曽我美なつめ
音楽、二次元コンテンツ(アニメ/マンガ)を中心にカルチャーを愛するフリーライター。コロナ禍を経て10年ぶりにオタク・同人沼に出戻りました。全部宇髄天元のせいです。
これまでの「鬼滅の刃」シリーズの主題歌とは明らかに一線を画す、非常に重苦しくダークなサウンドに驚いた人もどうやらかなり多い様子。
ですが無惨とお館様の緊迫の対峙や、そこから先のあまりにも絶望的な展開、そして怒涛の一大決戦を思えば、楽曲のムードはまさにぴったりの雰囲気です。
先ほど「夢幻」の歌詞では、お館様をはじめとした鬼殺隊が無惨の思う「本当の永遠」に対するアンチテーゼを掲げている、と解説しました。
その反面「永久」では、鬼舞辻無惨が自分の求める「本当の永遠」を鬼殺隊へ真っ向からぶつける曲となっています。
すでにアニメでも明かされた通り、人間の頃の無惨はとても身体が弱く脆弱な人でした。その反動で長寿や永遠に朽ちない肉体、あるいは自由の利く強い身体を渇望した無惨。
その強固な願いと元々の傲慢な性格が合わさり、彼は鬼の長として、他者がどうなろうと自分の望みが叶えばそれでいい、という独善的な道を突き進むことになります。
誰かの力を借りることなく、一人で歩み続けられる強さ。
全員に忘れ去られても、この世から消える事のない強さ。
時代や場所が変わっても、揺らぐことのない不変の強さ。
それこそが無惨の求める「本当の永遠」で、自分あるいは鬼という生き物の理想です。堕姫・妓夫太郎兄妹が敗れた直後、上弦の鬼を集めた時も無惨はこう主張していました。
「私が好きなのは“不変” 完璧な状態で永遠に変わらないこと」
──「鬼滅の刃」12巻より引用
大量の鬼も結局はすべて、たった一人無惨が「本当の永遠」になるためのもの。ですが同時に無惨さえ「本当の永遠」であれば、彼から生み出される鬼も皆「本当の永遠」になるのです。
だからこそ「鬼滅の刃」は「鬼殺隊VS鬼たち」ではなく、「鬼殺隊VS無惨一人」が終始戦いの本質として描かれているのです。
「本当の永遠」は大勢で為すものとする鬼殺隊。「本当の永遠」は一人で為すものとする無惨。同じ言葉に関して両者が真反対の価値観を持つことも、今起こっている彼らの戦いの本質的な要因のひとつなのでしょう。
鬼殺隊と無惨、それぞれを対の存在として描く主題歌の「夢幻」と「永久」。
各曲に込められた主張のみならず、随所に散りばめられたフレーズにもよく見るとたくさんの発見がありますね。アニメ放送時に使われる部分だけでなく、楽曲の2番以降にも様々な注目ポイントが隠れていますよ。
「夢幻」に登場する「背負った名前の数を数えた」人は、まさしく大勢の隊士全員の名前をきちんと憶えているお館様その人のこと。また「幾星霜」という言葉も、物語のラストをすでに知る人にとっては非常に大きな意味を持つ言葉です。
「永久」では「正しさよりも正しく」「滅びを滅ぼせ」といった歌詞が、非常に端的に無惨らしさを表していますね。寿命やルールといった誰かが決めたものは、すべて自分の力で塗りつぶす。まるで自分が神にでもなったかのような言葉に、その傲慢さや独善性を感じる人も多いでしょう。
どちらが掲げる「本当の永遠」が正しいか。それに決着をつける戦いが、柱稽古に励む鬼殺隊の面々にいよいよ降りかかります。
当然、誰しもが無傷では終われません。辛く悲しいシーンも増えてきますが、確実に近づく炭治郎たちの物語の終わりを、ぜひたくさんの方に見届けて欲しいと思います。
(執筆:曽我美なつめ)
『テレビアニメ「鬼滅の刃」柱稽古編』
■スタッフ
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島 晃
アニメーション制作:ufotable
■キャスト
竈門炭治郎(かまど・たんじろう):花江夏樹
竈門襧豆子(かまど・ねずこ)※:鬼頭明里
我妻善逸(あがつま・ぜんいつ):下野 紘
嘴平伊之助(はしびら・いのすけ):松岡禎丞
冨岡義勇(とみおか・ぎゆう):櫻井孝宏
宇髄天元(うずい・てんげん):小西克幸
時透無一郎(ときとう・むいちろう):河西健吾
胡蝶しのぶ(こちょう・しのぶ):早見沙織
甘露寺蜜璃(かんろじ・みつり):花澤香菜
伊黒小芭内(いぐろ・おばない):鈴村健一
不死川実弥(しなずがわ・さねみ):関 智一
悲鳴嶼行冥(ひめじま・ぎょうめい):杉田智和
■コピーライト表記
©吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
■公式サイト
https://kimetsu.com/anime/
■Twitter
@kimetsu_off
https://twitter.com/kimetsu_off(推奨ハッシュタグ:#鬼滅の刃)
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