羽賀こはく
横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。
「いろいろな沼にハマっている」と語るのは、声優アーティストの千葉翔也さん。悩みに悩んだ末、今回お話しいただくのは、コロナ禍からハマっている“お笑い沼”です。
テレビのネタ番組やYouTubeのネタライブ配信を見るだけにとどまらず、劇場へも足を運ぶほどハマっているとのこと。中でも今好きな芸人さんを聞くと、M-1で優勝した「令和ロマン」をはじめ、「トム・ブラウン」「フースーヤ」など出てくる出てくる……。
そこまでハマるのには「お笑いは前向きに、元気になれる存在」であると同時に、お笑いは声優の仕事にも還元できる部分がある様子。「声優もトークをする機会が多くなっている今、学ぶべきところが多い」と話します。
プライベートで楽しむだけではなく、仕事として参考にしていること、逆に共通点を感じるポイントなど、千葉さんが深くハマる“お笑い沼”に迫ります。
また、2024年1月にソロアーティストとして活動を開始する千葉さん。1st EP『Blessing』では、なんと5曲中2曲の作詞に挑戦しています。ここでも新たなお笑いの魅力に気づけたよう。ソロアーティストデビューの経緯から、千葉さんが1曲1曲コダワリ抜いたEP制作についてもお届けします。
INDEX
――はじめに、千葉さんがハマっている沼を教えてください!
千葉翔也(以下、千葉):
いろいろな沼にハマっているのですが、中でも「お笑い」が好きです!
――いつ頃からお笑いの沼にハマっているのでしょうか?
千葉:
学生時代から『レッドカーペット』『はねるのトびら』などテレビでネタ番組やバラエティ番組が流行っていたので日々見ていたのですが、ハマったのはコロナ禍なので割と最近なんです。
「笑えることって大切だな」と思わされたのと同時に、お笑いって自分の個性を活かしていたり技巧を凝らしていたりいろんな人がいるのですが、それって僕がしている声優の仕事と離れている気がしなくて。感動して泣いてもらう演出を作り出す現場は目にしたことはあるのですが、笑わせることってそれに比べてすごく難しいと思うんです。
僕自身、コメディタッチの作品への出演は少ない方なので、お笑いを見ては「笑わせるためには何が必要なんだろう」と真面目に考えてしまいます。
お笑いには、登場した瞬間に面白い人もいるじゃないですか。芸人さんの持つ「人柄」や「テンション」などさまざまな要素が掛け合わさって生まれるものなので、「才能」の一言で片づけるにはもったいない。しかも、芸人の皆さんはそんな細かいことより、「とにかくお客さんを笑わせよう!」としている姿勢がとても尊敬できて。年々好きになっていますね!
――どのようにお笑いに触れることが多いですか?
千葉:
テレビだと『M-1(グランプリ)』や『キングオブコント』などの賞レース番組を見ています。最近はコロナ禍もあり、予選なども YouTubeで配信されているのでネットの配信もよく見ていますね。
https://youtu.be/VUhBgYV7cR4?feature=shared
賞レースの予選に限らず、今はYouTubeがとても便利なんですよ。NON STYLEさんなど誰でも知っている有名な芸人さんからテレビにはあまり出演していないような芸人さんまで、皆さんYouTubeチャンネルをやっています。
ご自身のお笑いライブの映像を配信してくれていて、サクっと見られるのがすごく良くて。移動時間や隙間時間で「笑いたいな」「元気を出したいな」と思った時に見ています。
――移動時間や隙間時間に見られるのが動画のいいところですもんね。
千葉:
手軽で便利ではあるのですが、「動画だと100%のおもしろさが伝わらないな……」と思うこともあります。
YouTubeで見られる動画は基本的に無料ですけど、お笑いに限らずエンタメは自分からお金を払ったからこそより楽しめると思うんです。見る側が対価を払うことで返ってくるものは大きいはずだから、お金を払って劇場へ見に行くのが1番お笑いをおもしろく感じられるはず。
なので、これからも変わらずに劇場にも足を運びます!
――劇場にも行かれるんですね。
千葉:
ラジオでお世話になっている方たちにお笑い好きな人が多いので、「週末こういうライブがあるけど一緒に行かない?」と声をかけてもらうんですよ。
行けないことももちろん多いんですけど、行ける時は行くようにしていますね。渋谷の「無限大ホール」や新宿の「ルミネthe吉本」は行きやすいですし、テレビでずっと見ていた人たちがたくさん出演するから、 値段に対して満足度が高いなと感じます。
――劇場でお笑いを見ている中で、特に体験として印象に残っているエピソードはありますか?
