『百花繚乱』(ソニー・ミュージックレーベルズ)

『薬屋のひとりごと』OP幾田りらの“ソロシンガー”としての実力。YOASOBIはAyaseとikura、才能豊かな2人が起こす化学反応だ

2025年1月から2期が放送されたTVアニメ『薬屋のひとりごと』。ちょっぴり変わり者でありながら、“能ある鷹は爪を隠す”を地で行く主人公・猫猫と、周囲の人々が織り成す後宮ミステリーを、今期も多くの視聴者が楽しんでいました。

そんな物語を彩る存在としてアニメ2期の主題歌を務めたのは、今や日本が誇る世界のポップスター・YOASOBIのikuraこと幾田りらさん。今回の意外な抜擢に 「YOASOBIじゃないんだ」「ソロ活動もしてるの?」と驚いた人も多いのではないでしょうか。

『百花繚乱』(ソニー・ミュージックレーベルズ)

『百花繚乱』(ソニー・ミュージックレーベルズ)

今や名実ともに世界的人気ユニットとなったYOASOBIですが、現在の確固たる音楽性が確立されたのは、メンバーであるシンガー・ikuraとコンポーザー・Ayase、それぞれのアーティストとしての高い地力が合わさってこそ。

いわばYOASOBIのアナザーワークスともいえる、そんな二人のソロ活動楽曲について。今回はガチオタ兼約15年のミュージシャン歴も持つ音楽ライター・曽我美なつめが、アニソンを中心に両者の活躍をご紹介します、

歌のみならず、実は声優としても抜擢経験のあるikuraこと幾田りら。Ayaseさんの実は高い歌唱力。そんな知られざる一面を垣間見る事で、ユニット・YOASOBIのより深い魅力にも触れられること間違いなし、です。

歌唱力だけじゃない。巧みな作詞作曲も大きな強み

今回幾田りら名義で提供された、アニメ『薬屋のひとりごと』主題歌「百花繚乱」。ソロ名義としては初のTVアニメ主題歌タイアップとなったことに加え、物語の舞台となる後宮を彩る美しい女性たちを咲き乱れる花々になぞらえた本曲は、作詞作曲も彼女本人が担当しています。

今でこそYOASOBI・ikuraとしてのイメージが先行しますが、実は元々2019年秋にYOASOBIを結成するずっと前から、彼女は自身で制作も行うソロシンガーとして長年活動を続けていました。

さまざまなオーディション番組・企画で着実に歌手としての存在感を示し始めていた頃、同時期にユニット活動の相方を探していたAyaseが、Instagramを介して彼女の歌声に興味を持ち声をかけたという経緯が、YOASOBI結成のきっかけでもあります。

女性らしいかわいらしさがありつつも、溌溂とした響きを持つ彼女の歌声。
その歌は美しさの中にも凛としたしなやかな強さを持つ、アニメ『薬屋のひとりごと』に登場する数々の女性キャラクターの印象にもぴったり。

『百花繚乱』(ソニー・ミュージックレーベルズ)

『百花繚乱』(ソニー・ミュージックレーベルズ)

また楽曲MVやジャケット写真は、印象的な極彩色のビジュアルが長年大勢の人々を魅了する写真家・蜷川実花が手掛けています。アニメのイメージを損なうことなく、かつ「百花繚乱」という曲タイトルに相応しい、彩り豊かな世界観で楽曲に華を添えていますね。

声優にも抜擢。美しい声質がキャラの魅力を引き出す

今作「百花繚乱」が初のTVアニメ主題歌起用ではありましたが、実はそれ以前にも幾田りらは、ある大作アニメ映画にも深く関わっています。彼女のソロワークスを語る上で欠かせない作品、それが映画『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』です。

浅野いにおが手掛けるマンガを原作とし、前後編アニメ映画としてそれぞれ前編が2024年3月、後編が2024年7月に公開された『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』。彼女は今作で主題歌のみならず、ダブル主人公の声優まで担当していました。

幾田りらと共に主役を演じたのは、こちらもマルチな活躍が印象的なシンガー・あの。破天荒かつ不思議系キャラな女子高生・中川凰蘭(おんたん)をあのが、彼女の暴走っぷりに振り回されがちな親友・小山門出を幾田りらが演じた本作。

本人たちの印象とも近しいそのベストな配役っぷりも、作品が好きなファンの間では注目を集めていました。か細いけれど美しい声質が、キャラクターの魅力を引き出していました。

重ねて映画前編はano feat.幾田りら名義による「絶絶絶絶対聖域」が、そして映画後編は幾田りらfeat. ano名義による「青春謳歌」が、それぞれ壮大かつダイナミックなデデデデの物語を彩る主題歌として起用されています。

作品の舞台となる現代のディストピア感を全面に押し出した、攻撃的なサウンドが印象的な「絶絶絶絶対聖域」。

一方の「青春謳歌」は主役二人の友情にスポットを当てた、温かくも軽やかで、それでいてどこか切ない日常感あふれる1曲です。どちらの楽曲もそれぞれに、映画の物語を魅力的に切り取った主題歌になっていると言えるでしょう。

さらに本作は、映画と結末が異なるアニメシリーズ版も存在。全18話で構成されるエピソードは限定盤Blu-rayコンプリートBOXに収録されているほか、Amazon Prime Videoでも配信しています。

こちらのアニメ版に関しても、主題歌「SHINSEKAIより」をano×幾田りらが担当。楽曲の作詞作曲を、原作者・浅野いにおが手掛けている点も聴き所となっています。

お馴染みのボカロP・Ayase、実は歌もめちゃくちゃ上手い!

このように、各種コンテンツを彩る楽曲でもソロアーティスト・幾田りらとして活躍するYOASOBI・ikura。ですが皆さん知る通り、YOASOBIのもう一人のメンバーであるコンポーザー・Ayaseも、これまでにさまざまな場所でソロ名義としての活躍を残しています。

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曽我美なつめ

音楽、二次元コンテンツ(アニメ/マンガ)を中心にカルチャーを愛するフリーライター。コロナ禍を経て10年ぶりにオタク・同人沼に出戻りました。全部宇髄天元のせいです。

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