広告をスキップ

なぜ冨樫義博は“天才”と称される?3つの作品から考えてみた。『レベルE』から『HUNTER×HUNTER』まで

2022年10月28日より東京・森アーツセンターギャラリーにて「冨樫義博展-PUZZLE-」が開催中、「週刊少年ジェンプ」にて連載中の『HUNTER×HUNTER』が長きにわたる休載期間を経て連載を再開、それに合わせてTwitterアカウントを開設するや瞬く間にフォロワー数を増加させるなど、何かと大きな話題となっている漫画家・冨樫義博さん。

『幽遊白書』や『HUNTER×HUNTER』など、過去に大ヒット漫画をいくつも世に送り出してきた冨樫先生は、ファンの間でしばしば“天才”と称されてきました。なぜ人々は冨樫義博さんを“天才”と呼ぶのでしょうか? その所以を過去にアニメ化された3作品から紐解いてみましょう。

『冨樫義博展 -PUZZLE- 』公式サイトより

『冨樫義博展 -PUZZLE- 』公式サイトより

『幽遊白書』魅力的なキャラクターと王道のバトル

1987年に漫画家デビューを果たした冨樫先生が、『てんで性悪キューピッド』の次に打ち出した連載漫画が『幽☆遊☆白書』でした。主人公の不良少年・浦飯幽助が交通事故に遭い命を落とすという衝撃展開から幕を開ける本作は、その後、幽助が命を取り戻し、霊界探偵として様々な敵と戦いを繰り広げていく姿を描いたバトル漫画です。
1990年代、爆発的な発行部数を誇り「ジャンプ黄金期」と謳われた「週刊少年ジャンプ」を中心で支え続けた看板作品でした。当時は社会現象にも似た人気ぶりを見せていたことで知られており、常に少年少女たちの話題の中心には本作があったと言えるでしょう。

本作における冨樫先生の天才的要素は、魅力的なキャラクター配置と王道のストーリー展開にあると筆者は考えます。

『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Bl...

『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Blu-ray BOX 霊界探偵編』(バンダイビジュアル)

via 『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Blu-ray BOX 霊界探偵編』(バンダイビジュアル)
まずキャラクターについては主人公の浦飯幽助を中心とした主要メンバーの設定が実に巧み!

不良少年でありながら根は優しい少年である幽助とその幽助をライバル視する同じく不良の桑原和馬
喧嘩で友情を築くというまさに昭和の青春街道まっしぐらといった2人の関係性なのですが、お互いが認め合うことは絶対にないなという一定の距離感を保っていた2人が、妖怪たちを倒すという共通の目的を持つことで、お互いが才能や実力を認め合い、切磋琢磨して成長していくという展開に持って行ったのは見事だったように感じます。

さらに、そんな2人と行動を共にする蔵馬飛影の2人の妖怪もまた個性的であり、正反対の魅力の持ち主であったことも素晴らしい。

知的でクールな魅力を醸し出す蔵馬、ワイルドで危険な香りを漂わせた飛影という好みがハッキリと分かれそうな設定を施したことにより、ファンの間で意見が二分化。『幽遊白書』読者の間で繰り広げられる「どっち派?」という議論もまた、本作が大ヒットするきっかけを作ったと言えるでしょう。

CD『幽☆遊☆白書 25th Anniversary ...

CD『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Single Record Box』(ポニーキャニオン)

via CD『幽☆遊☆白書 25th Anniversary Single Record Box』(ポニーキャニオン)
キャラクターだけでなく、バトル漫画特有のストーリーを進んだことも大ヒットの要因かもしれません。主人公の幽助が一度倒れても、また立ち上がり、強くなって帰ってくるという王道のストーリー展開は読書の感情移入を大いに誘いました。

加えて、様々な武術会やトーナメントで章を分割した巧みなストーリーテリングは、当時のバトル漫画としてはまだまだ新しかったように感じ、『ドラゴンボール』や『キン肉マン』と並んでバトル漫画の礎を築いたと言っても過言ではありません。

1994年、人気絶頂期に連載を終了したというのも本作が‘“伝説”と呼ばれる理由でしょう。

『レベルE』人々の好奇心を刺激する

『幽遊白書』の連載を終え、連載漫画の過酷さを体感した冨樫先生は、1995年より地元である山形県を舞台にしたSF漫画『レベルE』を発表。「週刊少年ジャンプ」としては異例の月1連載として掲載された作品です。

物語は、ドグラ星の第1王子が地球それも日本の山形県に不時着し、高校進学のために山形県へと引っ越してきた筒井雪隆の家で奇妙な共同生活を始めることから幕を開けます。

DVD『レベルE』1巻(アニプレックス)

