zash
子供の頃から培ってきた映画、海外ドラマ、特撮、アニメの知識を活かして活動中。各媒体でコラム、取材レポート、インタビュー記事を執筆する他、雑誌やマスコミ用リリースへの寄稿も行っている。
ファン待望の第2期の放送がスタートした、TVアニメ『呪術廻戦』。先日まで放送されていた「懐玉・玉折編」も高い視聴率を記録し、まだまだ人気が衰えていないことを証明してみせました。
そんな『呪術廻戦』ですが、実は原作とアニメとではそれぞれ異なるシーンが存在。今回は、五条悟と夏油傑の“青春”の様子が色濃く描き出された『呪術廻戦』懐玉・玉折編におけるアニメオリジナルシーンを紹介します。
アニメ『呪術廻戦』は「週刊少年ジャンプ」にて連載中の芥見下々による同名漫画を原作とし、「懐玉・玉折編」は、虎杖悠仁が特級呪物・両面宿儺の指を喰らう瞬間から遡ること約10年前を舞台としています。
東京都立呪術高等専門学校2年の五条悟と夏油傑が、星漿体・天内理子の護衛と抹消を任されることから物語が幕を開け、この任務をきっかけにして、次第に夏油が呪詛師へと身を堕としていく様子が克明に描かれていきます。
全5話と短い構成でありながら、夏油傑がいかにして呪詛師へと身を堕としたのか?五条悟とはどんな関係性だったのか?という物語を見事に紡いでいる本編。
早足ながらも丁寧に描けた要因には、やはりアニメオリジナルシーンの存在が欠かせないと言えます。
INDEX
まずは冒頭の場面に注目。
1級術師・冥冥と2級術師・庵歌姫が、調査のために、とある洋館へと向かうシーン。アニメでは洋館へと向かうシークエンスや洋館内をくまなく探索する瞬間が描き出されていますが、これはすべてアニオリシーン。原作では、同じところを延々と周回する廊下の場面からエピソードがスタートするのです。
さらにアニメでは歌姫によって結界がツギハギであることが明かされますが、原作では冥冥の口から回答が示され、アニメで印象的だったお互いが廊下の双方に向かって走り出す描写も原作にはなく、突然、五条が天井を突き破ってくる展開になります。
この冒頭の一連のシークエンスが存在することによって、視聴者は久しぶりに訪れる『呪術廻戦』の世界に没頭することができるようになり、五条や夏油が登場した瞬間の興奮度を爆上げすることに成功していると言えるのではないでしょうか。
さらに第1話には、もう一つ印象的なアニオリシーンが存在します。それは、五条と夏油が体育館内でバスケをしながら、お互いの意見をぶつけ合う場面。実はこれは完全なアニオリシーンで、原作では舞台が教室でありバスケもしていません。
「懐玉・玉折編」を象徴するようなシーンとなっており、後に訪れる“青春の儚さ”のようなものを表現する際に、より感情移入をもたらす作用があるように感じました。
第1話のラストの時点から続く、天内救出シーン。
夏油がビル内で爆発に巻き込まれる部分がすでに原作とは異なっているのですが、さらに驚いたのは、夏油が紅茶を淹れる場面。これもまたアニオリシーンであり、夏油の落ち着き払った性格や趣味趣向が現れた形になっています。
そして、同エピソードから本格的に登場することになる“パパ黒”こと伏黒甚爾のキャラクターを印象づけるカットも存在。それは競艇場でたこ焼きを食べる甚爾が立ち上がり、ラーメンを運ぶ男性とぶつかる場面。男性は衝撃を受け転倒しますが、甚爾は全く微動だにしません。
これもアニオリシーンで、甚爾が「天与呪縛のフィジカルギフテッド」によって、超人的な身体能力の高さ、つまりは恐ろしいほどに身体が強靭であるということを強調するという製作陣の意図を大いに感じさせられます。
その他、第2話では黒井美里の登場シーンや五条と呪詛師が戦闘を繰り広げる舞台の相違などが見受けられ、それぞれ強烈な印象を残しています。
原作では建物の上の開けた場所で、黒井救出作戦会議が行われますが、アニメでは閉塞的な路地裏で、あたかも天内が檻の中にいるような描かれ方をしています。さらに沖縄へと向かう一行のフライトや黒井救出の瞬間がアニメではよりハッキリと描かれており、突然の急展開を緩和する作用をもたらしているのではないでしょうか。
また、これはアニオリというわけではないのですが、原作では四コマと見開きで表現されていた五条、夏油、天内らの青春の様子が、アニメでは印象的なカットとして映し出されています。青春の“青さ”を前面に押し出した描写は、後に訪れる甚爾による衝撃的な急襲シーンをよりインパクトのあるものにしている印象を受けます。
そして、天内が衝撃的な死を遂げる直前に、これまでの人生を振り返る回想シーンを盛り込むことで、感情移入を誘ってからの急転直下! このジェットコースターのような感情の揺さぶりは、アニメという映像作品だからこそ体感できるものだと言えるでしょう。
薨星宮本殿にて甚爾と夏油が間合いを詰める場面も実はアニメオリジナル。襖など遮蔽物を2人の間に置くことで、よりドラマチックかつ真意を悟らせないようになっています。夏油が仮想怨霊を現出させ、簡易領域を展開する場面の演出も映画のようで秀逸でした。
続いて、甚爾の前に復活した五条悟が現れ「そーかもなあ!!」というセリフを口にする印象的なカット。原作にも存在するシーンですが、その演出が素晴らしい。原作では横からのアングルでしたが、アニメでは正面からのバストアップに。カメラのアングルさえも調整し、いかに五条悟が神々しく見えるよう工夫しているのかが伺えます。
