【推しの子】の描写はリアル? 2.5次元舞台プロデューサーに聞いてみた「ララライって大きな劇団なんだな…って冷静に考えちゃいました(笑)」

通崎「作品内でも言われている通り、プロデューサーはまず案件を持ってくるのが仕事です。「これを舞台化したらきっと面白い!」と思う作品を企画書にして原作に提出し、許諾をいただくという形です。弊社の場合、そこから脚本家に原作をやり込んでもらうのですが、これが結構時間がかかります。

乙女ゲームは何人ものキャラクターのルートが存在するのですが、脚本家の方には基本的に全キャラクターのルートをフルコンプしてもらうようにしています。脚本家は別案件も並行して書いていたりもするので、読み解く時間も含めて、3か月~長くて半年くらいは時間をとらないといけません。

そうしてプロット、第1稿と出来上がっていくのですが、【推しの子】で描写された通り、間に入る人間が多ければ多いほど伝言ゲームになってしまう、というのは本当にそうだなと。原作サイドからの指摘を少しマイルドな言葉にして伝えてしまって、結果、齟齬が生じてしまった、みたいなことは幾度かありました…申し訳ないです。

一方で現場では、『稽古場は演出家が仕切るもの』という暗黙の了解があります。プロデューサーや脚本家が稽古場に来ても、演出に口出しすることはあまりありません。私の場合は原作愛が強いタイプなので、あまりに“解釈違い”な時は演出に口を出ししてしまうこともあるのですが…。

逆に演出家も脚本家にリスペクトを持っていて、稽古をしてみた結果、脚本で修正したいところがあれば、どういった理由で直したいのかを文章化して脚本家に相談する、というようにしています。こういった時も、プロデューサー、演出家、演出助手、原作、台詞を言うキャスト本人と多くの人間が関わるので、齟齬や誤解が生じることはどうしてもあります。でも「作品をよりよくするためのディスカッションだから!」と前向きに取り組んでくださる方が多いです。

原作者とキャスト、スタッフは仲良くできるの?

1話最後では漫画家の吉祥寺先生とアビ子先生が稽古場に訪れていました。原作者が見学に来ることはよくあるのでしょうか?

通崎「基本的に原作サイドの方には稽古初日の顔合わせ(本読み)、衣装付き通し稽古、ゲネプロには立ち会っていただいたき、加えて日々の稽古動画のまとめを共有しています。

やっぱり原作の方が稽古場に来る時は緊張しますね! いつ稽古場にいらっしゃるのかは事前にキャストに伝えるようにしているので、真面目なキャストは解釈で悩んでいることがあれば、その日までにメモしたり、言語化したりして、当日聞きに行っています。私は誰がそういう動きをしているかも稽古場でよく見るようにしています」

3話(14話)ではアビ子と吉祥寺の対立も。アビ子は「自宅にキャストを呼んでごはん会とかしてるらしいじゃないですか!」と責めるシーンがありましたが、キャストや制作側と原作者の距離感は近いのものなのしょうか?

通崎「コロナ禍前は打ち上げで原作のスタッフの皆様とも話す機会があったのですが、最近はその風習はあまりなくなってしまいました……。【推しの子】でマンガ家の吉祥寺先生がキャストを自宅に招いていましたが、コロナ前はああいった機会もあったというような話を聞いたことはあります。マンガ家さんだと、キャストに色紙を描いてくださる方も多いです。

弊社ではないですが、男性の原作スタッフさん達とキャストでサバゲ―をしたという話を聞いたことはあります(笑)。最近の2.5次元のキャストはオタク気質な方も多いので、キャスト同士も含めてオンラインゲームやカードゲームなどで仲良くなる人もいるようです」

舞台を作る際には原作者、キャスト、脚本家だけではなく多くの人が制作に関わっています。さまざまなプロが愛情とプライドを持って作り上げる2.5次元舞台。それゆえ衝突もあるかもしれませんが、うまくいったときの一体感は凄まじいものなのでしょう。

(企画・執筆:三鷹むつみ)

 

アニメ【推しの子】作品概要

<INTRODUCTION>

「この芸能界(せかい)において嘘は武器だ」
地方都市で働く産婦人科医・ゴロー。
ある日"推し"のアイドル「B小町」のアイが彼の前に現れた。
彼女はある禁断の秘密を抱えており…。
そんな二人の"最悪"の出会いから、運命が動き出していく―。
<STAFF>
原作:赤坂アカ×横槍メンゴ(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
監督:平牧大輔
助監督:猫富ちゃお
シリーズ構成・脚本:田中 仁
キャラクターデザイン:平山寛菜
サブキャラクターデザイン:澤井 駿
総作画監督:平山寛菜、吉川真帆、渥美智也、松元美季
メインアニメーター:納 武史、沢田犬二、早川麻美、横山穂乃花、水野公彰、室賀彩花
美術監督:宇佐美哲也(スタジオイースター)
美術設定:水本浩太(スタジオイースター)
色彩設計:石黒けい
撮影監督:桒野貴文
編集:坪根健太郎
音楽:伊賀拓郎
音響監督:高寺たけし
音響効果:川田清貴
アニメーション制作:動画工房

<CAST>
アイ:高橋李依
アクア:大塚剛央
ルビー:伊駒ゆりえ
ゴロー:伊東健人
さりな:高柳知葉
アクア(幼少期):内山夕実
有馬かな:潘めぐみ

<公式サイト>
https://ichigoproduction.com/

<公式Twitter>
https://twitter.com/anime_oshinoko

 

 

 

 

 

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numan編集部

声優、アニメ、舞台、ゲームまで!オタク女子のための推し活応援メディア

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