双海 しお
エンタメジャンルで執筆するフリーライター。2.5次元舞台が趣味かつライフワークで、よく劇場に出没しています。舞台とアニメとBLが好き。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。
スポーツ作品の醍醐味は、やはり「青春・友情・成長」が楽しめる点でしょう。そこに欠かせないエッセンスとして描かれるのが「ライバル」の存在です。『テニスの王子様』で描かれるいくつものライバル関係の中でも、青学(せいがく)内のライバルとして印象的に描かれているのが2年生、桃城 武と海堂 薫です。
桃城と海堂が唯一無二の2年生レギュラーとして作中で切磋琢磨したように、ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズンの青学(せいがく)キャストとして桃城を演じた寶珠山 駿さん、海堂を演じた岩崎悠雅さんもまた、互いの存在に刺激を受け合いながら、この3年半の時間を駆け抜けてきました。
2024年3月に上演されたミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン 青学(せいがく)vs立海にて最後の『テニミュ』4thシーズン本公演を終えた2人は、現在仲間たちとともにミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン Dream Live 2024~Memorial Match~(通称:ドリライ)に向けて絶賛稽古中です。
ミュージカル『テニスの王子様』は、許斐 剛さんの原作をもとに2003年にスタート。寶珠山さんは2020年に始動したミュージカル『新テニスの王子様』シリーズに出演後、2021年スタートの『テニミュ』4thシーズンに青学(せいがく)キャストとして引き続き出演。岩崎さんは『テニミュ』4thシーズン青学(せいがく)キャストとしてカンパニーに加わりました。
今回の対談では、青学(せいがく)の同学年ライバルを象徴する“桃ちゃん”と“マムシ”を演じた寶珠山さんと岩崎さんに、この3年半を振り返ってもらいました。「まるで陰と陽」だと語る2人の出会いからの変化や、作中で二度組んだダブルスの思い出、ドリライを控えた今の心境、お気に入りの楽曲などについてお届けします。
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INDEX
――これまでを振り返ってみて、青学(せいがく)の2年生として、稽古場や公演で大切にしていたことはどんなことでしょうか。
岩崎悠雅(以下、岩崎):
僕たちは役としては中学2年生で真ん中なのですが、キャスト自身の年齢としては真ん中というわけではなくて。だから、最初の頃は「どんな感じでいればいいんだろう」という悩みがありました。だけど、自然と(寶珠山)駿がみんなに「ここをやろう」とか「合わせよう」と言ってくれて、逆に僕は一歩引いてみんなを見て、個人的に話しかけるようになって。自然と僕たちなりの稽古場での居かたが固まっていったのかなと思います。
寶珠山 駿(以下、寶珠山):
たしかに「2年生として」というところで言うと、3年生キャストは「歌だったらこの人」「ダンスだったらこの人」というのがほとんど決まっていて、その人に教えてもらうという形ができていたんですね。越前リョーマ役の今牧輝琉がなんでもできちゃう分、1年トリオが稽古中に困っていたら、僕たち2年が声をかけてあげるようなことがありましたかね。
リアルでも部活で1年生を見るのは3年生じゃなくて2年生じゃないですか。だから2年生として1年生を見なきゃいけないなと思って、トリオのことはけっこう気にしていた気がします。
――公演を振り返ると、桃城と海堂のダブルスが2回ありました。長い間演じてきたご自身の役への捉え方の変化とともに、ダブルスを組んだ際のお互いに対する気持ちの変化を教えてください。
岩崎:
聖ルドルフ・山吹公演のときは、ひたすら「桃(城)に負けたくない」「こいつとダブルス組みたくない」という気持ちだけでやっていた気がして。だけど立海公演では、その桃と最初に話して作戦を組んで試合に臨んでいるんです。その点で、海堂の中でも成長しているところがあるのかなと思いました。いつも喧嘩ばっかりしていますけど、やっぱりライバルって目に付くじゃないですか。だから桃城を一番よく見ていて、一番よく知っていて、信頼もしているというのは、聖ルドルフ・山吹公演でのダブルスから比べると、変化があったなと感じます。
――ご自分の役に対しての捉え方の変化、という部分ではどうでしょうか。
岩崎:
不動峰公演のときは「ひたすら怖がられる」というイメージがすごく強くて、ずっとそこに寄せなきゃと思っていたのですが、公演を重ねていくにつれ、お化けが怖かったり、猫が好きだったり、ちゃんと“中学2年生なんだな”という面をたくさん知ることができて。力を抜くとこは抜いてもいいのかなとか、ギャップをうまく1公演の中で作っていけたらなと思うようになっていきましたね。
――寶珠山さんは『新テニミュ』にも桃城役として出演されていますが、『テニミュ』4thシーズンと『新テニミュ』という時間軸の異なる桃城を演じるというのは難しいものでしたか?
