柴田捺美
サンリオを初めとしたKAWAII文化をこよなく愛するライター兼イラストレーター。その他占い、アニメ、BLなど得意と好きを生かして幅広く執筆を行う。
あなたには、尊敬できる友人はいますか?
声優・俳優として活動する豊永利行さんと加藤和樹さんは、2005年に漫画原作ミュージカル作品で初共演。以降も約20年という長い間、人気アイドルアニメや女性向けゲームなど複数作品で共演しています。
さらに、「1984年生まれ」「声優としても舞台役者としても活動している」という共通点がある二人。同じバックグラウンドを持っているからこそ尊敬できるポイントや、役作りのプロセスも共感できる点が多いと話します。
豊永「和樹は、どんな時にも堂々とした立ち振る舞いができる人」
加藤「彼は楽しんでお芝居をするから、演じる役が生きているんです」
そんなお二人が再び共演することで話題を呼んでいる作品が、2025年1月31日(金)全国ロードショーの劇場アニメ『ベルサイユのばら』。誰もが知るあの名作で、豊永さんがアンドレ・グランディエ(以下、「アンドレ」)を、加藤さんがハンス・アクセル・フォン・フェルゼン(以下、「フェルゼン」)を演じます。
そこで今回、お二人には本作への出演が決まった時の率直な感想などを伺うとともに、20年来の付き合いである“お互いの演技のすごいところ”についてインタビュー。「今さらお互いを褒め合うなんて恥ずかしい!」と遠慮しつつも語ってくれた、“ここだけの話”は必見です。
INDEX
ーー半世紀以上にわたって愛される名作『ベルサイユのばら(以下、『ベルばら』)』が劇場アニメになります。今作の出演が決まるまで、作品に対して抱いていた率直な印象を教えてください。
加藤和樹(以下、加藤):
作品の雰囲気やフランス革命を題材にしているということで、「美しくも儚い物語だな」という印象を持っていました。いざ自分が出演できると知った時は、「なぜ俺が『ベルばら』に……?」という感じでしたね。
豊永利行(以下、豊永):
いや、ぴったりだと思うよ?
加藤:
(笑)。同じくフランス革命を題材にしたミュージカル作品には出演したことがあったのですが、その時は農民役だったので。まさか(今回は)貴族の役を演じられるとは思っていなかったですね。
豊永:
僕も作品自体はもちろん知っていましたが、今回のオーディションの話をいただくまではきちんと触れたことがなかったんです。
ただ、TVアニメ放送当時<バラはバラは 気高く咲いて>というオープニング主題歌はよく耳にしていて、気高い雰囲気の作品だなという印象はありましたね。
でも、改めてTVアニメを観てみると、貧困や階級格差などフランス革命時代におけるさまざまな社会問題をきちんと描いていて。そんな時代を生き抜いた人々だからこその強さも表現されていて、「“高貴で美しい”だけで終わらない作品なんだな」と、新たな気付きを得ることができました。
ーー今作は歌唱シーンも印象的ですが、レコーディングはいかがでしたか?
加藤:
大変だったよね。
豊永:
実はアフレコが始まる1年くらい前から、劇中歌のレコーディングを始めていたんですよ。
(アフレコ現場では)アンドレを演じたことのない状態で歌わなくてはいけなかったので、これからキャラクターをどう演じるか、ある程度自分の中でプランを立ててから挑む必要があったんです。そうでないと、歌唱シーンと通常のシーンとの演技が、チグハグになってしまうので。
また、今作は20年間くらいの出来事をぎゅっと短縮して約2時間のアニメーションにしているので、いざ歌う時に「この曲は何歳くらいのアンドレで歌えばいいのだろう?」と戸惑った場面もありました。ただ、監督からは「そのシーンでのアンドレの心情を表現してくれたら大丈夫だよ」というアドバイスをいただいたので、あまり年齢にとらわれないようにしましたね。
加藤:
僕も、アフレコを始める前に楽曲を録ることに対しては少し驚きましたね。フェルゼンというキャラクター像は、最初から掴めていた気はしますが。
(マリー・)アントワネットとのデュエット曲に関しては、とにかく彼女に対して抱いている“愛”を表現するように意識しました。大変だったのは、4人で歌う楽曲のキーをどうするかということ。アントワネットなど高い声のキャラクターに合わせたキーで歌うと、フェルゼンとしての声からは遠くかけ離れてしまって。全体とのバランスを調整しつつ、最終的にフェルゼンの声のイメージを保てる範囲内で、キーを調整いただきました。
歌唱に関しては収録日がキャスト全員別々だったので、完成を聴くまですごく楽しみな気持ちがありましたね。実際に出来上がったものを聴いたら、ハーモニーが美しく仕上がっていて。それはとても安心しました。
ーーお二人が演じたアンドレとフェルゼンは、原作でも人気の高いキャラクターです。演じられて、どのような部分に魅力を感じましたか?
