【第3回】声優なのにセリフ無し。見送る”息”をみんなで練習/堀内賢雄さん60th独占インタビュー(2/3)

IMAGE

――今でも忘れられない大変だった仕事を挙げるとすると何でしょうか?

賢雄 『フルハウス』(※17)ですよ! やっていたころは地獄でしたね(笑)。必ず台本に歌がある。あれはすべて別日の収録で、歌の先生とコーラスの人がきて、いざ収録すると僕の音が違う。
それで、いつもNHKのプロデューサーに「賢雄、お前びびっているだろ」、「お前がもっとうまくなきゃダメだ。でもお前は主役なんだから、コーラスがお前に色付けをしてくれるんだから、気持ちよく歌えー」って言われて、どんだけねえ……厳しかったことか。

――コーラスのプロを相手に歌うとは緊張しますね。

賢雄 時々、スタジオの中で歌うこともあったんですが、後ろがみんな歌のうまい人なんですよ。そのプレッシャーもまたすごい! 山寺宏一)とか坂本千夏(※18)とか大塚芳忠(※19)さんとか全員が歌える人(笑)。僕がプレスリーの「♪is you~」とか歌うと、後ろから「ちょっと音下がっていると思う」と。
山ちゃんにいたっては「賢雄さん、伊豆の温泉じゃないんだから。♪伊豆湯~じゃないんだからね」と、とにかくみんながツッコんでくる。楽しいんだけど、苦痛の7~8年間だったなぁ。

――『フルハウス』のスピンオフシリーズの『フラーハウス』(※20)もありますね。

賢雄 『フラーハウス』はつらい時もありましたが、楽しい気持ちでやらせてもらいました。ここで鍛えられた分、僕は相当、歌がうまくなっているはず(笑)。そういう場を借りて勉強させていただきましたね。
才能があるとかないとかじゃなく、逃げずにどっぷり浸かって、どれだけやれるかですね。

――コレはぜひともやりたい! と、取りに行った役はありますか?

賢雄 『ER 緊急救命室』(※21)に出演したくて、ドゥベンコ役でオーディションを受けに行きましたね。プロデューサーとディレクターに「何でお前が来たんだ?」って驚かれたから、「経験がなくていいって言っただろ」、「だって出たいんだもん!」の一言です。
オーディションを受けた後、マネージャーが「今回はダメそうです、プロデューサーとディレクター、無反応でしたよ」って言ったので、よし、間違いなく受かったなと思いましたね。

――相手が無反応なのに、受かったと確信したのですか?

賢雄 無反応というのは、文句のつけようがない、ということになるんですよ。案の定、「キャラクターに合ってないって思ったけど、まぁ、出たいって言うんだから合格」と(笑)、随分な言われようですが、受かりました。

――なぜ『ER』には出演したい、と望まれたのでしょう?

賢雄 『ER』の現場は、新劇の人たちばかりなんですよ。しゃべり方がお芝居の延長線で、人間が生身でしゃべっている感じがする。きっちり滑舌がいいわけでもなくて、それがナチュラルなんですよね。僕は長らく、芝居ができないというコンプレックスがあったから、舞台をやっている人たちのお芝居の中に入って自分を確かめてみたいというのが、一つありました。
あともう一つは、普通の会話劇にいい声の人は別にいらないし声を響かせる必要もないんだけど、僕の場合、歯切れよくしゃべって声が響いてしまったりするから、こういう作品にはちょっと不向きなんですよ。そこにチャレンジしたくて。このジャンルできっちり芝居ができるようになれば、どこでも通用するはずだって考えがありましたね。

――ナチュラルな演技を目指されたのですね。

賢雄 そうなんですけど、1話目はすごく緊張してしまい、「私はドゥベンコです」ってセリフを「ドベンコです」って言ってしまいました。アフレコルームにディレクターが入ってきて、「お前は『ケンユウです』って自己紹介する時に、『ゲンユウです』って間違えるのか?」って(笑)。
しかも、ストーリーが進んだら、僕が声をあてていた『フルハウス』のジェシーおいたん役のジョン・ステイモス(※22)が『ER』に出演してきたんですよ! プロデューサーから、「欲をかく人間にはバチがあたるんだ」って、なんだか嬉しそうに皮肉を言われてしまいましたね(笑)。


(※17)『フルハウス』……1987年~1995年にかけて全8シーズン192話が制作された、アメリカのシチュエーション・コメディー・ドラマ。事故で妻を亡くした男の子育て物語で、賢雄さんは主人公ダニーの義弟ジェシーの吹き替えを担当。
(※18)坂本千夏……『のらくろクン』(1987年)ののらくろ役、『となりのトトロ』(1988年)の草壁メイ役、『平成天才バカボン』のハジメちゃん役の声優として知られる。
(※19)大塚芳忠……『機動戦士Zガンダム』のヤザン役、情報番組のナレーターなどで活躍。洋画吹き替えではジャン=クロード・ヴァン・ダムなどを担当。
(※20)『フラーハウス』……『フルハウス』のスピンオフシリーズで、2016年よりNetflixにて放送。
(※21)『ER 緊急救命室』……1994~2009年にアメリカで放送された、全15シーズに及ぶ人気医療ドラマ。日本では1996年から放送され、海外ドラマファンの熱心な支持を集めた。
(※22)ジョン・ステイモス……『フルハウス』の主人公の一人・ジェシーを演じるアメリカ人俳優で、賢雄さんが吹き替えを担当していた。『ER』ではシーズン13からトニー・ゲイツ役で登場するが、賢雄さんはすでにシーズン11からドゥベンコ役として声をあてていたため、吹き替え声優は東地宏樹さんが担当した。







さて、ここまで賢雄さんの独占ロングインタビューをお送りいたしました!
会社設立や新たな役作りなど、賢雄さんのチャレンジが今でも続いているのですね。
最終回となる第4回は、2017年11月7日公開予定です。
賢雄さんのこれからを、ご自身で語っていただきます。どうぞお楽しみに!


■祝! 堀内賢雄さん60th Anniversary特別連載企画(全4回)
【第1回】まるで親子!? 寺島惇太&堀内賢雄 ~新人vs社長の声優本音トーク~ ※2017年10月26日公開

【第2回】「賢雄、オーディションへ行け!」で声優スタート/堀内賢雄さん60th独占インタビュー(1/3) ※2017年10月31日公開

【第3回】声優なのにセリフ無し。見送る”息”をみんなで練習/堀内賢雄さん60th独占インタビュー(2/3) ※2017年11月2日公開、本稿

【第4回/最終回】『鬼平』や『ジョーカー・ゲーム』での挑戦、そして/堀内賢雄さん60th独占インタビュー(3/3) ※2017年11月7日公開



リツイートプレゼントキャンペーン実施中

15 件
令和の沼2019アンケート実施中

RECOMMEND

この記事のタグ

Comment

コメントはまだありません

編集者一覧

  • 小日向ハル
  • 二階堂宗一郎
  • 結城まひろ
  • 佐伯圭介
  • 白鳥雅
  • 乙女企画とは