨ててはおけないワイルドイケメン。友達にはなってみたいが秘宝・魔剣目録のせいで色んなアブナイ人から狙われちゃっているのでやっぱりご遠慮申し上げたいタイプ。相棒とまで言わしめる浪巫謠(ろうふよう※12)との関係も気になるところです(※主観的な感想です)。

──凜雪鴉も最初から悪だくみ全開ですからね(笑)。
虚淵 凜雪鴉の立ち回りなんて、2期だけ観てもらうと困惑しちゃうかも。1期と生死一劍(※3)を踏まえて観るからこそ、彼が今どういう状況にいるのかが、より伝わるかなと思いますね。

※3 生死一劍……2017年公開、劇場上映作品『Thunderbolt Fantasy 生死一劍』のこと。1期に登場した殺無生(せつむしょう)と凜雪鴉の前日譚と殤不患をメインとした後日譚が語られる。

こちらの劇場上映作品は、凜雪鴉に翻弄されまくる殺無生がひたすら気の毒になるストーリー。やっぱり厄介事に巻き込む凜雪鴉とは画面越しが最適と確信します(※主観的な感想です)。

──凜雪鴉が登場しただけで、「どこで騙されるんだろう?」と思わされます。
虚淵 そうですね。「今ピンチだけど絶対これピンチじゃないよねって、手のひらの上だよね、絶対ウラあるよね」って思っちゃうところはありますね

──では、2期でお気に入りのシーンはどこでしょうか?
虚淵 うーん、難しいですね。一つに絞ると他のが推せなくなるしなぁ。
毎話毎話なるべく見せ場を作るようにと考えていますし、一話残さず観ていただければ毎回満足していただけると思っています。

──1期に比べると、2期ではアクションもより派手に、人形の顔のアップを多用するなどの演出表現もよりパワーアップしているように感じます。
虚淵 1期は物語の舞台というか世界観にかなり注力したのですが、舞台にこだわるよりは人形にフォーカスを合わせた方が面白い、という手応えを得ました。2期ではどういう世界かわかってもらっているので、さらに人形が引き立つようにという思惑で作っています。
アクションも、脚本でバトルの頻度をあげているからか、霹靂社さんが本領発揮してくださっていますね。

──第4話『親近敵人』の毒の治療を試みるシーンは、小道具のリアリティや演出も細かくて素晴らしかったです。
虚淵 本当にね、頑張ってくれましたよね。
こちらとしても、人形でやったらワクワクするだろうなという点は考えています。薬を混ぜ合わせたり(第4話)、糊と刷毛で細工したり(第1話)、人形でやったらちょっと驚く画になるだろうと思うところは、「できます?」って聞きながら書かせていただいています。
霹靂社さんには、こちらで提案したものを、より効果的に見せる方法を探っていただいていますね。

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『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵玄インタビュー numan

魅力的な新キャラクターの登場 虚淵玄初のスターシステム

──2期では新しいキャラクターも登場しますが、思い入れの強いキャラクターは誰でしょうか?
虚淵 強いていうならスターシステム(※4)って形で登場させている七殺天凌(ななさつてんりょう※5)と婁震戒(ろうしんかい※5)になるのかな。
違う切り口で共通のキャラクターを描いていくというスターシステムはちょっと挑んでみたい部分でもありました。僕としても初めての試みだったので、関係者の方に相談して改めて許諾を取った上で、また一からデザインするという面白い工程でしたね。

※4 スターシステム……作家が自身のキャラクターをあたかも俳優のように扱い、異なる作品中に様々な役柄で登場させるような表現スタイルのこと。

※5 七殺天凌(ななさつてんりょうCV:悠木碧)、婁震戒(ろうしんかいCV:石田彰)……2期から登場する新キャラクター。元は虚淵さんが参加したRPF(ロールプレイングフィクション)『RED DRAGON』の登場人物とその剣。
七殺天凌は、意思を備え、人を魅了し殺戮に駆り立てる魔剣。婁震戒は、七殺天凌を「姫」と呼び、彼女の導きによって暗殺者として大成した武装僧侶。