加藤:
フェルゼンは、「例えこの身を滅ぼしたとしてもアントワネットを守る」という覚悟がしっかりとあるのが魅力的だと思います。今作はフランス革命時のお話ということで、フェルゼンだけでなくすべてのキャラクターに共通することだと思うのですが、「誰かのために命をかける」覚悟がとにかくすごいんです。
ただ、フェルゼンの場合は、それが叶わないと知った時にオスカル(・フランソワ・ド・ジャルジェ)へとその責務を託す。大切な人を守りたくても守れない葛藤、そして絶対に解決されない社会的立場への悔しさを想像すると、身が引き裂かれるようなつらい気持ちになりましたね。
豊永:
分かる。
アンドレに関しては、原作漫画と(今作の)劇場アニメで受ける印象が少し違うなと感じたのですが、今作は彼の中にある「男らしさ」にスポットライトが当たっているんですよね
原作でのアンドレは、つい感情的になって動いてしまうことが多い印象で。言わなくていいことまで言ってしまう場面も、あったと思うんです(笑)。でも今作は「影の存在としてオスカルを支える」という決意の強さが前面に出ていて、そこが魅力的でしたね。また、オスカルへの恋心を自覚した後の感情の揺らぎもすごく良く描かれているなと感じました。
ーーでは、お二人が演じたからこそプラスされた魅力があるとしたら、何だと思いますか?
豊永:
すごく難しい!なんだろう(少し考えこむ)。
加藤:
彼(豊永さん)がアンドレを演じたことで……。
豊永:
あ、すぐ出るんだね!? すごい。
加藤:
彼がアンドレを演じたことで、オスカルにも言えない心の繊細な部分が、すごくよく表現されたなと思いますね。
彼の声質は少し明るいから、だからこそアンドレの台詞としてはより一層切ない印象を受けるといいますか……。最期のシーンとかも、「なんでそうなっちゃうの?」とすごく切なくなってしまって、今思い出しても泣きそうなくらいです。アフレコ現場でも、みんなアンドレのことを思って泣いていたよね(笑)。
豊永:
気づいたら泣いていたよね(笑)。でも確かに、(オスカル役の)沢城みゆきさんから「トッシーが演じるアンドレって、光放っているよね」と言われたんですよ。
オスカルとアンドレはよく“光と影”と表現されることが多いと思うのですが、影としてのアンドレだけではない、新しい魅力を見せられたら嬉しいなと思います。
ーーそんな豊永さんは、加藤さんがフェルゼンを演じられたことでどんな魅力が加わったと思いますか?
豊永:
僕が勝手に思っているだけかもしれないのですが、和樹は純粋にキャラクターの心の動きを台詞に乗せることが上手で、そこにウェイトをおいてお芝居する役者さんだなと思っているんです。
だからこそ、アントワネットへの思いを露わにするシーンや、オスカルにアントワネットを託すシーンなど、フェルゼンという人間の感情がゆらぐ瞬間がより印象的に見えるんですよね。表情や見かけでは表れない程度の感情のゆらぎだったとしても、和樹が声を乗せることで、心の振り幅をぐっと感じるシーンになる。それはきっと、声のお芝居だけでなく、役者として身体を使った表現をしているからだと思うんです。
和樹と僕はもともと舞台で演技をしていたので、役作りのプロセスが僕と共通するものがあって。“声の技術”だけではないアプローチをしているからこそできる表現なのだなと、今回改めて感じました。
ーーお二人は今作のみならず、アニメやゲーム作品など共演作が多くあります。お芝居を間近で見ていて、お互いの演技において好きなところや尊敬してるポイントを教えてください。
豊永:
いや〜もう和樹とは20年来の付き合いなので、今更そういう話をすると恥ずかしいですね(笑)。
加藤:
あははは(笑)。
豊永:
僕たちは年齢も同じで、昨年(2024年)10月に開催された和樹のバースデーライブでは同じく“W成人”を迎えるゲストとして登壇させてもらったり、出演作品以外にも付き合いがあるんですよ。
そんな間柄なので、改めてお互いの好きなところを話すなんて……(加藤さんの様子を見ながら)え、話しますか?