『呪術廻戦』懐玉・玉折編はドラマチックな演出、実写のようなカメラワークと作画が意識されているように感じたのですが、なかでも第5話冒頭の五条、夏油、家入による何気ない風景を映し出したカットにそういった部分を大いに感じました。
というのも、五条が自らの「無下限呪術」に関して解説する場面は、原作では演習場を舞台としていましたが、アニメでは校舎の中庭のような場所を舞台にしています。教室の窓などを通しての画角は非常に写実的で、もはやアニメではないような印象さえ与えます。これにより視聴者はリアルな捉え方をできるようになっているのではないでしょうか。
ドラマチックな演出という観点で言うと、夏油傑の感情の変化をいくつものアニオリシーンで構成している点も忘れられません。
まず原作には電車に揺られる夏油の姿は描かれていないですし、特級術師・九十九由基との会話で葛藤する夏油の背後の窓の外で雨が降り出す演出は原作にはありません。雨やシャワーの音と拍手を重ね合わせた演出は鳥肌級に見事な演出でした。
「懐玉・玉折編」は物語のペースが割と駆け足なので、感情の起伏を音楽で補填している節さえ感じさせ、こういった音で感情を表現できる利点は、やはりアニメならでは。
その他、同期の灰原雄が眠る安置所で七海健人が椅子を投げるシーンもアニメオリジナル、原作で謎だった村民のセリフの中に存在する「■■■■」という部分は機密文書のように書類の文字を消す形で表現するなど、原作との小さな差異も随所に存在しています。
様々なアニメオリジナルシーンを探すのもまた楽しい『呪術廻戦』。実はアニオリシーンが重要な役割を果たしていることも多いので、ぜひとも、今回の記事を参考にして、もう一度視聴してもらいたいもの。また、異なる視点から楽しめること請け合いです。
(執筆:zash)
<イントロダクション>
少年は戦うーー「正しい死」を求めて
集英社「週刊少年ジャンプ」で連載中の、芥見下々による漫画作品『呪術廻戦』。
2018年3月から連載が開始され、人間の負の感情から生まれる呪いと、それを呪術で祓う呪術師との闘いを描き、既刊20巻にしてシリーズ累計発行部数は驚異の7,000万部を突破。
2020年10月から2021年3月までは毎日放送・TBS系列にてTVアニメ第1期が放送され、国内のみならず全世界で大きな反響を呼んだ。さらに、同年12月24日、第1期の前日譚にあたる物語が描かれる『劇場版 呪術廻戦 0』を上映し、全世界で一大ムーブメントを巻き起こした。
そして、2023年に放送が決定している第2期で描かれるのは、五条 悟と夏油 傑の高専時代の物語「懐玉・玉折」。劇場版にて示唆された五条と夏油の決別した過去がついに明らかとなる。
さらに、連続2クール内にて「懐玉・玉折」の後、第1期から続く時間軸の物語「渋谷事変」も描かれることが決定。10月31日、ハロウィンで賑わう渋谷駅周辺に突如“帳”が下ろされ大勢の一般人が閉じ込められる。単独で渋谷平定へと向かう五条だが、これは夏油や真人ら呪詛師・呪霊達による罠だった…。虎杖、伏黒、釘崎といった高専生のメンバーや呪術師たちも渋谷に集結し、かつてない大規模な戦闘が始まろうしていた。呪いを廻る壮絶な物語が再び廻りだすー
<「懐玉・玉折」ストーリー>
最強の2人 戻れない青い春
2018年6月、両面宿儺を己の身に宿した虎杖悠仁。
2017年12月、祈本里香の呪いを解いた乙骨憂太。
そして更に時は遡り2006年(春)—。高専時代の五条 悟と夏油傑。
呪術師として活躍し、向かうところ敵のない2人の元に、不死の術式を持つ呪術界の要・天元からの依頼が届く。
依頼は2つ。天元との適合者である“星漿体(せいしょうたい)” 天内理子、その少女の「護衛」と「抹消」。
呪術界存続の為の護衛任務へと赴くことになった2人だが、そこに伏黒を名乗る“術師殺し”が“星漿体”の暗殺を狙い介入する…。
後に最強の呪術師と最悪の呪詛師と呼ばれる五条と夏油、道を違えた2人の過去が明かされる―。
【STAFF】
原作:「呪術廻戦」芥見下々(集英社「週刊少年ジャンプ」連載)
監督:御所園翔太
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史・小磯沙矢香
副監督:愛敬亮太
美術監督:東 潤一
色彩設計:松島英子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:石川大輔(モンスターズエッグ)
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳 圭介
音楽:照井順政
音響監督:えびなやすのり
音響制作:dugout
制作:MAPPA
【CAST】
五条 悟:中村悠一 夏油 傑:櫻井孝宏
家入硝子:遠藤 綾
天内理子:永瀬アンナ
伏黒甚爾:子安武人
【主題歌】
オープニングテーマ:キタニタツヤ「青のすみか」 (Sony Music Labels)
エンディングテーマ:崎山蒼志「燈」 (Sony Music Labels)
<公式サイト>jujutsukaisen.jp <公式twitter> https://twitter.com/animejujutsu
<コピーライト表記>©芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
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