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荒牧慶彦、杉江⼤志、⼭崎⼤輝がシリアス朗読劇に挑む! 俳優陣の信頼関係に感動|うち劇『サイレント ヴォイス』レポート

第1回目は染谷俊之さん平野良さん赤澤燈さんによる朗読劇『マトリョーシカの微笑』からスタートし、今回で第4回目となる『うち劇』
うち劇の朗読内容はシリアスからコメディ風味のものまで幅広く、毎回観ている人を驚かせる仕掛けが各所に施されています。

第4回目『サイレント ヴォイス』は、実際に起こった児童無差別殺人事件をもとに、日本犯罪史上最悪の被告人と、弁護士2名の間で繰り広げられるヒューマンドラマとなります。

『サイレント ヴォイス』画像

『サイレント ヴォイス』画像

「悪とわかっていて、人はどこまで向き合える」のか

あらすじ
⽩昼の小学校に男が侵入し、多数の児童を殺傷する無差別殺人事件が発生。
弁護⼠・平健吾(荒牧慶彦さん)は、新人弁護⼠・新垣優(⼭崎⼤輝さん)と共に、日本犯罪史上最悪の被告と呼ばれる実行犯・佐久田冬馬(杉江⼤志さん)の弁護を担当する事になり、激しく心をぶつけ合う。
おだやかな性格の平と正義感の強い新垣はめちゃくちゃな供述を繰り返す佐久田に振り回され、乱されていく…。
それでも佐久田を理解しようとする平、そんな平に苛立ちを隠せない新垣。
人間の深い業を描いたヒューマンドラマ。彼らに救いはあるのだろうかー。
『うち劇』ではマチネ・ソワレで役の交代がある場合もありますが、今回は2部ともに同じ配役で、3名が別の場所からバーチャル背景を使用して挑みます。

約90分間という短い時間の中に内容が凝縮されており、観終わるまではあっと言う間。

劇中、事件自体が “解決する”ということはなく、起きてしまったことへの救いはこの物語の中にはありませんでした。
被告人と弁護士が対峙する物語だと、サスペンスドラマのような緻密な心理戦ものも多いかと思いますが、『サイレント ヴォイス』は2者の「魂と魂のぶつかり合い」が描かれています。
平と新垣は遺族と実行犯の精神的救いを探し求めていくこととなります。

本劇は、脚本・演出の⻄森英⾏さんがもともとあった作品を、朗読劇用に再編集したものということで、登場人物のキャラクターや生い立ちなどの設定がすでに確立していました。

3名の人生をそれぞれ比較しながらストーリーを追っていくと、台本にはない背景や心情を想像することができ、「あのセリフはこういうことだったのかな?」「本当はこうしたかったんじゃないかな?」と、劇が終了したあとにも考えが止まらなくなります。

いざ!視聴!鳥肌がとまらない……

弁護士・は農家の生まれで、努力をして弁護士に。
詩集を愛し、詩の一節を持ち出して実行犯である佐久田を静かに諭す彼は、“掴みどころがない聖人”のようでした。
冒頭から荒牧さんの静かなセリフの入りがあまりにも美しく、どこか人間味を感じられず、神秘的。
しかし、ときに熱く佐久田にぶつかっていくところを目の当たりにすると“掴みどころがない”わけではなく、自分の考えに固執せず、かといって流されるわけでもなく、人を“平等”にみて愛しているように思いました。

一方で、佐久田が心の内を明かすのを根気強く待つ平に対し、歯がゆさを感じるのが新人弁護士の新垣
彼の父もまた弁護士で、それもあってか正義感に満ちあふれています。
ただ、正義感とは裏腹に、今回の件で成功をおさめることができれば今後の糧になる…という利己的な面があり、はじめは平に反発してしまいます。

平の背中を追って本劇中に成長していく彼は、一番視聴者の立ち位置に近い人物でした。
純粋でまっすぐな彼を、山崎さんが一言一言、強く丁寧に演じてくださることで、感情移入することができ、我々も、この一見難しい物語の一員となることができました。
新垣の存在がないと、おそらく置いてきぼりになってしまったのではないでしょうか。

本劇の最終のセリフは彼に託されています。
若くて、まだ真っ白な新垣で締めくくることに、様々な意味があるように感じました。

予想できなかった配役。犯罪史上最悪の犯人を演じるのは……

実行犯は佐久田
言葉にできないおそろしさがあり、彼の歪んでしまった心は理解に苦しみます。
性悪説を肯定し、生まれ育った環境の不平等さに憤り、狂気的で自分勝手な人物……ですが、自分自身すら許すことができない頑なさを見たとき、なぜか悲しみが溢れるんです。「相手は犯罪者だ」と頭の中で理解はしていても。

彼を演じたのは杉江さん。一見意外な配役のように思えましたが、生み出された佐久田がとにかく素晴らしく、純粋悪のような人物が劇中に実在しており鳥肌が立ちました。
まばたきの回数を減らし、声音の強弱や小刻みな動きが徹底されていたため、佐久田に人間味があり生々しい。平のキャラクターとは対象的に表現されていました。

この対象的な2人が出会ったことで、佐久田は平にだけは唯一心が動かされたのではないでしょうか。

終了直後、杉江さんは「僕は感じたままにやらせていただきました。演じている最中に力が入りすぎて、台本のページがくちゃくちゃになりました。
佐久田という(激しい)人間を、マッキー(荒牧慶彦)さんの人となりのお陰でほぐしてもらえた気がします。」と、非常に難しい役の裏側では、俳優陣の信頼関係があったからこそだということを知り感動しました。

『サイレント ヴォイス』、言葉にならない言葉。
佐久田は実行判決の日、遺族への謝罪の言葉や本心を、自身の口から発することはなく無言のまま終えました。
しかし、平と新垣との出会いがなければ、最後の日まで遺族や世間を罵倒しつづけたはずです。真剣に向き合った平と新垣がいたからこそ、ほんの少しの救いがあった、そう感じられる作品でした。

執筆/ナスエリカ

⇒公演概要は次ページにて。

公演概要

『サイレント ヴォイス』

■出演
    荒牧慶彦/杉江大志/山崎大輝

■配信日時
    2020年5月16日(土)
     第1部 15:00から
     第2部 18:30から

第1部
荒牧慶彦(平健吾 役)杉江大志(佐久田冬馬 役 )山崎大輝(新垣優 役)
アフタートーク・楽屋トークつき

第2部
荒牧慶彦(平健吾 役)杉江大志(佐久田冬馬 役 )山崎大輝(新垣優 役)
アフタートーク・楽屋トークつき

■脚本・演出 西森英行
■プロデュース 丹⽻多聞アンドリウ
■公式サイト https://uchigeki.spwn.jp/events/200516-silentvoice

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numan編集部

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