寶珠山:
『新テニミュ』のときに「今作っているものが最大級なんだな」と自分の中で線を引いていて、『テニミュ』4thシーズンでは「そこに行くためにはどうしたらいいのかな」と考えていました。
岩崎:
おお~!
寶珠山:
なので、『テニミュ』4thシーズンの初めの頃は青学(せいがく)のムードメーカーとしてはしゃいでいたし、試合も本当に勝ちたいんですけど、がむしゃらとはちょっと違っていて。なんて言うんだろう。越前と最初に会ったときも「ああ、お前が1年だって?」みたいな、ちょっと生意気というか。
岩崎:
わかる。わかるけど、あれなんて言うんだろうね。
寶珠山:
“中二病”っていう言葉もあるくらいだし“中2らしさ”もあるんだろうなと。だけど、公演を重ねるにつれて「ここで負けたらあの3年生とはもう試合ができないんだ」「一緒のチームにはなれないんだ」って思い始めたんです。「負けたら全国に行けないし、先輩たちと長くテニスをするためには六角戦も勝って、1回でも多く先輩たちと試合がしたい」という熱さが、桃城の中でも変わった部分じゃないかなと僕は思います。
――海堂とのダブルスでの変化はどう捉えていますか。
寶珠山:
最初の頃は「もっと海堂こうしてくれよ」とか、自分の中で気持ちを作っていて。でも逆に立海公演でのダブルスは何も感じなくてもわかるっていうか。
岩崎:
そうね。
寶珠山:
試合中にちょっと“おセンチさん”になっちゃうシーンがあったのですが、そのシーンでの「このままじゃ海堂がやばい。でも、俺が助けるんじゃなくて、自分で這い上がってこいよ」というのも、海堂自身に這い上がらせるために桃城はどうしたらいいのか「お前がそっちに行くなら俺はこっちだよな」とか、本当にアイコンタクトで演じられるようになっていました。
――すごい変化ですね!
