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実写版『ワンピース』が海外で高評価なわけ。一方で厳しい意見も「アニメを再現するのは一種の賭けだ」

世界的に大ヒットを記録した日本のマンガ作品が、海外で実写化されると、とんでもない作品が誕生する……。日本のファンであれば、そんな印象を持っている人も多いかもしれません。
われわれの記憶の中には、かつての『ドラゴンボール EVOLUTION』の悪夢が鮮明に残っており、もうこれ以上、作品に傷をつけないでくれと望んでいるファンも多いことでしょう。

そんな“負の歴史”が繰り返されてきた海外における日本のマンガ作品実写化計画に、新たな作品が加わりました。尾田栄一郎原作による大ヒット作品『ONE PIECE』の実写ドラマ化です。この報せが世界中を駆け巡った時、誰しもが「ドラゴンボールの悪夢」を呼び覚まされたことでしょう。「どうせ失敗するのに」「本当にやめてくれ!」と。

そして、2023年8月31日より満を持してNETFLIXにて配信がスタートした『ONE PIECE』。その評価は意外なものだったのです。本稿では、実写版『ONE PIECE』に対する本国アメリカでの評価と筆者が実際に視聴してみて得た印象を綴っていきます。

『ONE PIECE』(Netflix公式サイトより)

『ONE PIECE』(Netflix公式サイトより)

批評家からは高評価が続々。その理由はどこにある?

『ONE PIECE』は、「週刊少年ジャンプ」にて連載中の尾田栄一郎原作による漫画作品を原作としています。主人公のモンキー・D・ルフィが海賊王を目指して、仲間と共に大海原へ飛び出していくストーリーが展開されます。

全世界累計発行部数は驚異の5億1000万部(2022年8月時点)を突破しており、「最も多く発行された単一作者によるコミックシリーズ」としてギネス世界記録にも認定されている、まさにモンスター漫画です。

そんな『ONE PIECE』が実写化、それもハリウッドで実写化されるということもあり、注目度は計り知れないものがあり、いざ配信が始まると、各国の人気ランキングで上位を記録するなど、世界的フィーバーとなったのです。

それでも、まだまだ「視聴率が良いからと言って作品のクオリティが高いわけではない」と、納得しない頑固なファンも多いのは確か。しかし、この実写版『ONE PIECE』は、蓋を開けてみれば、SNSへの投稿や批評家たちのレビューに軒並み好評ばかりが綴られているという、半ば異常事態と言っても過言ではない現象が起きたのです。一体これはどういうことなのでしょうか?

レビューサイト「The Verge」には、実写版『ONE PIECE』を称賛するレビューが掲載されています。

実写独自の演出と再現性に絶賛「本作がどれほど楽しいかハッキリした」

その内容は、「尾田栄一郎が描き出す独特な美的感性をプロダクションデザインに注ぎ込むことへ多大な労力を費やし、まるで活き活きと呼吸しているように感じる。これらは主人公のルフィがどのような人物なのかを理解するのに大いに役立つ」と、漫画の世界を忠実に再現したセットやキャラクター描写を評価するものとなっています。

確かに、筆者も一視聴者として本作を視聴して感じたのは、モンキー・D・ルフィやロロノア・ゾロはさることながら、サブキャラクターたちの容姿が単なるコスプレで終わらず、しっかりとリアルに再現されている点は見事だと思いました。

また、海上レストランのバラティエやアーロンパークといった、初期の『ONE PIECE』を象徴するようなロケーションや建造物も、まるで漫画の世界から飛び出してきたかのような再現度を誇っており、驚かされたのが印象的でした。

続けて同レビューでは、実写版におけるある“演出”を評価。それは、賞金首の海賊が登場する際に現れる手配書の演出。

「賞金首の海賊を紹介するCGの手配書が最初に破られた時、本作がどれほど楽しいものなのかがハッキリした」と、これから始まる冒険と戦いへの高揚感を醸し出した原作やアニメにはない実写版独自の演出を絶賛。新鮮味溢れる演出が、本作の面白さをさらに向上させていると言います。

