羽賀こはく
横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。
人生に潤いを与えてくれる存在である“推し”。「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てていくnumanで、マンガ・アニメ・映画好きの編集部員が推し作品を週に1本紹介していく「numan編集部員 今週の推し作品」。
今回紹介する作品は、小西 明日翔先生によるマンガ作品『来世は他人がいい』(講談社『アフタヌーン』連載中)。
大阪の極道の家に生まれながらも平穏に過ごしてきた主人公・染井吉乃。ある日、祖父から東京の極道の孫・深山霧島を婚約者として紹介され東京に引っ越すことになり…平穏だった日常が波乱に変わっていくスリルと笑いが融合した極道エンタメ作品です。
TVアニメは2024年10月7日(月)よりTOKYO MXなどで毎週月曜23時〜放送中。
本作の推しポイントは、やはり一癖も二癖もある魅力的な登場人物たち! 一言では言い表すことのできない魅力と人間味があるのです。メインキャラクターである吉乃と霧島を中心に展開されるスリリングなラブストーリーに、読み進めるほど推しが増えていきます。
INDEX
本作には個性的な登場人物が何人もいますが、主人公・吉乃とその婚約者・霧島は一癖も二癖もあります。
婚約者は、ヤクザよりも危険な男。「アフタヌーン」の人気連載『来世は他人がいい』(小西 明日翔)が、コミックDAYSで8月24日より再連載開始!
極道の家で生まれ育った女子高生、吉乃。家庭環境は特殊でも、おとなしく平穏に日々を過ごしてきた。この婚約者と出会うまでは――!https://t.co/RFtBUtpriO pic.twitter.com/pv7Rck2WkT— コミックDAYS|コミックデイズ (@comicdays_team) August 24, 2019
吉乃は関西最大の極道の孫娘。特殊な家に生まれながらも、一般的な金銭感覚と社会常識は祖父である染井蓮ニから叩き込まれています。
祖父から受け継いだ美貌の持ち主ですが、それゆえに中学生から周りの人に「梅田のホステス」「バツイチ子持ち」など呼ばれてきたため、本人は自分の美貌にあまり喜んでいない様子を感じます。ただ、筆者は第1話「負け犬に出る幕はない<前編>」で吉乃が登場した瞬間に「え……美人。好き」となりました。
吉乃の魅力は、ビジュアルだけではありません。世の中に居そうでいない“芯のある強い女性”なのです。第2話で霧島に「吉乃の取柄ってその顔と体だろ?それ売って金にしてきてくれない?」と言われた吉乃。新しい学校に馴染めないことも相まって、大阪に帰るか悩んでいると、祖父・蓮ニから電話がきます。蓮ニに「1年かけてその深山の倅(せがれ)を死ぬほど惚れさせたれ そんで1年たったら容赦なく捨てて帰ってこい」と言われた吉乃はプライドをかけて霧島に反撃します。
思いっきりファンタジー極道漫画です。2話目はコミックデイズアプリなどで読めます。「来世は他人がいい | 第2話 負け犬に出る幕はない〈後編〉」を読んでます! #コミックDAYS @comicdays_teamhttps://t.co/lVrl9ifcSX pic.twitter.com/gMovPuO2pt
— 小西明日翔 (@3Fe2O2Fe3O4) June 20, 2020
なんと、腎臓を片方売って400万円を作り、それを霧島に突きつけたのです!文字通り体を売った吉乃の男気に、筆者は心惹かれました。
さらに霧島と陰湿な嫌がらせをしていた同級生に対して啖呵を切るシーンも最高にかっこいい。「血反吐吐いて地べた這いずり回ってでも お前らのこと冥途の道連れにして 人生メチャクチャにしたるからな」と、男らしく言い放つのです。
迫力満点な吉乃の姿に霧島は惚れますが、筆者ももちろん惚れました。プライドと対面を捨てるくらいなら命を捨てる。そんな信念を持つ吉乃は、まさに“芯のある強い女性”なのです。
第1話で転校先の同級生に話し掛けられた時や、第2話「負け犬に出る幕はない<後編>」でナンパ男に遭遇した時の戸惑っている表情を見た時は、「気が強そうに見えて気弱なのかな?」という印象を受けたので、そのギャップがより際立ちカッコよかったです。
一方、霧島も読者を惹きつける魅力があります。祖父たちの話し合いで吉乃の婚約者になった霧島は、関東最大の極道の孫。周囲が遠巻きに眺めるほどの男前な容姿で、「文武両道・眉目秀麗とは彼のことだろう」と思わせる人物です。しかし、爽やかな笑顔の好青年かと思ったらとんだ曲者(くせもの)でした。