DVD『レベルE』1巻(アニプレックス)

via DVD『レベルE』1巻(アニプレックス)
「バカ王子・地球襲来編」「食人鬼編」「原色戦隊カラーレンジャー編」といったいくつもの短編作品で構成されたオムニバス作品であり、それぞれが自立した一話完結型のストーリー展開を見せる中で、間接的に連続性を持たせているという仕掛けが成された一作です。

前述のように本作は月1で連載された作品なわけですが、それは冨樫先生による“ある挑戦”が理由だったのです。

その挑戦とは「アシスタントを使わずに一人で書いたらどうなるのか」というもの。つまり冨樫先生は本作をアシスタントなしで描き続けたことになり、現在でも逸話として語り継がれています。

連載作品を一人で描き切ると言う部分に冨樫先生の天才たる所以を感じさせますが、筆者が思う本作の凄さは、限りなく現実に近い世界観で描かれている点です。

DVD『レベルE』5巻(アニプレックス)

DVD『レベルE』5巻(アニプレックス)

via DVD『レベルE』5巻(アニプレックス)
実際に耳にしたことがあるような都市伝説を作品の中に組み込み、独自の解釈で都市伝説にケリをつける…オカルトマニアにしかできないようなことをやってのけたのです。

特に筆者が驚いたのは「高校野球地区予選編」。作中で「藤代バイパス車両失踪事件」について言及されるのです。

1960年代に起きたこの事件は、様々な週刊誌などにも取り上げられるほど大きな話題となったのですが、オカルト好きにとってはロマンをくすぐられる未解決事件として有名なのです。作中で語られる考察や設定も非常に説得力があり、冨樫先生は人々の好奇心をくすぐる天才だと感じたのをよく覚えています。

『HUNTER×HUNTER』伏線がすごすぎる!

そして、現在も連載中の『HUNTER×HUNTER』について。『HUNTER×HUNTER』は1998年より連載中で、その物語はすでに20年以上も紡がれています。
DVD-BOX『HUNTER × HUNTER 天空闘...

DVD-BOX『HUNTER × HUNTER 天空闘技場編』(バップ)

via DVD-BOX『HUNTER × HUNTER 天空闘技場編』(バップ)
冨樫先生の体調を考慮してたびたび休載となる作品ですが、連載再開するたびに、SNS上でトレンド入りするなど、根強い人気を誇っています。一体どういったところが読者をそこまで惹きつけてやまないのでしょうか?

『HUNTER×HUNTER』は、父に会うことを夢見てハンターとなった少年・ゴンが、仲間やライバルたちとの幾多の出会いを経て、大きな成長を遂げていく物語。主人公以外のキャラクターの背景が深堀されている点も人気を集めている要因だと言えるでしょう。

そんな本作最大の魅力と言えば、やはり伏線回収が尋常ではないところ。
10年前に張られた伏線を普通に回収してしまうなんてことは日常茶飯事、そのほかに、単行本の表紙やキャラクターの名前などにも深い意味を持たせており、回収された際には思わず鳥肌が立ってしまうこと請け合いなのです。
これもまた冨樫先生が天才たる所以だとは思いますが、一人一人キャラクターたちの行動を自ら年表にまとめたりといった努力のなせる業と言えるのではないでしょうか。

それだけでなく、現実世界の世相、映画、小説、音楽、スポーツと多岐にわたる分野から様々なことを吸収し、物語に活かすという能力にも長けているように感じ、まさにストーリーテラーになるべくして生まれてきた漫画家であるという印象を受けるのです。

Blu-ray BOX『HUNTER×HUNTER 選...

Blu-ray BOX『HUNTER×HUNTER 選挙編』(バップ)

via Blu-ray BOX『HUNTER×HUNTER 選挙編』(バップ)
また、『HUNTER×HUNTER』はストーリー展開にも優れている印象で、通常、漫画というのは、章と章の間にちょっとした箸休め的なパートが挟まれ、そこから次の章への舵取りをしていくことが多いのですが、本作は章から章への移行が実にスムーズ。

章の中盤あたりから次の章への伏線を立て、そのまま物語を発展させていく。これは冨樫先生の才能があってこそできることであるように感じます。

自身が熱心なゲーマーであることから「グリードアイランド」や「軍儀」といった新たなゲームを創造し、念能力の細かい設定にもこだわるなど、細部まで作り込む熱意にも頭が下がり、読者を楽しませるために、常に努力し続けるその姿にも敬意を表したいです。

魅力的なキャラクターの創造、卓越したストーリーテリング、読者を楽しませるための飽くなき努力…根強い人気を誇る3作品から冨樫義博が天才たる所以が垣間見えたような気がします。
今後も、その才能で我々読者を楽しませてほしいものですね!

(執筆:zash)

IMAGE

numan編集部

声優、アニメ、舞台、ゲームまで!オタク女子のための推し活応援メディア

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

オタ腐★幾星霜