以上が公式webのキャラクター紹介ですが、特に婁震戒は、自身のアイデンティティは姫のためと言い切るとんでもなくキレている人物。気をつけないと速攻で姫の小腹満たしにされてしまいます。凜雪鴉と比べると純粋な分だけまだ真っ当に思えそうですが、それも五十歩百歩程度。やっぱり友達にはなれないタイプ(※主観的な感想です)。

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『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵玄インタビュー サンファン numan

▲こちらが魔剣・七殺天凌(ななさつてんりょう)。
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『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵玄インタビュー サンファン numan 7

▲こちらが婁震戒(ろうしんかい)。
──スターシステムを、Thunderbolt Fantasy Projectで取り入れようと思われたきっかけは?  
虚淵 Thunderbolt Fantasy Projectがアクションを描写する媒体として、うってつけだったという点です。  
もともと婁震戒は中華系の文化圏(※6)出身というキャラクターなので、あえてこの中華っぽい世界観に出したことで、より馴染みやすいキャラクターにできたかなと思います。もともと異邦人として登場していた婁震戒を現地の人という形で再び出せるので。  

※6 中華系の文化圏……『RED DRAGON』(※5参照)に登場する、魂を輪廻転生させ、永遠に生きるという黄爛霊母(こうらんれいぼ)が支配する旭日の大国「黄爛」のこと。婁震戒は、黄爛の宗教組織である八爪会の所属。  

──七殺天凌のデザインで、こだわった点はありますか?  
虚淵 作画崩壊せずに続けられる点が布袋劇の強みなので、七殺天凌のような美術的な小道具は引き立ちますよね。一度豪華に作ってもらえれば終始その美しさのまま画面に出続けてくれるので。  

──確かに登場した瞬間から只者ではない存在感がありました! 新キャラクターの中でお気に入りのキャラクターはいますか?  
虚淵 蠍瓔珞(かつえいらく※7)も嘯狂狷(しょうきょうけん※8)も、デザインからコンペで作らせてもらったのでどちらも非常に気に入っていますね。  
二人ともそれぞれ別案があったんですよ。その中から選ばせてもらって今の形に落ち着いているので、どちらもイチオシです。  

※7 蠍瓔珞(かつえいらく)……CV:高垣彩陽。生死一劍及び、2期に登場する新キャラクター。通り名を蝕心毒姫(しょくしんどっき)といい、猛毒を操る美女。東離(とうり)に逃れた殤不患を追って西幽(せいゆう)からやってくる。  
※8 嘯狂狷(しょうきょうけん)……CV:新垣樽助。生死一劍および2期に登場するキャラクター。殤不患を「逆賊」と呼び、その居場所を探してやってきた西幽の捕吏。高潔で職務に忠実な正義漢を装ってはいるが……。

以上が公式webのキャラクター紹介ですが、蠍瓔珞のほうは、蠍の毒は後で効く、と言うように第4話で彼女の毒を受けた殤不患の苦しみようは半端ないのですが、第9話を見たら一番純粋でええこや……と涙する事態に。  
嘯狂狷のほうは、一言で言うと「小悪党」! 2期の凜雪鴉の遊び相手となるターゲット(可哀想な人)で、眼鏡めっちゃ推せるけど、属性贔屓を差し置いても、小悪党過ぎて……一周回って愛しい(※主観的な感想です)。

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『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵玄インタビュー numan2

▲こちらが蠍瓔珞(かつえいらく)。
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『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵玄インタビュー numan3

▲こちらが 嘯狂狷(しょうきょうけん)。
──その別案、一体どんな案だったのでしょうか?
虚淵 まず、「サソリ女」と「鬼畜眼鏡」ってそれだけの指定で描いてもらいました(笑)。

──では嘯狂狷の眼鏡は確定だったのですね(笑)。
虚淵 そうです(笑)。
三杜シノヴ(ニトロプラス)の嘯狂狷も、源覚(ニトロプラス)の蠍瓔珞もいたんですよね(※9)。
でもどちらもわりと共通していたんですよ。確か三杜のほうが金髪の嘯狂狷、ゴールドメインで。源覚の蠍瓔珞はブルー主体でしたね。その辺りお互い踏襲している感じがありました。その中から選ばせてもらいました。

