宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
それもこれも、山田をきっかけとして人と関わるようになり、市川なりに友人関係を構築できるようになったからなのではないでしょうか。いわば山田が「自分の世界を輝かせてくれた」のです。
アシストしてくれる女友達・萌子や、素直に感情を顕してくれる友人・足立、そして恋敵である南条先輩(通称・ナンパイ)など、自分の内側に引きこもっていた市川の矢印が外側に向くようになり、自分が納得できる自分になるように成長しようという気持ちになれたのです。
山田は当初、市川のことは眼中にありませんでした。他の男子と同じように思っている節があり、(自分にとってのモブである)市川へ侮蔑の目を向けるような一幕も……。
華やかな大人の世界に居て、みんなの憧れである山田。そんな山田が市川に惹かれた理由は「市川が自分の世界を穏やかにしてくれるから」でしょう。
2巻に収録されているKarte.27「僕らははぐれた」では、一緒に職業見学に行くことになった山田と市川。
学校に帰る途中、他の班員と共に行動していたはずがちょっとしたミスではぐれてしまい、二人は電車のホームに取り残されてしまいます。そんな状況に思わず子供のように泣き出してしまう山田と、何も言わずにミルクティーを差し出す市川。
基本的に市川視点で話が進むため山田の心情は描写されませんが、ミルクティーを受け取った後の、困惑したような喜びが溢れているような微妙な表情を覗かせます。
山田は中学生である傍らでモデルの仕事をしていることもあり、周囲の大人たちから子供扱いされることを悔しく思っている描写があります。
でも市川は山田に「大人であれ」もしくは「子供らしくしろ」と望むことはないし、「なんで泣いてんの」と冷静さを押し付けてきたりもしません。
みんなの憧れであり、大人になりたいと虚勢を張る山田。そんな市川の穏やかな優しさに触れたとき、自分が子供であることを思い知らされ改めて気恥ずかしくなり、同時にそれでも構わないと知り嬉しくなり、微妙な表情を見せたのではないでしょうか。
宮本デン
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