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「10年後、BLはもっと一般的なジャンルになる」ヤンキー漫画家・奥嶋ひろまさが少年誌初のBLに挑んだ理由【『バババ』3巻発売記念インタビュー】

別冊少年チャンピオン(秋田書店)にて大好評連載中、奥嶋ひろまさ先生著『ババンババンバンバンパイア』(以下『バババ』) は、なんと少年誌初のBLコミック。BLと書いて「ブラッディ・ラブコメ」と読ませる本作は、1話目がTwitterで8万以上の“いいね“を獲得し、BLファン界隈をザワつかせた話題作です。
老舗銭湯「こいの湯」で働く森蘭丸、彼の正体は450歳の吸血鬼。至高の逸品「18歳童貞の血」を吸うために、銭湯の一人息子・李仁の成長を見守り続けています。ところが李仁は同級生の葵ちゃんに一目惚れ。蘭丸による決死の「童貞喪失阻止作戦」が開始され……とあらすじだけでヤバい香りがプンプンです。登場するキャラも、熱血童貞ヤンキーにドMなヴァンパイアハンターなど、とにかく個性的なメンツが大渋滞。
『ババンババンバンバンパイア』1巻(秋田書店)

『ババンババンバンバンパイア』1巻(秋田書店)

via 『ババンババンバンバンパイア』1巻(秋田書店)
今回はそんな激ヤバ作品の作者である奥嶋ひろまさ先生を直撃インタビュー!
奥嶋先生といえば“ヤンキー漫画家”として有名ですが、最近ではBL漫画家SHOOWA先生とタッグを組んだ『同棲ヤンキー赤松セブン』(秋田書店)や、世界的大ヒットとなったタイBLドラマ『2gether』のコミカライズ作画(ワニブックス)などでBLファンからの熱い支持を受けています。

そこで奥嶋ひろまさ先生から見た“BL”の魅力や11月8日に3巻が発売となる『バババ』の裏話​についてもお話を伺いました。

BLファンと僕の好きなものが同じだった

――奥嶋先生は猿渡哲也さんのアシスタントを務め、その後『SHOUT! 』(少年画報社)でデビューを果たされました。いわゆる“ヤンキー漫画家”の奥嶋先生がBLを描くようになるまでの経緯を教えてください。

以前連載していた『アキラ№2』(少年画報社)を描いている時、読者の8割くらいが女性だったのですが、Twitterはでちらほら“BL”という感想を見かけていました。当時はBLを知らなくて、その時“ボーイズラブ”というジャンルがあることを知って。「そういう見方もあるんだ」というくらいに思っていました。

『同棲ヤンキー赤松セブン』1巻(秋田書店)

『同棲ヤンキー赤松セブン』1巻(秋田書店)

via 『同棲ヤンキー赤松セブン』1巻(秋田書店)
そんな時に、月刊少年チャンピオンの編集長から『同棲ヤンキー赤松セブン』(以下、同棲ヤンキー)を原作付きで描いて欲しい、というお話があるということを聞きました。すでに僕のふだん描いてる漫画はBL好きな方に需要があるんだなと捉えていたので、特に「BLだから」という抵抗感もなく、このまま描けばいいという気持ちからお受けしました。
――男性はBLに抵抗感があるものだと思っていました……! 奥嶋先生から見たBLとはどのようなものでしょうか。
当時、たなと先生が青年誌で『あちらこちらぼくら』(小学館)という漫画を連載していたのでBLというものは何となく知ってはいました。でもBLというのは友情の延長線上の愛、いわゆるブロマンスみたいなものがメインだと思っていたんですよね。連載を始めるにあたって勉強のため改めて読んだら……「最初からけっこうハードな行為まで描くんだ!!」と驚きました(笑)。

僕はそれまでも男性2人の関係性を描いていたので、『同棲ヤンキー』でもいきなり恋愛が進むよりは関係性を作った上で恋愛していく、という展開にしていきたいということだけは伝えました。
僕は関係性をしっかり作った上で気持ちが高まっちゃって……というのが好きなんです。

――確かに、奥嶋先生の作品にはヤンキー漫画でもBL漫画でも“男同士の友情や関係性”が共通したテーマにあるように見えます。
そうですね、それしか描きたくないと言えちゃうぐらいです。僕は彼女ができても男友達と遊べなくなったりするのが面倒くさいと思っていたし、男同士で遊んでる方が楽しくて好きなタイプでした。
例えば僕以外の仲良い何人かで遊んだ話を聞くと、なんで俺呼ばれてないの?こいつの好きなやつランキングで俺は何番目?みたいな気持ちになったり(笑)。そういった友情を大切にする部分がBLファンの方々にも伝わったのかなと。

