今から『銀河英雄伝説』を読む?観る?それとも聴く?田中芳樹作品ならこの1本!

『アルスラーン戦記』の田中芳樹原作『銀河英雄伝説』が2018年春からアニメ化

2018年春からの放映が決定しているTVアニメの1つに『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』があります。新たなキャラクターデザインや宮野守さん、鈴村健一さんを始めとする人気声優のキャスティングといった部分で注目を浴びており、さらに続編として『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』が2019年に劇場版3部作として公開予定が決まっているなど、なかなか大きなプロジェクトの気配です。

これが発表された時、Twitter等では驚きや期待、戸惑いといった強い反応を見せた方も多くいた一方、一体何がそれほど話題になるのかわからなかったという方もいたのではないでしょうか。おそらく、比較的若い方や最近オタクになった方々かと思います。なぜなら原作である『銀河英雄伝説』は1981年から始まったという、実に35年以上前の作品。リアルタイムで追っていた方は、すでにだいぶベテランです。けれど、昔からオタクだった方にとっては、男女ともに実際に読んだことはなくともなんとなく知っているもの、という程度には有名な作品でした。

過去にアニメ化、コミカライズ、舞台化といったメディアミックスが行われるたびに新しいファンを獲得し、愛され続けてきた『銀河英雄伝説』の原作者は田中芳樹さん。20代の皆さんの場合『アルスラーン戦記』の原作者といった方がわかりやすいかもしれません。

2015年から2016年にかけてアニメ化された『アルスラーン戦記』。中東風の世界で旅をする王子一行を毎週見守っていたという方も多いことでしょう。現在も荒川弘さんによるコミカライズは続行中ですが、こちらも原作は1986年という、すでに30年以上前にはじまった作品です。そして、実はこの『アルスラーン戦記』も1991年の劇場アニメ版を皮切りにOVA化もされていました。

旧作のキャストは、王子アルスラーンが山口勝平さん、黒衣の騎士ダリューンが井上和彦さん。ほかにも今や大御所とよばれる方々が出演しています。まだ購入可能なタイトルもある模様なので、新作版と見比べてみるのも楽しいかもしれません。

1600年後の宇宙で戦う人々の人間ドラマ

さて『銀河英雄伝説』とはどのような物語なのかを簡単に紹介しましょう。まず舞台となっているのは、現在から見て約1600年後の未来です。人類は資源が乏しくなった地球を飛び出し、宇宙で生活するようになったのですが、歴史の中で独裁者が誕生。そして作られたのが、物語の一方の主役となる銀河帝国です。中世ヨーロッパ風の文化を持ち、皇帝が統治。貴族と平民階級があるような社会です。

銀河帝国では共和主義者を政治犯として扱い、虐げていました。そこから脱出した人々が作ったのが、もう一方の主役である自由惑星同盟です。民主主義で、選挙によって選ばれた政治家が協議して統治する。今の日本人にとってわかりやすい社会体制になっています。この2つの国が戦争体制に入って、約150年。そんな時代のストーリーです。

広義でのSFと呼ばれるジャンルに属する作品ではあるのですが、科学技術などにはあまりフォーカスしていません。また宇宙人のようなものにも出会わなかった世界なので、現在の人間と同じ風貌の人々だけが登場します。ですから、舞台が宇宙であるとはいえメインは人間ドラマ。原作小説は、重厚な世界観や時代がかった雰囲気を演出する言葉使いが多少入り口を狭めるかもしれませんが、それに慣れてしまえばすいすい読める、ライトノベルのようなキャラクター小説タイプの作品です。

『銀河英雄伝説 Die Neue These』第1弾PV

主人公2人だけでなく多彩なキャラクターに注目!

河英雄伝説』が紹介される時”2人の主人公の物語”や”2人の天才がぶつかる”というような言い回しを使われることがよくあります。確かに主人公らしい立ち位置にいる2人は天才的な人物です。『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』のアスターテ会戦らしき宇宙艦隊戦のPVには、”常勝の天才”と呼ばれる銀河帝国側のラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将と、”不敗の魔術師”と呼ばれる自由惑星同盟側のヤン・ウェンリー准将が登場しています。

しかし物語の中には、非常に多くのキャラクターが登場します。1990年頃から制作された旧アニメに登場したキャラクターは実に600人以上。1人の声優が2つ以上のキャラクターを担当する兼役という制度をできるだけ使わずに作ったため、当時活躍していた男性声優の大半が参加。結果として“銀河声優伝説”という言葉が生まれたほどでした。

戦時中の軍隊がメインになる話ですから、よぼよぼのおじいさんや幼児は主立った役として登場しませんが、10代の少年少女から壮年の男性まで幅広いですし、超絶美形も平凡風も、優男もマッチョマンも出てきます。女たらしも愛する人一筋の人も、格好よい女性もおしとやかな女性も登場しますから、きっとお気に入りのキャラクターが見つかるはずです。メインどころとなるのは、20代から40代。青年好きの方なら、ぜひチェックして欲しい作品です。

アニメを心から楽しむには原作もチェック!

銀河英雄伝説』が最初に刊行された時のスタイルは、ノベルズ版(新書版)でした。現在は文庫版に形を変えていますが、書店やネット販売できちんと全冊購入可能です。アニメ化前に予習したいという方にはぜひ原作を読んでいただきたいところです。

もちろん、何の知識もなくまっさらな状態で楽しみたいという方もいるでしょう。しかし、なにぶん原作刊行当時から30年が経過しています。あのシーンはどう描かれるのだろう、このキャラクターは出てくるのだろうかといった、ちょっとした言葉はTwitter等でどうしても出てしまうでしょう。ネタバレに配慮して欲しいと思っても、実際はなかなか難しいことは予想されます。そうなると、他人の解釈抜きでまっさらに物語を楽しむならば原作を読んでしまうのが一番です。

また、原作を読むことでアニメに登場するキャラクターの理解が深まるのもポイントです。とくに外伝ではキャラクターの日常や過去の事件などが描かれていることが多く、本伝で活躍する彼らがなぜそうなったのか、普段どうしているのかといった部分が見えてきます。華麗な戦闘シーンやわかりやすい格好よさだけでなく、人としての魅力を感じながら楽しむために、ぜひ原作を読んでみてください。

旧アニメやコミカライズでの手軽な入門もオーケー!

