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秋に読みたい「おしゃれ業界」BLコミック5冊をガチ腐女子が紹介する。スーツ姿なんてナンボあっても良いですからね?

「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てていくnuman。今月の深堀りテーマは“推しゃれ”。

夏の暑さが和らぎ、過ごしやすくなってくる10月。衣替えを悩んだり、明るい色味から落ち着いた色味の服やメイクを選ぶようになったり……さらに、月末にはハロウィンが控えていたりと、ファッションへ思いを馳せることが多くなる時期。numanでは、「推し」と「おしゃれ」を掛け合わせたさまざまなコンテンツを掲載中です。

だんだん涼しくなり季節は秋。秋といえばおしゃれも楽しみたいシーズン。そんな今回は「おしゃれ業界」BLコミックをガチ腐女子ライターが5作品ご紹介します!

『コスメティック・プレイラバー』楢島さち:ついコスメが欲しくなる。胸キュン通り越して胸ジュワ…!

『コスメティック・プレイラバー』9巻(リブレ)

『コスメティック・プレイラバー』9巻(リブレ)

 

 “美容部員の棗(なつめ)は、後輩の佐橋(さはし)"ペア売り"をさせられている。仕事も棗のこともナメきっている佐橋に売上トップを奪われ、イライラしながらも先輩風を吹かせる棗だったが…。ある時棗はゲイがバレて佐橋に脅されてしまい、無理やりセフレに!?しかも、うっかり佐橋の覚醒スイッチを押してしまって――”(コミックス1巻あらすじより)

「俺、本気になっていいですか?」
【カップリング属性】生意気だけどスパダリ後輩美容部員×超真面目でピュアな先輩美容部員

デパコスBA(美容部員)のお仕事ラブストーリー。今年8月には実写ドラマ化され大きな話題を呼んだ本作。BLには珍しく主人公二人ともBAというコスメを軸にしたストーリー展開が新鮮です。

作中に出てくるコスメアイテムに心惹かれたり、カウンター接客がリアルで、前チーフから引き継いだ常連の顧客エピソードなども丁寧に描かれているので、こんなBAさんがいたら絶対良いな! そのコスメ実際にはどんなテクスチャーなんだろう? 等々読んでいるうちに夢中になってしまい、新しいコスメがついつい欲しくなるような感情が湧いてきます。

また巻数を追うごとに先輩BAの棗、後輩BAの佐橋ともに人間性もスキルも上がっていき棗の可愛さが増し増しなのと、佐橋の溺愛具合とスパダリ感が素晴らしいところは大きく推せるポイント!仕事でもプライベートでも、お互いを尊敬して高めあっていくことのできるカップルへと成長していきます。

友であり、師であり、ライバルであり、恋人である二人は、仕事への志も高いけれど心もしっかり結ばれているので甘々なラブストーリー部分も不安なく読み進められます。

『コスメティック・プレイラバー』8巻(リブレ)

そして攻めである佐橋のすごいところは“大好きな棗リスペクト・棗ファースト”がブレないところ。どんな環境や状況でも、すべては棗に認めてもらいたいがために頑張っているのです。初期の頃の佐橋は有能でもチャラい印象があり、「お仕事なめてる若者」感が見え隠れ。

そこからの経緯はネタバレになるので詳しく書けないのが苦しいところですが、ストーリーが進んでいくなかで佐橋視点での回想があり、『なぜ棗を好きになったのか』『なぜ仕事にとことん打ち込むようになったのか』など明確にされるエピソードには胸キュン通り越して感動で胸ジュワ…! 思わず涙が出そうになるので必見。

巻数を重ねるごとに強固になる関係の主人公カップルもさることながら、本作は周りの個性豊かなキャラクターたちも注目ポイント。個人的には二人が勤務するコスメブランドの女性上司であり有能な前チーフ・原田の広い視点でのアドバイスや、その本店であるパリにいるトップアーティスト・エマの鋭く現実主義なコレクションへの指摘など、コスメお仕事モノということもありキャリアを重ねる素敵な女性たちが活躍している姿も推せみ強め。

さはなつの甘くラブラブな物語とともに、コスメカウンターのBAたちが奮闘するリアルな裏側事情も含め、恋もお仕事も全方向で楽しめる一作です!

 『ギンモクセイの仕立て屋』マミタ:スーツ姿なんてナンボあっても良いですからね?