元々は「BLを描こう」と狙ってはいなかったんです。なのに皆さんが支持してくれた理由は、僕が好きなものとBLファンの方々が好きなものが同じだったからなのかな、と感じています。

キャラクターも自分の学生時代の友達や自分の思い出が元になっていることが多い。だから登場人物も友達のような感覚で描いています。

『同棲ヤンキー赤松セブン』2巻(秋田書店)

『同棲ヤンキー赤松セブン』2巻(秋田書店)

via 『同棲ヤンキー赤松セブン』2巻(秋田書店)

10年後にはBLも“普通のジャンル”になる

――『同棲ヤンキー』以降もタイBLドラマ『2gether』のコミカライズ作画や現在連載中の『バババ』など積極的にBLと関わっている理由をお聞かせください。

いまは『バババ』が“少年誌初のBL”と騒がれていますが、10年後くらいにはBL作品が特別なジャンルじゃなく、普通になると思っています。僕はいまも自分の子供にBLを描いてることを隠してないですし、周りの友達もBLに対して特別な反応をした人はいませんでした。

だから、いずれは「男女のラブコメだと思ってたけど今回は男同士なのか」くらいの感覚になってくるんじゃないかなと。それを先陣を切って最初にやってやろうと思っているんです。BLというジャンルには、そういう意味でも魅力や可能性を感じますね。

『スロウ・ダメージ Clean dishes -lev...

『スロウ・ダメージ Clean dishes -leveret-』(秋田書店)

via 『スロウ・ダメージ Clean dishes -leveret-』(秋田書店)
――素敵なお話しですね…! そして注目の『バババ』についてもお聞かせください。
当初、「BL」では読者の間口が狭くなるかもしれないという不安があったようですが、それでも連載を決めた理由は?
(編集担当・小口さん)これまでヤンキー漫画を描いていた奥嶋先生から「BLをやる。それも少年誌で」と言われたときは驚きました。ですが先ほどの奥嶋先生の言葉どおり、これからの社会では少年誌でも BLというジャンルなどは当たり前になるだろうから、先行的なことをやりたいという思いがありました。

また、本誌ではこれまでも同性愛を取り扱った作品があったんです。編集長もそういったテーマをやっていくべきだと考える人なので、少年誌だからBLや男同士の恋愛ものはNG、という反対意見はなかったですね。まず作品として『バババ』のキャラクターや物語が面白いので、あとから読者はついてくると信じていました。

“妖艶さ”の究極の存在が吸血鬼だった

――『バババ』には前身となった読み切り『軍服さん~吸血鬼と恋~』(※)が存在すると伺っています。奥嶋先生はその際からから手ごたえを感じていたのでしょうか。※「別冊少年チャンピオン」2021年7月号掲載
そうですね。そもそもはBLありきではなく「“吸血鬼もの”をやりたい」という思いがあって。そこから吸血鬼が血を吸う対象は男女関係無いのでは、という発想からBLに至りました。吸血鬼ものをやりたかったのは、かっこいい男の子を描くのが好きだからですね。その妖艶さの究極が吸血鬼でした。
『軍服さん』のあと「たつの湯」さん(練馬・大泉学園)に取材で行ったときに、銭湯の裏方さんの話が深くて面白かったんです。特に住居スペースの“三助部屋”が暗くて狭くて良い感じで、ここに吸血鬼を住まわせたいなと直観しました。ただの思いつきですけど(笑)。
――キャラクターの設定面はどのように決まっていったのでしょうか?

蘭ちゃんの吸血鬼というキャラクターに負けない人物作りをしてきました。李仁くんは、僕の小学校四年生の息子がモデルです。僕の家は家族でご飯食べるのがルールとしてあって、家族の会話テンポやマイペースさは団欒のシーンで反映されています。

そこから、李仁くんが好きになる人はこんな感じかなとか、そうなるとフランケンは(葵ちゃんとは)真逆のタイプのお兄さんかな、とかそういった流れです。

――フランケンは奥嶋先生の作品におなじみの“ヤンキー”ですが、蘭丸を慕う童貞という憎めないキャラクターですね。
まずヤンキーありきではなくて“舞台があるところにヤンキーがいた”という感覚に近いでしょうか。ヤンキーは“ギャップ”が魅力的で、周りから見たから怖い人だけど仲良くなればいい人みたいな。そういったギャップにヤンキーの魅力があるのかなと感じます。

――2巻で登場したヴァンパイアハンターの坂本先生も濃いキャラクターです!