寶珠山:
すごい変化です。逆に聖ルドルフ・山吹公演の方がやりやすかったもんね。
岩崎:
そうね。聖ルドルフ・山吹公演の方がもっと話してた。
寶珠山:
そうそう。
岩崎:
立海公演では、ダブルスを作るにあたってほとんどしゃべっていないんです。
寶珠山:
対戦する立海メンバーには「ここはこうしよう」とか話したけど、僕たち自身はほとんどしゃべらずに。
岩崎:
そうだね。
寶珠山:
「オッケーオッケー」みたいなね。試合中も「お前がこっちに打球取りに行くんだったら、じゃあ後ろでスネイクを打つよね。はいはいはい」みたいな。今思うと意外に相性いいよね、本人も。
岩崎:
そうね。お互いにないものを持っているからさ。陰と陽じゃないけど。
寶珠山:
そうね。だから……(すごく溜めてから真面目なトーンで)本当に悠雅でよかったよ。
岩崎:
……急に(笑)。
寶珠山:
いや、本当に。悠雅でよかったよ。
――今、お互い持っていないものを持っているというお話もありましたが、お互いの印象という部分では、最初の頃からどんな変化がありましたか。
岩崎:
初めて駿を認識したのが『テニミュ』のオーディションのときなのですが、紫ジャージのセットアップを着ていて(笑)。僕は緊張しているので、ずっとこう(下を向いて集中しているポーズ)だったんですけど。
寶珠山:
俺も緊張してたよ。
岩崎:
嘘つけ(笑)。
寶珠山:
してた。
岩崎:
……なんかうるさい人がいるなという印象がすごくあって、「自分とは合わない陽キャな人だろうな」って思っていたんです。そうしたら、初めて青学(せいがく)のみんなと会ったときにいて、しかも桃城役で。「うわ、まじか、大丈夫かな」って最初は本当に自分とは正反対な人だと思っていました。でも、稽古を続けていくにつれてたぶん一番真面目というか、ちゃんとできないと気が済まない人なんだなと思って。
寶珠山:
たしかにね。
岩崎:
ダンスも本当に細かい角度まで、駿発信で合わせることもあって。そういうところは意外としっかりしているなと。
寶珠山:
繊細なんだよ、意外と。
岩崎:
ね、本当にそうだよね。僕はけっこうアバウトにやってしまうところがあるので、そういうところは見習わないといけないなと思いながら、いつも一緒に稽古していました。……なんかこれ恥ずいね(笑)。
寶珠山:
うん。悠雅は最初「わ、静かな子やな」と思いました。あまり関わったことがないようなタイプだったので、どうしゃべればいいかわからなかったんですが、でも次第に悠雅も普通にしゃべってくれることが分かったし、あんまり怒らないんですよ。イライラしているところもほとんど見たことないのに、芝居中はとても熱くなるので、内にすごいものを持っているなと思ったし、桃城としても俺自身も悠雅に負けたくない。本当にずっとライバルな気持ちでいます。
――お互いの芝居で印象に残っているシーンや好きなシーンを教えてください。
岩崎:
聖ルドルフ・山吹公演での千石と桃城の試合ですね。2人とも「負けたくない」という気持ちが出ていてかっこよかったし、千石がすごく強いという前評判があって試合に入っていくんですけど、それでも桃城が食らいついていく姿を見て、海堂としても僕自身としても「やばい、越されている」と思って。リンクしたというか、海堂と本当に同じ気持ちになったのがその試合だったので、とても印象に残っています。
寶珠山:
次は僕の悠雅の印象に残っていること?
岩崎:
なにかありますか。
寶珠山:
いっぱいありますね。不動峰公演の粘りで突っ込んでいくところとか、氷帝公演では乾先輩とダブルス組んでいて「なんでこいつダブルスできるんだよ」とか(笑)。
岩崎:
なるほどね。
寶珠山:
やっぱり(海堂が)進化するときが印象に残っていて。六角公演で血を流しながら立ち上がる粘り強さとか「俺のテニスでお前を倒すことにする」というセリフとか。そのときの悠雅の表情もベンチから見ていてめちゃくちゃ良くて、「お前とのテニスはやりたくねーな、やりたくねーよ」というセリフも気持ちよく言えたし。
岩崎:
そこめっちゃ好き!
寶珠山:
立海公演で「ここに来てまだ進化するんだ」と思ったときは、桃ちゃんとしても自分としても「なんでこいつばっかり先に進化するんだ」って嫉妬みたいなものを感じていましたね。でも、それを覆すために桃城はもう1回高く飛ぶので、なんというかパワーを毎回もらっていました。もう本当に! いっぱいあります!
岩崎:
嬉しいですね。
双海 しお
エンタメジャンルで執筆するフリーライター。2.5次元舞台が趣味かつライフワークで、よく劇場に出没しています。舞台とアニメとBLが好き。役者や作品が表現した世界を、文字で伝えていきたいと試行錯誤の日々。
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