今回の実写版は、アニメ版で言うところの最初の45エピソードを全8エピソードという短い構成で描いているのですが、それでもキャラクターそれぞれの輪郭を浮き上がらせるストーリーテリングも見事だと言います。

「ルフィに焦点が当てられているのは確かだが、他の乗組員たちにも頻繁に焦点を移して、彼らがそれぞれの運命を追い求めていることも同時に強調する。これは物語的にも視覚的にも興味深い場所へと導いていく」。

原作の時点から一人一人のバックグラウンドを明確にしている作品のため、この意見は実写版云々というわけではないと思いますが、それでも1エピソード1時間くらいの配分で、初期のゾロ、ナミ、ウソップ、サンジの物語を紡いだのはスゴイと筆者も感じました。

『ONE PIECE』を全く知らない視聴者であっても、簡潔に伝わるようにできており、ファンであってもそうでなくても本作を楽しめる理由の一つになっていると言えるのではないでしょうか。

最後に同レビューは「この手の作品ではいつもそうであるように、アニメのビジュアルを再現しようとすることは、一種の賭けになる。本作はそれらのギャンブルが上手くいき、優れたアクションの瞬間によって強化されており、オタク向けよりさらに高次元の作品としてまとめられている」と、最後の最後まで絶賛という形で締めくくられています。

一方で厳しい意見も。「アニメの個性が失われている」

しかしながら、好評が多い中にも否定的な意見も散見でき、アメリカ大手「The New York Times」は、「アニメの魔法を翻訳するNETFLIXの挑戦」と題したレビューを掲載。
2021年にNETFLIXで実写化された『カウボーイ・ビバップ』を引き合いに出しながら、今回の『ONE PIECE』実写化に対する評価が綴られていきます。

「『ONE PIECE』は『カウボーイ・ビバップ』よりも当たり障りのない、ありきたりな印象を受ける。忠実に再現されていることに満足するファンは多かれ少なかれいるようだが、アニメの活力や個性のほとんどは失われている」と厳しい意見。

キャストやキャラクターに関しては「ルフィのゴム能力を再現するという素晴らしい仕事をしており、(ルフィ役の)イニャキ・ゴドイは見た目など、キャラクターと見事に一致している。それはゾロ役の真剣佑、サンジ役のタズ・スカイラーにも当てはまるが、実写版ではキャラクター描写の薄さを無視することは難しい」と、こちらも厳しい文言が踊っています。

巷では「実写化の成功例」とも言われている『ONE PIECE』ですが、本国では賛辞多めの賛否両論といった評価のようです。

近年のハリウッドにおけるアメコミ映画の実写化クオリティには及んでいないかもしれませんが、『パイレーツ・オブ・カリビアン』ばりの大海原を舞台とした海洋アドベンチャーとして、上々の出来栄えだったように筆者は思いました。

特にアクションシーンのクオリティは非常に高く、原作やアニメで表現されている現実離れした戦闘シーンが完全再現されている部分には興奮します。

強いて言えば、「シロップ村編」で坂道の戦いが描かれていない部分、ジャンゴが登場しない点、「バラティエ編」で首領クリークが活躍しなかったことなど、「?」が灯る場面もありましたが、それでも全8エピソードを大いに楽しませてもらったのは事実。

否定的な意見は気にすることなく、シーズン2以降も物語が紡がれていくことを願うばかりです。

(執筆:zash)

■実写版『ワンピース』って結局どうなの?ガチオタが忖度なしで語ります。隠れた小ネタや仕掛けも見つけた!https://numan.tokyo/feature/c0d4h438/

 

 

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zash

子供の頃から培ってきた映画、海外ドラマ、特撮、アニメの知識を活かして活動中。各媒体でコラム、取材レポート、インタビュー記事を執筆する他、雑誌やマスコミ用リリースへの寄稿も行っている。

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