アニメ『チェンソーマン』は本当に“酷い”出来なのか?原作未読ライターが視聴した印象は

2022年話題になったアニメと言えば、世界的に大ヒットを記録した『SPY×FAMILY』と並んで、同じく「少年ジャンプ+」原作の『チェンソーマン』が挙がると思います。
かねてよりアニメ化が望まれていた『チェンソーマン』は、『呪術廻戦』や『進撃の巨人 The Final Season』などを手掛けてきたMAPPAによってアニメ化され、その圧倒的な作画の元、迫力ある描写が際立つ作品となりました。
アニメ『チェンソーマン』メインビジュアルより

アニメ『チェンソーマン』メインビジュアルより

筆者は『チェンソーマン』の原作を未読のまま、アニメ視聴を始めた身なのですが、その圧倒的な作画と緻密に練られたストーリーが相まって、今すぐにでも原作を読みたいという気持ちにかられました。しかしながら、今回のアニメ化に関して、巷では批判的な声も多いよう…。

本稿では、映画ライターでもある筆者がアニメ『チェンソーマン』に惹かれた理由と巷での評価、双方を紹介していきたいと思います。

「ひどい」と批判的な声ばかり。実際に見てみたら…

藤本タツキ先生による『チェンソーマン』は、「週刊少年ジャンプ」にて2019年から2021年までに第1部「公安編」が、2022年より「少年ジャンプ+」にて第2部「学園編」が連載中の累計発行部数2300万部(2023年1月時点)を突破している大ヒット漫画です。

父親の借金を返そうとデビルハンターとしてヤクザのもとで働くデンジを主人公に、彼が「チェンソーの悪魔」であるポチタの命をその身に宿したことから、公安に目を留められ、生活がガラリと変わる様を描き出していきます。

CD『KICK BACK』(米津玄師)

CD『KICK BACK』(米津玄師)

via CD『KICK BACK』(米津玄師)
『チェンソーマン』というタイトルを聞いたことがある程度の認知だった筆者ですが、アニメの評判を調べた際、最初に飛び込んできたのは批判的な声でした。

多かった意見は「原作と別物」。どうやら作品全体がダークな雰囲気でウェッティだったことが、「別物」という評価に繋がっているようなのです。原作はもっとドライでギャグたっぷりに描かれていると。デンジの言葉の一つ一つが、ここまでシリアスに受け止められていないのだとか。加えて声についても「実写を意識した演技が合ってない」と。

さらにセリフのカットやアニメオリジナルシーンに対する評価も辛辣で、「ひどい」という言葉がわんさか飛び交っている始末でした。加えて、作画に関しても「CGっぽい」「ヒキの構図が多く迫力にかける」という意見が多いようです。
いったいどんな“酷い”作品なんだ?と興味を持ち、観てみたところ……まず導入からいきなり主人公のデンジが、他のジャンプ作品の主人公とは一味も二味も違うキャラクター性を発揮していることに驚かされたのを憶えています。
ジャンプ系作品の主人公と言えば、友情、努力、勝利の三要素で構成されていることが多く、『ドラゴンボール』や『HUNTER×HUNTER』といった王道のジャンプ作品を読みながら育ってきた身としては、あまりにもデンジがその三要素からかけ離れた存在であることに衝撃を受けてしまったのです。
CD 『Deep down』(Aimer)

CD 『Deep down』(Aimer)

via CD 『Deep down』(Aimer)

声優の演技、トーンの低さは…

お互いが切磋琢磨し合って成長していくライバル的存在なのかと思われた早川アキとは初っ端から殴り合いの喧嘩が勃発し、最終的にデンジはアキの急所を蹴ることで勝利するクソ野郎っぷりを発揮。さらにデンジが悪魔と戦う理由は上司であるマキマの胸を揉むため、そのために努力をするのは「めんどくせー」と言い放つ。
まるで「アンチ・ジャンプ」とでも言うかのように、これまでの既定概念を壊す主人公像がとても面白いなと思わされた次第であります。

そして批判が多かった演技について。確かにアニメ版における声優陣の演技というのは低いトーンで話していることが多く、湿っぽいセリフ回しが多いように感じました。

CD『錠剤』(TOOBOE)

CD『錠剤』(TOOBOE)

via CD『錠剤』(TOOBOE)
しかしながら、『チェンソーマン』の時代設定が1990年代であることから、逆にウェッティな雰囲気が合っているなと感じたのも事実です。
1990年代の日本は迫りくる新しい時代への不安からなのか、世紀末特有の暗さが目立つ作品が多く世に送り出された時代でした。そういった時代に生きているキャラクターたちに命を吹き込むためには、どうしてもウェットで低いトーンが要求されるのではないかなと思えました。

バトルシーンは“迫力がない”のか?