原作小説は本伝10冊、外伝5冊と、全15冊になっています。少し小説は苦手だから、その長さは気軽には読めないと感じる方がいるかもしれません。もうちょっとてっとりばやく中身がわかる方法が欲しいという場合には、旧アニメとコミカライズを入り口としておすすめします。

まず、全体を丁寧に理解したい、小説は少し苦手だけれどアニメならたくさん見られるという方には、旧アニメがぴったりです。本伝全110話、外伝全52話という膨大な時間を使って外伝の一部を除き丁寧に描いています。序盤に多少オリジナル要素があったり、終盤につなぎ回となる歴史のおさらいのような回がはさまったりはしますが、基本的には原作どおり。時間はかかりますが、作品全体をしっかりと楽しむことができるはずです。現在は各種動画サイトでも配信されていますから、比較的チャレンジしやすいのではないでしょうか。

そこまで時間がかけられないという場合、『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』の予習としてならば道原かつみさんによるコミカライズがおすすめです。徳間書店から『銀河英雄伝説』として全11冊が刊行され、現在は『銀河英雄伝説 英雄たちの肖像』というタイトルで続編が描かれています。この全11冊の方が、原作本伝の2巻までをメインに時系列として同じ頃にあたる外伝のエピソードを一部追加する形になっていますから、本伝1巻にあたる部分からスタートする予定だという『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』の予習にはぴったりです。

もう1つのコミカライズとして、現在ヤングジャンプで連載中の藤崎竜さんによる作品があります。こちらは外伝で描かれたラインハルトの幼年時代から時系列で原作を組み立て直す形をとっていますし、オリジナル要素も多く入っています。『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』の予習にはあまりならないかもしれませんが、リアルタイムで楽しみたい方はこちらも読んでみると楽しいでしょう。

もう1つ、オーディオブックという入り口もあります。こちらは外伝の2巻を除いてすべてを声優・ナレーターの下山吉光さんが朗読しているもので、通勤・通学中などを利用して楽しみたいという方にもちょうどよさそうです。外伝2巻に関しては、旧アニメで唯一アニメ化されなかった部分なのですが、それを取り戻すように旧アニメキャストを集めたオーディオドラマが作られています。また、ユリアンの日記という体裁である外伝2巻ならではですが、旧アニメでユリアンを演じた佐々木望さんによる朗読版も作られています。iOSやAndroid向けのアプリが用意されているほか、オーディオブック専門のサービス”kikubon(キクボン)”や、Amazonのオーディオブックサービス”Audible”でも楽しむことができます。

田中芳樹作品に触れるなら今がチャンス!

アニメ化を控えた今、『銀河英雄伝説』に触れてみようという方にとって、今はよい時期にあります。先に紹介したように旧アニメは動画配信されていますし、2つのコミカライズも電子版が用意されるなど、入り口が広がっています。そして、長らく紙書籍しかなかった原作小説にも電子版が登場しました。スマートフォンで手軽に読んでみることができるようになったのです。

また、書籍版については出版社をまたいで何度かレーベル変更がありましたが、現在は東京創元社の創元SF文庫から全編がまとまった形で刊行されています。もし若い頃に徳間書店のトクマ・ノベルズで読んだという方や、愛蔵版を持っているという方が久しぶりに読み返しを考えているのならば、電子書籍や創元SF文庫版で外伝の最終刊だけはチェックしてください。長く未収録となっていた各種短編が1冊にまとまって読めるようになっています。じっくりと原作を読んで春の『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』を楽しみにしたいですね!

とくにアニメ『アルスラーン戦記』を楽しんでいた方は、ぜひ『銀河英雄伝説』に触れてみてください。ちなみに、最終刊が2017年12月に刊行されたので、今ならアニメでは描かれなかったアルスラーンたちの行方を一気に読み通すことができます。驚愕ですよ。

また、『銀河英雄伝説』や『アルスラーン戦記』に限らず、『創竜伝』や『タイタニア』、『アップフェルラント物語』といった伝奇アクションからSFアドベンチャー、また『蘭陵王』、『とっぴんぱらりのぷぅ』といった中国武将小説、古典冒険小説ブックガイドまで、これを機会に田中芳樹作品に触れてみるのもおすすめしたいところです。

■DATA

『銀河英雄伝説 Die Neue These』
監督 多田俊介
キャスト 宮野真守(ラインハルト・フォン・ローエングラム)、鈴村健一(鈴村健一)、梅原裕一郎(ジークフリード・キルヒアイス)、下山吉光(ナレーション)
制作 Production I.G
Copyright 企画・製作:松竹・Production I.G © 田中芳樹/松竹・Production I.G
公式サイト http://gineiden-anime.com/
公式Twitter @gineidenanime

■原作

『銀河英雄伝説』 著:田中芳樹
公式サイト https://ginei.club/

■旧アニメ

 

 

『銀河英雄伝説』
監督 石黒昇
原作 「銀河英雄伝説」田中芳樹
キャスト 堀川亮 富山敬 広中雅志 佐々木望 他
Copyright 田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっ ふ・サントリー
公式サイト http://www.ginei.jp/
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numan編集部

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