※9……実際は蠍瓔珞のキャラクターデザインは三杜シノヴ(ニトロプラス)、嘯狂狷のキャラクターデザインは源覚(ニトロプラス)。

──何が決め手になったのでしょうか?
虚淵 やはりデザインの美しさですね。蠍瓔珞に関しては、サソリのモチーフにした装飾が素晴らしかったので。嘯狂狷は帽子と扇子ですよね。お役人(笑)って感じがね。

──鬼畜眼鏡の嘯狂狷ですが、眼鏡を使った仕草も印象的です。
虚淵 あれは霹靂社さんの現場の方のアドリブでした。脚本の中で一行も書いてないですからね、ここで眼鏡直すとか(笑)。
眼鏡をつけた以上はこだわる、というあちらのスタンスだと思うんですよね。終始こうやって眼鏡キャラを眼鏡推しで撮ってくださっているのは素晴らしいですよね。

──眼鏡萌えは世界共通……と。
虚淵 そう、特に日本風の演出にしているわけではなく、完全に霹靂社さんにお任せです。眼鏡を直すだけでなく、光をあてて白く飛ばしたりとか、髪をかきあげたりとか、すごくやってくださっていて。

──新キャラクターといえば、第9話『強者の道』から俄然存在感を増した諦空(ていくう※10)ですが、最初からこういうキャラクターにしようと思っていたのですか?  
虚淵 諦空って引き算でできているキャラクターなんですよね。婁震戒から七殺天凌を抜いたら諦空という人間になる。まさに婁震戒と七殺天凌が出会う話、という想定で今期の物語ができているので、第9話で七殺天凌と巡り合って、元のキャラクターに逆に戻る形です。  

※10諦空(ていくう)……CV:石田彰。2期に登場するキャラクター。流浪の苦行僧だったが、七殺天凌を手に入れたことで還俗し婁震戒と名乗るようになる。  

以上が公式webのキャラクター紹介ですが、要するに、イケメンすぎる美坊主。仏像の丸まった髪型でパンチパーマのような螺髪(らほつ)なのにとにかく美人。只者ではないのは、石田彰さんのボイスでもわかりますが、一見すると問答好きのこじらせ男子(※主観的な感想です)。  

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『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵玄インタビュー サンファン numan6

▲こちらが諦空(ていくう)。
──螺髪が解けるという演出が非常に斬新でした!  
虚淵 あれは布袋劇でも定番の演出です。お坊さんが闇落ちすると長髪になる(笑)。  
霹靂社さんの素還真シリーズにも一頁書(いっこうしょ※11)というキャラクターがこの髪型で登場します。もっときっちりした螺髪なのですが、日本だと見慣れないヘアスタイルなんですよね。  
そこをすんなり入ってもらうためには、Thunderbolt Fantasy Projectでもそういうキャラクターを出した方がいいなと常々思っていたので、婁震戒を出すときにやってしまおうかと。婁震戒はもともと長髪のキャラクターだったので、螺髪が解けて長髪になるというお約束を、布袋劇の予習という意味合いで入れました。  

──螺髪は虚淵さんからのオーダーだったのですか?  
虚淵 はい、これはなまにくATK(ニトロプラス)(※12)に言ってありました。それこそ一頁書のキャラクターも見せました。そしたらね、螺髪を大きめに作ったんですよね、彼は。それが彼なりのアレンジで、見た時になんとなく抵抗感が薄まると思いました。いきなり僧侶だと言われても、「なるほどな」って受け入れられる位に。  

※11 一頁書(いっこうしょ)……『素還真』を主人公とする、台湾の布袋人形劇「霹靂布袋戲」シリーズの主要人物で、武学も心得る螺髪の高僧。  
※12 なまにくATK……ニトロプラスのデザイナー。諦空・婁震戒のキャラクターデザインを担当した。  

──初登場時、螺髪でイケメンは初めて観た!? と、衝撃が走りました。  
虚淵 いやいやいや、霹靂さんの作品にはざらにいますよ(笑)。どんだけ坊さん色っぽいんだって。

