加藤日奈
アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。
昨年11月17日に封切られて以来、ロングランの大ヒットとなった話題のアニメーション映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』(以下『ゲ謎』)。
水木しげるの生誕100周年を記念した本作は、野心と密命を背負った水木と、妻を探す鬼太郎の父が、因習渦巻く哭倉村の怪奇に巻き込まれるさまを描いた物語。また鬼太郎のオリジン的な内容でもあり、鬼太郎の父と水木のバディものとしても楽しめるとの噂が。
ついに4月29日より Amazon Prime Video(アマプラ)にて見放題配信がスタートしたということで、強火のオタクライターが入村。激ヤバだったポイントをあげながら追っていきます!
INDEX
まず全体を通しての感想をお伝えすると……入村して度肝を抜かれたのが、昭和中期の時代背景のなか、田舎の因習や血縁の因縁絡む秘村での出来事を軸にした衝撃であり超ド級のサスペンスだということ。
失踪した妻を捜しにきた鬼太郎の父(以下ゲゲ郎/CV関俊彦)、水木(CV木内秀信)はある密命を帯びて来訪と、それぞれ別の目的ながらも二人は“よそ者の異例な来訪者”であり、閉鎖的な村で招かれざる存在。
そこで水木とゲゲ郎の二人が出会い、ともに立ち向かっていく運命の重さ。ズッシリなストーリー展開に驚き、哀しみ、怒り、萌えと感情を振り回されっぱなしでした。
まるで横溝正史作品を追うような重厚さと不吉な空気感で、本作冒頭から脳内をガッチリ掴まれます。没入感ハンパなさ過ぎて集中力MAX。完成度の高さ、チョモランマ山脈並み!
ふと頭をよぎる嫌な予感を最初は無視しましたが、そのあと起こる壮絶で凄惨な展開に暴れたいほど苦しみました。ネタバレ回避で言うならばストーリー展開、色んな意味で神過ぎます。
そして本題。なんといってもゲゲ郎と、水木の良さが全編にわたって大爆発してます。
まずゲゲ郎は幽霊族ということもあり大人や信頼できない者にはそっけないですが、子どもへの接し方が本当に優しい! また、水木と酒を酌み交わす場面では酔いながら“妻自慢”が止まらず泣き笑いして話すなど、ゲゲ郎カワイイ要素がカンスト。
さらに村の秘密を知られたくないがゆえに、ゲゲ郎や水木を排除しようとする裏鬼道(暴力的集団)らに囲まれた場面では、ゲゲ郎が対峙し着流し姿で魅せるバトルシーンも圧巻。
躍動感とともに「えっ。ゲゲ郎、細身の色白キャラかと思いきや意外に機動力ゴリラだな??」的なパワープレイが見られます。
そして水木は水木で、一族の娘・沙代(CV種﨑敦美)から見たら、きっと水木は垢抜けた都会の男。
初対面の道ばたで沙代ちゃんの下駄の不具合をサラリと直し、その間は自分の肩を貸し、という優男っぷりに「あーこれダメなやつ、絶対好きになっちゃうやつ!」と見ながら叫びました。水木、あの背広から良い匂いしそう。※個人の感想です。
戦地帰りの闇トラウマを持ち当初は野心で動いていたものの、ゲゲ郎と本音を交わし合ううちに、とある気づきが訪れ、いつしか頼れる相棒役に! 二人はTHE・漢! 良さがすごい!
鉈を片手に吐き捨てる“とある”セリフがまた最高! 良さがすごい!(2回目)
疾走感を感じるラスト部分あたりは全力で応援したかったです。気分は日本武道館の沿道で旗を降るオタク!
泥臭い上等、利害一致上等、お互いを助け合いながらも、ある真実へたどり着くクライマックスからラストのエンドロールまで水木とゲゲ郎とのバディ感や友情に涙が止まりませんでした。
ちなみに哭倉村の村長であり裏鬼道のリーダーでもある、糸目で不穏な長田幻治(CV石田彰)も個人的な性癖にぶっ刺さりました。糸目で不穏な“あー様”は至高で至福のキャラ間違いなしですね!