うん。坂本先生と蘭ちゃんがやりあう2巻最後のあのシーンは、ヴァンパイアハンターを出そうと思った時からずっと決めていました。ヴァンパイアハンターとして蘭ちゃんを倒すことが目的かと思いきや、蘭ちゃんのために童貞を守り「血を吸ってくれ!!」と懇願するという。

――私も蘭ちゃんと坂本先生の関係性が大好きです! BLファンがグッとくるツボを突いていると感じました。この関係性はどうやって決めたのですか?

それはもう自分が好きだからというだけで、BLだからと狙っている意図はないです。
ただ、『2gether』を描いた経験は大きかったと思います。王道なストーリーも大好きです(笑)。いまは蘭ちゃんが中心となった関係性ができていますが、タイBLなどでよくある「主人公カップルの周りも急にくっつき始める」みたいに様々なカップルが発生しそうな立ち位置というのは意識していました。

――先生の推しキャラは誰なのでしょうか?

やっぱり物語の始まりである蘭ちゃんを推しますね。次は李仁くんです。自分の息子だと思って描いてるから可愛いし、坂本先生も報われてほしいとは思います(笑)。
読者人気もTwitterとかを見てる限りでは、蘭ちゃんが一番人気ですね。唯一の女子である葵ちゃんが嫌われないか心配していましたが、今のところ大丈夫そうです。

――3巻では、さらなる新キャラが登場すると伺いました。関係性はどうなっていくのでしょう。

現状の相関図的には全員が蘭ちゃんに向かっていて、李仁くんに誰も行っていない状態なので、新キャラは李仁くんに向かうような人物になっています。さらに関係性のすれ違いが起こりさらにカオスな状態になっています。

『ババンババンバンバンパイア』3巻(秋田書店)

『ババンババンバンバンパイア』3巻(秋田書店)

via 『ババンババンバンバンパイア』3巻(秋田書店)
――楽しみにしています! 次はアニメ化や実写化でしょうか…?

(編集担当・小口さん)どしどしオファーお待ちしております! 奥嶋先生は主演俳優のイメージがあるんでしたっけ。

いや、特には決めていないですが……個人的にはオダギリジョーさんが大好きです(笑)。

――最後に読者の皆様、特にBLファンの読者へ向けてメッセージをお願いします!

いつもありがとうございます。『バババ』に関しては、蘭ちゃんと李仁くんが上手くい…かないんですけど(笑)いい感じになるように、これからも面白いことが起きるよう期待していただけると嬉しいです。また、個人的には来年4月にある即売会「J GARDEN」(※)デビューするつもりで創作活動を頑張っています。よろしくお願いします!

※創作JUNE、BL作品中心の同人誌即売会。次回開催は2023年4月2日(日)。東京ビッグサイト西2ホールにて。
●公式サイト:https://www.jgarden.jp/

――ありがとうございました!

なかなか普段聞く機会のない貴重なお話しに応えてくださった奥嶋先生。ますますカオスになっていくという、、おバカBL(ブラッディ・ラブコメ)『ババンババンバンバンパイア』3巻は11月8日発売。絶対に見逃せません!

(執筆:加藤日奈)

「ババンババンバンバンパイア」単行本2巻発売記念PV!! 「銭湯と言えば…ver.」

書籍情報

書籍名:『ババンババンバンバンパイア』第3巻(新刊)
著者:奥嶋ひろまさ
発売日:2022年11月8日
出版社:秋田書店
レーベル:少年チャンピオンコミックス(別冊少年チャンピオン)

”蘭ちゃんに血を吸われたい…”。坂本先生まさかのおねだり!! あの手この手の猛烈アプローチに思わず蘭ちゃんも…!? そして李仁くんと葵ちゃんをくっ付けようと、フランケンくんが予想外の行動に出る…!! 見渡す限りオール変態!! 超絶カオスなおバカBL(ブラッディラブコメ)、フルスロットルで狂い咲きます!!

『ババンババンバンバンパイア』第1巻、『ババンババンバンバンパイア』第2巻も発売中!

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numan編集部

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