千葉:
千鳥さんのネタを劇場で見た時は、「本物だ!」と思いました(笑)。
年末にテレビ番組でやっていた「ラーメン屋は夜10時になると、開いてる店は開いてるけど、閉まってる店は閉まってる」みたいなシュールなネタを劇場でも披露していて。劇場にいるお客さんたちが固唾を飲んで見守っていて、 それすらもネタの一部になっているようだった。お客さんを巻き込んでいる感じがすごいなと思いました。
あと、その日は1人で劇場に行っていたんですけど、僕を囲むようにカップルが6組もいて……。席を立った瞬間に僕の左も右も後ろも前も全部がカップルで囲まれていた時は、「誰かに言いてぇ~!!」と思いながらちょっと笑っちゃいました(笑)。
――劇場ってそんなにカップルで見に来られる方が多いんですね。
千葉:
体感ですけど、めちゃくちゃ多いと思いますね。映画館より多いんじゃないかな。千鳥さんのライブの時、6組のカップルに囲まれていたのはさすがにたまたまだと思いますけど(笑)。
――その状況もひっくるめて劇場で見ることのおもしろさがあるように思います(笑)。また、千鳥さんのライブを見に行ったということは、劇場へ足を運ぶときは有名な方を選ぶことが多いのでしょうか。
千葉:
有名な方を選ぶことは多いのですが、今後もし選ぶとしたら「生でこそ見る価値があるな」と思う人のライブを見たいですね。中でも今1番見たいのは、タイタンに所属しているキュウさん。
ただ僕、出演情報とかをネットで調べるのがめちゃくちゃ苦手なんですよ……。今日明日のライブで「行けるな!」と思った人を選ぶことが多いので、2024年はちゃんと情報をキャッチして足を運びたいなと思っています。
――選ぶ上では、漫才、コントなどあまりジャンルにはこだわらず?
千葉:
どっちも好きですけど、漫才の方が好きなので漫才を見たいですね。
コントは役を演じられるからおもしろい設定がいくらでも詰め込めるけど、漫才は基本的に芸人さん本人がそのままの姿でいかに楽しませるかを考えるじゃないですか。ルールに縛られながらもおもしろさを追求しているところが好きです。
あと、コントは設定を掴むのに時間がかかる時があるけど、漫才はフォーマットがあるから見やすいとも思いますね。
――では、千葉さんが特に好きな芸人さんを教えていただけますか?
千葉:
たくさんいらっしゃるから、どうしよう!(笑) 学生時代は友達とみんなで真似できるネタや芸が好きでしたけど、今は自分で真似できない、その人たちにしかできないネタや芸をされる方たちが好きですね。
中でも今は、令和ロマンさんが好きです! (髙比良)くるまさんの今っぽさのあるおかしいボケと、(松井)ケムリさんの余裕あるツッコミは、笑かしにきているんだけど笑かしにきていないというか……狙っていない感じがいいんですよね。劇場には行けていないので、実際に見てみたいです。
また、トム・ブラウンさんとフースーヤさんのネタ動画を見ては毎日声を出して笑っています。
トム・ブラウンと言ったら合体漫才があると思うのですが、そのフォーマットの中でブラッシュアップされていると感じていて。今のフォーマットを捨てて新しく別のフォーマットをつくる芸人さんもいる中で、トム・ブラウンさんは同じフォーマットの中で年々変化があって。「試行錯誤しているんだな」「ここを工夫したんだろうな」とネタを通して分かるのがおもしろいです。
フースーヤさんはデビュー1年目からテレビにバンバン出ていて、そのあとテレビにはあまり出なくなったのですが、最近調べてみたら漫才がめちゃくちゃ上手くて! ネタのテンポやギャグの個数など見るたびに進化していて、変わっていく様を見ていると「お笑いって人がつくっているんだな」と改めて実感させられます。
それから、サンドウィッチマンさんが所属しているグレープカンパニーの後輩・わらふぢなるおさんはコント師として好きです。彼らにもフォーマットがある漫才があるのですが、それがめちゃくちゃおもしろい。コント以外にも漫才もおもしろくて、「自分とは違う人間なんだな……」と思い知らされます(笑)。
ほかにも、男女のコンビも好きです。ゆにばーすさんや相席スタートさんが好きで見ることが多いのですが、男女コンビの中でも蛙亭さんは一時期ライブを見に行ったり、ポッドキャストでラジオを聴いたりするほどハマっていました。中野(周平)さんの個性が強くて、つい見てしまうんですよ(笑)。
――動画を見たり劇場に行ったりするだけではなく、芸人さんのラジオを聴くこともあるんですね。
千葉:
聴きますね。芸人さんのラジオって自分のプライベートをギリギリのところまでお話しているんですよ。芸人さんってプライベートをネタに変換する能力が長けているので、勉強になりつつ参考にならないなと思いながら聴いています(笑)。
――役作りや表現力を培うために、お笑いを観たりラジオを聴いたりすることもあるのでしょうか?