さらに、なんといっても注目したいのは各場面の作画。
昭和中期の東京や、哭倉村の水田が風に流れる様子、電灯がぽつんと灯る村の夜道、上陸禁止の掟がある島の鬱蒼とした雰囲気、ゲゲ郎と水木が語らう離れの土蔵や墓地等々、驚くほど丁寧な作画に魅入ってしまいました。
詳しく言えないのが残念なところですが、龍賀一族の秘密が次々と判明する場面やクライマックスでのゲゲ郎、水木の壮大なアクションシーンはまさに圧巻の演出!
凄まじく残酷なのにあまりにも美しく、見ながら情緒は迷子。どれに心が反応していいか分からない! 色んな意味で泣き続けてしまいました。
怒っていいのか、萌えてときめいていいのか、悲しんでいいのか、驚いていいのかこんなに戸惑う作品はなかなかないかもしれません。
そしてすでに入村済みの方々からの情報で『伏線すごいから』『何回見ても毎回新しい発見あるから』『考察動画あるから』『ファンアートは痛みを和らげる集団幻覚だから』『隠れ妖怪いるから』などなど、聞いてはいたのですが当然、初見ではぼんやりとしか分からず……。
入村2回目、3回目、4回目でもまだ余韻感情迷子に振り回されて少ししか伏線回収できず……と現在も“最初から見る”をポチしてくり返し見ている真っ最中です。配信ありがとうアマプラ。
本作は何回見ても新しい感情が生まれ、新しい発見があるので【もう一度それぞれの場面を確認したくなる気持ちが止まらない作品ランキング】をつけるとするなら、まさしく本作はトップ。
気づけなかった箇所の考察動画やXの考察ふせったーを見るたびに奇声を発して「そういうことか!!」「アレはアレと繋がっ、えっ⁉」などドハマりしてしまいました。この深く切なく激エモなストーリーを、何度でも見続けます!
(執筆:加藤日奈)
■イントロダクション
廃虚となった哭倉(なぐら)村に鬼太郎と共にやってきた目玉おやじは、70年前に起きた出来事を思い出していた。昭和31年、哭倉村は政財界を裏で操る龍賀一族に支配されており、鬼太郎の父は失踪した妻を捜しに村に足を踏み入れたのだった。一方、血液銀行で龍賀製薬を担当する水木は、龍賀一族の当主・時貞の死に伴い、ある密命を帯びて村を訪れるが、そこで一族の者が惨殺される事件が起こる。それは恐ろしい怪奇の連鎖の始まりだった。
鬼太郎の父たちの出会いと運命、圧倒的絶望の中で二人が見たものとは――。
■キャスト
鬼太郎の父(ゲゲ郎):関 俊彦
水木:木内秀信
龍賀沙代:種﨑敦美
長田時弥:小林由美子
龍賀時貞:白鳥 哲
龍賀時麿:飛田展男
龍賀孝三:中井和哉
龍賀乙米:沢海陽子
龍賀克典:山路和弘
龍賀丙江:皆口裕子
長田庚子:釘宮理恵
長田幻治:石田 彰
ねずみ:古川登志夫
ねこ娘:庄司宇芽香
山田:松風雅也
ゲゲゲの鬼太郎:沢城みゆき
目玉おやじ:野沢雅子
■スタッフ
監督:古賀 豪
脚本:吉野弘幸
音楽:川井憲次
キャラクターデザイン:谷田部透湖
美術監督:市岡茉衣
色彩設定:横山さよ子
撮影監督:石山智之
製作担当:澤守 洸 堀越圭文
■関連サイト・SNS
公式サイト: https://www.kitaro-tanjo.com/
公式SNS: https://twitter.com/kitaroanime50th
ゲゲゲの鬼太郎&悪魔くん アニメポータルサイト:https://www.toei-anim.co.jp/kitaro-akumakun/
©映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会
加藤日奈
アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。
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