加藤:
僕が彼の好きなところは……。
豊永:
話すんだ!? ……分かりました(笑)。
加藤:
(笑)。彼は楽しんでお芝居をしているからこそ、“役が生きている”感じがするなと思うんです。あとは、演じる役の幅広さですね。
初めて共演したのは(2005年初演の)「ミュージカル『テニスの王子様』The Imperial Match 氷帝学園」という作品だったのですが、彼は「1年生トリオ」の一人を演じていて。1年生なので、高い声のキャラクターだったんですね。なので当時僕の中で、彼は高いトーンでの演技が得意な役者さんという印象が強くあったんです。
でも、その後に共演した作品で低い声のキャラクターを演じるのを聞いて、役の幅が想像以上に広かったことにすごく驚きました。
豊永:
ちゃんと目を見て褒めてくれるね(笑)。
加藤:
心からそう思っているからだよ。本当にすごいなって。
豊永:
やめてよ(笑)。でも、そう言ってもらえるなんて、すごく嬉しいです。僕にとって和樹は……初対面の印象から今まで、あまり変わっていないんですよね。何においても度胸があるというか、どんな時にも堂々とした立ち振る舞いができる人だなと。
また、和樹はルックスとか色んな武器があるのに、それに頼らずあくまでも表現者として努力を重ねている人なんですよ。そういう志を持っている同年齢の役者さんと共演できて、本当に幸せだなと思います。
一緒にいる時によく僕がふざけたりするんですけど、その時にもちゃんと乗っかってくれるのもありがたいですね(笑)。演技の時もそうです。アドリブといいますか、演者の自由な表現が許されるシーンがあるのですが、そういう時に僕がちょっと変化球を投げたとしても、和樹はきちんと受け止めてくれるんですよ。安心して自由に演じることができるので、一緒にお芝居していて心地のいい人だなと思っています。
ーーお仕事でもそれ以外の場所でも、一緒にいて心地良い関係なのですね。
加藤:
僕、彼の歌声がすごく好きなんですよ。お芝居をしている声ももちろん好きなのですが。だからこそ、今作でも一緒に歌うことができてすごく嬉しかったですね。
あとは、先ほども“役が生きている”と言いましたが、台詞に自分の気持ちを素直に乗せることができるのがすごいなと。役者の方でそれができる人はもちろん多くいますけれど、その中でも彼は光るものがあると思っています。
豊永:
恥ずかしいけれど、そう言ってもらえてすごく光栄ですね。ただ、そこをちゃんと気付いてくれる人こそ、すごいなと思うんです。
抽象的な表現になってしまうのですが、相手が台詞に乗せたエネルギーを感じ取るための“センサー”って、演者にとってすごく大切なものだと思うんですよね。それがないと、演技や表現を楽しめなくなってしまう。だから、僕が乗せたものをきちんと感じ取ってくれている和樹には、ただただ感謝しかないなと。
ーー尊敬できる点だけでなく、感謝の気持ちも絶えないのは素晴らしい関係性ですね。
豊永:
和樹と僕は「舞台役者であり声優」という共通点があり、しかも同い年で長年の付き合い。そんな人と、今回も同じ作品に携われて嬉しく思いましたし、僕にとって安心につながったと思っています。
(取材・執筆=柴田捺美 撮影=小川遼)
柴田捺美
サンリオを初めとしたKAWAII文化をこよなく愛するライター兼イラストレーター。その他占い、アニメ、BLなど得意と好きを生かして幅広く執筆を行う。
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