宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
その力強い歌声とメッセージ性の強い激烈なリリックから、幅広い世代の支持を集めているシンガー/ラッパーのちゃんみな。そんなちゃんみながプロデューサーを務めるオーディション番組「No No Girls」(Hulu/YouTubeにて配信)が、話題となっている。
TikTokではちゃんみならの言葉や番組のワンシーンが大いに拡散され、2025年1月11日にはKアリーナ横浜での最終審査「No No Girls Finale」の開催が発表されるなど、その熱狂は留まることを知らない。数あるオーディション番組の中で、なぜここまで「No No Girls」は人々の注目を集めるのか? その魅力を深堀していく。
※記事の性質上、審査内容に触れています。
INDEX
まず注目すべきは「No No Girls」のテーマソングである『NG』だろう。リリックもMVもとにかく強烈で、これまで「No」を突きつけてきた全ての相手に対して「まあ、ザコすぎるお前にはどうせわかんないよね笑」という姿勢で臨む姿は痛快だ。
筆者が初めてちゃんみなを見たのは、2016年に開催された「第9回BAZOOKA!!!高校生RAP選手権」だった。Rei©hi vs ちゃんみな という、後に伝説ともいわれるほどのフィメールラッパー対決を機に、ちゃんみなは注目されることとなる。
そして翌年2017年にリリースした「Princess」がバズり、彼女を一気にスターダムへのし上がらせることとなった。だが同時に、当時17歳だった彼女はひどいバッシングに晒されることとなる。
あの時のことはよく覚えているが、彼女へ向けられた言葉はあまりにも酷いものだった。こんなにも才能があって美しい歌声を持つ彼女の音楽に対して、誰も聞いていないとでも言うように書き込まれる酷い言葉の数々...。
あれから才能でヘイターをねじ伏せてきた彼女だが、それでも彼女の奥底はずっと傷ついたままなのだなと楽曲から時折感じることができ、胸が苦しくなる。
『NG』もその傷を感じさせる曲の一つだ。『美人』と同様に傷も痛みも感じる楽曲だが、それでもNo Girls(世界中にいるNoを突きつけられた人々)をエンパワーメントしようと、その傷すらも武器に変えて世界を変えようとしている。
そして、ただ聴いている人をエンパワーメントするだけではない。
「死ぬ気で鍛えたこの声で I go」「神様に誓ってもずるいことはしない」「結局最後は人間性が言うものを」ちゃんみなのアーティストとしての姿勢を理解して、甘えずに最後まで着いてきて!と「No No Girls」の参加者を叱咤しているようにも聞こえる。
まさに「身長、体重、年齢はいりません。あなたの声と人生を見せてください。」という強烈なメッセージから始まったオーディション番組に、ふさわしい楽曲なのではないだろうか。
「No No Girls」がただのオーディション番組ではないと気付かされたのは、三次審査の結果発表のときでの出来事だった。
ちゃんみなが一人ひとり名前を呼びあげて結果発表をしていく形式だった。しかし合否よりもちゃんみなから送られる講評コメントの濃度が高すぎて、聴いた後も「あれ? 合否どっちだっけ?」となってしまうほどだったのだ。
これは決して合否をないがしろにしているわけではなく、ちゃんみなが真摯にガールズの才能に向き合っている証拠だと思った。まず何よりもあなたが素晴らしいということを伝えたい、という愛情にあふれていると感じた。
ちゃんみなが伝えたいのは合否の反応に対する慰めや綺麗事ではなく、ガールズの才能と人生に対するコメントであって、合否関係なく平等にそれを真摯に伝えたい。そういう姿勢をあの結果発表からは感じ取ることができた。
そして、異例となるMAHINAの3.5次審査も衝撃的だった。
まだちゃんと見きっていない才能がある、だからどうしても納得できない。そんなちゃんみなの推薦で決まったMAHINAの3.5次審査は、ラップ初挑戦とは思えないほどの才能を発揮した。
それに加えて3.5次審査で歌った曲が、かつてちゃんみなとバトルを繰り広げたあのRei©hiの「UCHIRA」なのだから、往年のちゃんみなファンとしてはたまらない感情でいっぱいになった。
Episode#5の「Face yourself」というタイトルも、Eminemの「Lose Yourself」をオマージュしているように思えて、MAHINA、ASHA、CHIKAが苦しみながらもラップの才能を開花させる姿と重なって見え、アーティストとして活躍する姿を容易に想像できた。
とことん突き詰めて、一人ひとりの人生と向き合う。他人の人生を決めてしまうオーディション番組をやる上で、ちゃんみなの覚悟のようなものを受け取ることができた気がした一面だった。
オーディション番組といえば、参加者の成長する姿も見どころである。
過去にオーディションで「No」を突きつけられた者、事務所から「No」を突きつけられた者、友人や家族から夢に「No」を突きつけられた者...さまざまなバックグラウンドがあるが、やはり注目すべきは圧倒的実力を持つ正統派ボーカリスト・CHIKAだと思う。
宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
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