Thunderbolt Fantasy Projectをさらに魅せるキャスティングの妙──

──Thunderbolt Fantasy Projectが台湾布袋劇と大きく違う点は声優の起用だと思いますが、キャスティングについてはいかがですか?
虚淵 1期も2期もオーディションですが、当初からイメージが明確にあったキャラクターはこちらから指名という形でお願いしています。特に、婁震戒と七殺天凌は、それぞれ石田彰さん、悠木碧さんをぜひ、とは思いましたね。

──生死一劍でも登場した浪巫謠(ろうふよう※12)は、当初西川貴教さんをモデルとして先に人形が作られ、2期では重要なキャラクターとして、御本人も声優として出演されています。キャラクターも西川さんに寄せた部分はあるのでしょうか?
虚淵 浪巫謠は、確かに人形は西川さんをモチーフにして作りましたが、パーソナリティは真逆です。浪巫謠はとんだコミュ障ですから。
西川さんをこの世界観に出すのではなく、浪巫謠というキャラクターを作るので西川さんに演じてくださいといった形ですね。

※12 浪巫謠(ろうふよう)……CV:西川貴教。劇場上映作品より登場する、殤不患(しょうふかん※2)の相棒だった吟遊詩人。喉に魔力を宿すため極度に寡黙で、喜怒哀楽は魔性の琵琶「聆牙(りょうが)」を爪弾いて表現する。

以上が公式webのキャラクター紹介ですが、一言で言えばイケメンコミュ障。琵琶は友達、怖くない。第5話にて歌で歿王と戦うシーンは2期での見せ場のひとつで、やはり男はギャップ(※主観的な意見です) 。

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▲こちらが浪巫謠(ろうふよう)。琵琶のほうが聆牙(りょうが)。
──浪巫謠の相棒、聆牙(りょうが※13)役の小西克幸さんもコミカルな演技が印象的です。  
虚淵 聆牙役もオーディションですね。  
キャラクターが固まりきってない時は、むしろ仕上げを声優さんにお任せすることもありますね。  

──聆牙の変形は虚淵さんのアイディアですか?  
虚淵 あれは霹靂社さんです。  
最初は琴だけで戦う予定だったのが、アクションが組み辛いので刀に変身するギミック入れていいかと言われまして。  
凜雪鴉の煙管が刀になるように、光って羽が舞うと刀になるぐらいかなと思ったら、あんな変形があがってくるとは。あれは爆笑しましたね(笑)。「もう素晴らしい!」って! 昭和世代の自分にはぐっさり刺さる演出だった。さらに加えてあそこで「聆牙、変形」(笑)。  
あれ小西さんのアドリブなんですよ。聆牙の名台詞、ことごとくアドリブです!  

※13 聆牙(りょうが)……CV:小西克幸。浪巫謠が愛用する魔法の琵琶。魔力のこもった浪巫謠の言霊を手元で浴び続けた結果、人格が備わり言葉を発するまでに至り、浪巫謠の心情を代弁するようになる。  

以上が公式webのキャラクター紹介ですが、その実は、やたら愉快な琵琶兄さん。過去に浪巫謠が琵琶にこんこんと語りかける図を想像すると、ちょっとキモ可愛い……かも(※主観的な感想です)。  
また、聆牙が琴から刀に変形する際の掛け声が、「聆牙、変形」。小西克幸さんの名台詞は一度聞くと病みつきになりますが、毎話聞けるわけではありません。

──変形の言い方も一回一回違いますよね! 昭和世代に刺さるといえば、第5話の『業火の谷の歿王(ぼつおう)』との戦闘シーンも刺さりますね。  
虚淵 わざわざ東映さんのご協力で造形のスタジオを探して、作っていただいたんです。日本の特技監督(※14)の方に現場で指導いただきながら作ったんですよ。  

※14 特技監督……日本の特撮映画やテレビにおいて、SFXが主となるシーンまたはカットの演出を担当するスタッフのこと。

──歿王(ぼつおう)の造形は、虚淵さんのご希望だったのですか?  
虚淵 いや、最初は1期のCGの石巨人みたいに、人形ではないものと合わせたSFX枠で考えていたのですが、せっかくならCGよりアナログでという話になり、結果着ぐるみになりました。  

──竜をグチャリと踏み潰しての登場は、胸踊りました(笑)。  
虚淵 あの小さいのも、よく出来てるんですよ!  
現場で見せてもらって、すごく作り込んであってもったいないなあと思いました。一瞬で出番は終わるのに(笑)。

宝塚でも舞台化! 気になる今後の展開は?