第1話から、読者が霧島に対して違和感を覚える描写が多くあります。例えば、他人に対して心底どうでもよさそうな態度。夜中に血まみれで帰ってくる場面。初対面では愛想をよくしていた吉乃へのそっけない態度など、好青年とはほど遠い描写の数々。本作を読み進めていくにつれて、霧島という人間への謎が深まります。
第2話で吉乃に惚れた霧島は、執着ともいえる愛情を抱きます。常にGPSで居場所を把握し、コピーの携帯電話を作ってSNSも監視。吉乃の望むことはなんでも叶えようする言動をします。読んでいて「ここまでやるか!」と思わせる徹底ぶり。期待していたほどわがままで自己中心的ではなかった吉乃に飽きて、第2話で「体を売ってこい」と言った人間とは思えないほどの変わりよう。次は何をするのかわからない“ミステリアス”な霧島のおもしろさは読者を魅了します。
— 小西明日翔 (@3Fe2O2Fe3O4) January 24, 2023
本作を読むにつれて、端正な顔立ちと素早い頭の回転で上手く生きることができる霧島は「人生が退屈なのだろう」と感じました。霧島が今まで出会ったことがないタイプの人間である吉乃は、退屈な人生を彩る唯一の存在なのだろうと筆者は考えています。
癖の強い主人公たちですが、作中の個性的な登場人物で二人に深く関わる登場人物が数人存在します。その中でも、鳥葦翔真に惹かれた人は多いのではないでしょうか。
翔真は中学生の時に吉乃の祖父に拾われ、吉乃と家族同然に過ごしました。2巻第7話「拳で殴らず笑顔で脅す」の最後に初登場。その時に名前は出ておらず、腕に見える刺青が印象的で気だるそうにしているイケメンに、「誰このイケメン!?」となったのは筆者だけではないはず。翔真は無愛想ですが、吉乃を大切にしていることが作中のいたるところに描かれています。2巻第8話「地獄の三角関係<前編>」では、自分の住む京都から染井家のある大阪へ行き、吉乃にアルバムを届けるために東京に来た翔真。その描写に翔真の不器用な優しさが表れており、翔真をもっと知りたいと“沼る”読者は多そうだと感じました。
翔真だけではなく、メインキャラクターに関わるキャラクターたちは個性が豊かで、それぞれに魅力があり、読めば読むほど、推しが増えていきます。ぜひ皆さんも推しキャラを見つけてみてほしいです!
発売中のアフタヌーン最新号に「来世は他人がいい」載っています。よろしくお願いします。 pic.twitter.com/WIyyUCFGlH
— 小西明日翔 (@3Fe2O2Fe3O4) July 29, 2021
最後に、TVアニメ『来世は他人がいい』の登場人物の“声”の魅力についてもお伝えします。キャスト発表時には吉乃役・上田瞳さんと、霧島役・石田彰さんをはじめとする豪華声優陣が話題となりましたが、筆者的には翔真が一番イメージに合っていると感じました。遊佐浩二さんの落ち着きある声に、翔真の気だるそうな関西弁がマッチしていたのです。
個人的にTVアニメで一番好きなシーンは、シーズン1エピソード2「誠意を見せたい。あわよくば少し好きになってほしい」でのワンシーン。霧島の祖父「深山一家」も所属する砥草会の三次団体「赤座興業」会長の娘・赤座しおりがいるクラブに乗り込んだ吉乃と霧島が、しおりの雇った不良と戦います。不良に殴られた吉乃がヘアドライヤーで殴り返し、「やかましいんじゃボケ お前が死ね!!」とメンチを切った時の背景演出に、吉乃の気の強さがよく表れていて好きでした。
TVアニメでは、吉乃の常識的な言動と決意ある行動の対比、霧島の好青年感と異常行動の対比。そして、緊張感あるアクションシーンと心理戦の表現がハイクオリティな映像と音楽によって絶妙に演出されています。緊張感と笑いのあるストーリー展開とアニメーションは、原作を知っている人でも、知らない人でも楽しめます。
さらに、THE ORAL CIGARETTESが歌う力強いロックなサウンドのOP主題歌「UNDER and OVER」と、歌い手・吉乃が歌う、哀愁漂うメロディのED主題歌「なに笑ろとんねん」。どちらも、少しダークな雰囲気がある本作にぴったりの楽曲でした。
“芯のある強い女性”の吉乃と、“ミステリアス”で独特な愛情表現をする霧島。ふたりを中心に展開されるスリリングなラブストーリー『来世は他人がいい』。魅力溢れる登場人物のことをもっと知りたくなる、読み進めるほど推しが増えていく。numan読者の皆さんもぜひ本作のスリルと笑いを楽しんでみてください。きっと第1話を読んだら、単行本を全巻買いたくなるはずです。
羽賀こはく
横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。
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