千葉:
それを言い訳にたくさん見ています(笑)。役に立っているかは分からないですが……。
イベントや番組のMCでアメリカザリガニの柳原(哲也)さんや天津の向(清太朗)さんなどとご一緒することが多いんですけど、会話のパスの出し方とか話が蛇足になった時にしっかり本筋に戻してくれる懐の広さがとても勉強になります。
おふたりの性格が優しいというのもあるかもしれないのですが、誰も傷つけずにちゃんとおもしろいトークにしてくださることが多くて。声優もトークする機会が少なくない今、学ぶべきところが多いなと感じています。
あと、アフレコと漫才って似ているところがあると思っているんですよね。
――アフレコと漫才が似ているというのは……?
千葉:
狙っている感がありすぎるとおもしろくならないことが多くて、いかに自然体に見せながらおもしろいと思わせられるかが通じていると思います。
あとは、存在感を出すことですかね。声優の場合、キャラクターが登場して声を発した時に、一発で「このキャラクターはこういう人なんだろうな」と分からせなきゃいけない。芸人さんも登場した瞬間に「この人、こういう人なんだろうな」と分かる存在感が必要じゃないですか。それは、とても似ている気がします。
――少しお笑いの話と逸れるのですが……「このキャラクターはこういう人なんだろうな」と理解することは、声優さんのお芝居に対する印象にも繋がってくると思います。「このキャラクターの声はこの声優さんだ!」とすぐに気づかれるという意味での存在感についてはどのように感じているのでしょうか。
千葉:
声優さんの中でも様々な考えがあると思うのですが、個人的には自分の存在感を出すよりも役柄に合っていて作品のノイズにならない声を出すことが大切だと思っています。見ている人たちに「千葉翔也が演じている」と分かってもらえたら嬉しいけど、僕が考える声優の仕事の1番大切なことは「作品のおもしろさが伝わる」だと思いますね。
――あくまでも、演じるキャラクターの存在感を出すことが大切ということなんですね。
千葉:
僕はそう考えていますね。
あと、お笑いから気づいただことが直近でもう1つあって。ソロアーティストデビューにあたって、作詞をしてみたのですが、そこでもすごく気づきになりました。
一見意味のなさそうな相槌でも、あるのとないのとでは全く印象が異なることってあると思うんです。ネタの本編に入る前の会話も、大笑いを起こすためのセリフではないにしても、そのあとに続く笑いのために意味のあるセリフなんだろうなとか。
すごく綿密に考えられているんですよね。短い尺の中で全力を出し切るという意味では作詞作業でも意識したので、芸人さんたちへのリスペクトをより覚えました。
――声優と芸人は異なる職業ですが、似ている部分や活かせる部分がたくさんあるんですね。ちなみに、最近は声優さんのバラエティ番組もありますが、千葉さんご自身はコントや漫才をしたいと思うことはないのでしょうか。
千葉:
挑戦してみたいです。一度、声優友達の浦尾岳大さんと矢野奨吾さんと3人でイベントをやった時に、僕らマターでやることを決めなければいけなくて。「じゃあ、コントをやりたいです!」となったんですよ。だけど、コロナ禍直撃だったこともあって接触が難しく、朗読軸でおもしろい話をすることに。
なので、彼らのように滑ったところで傷を分かち合える仲良しな人たちとやってみたいですね(笑)。
――どんなネタがやりたいとかありますか?
千葉:
僕は舞台に登場しただけで笑いが取れるタイプではないので、斬新な設定や引きのある言葉などを考えられたらいいなとは思います。
とはいえ、僕が考えつくなら誰かがやっていると思うので……簡単に手を出していいものじゃないとも思っています(笑)。
そんな中でも、やってみたいのはコントですかね……! 役者業が活かせるかも……。漫才は自分がいかにおもしろくない人間か突きつけられそうな気がするので遠慮しておきます(笑)。
――声優さんも今は人前に立つイベントやライブが多いから、意外とすんなりできてしまいそうな気がしています。
千葉:
声優は人前に立つ機会が極限まで少ない職業だと思うので、かなり勇気のいることだと個人的には思いますね。仮にアニメ作品のイベントでステージに立つにしても、声優って0ベースでのトークがほとんどないんですよ。
なぜなら、基本的には作品を背負ってステージに立つことがほとんどで。僕を知ってくれている人もいますが、本来は作品が好きな人が集まって、時間を分かち合いながら楽しいことをしているんですよね。何も背負わず身を晒してステージに立つことはほぼないからこそ、芸人さんのように舞台には立てないような気がしています。
――1月からソロアーティストとして活動を始められますが、それは作品やキャラクターを何も背負わずに人前へ立つことになりますよね。
千葉:
そうなんですよね。それはそれで、とても新鮮な気持ちでいます。
ソロアーティストとしてリリースする曲やライブは、作品やキャラを背負ったものとは全く違うものになるだろうし、なったらいいなとも思っています。
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