──Thunderbolt Fantasy Projectは2018年に宝塚歌劇星組でも公演されましたが、感想はいかがでしたか?
虚淵 宝塚歌劇というのは日本独自の芸能ですし、そこに台湾の布袋劇という違う国の芸能を繋げることができたというのは、本当に感無量です。感激の一言につきますね。
そして実際に観劇してみたら、もう見た目から違和感がなさすぎて驚きました。さすが宝塚さん!
人形と違和感がないだけに、実際に笑ったり、怒ったりと表情が変わるということが非常に斬新で驚きました。

──台湾側、霹靂社の反応はいかがでしたか?
虚淵 もう大興奮でしたね。
もともと宝塚歌劇が台湾公演をやっていたので、そこで改めて題材になったということは非常に嬉しいことでしたね。こちらも色々とお願いして現場に布袋人形を飾らせていただいたりとか、紅ゆずる(※15)さんと同じ衣装を着たの凜雪鴉を作ってみたりしました。

※15 紅ゆずる……宝塚歌劇団星組男役トップスター。星組公演の異次元武侠ミュージカル『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』で凛雪鴉を演じた。現場では第2幕で行われた『Killer Rouge/星秀☆煌紅』の凜雪鴉が飾られた。

──宝塚歌劇での公演も経て、2期も婁震戒が登場し、この先の展開が非常に気になりますが、速水奨さんが演じる殤不患の仇敵・禍世螟蝗(かせいめいこう)の登場はいつ頃になるのでしょうか?
虚淵 禍世螟蝗は、シリーズ通じての大物としているので、もったいぶりながら出てくる感じが続くと思いますね。

──蠍瓔珞があれだけの忠義を誓う禍世螟蝗と、嘯狂狷が仕える西幽(せいゆう)の皇帝も視聴者としては気になるところだと思いますが?
虚淵 長く続くシリーズとして考えていますので、今後の展開を楽しみにしていて下さい(笑)。

──劇場上映作品や宝塚歌劇での公演のように、今後も舞台化や書籍化といった展開もあるのでしょうか?
虚淵 あると非常に嬉しいです。
自分は布袋人形劇であることを前提に話を書いているので、だからこそ諦めなければならない部分や妥協しなければならない場所もあるので、もっと自由な発想や、もっとたがを外した表現というのは是非別の媒体でやってもらえればと思います。

──では最後に、視聴者の皆さんへ向けてメッセージをお願いします。
虚淵 常に次の表現形態を模索しながら進歩を続けている霹靂社の方々と一緒に作り上げている以上は、もう毎回毎回新しい要素を加えながら斬新なものを見せていけると思っています。
どうか末永く、飽きること付き合っていただければ刺激的なものをお届けできると思いますのでよろしくお願いします!

『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵...

『Thunderbolt Fantasy』総監修・虚淵玄インタビュー サンファン numan10

プロフィール  
虚淵玄(うろぶち・げん)  
1972年生まれ。ニトロプラス所属の脚本家・小説家・シナリオライター。    

主な作品  
TVアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』『翠星のガルガンティア』、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』、  
『PSYCHO-PASS サイコパス』ほか  
特撮『仮面ライダー鎧武/ガイム』ほか  
ゲーム『Fate/Grand Order』、『沙耶の唄』ほか

まとめ

Thunderbolt Fantasy Projectの原案・脚本・総監修を担当される、虚淵玄さん(ニトロプラス)インタビューをお届けしました。3期も発表され、ますます盛り上がる本作! 
こちらのキャストインタビューも合わせてお楽しみください!

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numan編集部

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