『ギンモクセイの仕立て屋(下)』(徳間書店)

『ギンモクセイの仕立て屋(下)』(徳間書店)

祖父の遺した銀座のテーラー「ギンモクセイ」を継いだ生吹(うぶき)

けれど祖父のいた頃と違い、今では閑古鳥が鳴いている…!? 焦りばかりが募っていたある日、灯生(テオ)と名乗るイケメンが店を訪ねてきた久々の来客に舞い上がるけれど、いきなり上から目線で接客のダメ出しをされてしまう。銀座の超一流レストランの元メートル(給仕長)だという接客のプロ・灯生とともに、店の立て直しをはかることになって…!?”(コミックス上巻あらすじより)

俺がお前をプロデュースする。俺に賭けてみないか?
【カップリング属性】年下有能元メートル・ドテル(給仕長)×脱サラ崖っぷちテーラー店主

 この作品はオーダーメイドスーツテーラーのお話で、テーラーの知識などなど仕立て屋お仕事BLとしての側面でも大いに見応えあり! 祖父の店を継いだものの閑古鳥が鳴く始末の生吹の目の前に、モデルばりの美男・灯生が現れて店のプロデュースに一役買わせてと申し出る事からストーリーが始まります。

接客とプロデュースのプロである灯生のアドバイスは的確で、生吹は自分の問題に気づき変わっていくなか、灯生への気持ちも変化していくのですが、まずはなんといってもストーリーの面白さ! 序盤からテンポよく展開するドラマにぐいぐい惹き込まれ、またこのテンポが最後まで緩まずあっという間に読み終えてしまうことのスゴさに驚かされました。

 店の再建とプライドを賭け、互いに過去を乗り越えていく男たちの愛と再生の物語。熱い展開と無理のないストーリー運び。明かされる意外なエピソード、とマミタ先生の大きな魅力である抜群のストーリーテラーぶりに早くもスタンディングオベーションです。

 そしてなんといっても本作を語る上ではずせない見どころはスーツ。マミタ先生の描くスーツ姿は特別に美しいこと。久しぶりにスーツそのものの美しさや格好良さが五臓六腑に染みわたるほど感じました…!

スーツ自体が洗練された衣服であることがよく分かり、その魅力を余すことなく頭から浴びられるこの至福。作中でも各部位への細かな説明とともに、粋に着こなすための必要な要素など豆知識もさりげなく描かれていてタメになります。

『ギンモクセイの仕立て屋(上)』(徳間書店)

『ギンモクセイの仕立て屋(上)』(徳間書店)

男前が着るビシッと決めたスリーピーススーツ。いやこれ嫌いな人類っているんでしょうか?見目麗しいメンズのスーツ姿なんてもうなんぼあってもいいですよね? さらにみんな大好きソックスガーターを着用。最高すぎて天を仰ぎました。ありがとう世界。

 ネタバレは避けますが、上下巻で構成されている本作では上巻ではいかにお客様に来店していただくのか、銀行からどう支援してもらうのかなど経営コンサルタント的な物語の側面も楽しめます。いっぽう下巻は攻めである灯生サイド視点のストーリーも。

 恥ずかしながら本作の灯生の元の職業、メートル・ドテル(=レストランの給仕係のトップで、レストラン支配人やサービスの責任者を指す)という職業名もこの作品で知りました。スーツテーラー知識だけでなく、レストラン界隈の豆知識も得られる本作、ありがたい。

 そういった部分も含め、生吹と灯生に関しても巧妙なストーリー展開で心を持っていかれるので、見どころ満載。主役二人に芽生えた恋の行方にも注目です。

 『赤のテアトル』緒川千世:破滅的に身を捧げる受け。ハイヒールはため息が出るほど美しい

『赤のテアトル』(祥伝社)

『赤のテアトル』(祥伝社)

パリのファッション界で、一躍名を馳せた女性靴ブランド・アバルキン。その急成長の裏には、秘密があった。それは淫らな肢体とむせ返るような色香で業界人を惑わす、美しき青年社長・ユーリの枕営業…。そんな娼婦まがいのことを夜ごと繰り返すのも、すべては愛しい側近のゴーストデザイナー・アダムの夢を叶えるため。彼を繋ぎとめられるなら、たとえ利用されていても構わないと気丈に身体を差し出すユーリだったが―――。”(コミックスあらすじより)

 

あの赤い靴をはいた日から、僕は彼のものになった
【カップリング属性】独占欲に葛藤する側近ゴーストデザイナー×歪んだ愛を捧げる淫靡で健気なミューズ

 パリ・ファッション業界のハイブランドシューズを題材にした物語。童話・赤い靴をしっかりオマージュして丁寧にストーリーが組まれて描かれた作品でもあるので、歪んでいてダークな印象でもありますが、その華やかさといびつさ、耽美的で狂気に縁取られた様子は猛烈にほの暗く、そして美しい魅力を持つ作品です。