そんな第一印象からスタートした『チェンソーマン』ですが、視聴を続けていくうちに目を引くのは、やはり迫力の戦闘シーン。

第1話からチェンソーマンが大多数の敵をなぎ倒していきながら、血がビシャビシャと飛び散る描写が印象的だったのですが、回を追うごとに作画のクオリティがどんどん上がっていった印象さえ受けます。

特に第12話「日本刀VSチェンソー」における、高速で走る電車の上でのサムライソードとチェンソーマンのバトル。
『ウルヴァリン SAMURAI』や『スパイダーマン2』を彷彿させるバトルシーンは、ハリウッドの実写映画を観ているかのよう。
もともと藤本タツキ先生は数多くの映画から影響を受けている節があり、劇中でもあらゆるシーンにエッセンスとしてオマージュが散りばめられています。

『チェンソーマン』第12話「日本刀VSチェンソー」予告 / CHAINSAW MAN Preview

そういった意味でも、今回のアニメ版の絵作りはとても写実的であり、まるで実写を見ているかのような錯覚さえ覚えるところがあったのです。「ヒキが多くて迫力に欠ける」という意見とは正反対の印象を受けました。
筆者が原作を読みたくなった最大の理由がここにあり、この構図をいかにして漫画という平面的なもので表現しているのか、どのようなコマ割りで迫力を出しているのか、大いに気になったというわけです。

原作ファンの間では、この辺りが逆に「CGっぽい」と感じる部分なのかもしれませんが、テレビアニメでここまでのクオリティならば十分なのではないかと思います。確かに時折チェンソーマンがCG特有のぎこちない動きをする場面もありますが、それを補って余りあるほどのバトルシーンを見せてもらったため、全く持って気にならない程度のものでした。
最終的には「すごいアニメを観たなー」という言葉しか出てこなかったというのが正直な感想です。

『チェンソーマン』プロジェクトPV

今回アニメ版を視聴して思ったのは、原作ファンと製作陣では求めているものが違うのかなということでした。アニメの全体的な絵作りや声優陣の演技というのは、実写のようなリアルさを追求したものだったのでしょう。

一方で原作ファンが求めていたのは、アニメなのだから純粋にアニメらしい作品をということだったのではないでしょうか。この感覚の相違が賛否両論を生み出した最大の要因だったと言えるのかもしれません。

海外での評価も回を重ねるごとに落ち着いていったという傾向があるようで、やはり『チェンソーマン』ほどの大ヒット漫画が原作だと、熱心なファンも多いことから、期待値がかなり高くなってしまい、そこを超えると言うのは難しいことなのかもしれませんね。
よく「アニメと原作は別物」という言葉を耳にしますが、『チェンソーマン』はまさにその言葉が当てはまる形となってしまったようです。
筆者は、今回の原作ファンの意見を聞いたことにより、もっと原作を読んでみたくなりました。アニメ版との違いを探しながら読み進めていくのが、大変楽しみです。
(執筆:zash)

TV アニメ『チェンソーマン』作品概要

TVアニメ『チェンソーマン』メインビジュアル

TVアニメ『チェンソーマン』メインビジュアル

via TVアニメ『チェンソーマン』メインビジュアル
TV アニメ『チェンソーマン』作品概要

【イントロダクション】
『チェンソーの悪魔』ポチタと共にデビルハンターとして暮らす少年デンジ。
親が遺した借金返済のため、貧乏な生活を送る中、
裏切りに遭い殺されてしまう。薄れる意識の中、デンジはポチタと契約し、
悪魔の心臓 を持つもの 『 チェンソーマン 』として蘇る ── 。

【放送情報】
2022年10月 11日(火)24:00よりテレビ東京系6局ネットにて放送開始
(テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送)

2022年10月21日(金)25:15より長崎放送にて放送開始
2022年10月21日(金)26:15より新潟放送にて放送開始
2022年10月27日(木)25:28よりテレビユー福島にて放送開始
2022年10月28日(金)25:55よりテレビユー山形にて放送開始
2022年11月3日(木)26:00より鹿児島テレビにて放送開始
2022年10月12日(水)21:30よりAT-Xにて放送開始
2022年10月29日(土)21:00よりアニマックスにて放送開始
※放送日時は変更の可能性がございます

【配信情報】
2022年10月11日(火)25:00よりPrime Videoにて最速配信
2022年10月12日(水)25:00より各プラットフォームにて見逃し配信
※配信情報の詳細は公式サイトをご覧ください。

【スタッフ】
原作:藤本タツキ(集英社「少年ジャンプ+」連載)
監督:中山 竜
脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:杉山和隆
アクションディレクター:吉原達矢
チーフ演出:中園真登
悪魔デザイン:押山清高
美術監督:竹田悠介
色彩設計:中野尚美
撮影監修:宮原洋平
音楽:牛尾憲輔
オープニング・テーマ:米津玄師「KICK BACK」
挿入歌:マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
エンディング・テーマ:
ano「ちゅ、多様性。」
Eve「ファイトソング」
Aimer「Deep down」
Kanaria「大脳的なランデブー」
syudou「インザバックルーム」
女王蜂「バイオレンス」
ずっと真夜中でいいのに。「残機」
TK from 凛として時雨「first death」
TOOBOE「錠剤」
Vaundy「CHAINSAW BLOOD」
PEOPLE 1「DOGLAND」
マキシマム ザ ホルモン「刃渡り2億センチ」
アニメーションプロデューサー:瀬下恵介
制作:MAPPA

【キャスト】
デンジ:戸谷菊之介
ポチタ:井澤詩織
マキマ:楠木ともり
早川アキ:坂田将吾
パワー:ファイルーズあい
姫野:伊瀬茉莉也
東山コベニ:高橋花林
荒井ヒロカズ:八代 拓
岸辺:津田健次郎

【WEB】
公式サイト:https://chainsawman.dog/
公式Twitter:@CHAINSAWMAN_PR(https://twitter.com/CHAINSAWMAN_PR

©藤本タツキ/集英社・MAPPA

【原作情報】
第二部「少年ジャンプ+」にて連載中! コミックス1~11巻発売中! 待望の最新刊・12巻は10月4日発売!

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numan編集部

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