すなくじら
下町育ちのエンタメライター。アニメ&映画ジャンルを中心に執筆活動中。ダークファンタジーやゴシックなテイストの世界観の作品が好きです。乙女ゲームの新作情報が生き甲斐。
――2024年10月30日発売のTVアニメ『アクロトリップ』ED主題歌「リバーシブルベイべー」制作において、一番軸になったコンセプトは?
カノエ:
「好きなものを好きって言える人生、超楽しい!」ということですね。大人になると、「このキャラクターのここが好き」とか、推しがどうとか言うのを恥ずかしがったり、SNSで批判されるんじゃないかって悩んだりすることもあると思うんです。
でも、そういう悩みすらも全部ファンタジーな世界観で表現しちゃえばいいんじゃないかって。あまり考え込まず、「好き勝手に作る」というコンセプトで作りました。
また、『アクロトリップ』らしいキラキラとした世界観を表現することと、キャラクターたちの言葉の節々を拾って、曲に落とし込んでいくことも意識しましたね。アニメ作品のタイアップ曲を作る時、その作品ならではの魅力を引き立たせることを、忘れてはいけないと思っているので。
――「リバーシブルベイべー」の推しポイントをお聞かせください。
カノエ:
Aメロで<パンくわえて ぶつかるような>とあるように、曲がり角で気になる人とぶつかったり、本を選んでいる時にとなりの人と偶然手が重なったり、そういう古典的なシチュエーションって昔のアニメや漫画でよく使われてきたじゃないですか。
古い作品が好きな方ならパッと映像が浮かぶと思うのですが、残念ながら最近はそれが分からない方もいるみたいで。
だからこの曲では、そういう古き良きアニメの要素も少し入れてみたんです。私のことを好きになってくれた10代くらいの子たちにも、“アニメの伝統”みたいなものを説明できたらいいなって。「みんな、こういうのもあるんじゃよ」みたいな感じで、伝えていきたいですね(笑)。
私が幼い頃から大好きだったアニメへの愛をたっぷり詰め込んだので、カノエラナが作るアニメソングの、一つの答えになったかなと思います。
――お気に入りの歌詞はありますか?
カノエ:
<勝負は一時休戦にしますか>という歌詞です。
最後に「色々あるけど、一回置いておいて甘いものでも食べようや」みたいな開き直り感を出したくて。現実にはそうはいかないかもしれないけど、そういう世界を楽しいと思ってくれる方がいれば、その方は私と感性が近いんじゃないかな。
――今回、「リバーシブルベイべー」だけでなく、水瀬いのりさんが歌うOP主題歌「フラーグム」の作詞も担当されています。作り手として、自分以外の方が歌った場合はまた違う感覚になるのでしょうか?
カノエ:
まったく違う感覚になりますね。「フラーグム」の制作では、まず私が仮歌を入れた音源を水瀬さんに送って、後日水瀬さんが歌ったものを送っていただいたんです。
その音源を聴いた時、本当に驚きました。それこそ、言葉が出ないくらい。
水瀬さんの声の力で、こんなにも曲に説得力が増すのだと。「なんでこんなにも自然に、心に入ってくるんだろう?」と、不思議に思ったんですよ。自分では気づかなかった曲の魅力を、水瀬さんが見事に引き出してくれて、本当に100点満点の仕上がりになったと思います。
――カノエさんはアニメファンとして育ってきて、今度は自分がアニメの曲を歌う立場になりました。今年は「KING SUPER LIVE 2024」にも出演されたりと、まさに先ほど名前が挙がったアニメの主題歌を務めるレジェンドの方々と共演する機会もありましたが、率直にどんなお気持ちなのでしょう?
カノエ:
本当に、不思議な感じです。私が小さい頃から観ていた『エヴァ』の主題歌を歌う高橋洋子さんをはじめ、色んなアニソンアーティストの先輩方と共演させていただいたのですが、皆さんのステージ上での立ち振る舞いが別格なんです。
その場に根っこが生えているみたいに、堂々としてる。「私がキング! 私がクイーン!」という感じで。
普段から私は、たとえステージに立って歌っていたとしても「自分はカノエラナで、アニソンを歌っているんだ」という実感があまり湧かないんですよ。出来上がったCDを手に取って、初めて実感するというか。
だから「キンスパ」は「本当にとんでもないところにいるんだ」という自覚を持てたステージで、「私も同じステージに立つアーティストとして、背筋をちゃんと伸ばさなきゃ」と、改めて身が引き締まる思いでした。あこがれの先輩方から優しい言葉をかけていただいたのも、とっても嬉しかったですね。
――推し作品に携わる先輩方の姿から、学び取ることが多かったのですね。では、カノエさんが日頃ファンの方から“推される”側として意識していることは?
カノエ:
実は、私自身はアーティストさんやアイドルさんなど、いわゆる“人間の推し”がいたことがなくて。歴代の推しは、すべて2次元だったんですよ。
特定の方のライブに通っていたわけではなかったので、自分のライブで何をしたらファンの方が喜んでくれるのか、最初は感覚が掴めなかったんです。
でも、ライブ回数を重ねていったり、ほかの方のステージを観たりするようになって、少しずつ“推される”側として大切なことが分かってきた気がします。お客さんの表情、観客とステージの一体感、アーティストとファンの距離感……今では、そういうのをすごく意識するようになりました。
私、ファンの皆さんのことを「勇者さん」と呼んでいるんです。特にライブに足を運んでくれる人は、本当に尊敬していて。「自分の意思で行動を起こす」って、とくに2次元しか推してこなかった私にとっては難しいことだし、どうしてもハードルを感じてしまう。だから、それを飛び越えて会いにきてくれる方々って、本当にすごいなって思うんです。
――2次元を推してきたカノエさんだからこそ、「会いにきてくれる」ありがたさを強く実感できるのですね。
カノエ:
でも正直、ライブに来られなくても、少しだけでも曲を聴いてくれるだけでも、同じくらい嬉しくて。「通勤中や日常のちょっとした瞬間に、カノエラナの曲を聴いてくれているんだな」って想像すると、本当にありがとうって、感動しちゃいます。
観たい時にだけライブに来てくれれば十分だし、曲だって聴きたい時に聴いてくれたらいいなと思っています。たとえ「カノエラナ」という名前を知らなくても、アニメを通して私の曲を1曲でも知ってくれてたら、私にとっては大切な「勇者さん」なんです。
――シンガーソングライター・カノエラナとして、大切にしている自分らしさはありますか?
カノエ:
シンガーソングライターの魅力って、ありのままの自分を表現できるところだと思うんです。
だから、自由に好きなことをやるのが、私らしさなのかなって思います。こんなに好き勝手やっていても、ついてきてくれる勇者さんたちに「本当にありがとう」と、常に感謝の気持ちでいっぱいです。
人生経験や出会いによって、私自身もどんどん変わっていくし、それが必然的に曲にも反映されていく。だから、これからも進化し続ける私を楽しんでもらえたらいいなって。
会うたびに髪型が変わってたり、曲の雰囲気もどんどん変化していったりするかもしれない。でも、そういう変化を、これからも一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。
(取材・執筆=すなくじら、撮影=井上ユリ)
すなくじら
下町育ちのエンタメライター。アニメ&映画ジャンルを中心に執筆活動中。ダークファンタジーやゴシックなテイストの世界観の作品が好きです。乙女ゲームの新作情報が生き甲斐。
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます
特集記事
ランキング
電ファミ新着記事