女性靴ブランド「アバルキン」の若き経営者・ユーリ。デザイナー兼広告塔を務める美しい青年。そして、ユーリに忠実に尽くすマネージャーのアダム。マネージャーとは仮の姿で、彼の実態は「アバルキン」のゴーストデザイナー。経営者であるユーリに枕営業させながらも、そのユーリをイメージ源のミューズとして新作を生み出す靴職人。

まず特筆すべきなのは表紙がおそろしくおしゃれなこと! 主人公であるユーリは美しくアンドロジナスな妖しい蠱惑的な表情。長い金髪にブラックスーツ、さらに足元にはこの物語のテーマでもある赤いハイヒールがよく映えています。

このカバー袖をめくると、ユーリの手をとってひざまずく、側近でありゴーストデザイナーのアダムの姿が! すでにこの段階でクラッとくるほどのインパクト。そしてどこか不穏で歪んだ空気感がたまりません。 

作中を一貫して流れる空気感はどこか狂っていて退廃的なのですが、そのなかでも攻めであるアダムの役に立ちたい、アダムの側にいたいという気持ちを押し殺しながら破滅的に身を捧げる受けのユーリの健気さは泥中の蓮のようです。

登場人物たちみんなが赤い靴に踊らされているのですが、なかでも群を抜いて病んでいるのが靴職人兼デザイナーの攻めのアダム。詳細は言えませんが強いて言うなら自分の感情に無頓着過ぎる暴力的なまでの無垢な男といった印象。そんな彼から生み出されるハイヒールはため息が出るほど芸術的で美しいのでその部分にも注目です。

パリの街並みや富裕層のパーティー、豪奢な邸宅など美麗なものの描写もあり、やはり耽美の極みとしか表せませんが、繊細で病んでいて物哀しさを滲ませる緒川千世先生の表現力はなんとも淫靡で美しい世界観。

背徳的で閉鎖的、それでも息苦しいほどの純愛モノが好きな人にはぜひともオススメしたい一作です。加えて巻末にある番外編でも衝撃が。もはや番外編と呼べない大事な話が含まれているので、併せて必見です!

『He is beautiful. 』天禅桃子:服装や構図がおしゃれ極まれり。2巻への展開に身悶え! ヴァー!

『He is beautiful. I』(大洋図書)

『He is beautiful. I』(大洋図書)

“ファッションブランドのデザイナー兼社長を勤めるミチの店に、ひとりの男が訪ねてくる。俳優としても人気急上昇中のモデル・ヨシカだ。モデルとして使ってほしいと言われるが、もったいないと断る。それ以来、ヨシカは頻繁に来店し、ミチもヨシカと話すことが楽しくなっていた。そんなある日、ミチはヨシカが専門学校時代の同級生で、コンテストのモデルを頼んだ相手だと思い出す。昔を思い出したミチに、ヨシカは突然キスをしてきて…”(コミックス1巻あらすじより)

 

俺の体、魅力ありませんか?
【カップリング属性】人気モデル兼俳優×服飾デザイナー兼社長

ファッション業界BLです。大手ブランドを退社後、独立して自社ブランド・michi kashiiを立ち上げた香椎啓(ミチ)。ある日、街中で自分が数年前にデザインした服を綺麗に着こなしている人を見かけて、上機嫌で店に帰ってくると、少しの時間差で本人が現れ、それは人気モデルのヨシカでした。

よくよく思い出してみれば、ヨシカは服飾を学んだ専門学校時代のミチの同級生。ミチと同じくデザイナーの道を選ばずに『とある』理由でヨシカは今やトップモデルとして活躍していた…という始まりです。

服飾を学んだ専門学校時代を経て、今は互いに違う分野で活躍しているヨシカ(攻め)とミチ(受け)の再会ラブストーリーですが、天禅桃子先生の人物描写が丁寧で読者を置いてきぼりにしない物語の細やかさが秀逸!

今やアトリエをかまえ、新進気鋭の服飾デザイナーとなったミチの学生時代の自信満々で快活な姿には若さゆえの勢いがあり、今の少し落ち着いて大人になった様子も、その間に色々あったことを感じさせてくれます。こういった説得力のある描写がストーリーに味わい深さを加えているように思いました。

また、モデルのヨシカもミチの才能と情熱に惚れ込み、ミチの作る洋服に合うように努力して身体を作り上げていることが判明したりとキュンとくるエピソードもあり、お仕事モノの要素を損なうことなく二人の恋も優しい陽射しの下、ずっと爽やかな風が吹いているような雰囲気を感じさせる作品となっています!

『He is beautiful. II 』(大洋図書)

『He is beautiful. II 』(大洋図書)

なにより表紙をはじめとする各話の扉絵ファッションや構図がおしゃれ極まれりなので眼福。作中にも素敵な洋服がたくさん出てくるのでシーズンに合ったルックの組み合わせにも注目です。

そんな二人ですが、なぜヨシカはミチと同じように服飾の専門学校に通いながらもモデルの道を選んだのか、どうして現在のモデル兼俳優になってミチの前に現れたのか…。

詳しく書けないのが残念なところですが、その『とある』理由やその後の2巻へ続く展開に思わず頭を抱えて身悶え! ヴァー! 一筋縄ではいかない恋にハラハラしたり共感したり、そうだな、大人になってからの恋は青くてキラキラだけじゃない…と爽やかな風感じたマインドどうした状態です。この“青春の想い持ち越しこじらせ”ラブの行方にもご注目ください!

『恋をするには透明すぎる』原作/阿賀直己・作画/yoshi:圧倒的画力!目が潰れるかと思いました

『恋をするには透明すぎる』(リブレ)

『恋をするには透明すぎる』(リブレ)

“都内の美容室で店長を務める一哉は、過去の出来事から本気の恋を遠ざけていた。そんなある日、一哉はふるさとの幼馴染みからムリヤリ見習いを押し付けられる。名前からてっきり女性だと思っていた見習いが、実は男で…!?”(コミックスあらすじより)

 

真っ直ぐに向けられる、そのまなざし、その気持ち。眩しすぎて、無垢すぎて、苦しすぎてーー。
【カップリング属性】一途な年下大型ワンコ美容師×恋に臆病な拗らせビッチ系クールビューティー店長

アシスタント美容師×店長美容師の美容師BLですが、まず本作を紹介する前に大声で叫ばせていただきたい。yoshi先生の圧倒的画力によるキラキラ引力が全ページすさまじい!!

一見好青年、でも少しだけえっちなお兄さん感を漂わせるけしからん店長・一哉(かずや)にしろ、おのぼりさん上等、上京ホヤホヤ一途な年下大型ワンコ・ミキ(攻め)にしろ美男が過ぎる!主人公二人があまりにもイケメンで久しぶりに目がつぶれるかと思いました。

さて、美容室で店長をする一哉にアシスタントにしてやってくれと幼馴染みから無理やり押し付けられたのがミキ。ミキは初っ端からしっぽブンブンで一哉に抱きつき、一哉のことも知っている様子。ミキは一生懸命に一哉とのキョリを縮めようとして…と続くのですが、一哉は『過去にあった出来事』のため、人間関係に疲れ恋愛にも臆病になっています。

『恋をするには透明すぎる2』(リブレ)

『恋をするには透明すぎる2』(リブレ)

猛烈に懐いてくるミキの事も気にはなっているけど、いつかただの憧れみたいなものと気づいて離れるものだろうとタカをくくって最初から距離を取ろうと身構えます。

この懐いていくミキ自体、美形だけれど無愛想ゆえに周囲に誤解を与えがちで孤立しがちで一哉以外には上手く感情表現ができないという厄介さがあり前途多難な上に、過去の人間関係のトラウマから、あえて周囲と距離をとっている一哉、とそれぞれ、心の中で膝を抱えて孤独でいたところを、出会い互いに影響し合うことで物語は大きく動いていくこととなります。

一見、愛想が良く、用心深く明るい外ヅラを作れる一哉は『過去にあった出来事』がきっかけで傷ついて苦い思いを味わった部分を上手に隠せるのが良くも悪くも“大人”ですが、ミキの最初から一哉へ向ける好き好きオーラ溢れるワンコっぷりはピュアピュアしくてまぶしいほど。おまけにド美形のDT。個人的にDT年下ワンコ攻めは大好物なので大変楽しかったです。

店長の一哉に仕事で叱られても前向きに頑張り、一哉の『過去の出来事』の噂に激怒したりとミキは何もかもが直球型。純粋で、まぶしいほど真っさら過ぎるミキから距離を置こうと遠ざけようとする一哉ですがこじらせた大人の心の扉は再び開くのか? という部分に注目の一作です。

そしてネタバレではないので萌えポイントをもうひとつだけ。美容師同士のシャンプー台越しのキス未遂は有罪です。萌え過ぎて床にビターン!しました。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

上記5作品を「おしゃれ業界BL」としてピックアップしてみました。思わず街に出てお買い物に行きたくなる作品や、コレクションシーズンを意識して見たくなる作品、おしゃれを楽しんでみたくなる作品等々、BLからもさまざまなおしゃれジャンルを感じてくだされば幸いです。

(執筆:加藤日奈)

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加藤日奈

アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。

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