阿部裕華
編集者/インタビューライター。映像・漫画・商業BL・犯罪心理学の沼に浸かる者。推しは2次元の黒髪メガネキャラ・英国俳優・BUMP OF CHICKEN・愛猫2匹。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
アニメ好きなら一度はこの声を聞いたことがあるであろう、声優の宮村優子さん。
出産や育児、闘病、渡豪などにより、2000年代から声優業を縮小し、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』式波・アスカ・ラングレー役、『名探偵コナン』遠山和葉役と限られた作品にのみ出演。一方で、専門学校の講師やアニメ作品の音響など声優以外の仕事をしています。
2024年1月に放送開始するTVアニメ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(以下、チェリまほ)』では、音響監督を務めます。
そこで、アニメの放送に先駆け宮村さんが声優以外の仕事へ活動の幅を広げた理由を聞くべくインタビューを決行。きっとライフスタイルや体調の変化によるものだろうと勝手な憶測で話を聞いていくと、「作品づくりに深く関わりたい」「女性向け作品は女性のチームで音を制作したい」と全く異なる理由だったことが発覚!
とはいえ、2000年代のエンタメ業界の裏方はまだまだ男性社会。そんな環境へ飛び込むことは、並大抵の覚悟では済まなかったはず。率直に疑問をぶつけると、「私、古のオタクなんです……」と口火を切る宮村さん。
「“やおい”に触れていたから、エンタメを含めたクリエイティブな業界で女性たちが活躍する時代が来るのは、そう遠くないと思っていました」と、これまた予想外の回答が……。
気づけば仕事の話からBL遍歴を聞くインタビューに発展。初めて二次創作同人誌に触れた時の衝撃や子育て中・渡豪中のオタ活事情を振り返っていただくことに。また、自称・古のオタクと語る宮村さんが今のBLジャンルに対して「すごくいい時代になった」と感じている理由を聞きました。
さらに、「いろいろ読んでいる中でも、『チェリまほ』が1番好き」と話す宮村さん。『チェリまほ』の魅力はもちろん、原作ファンの音響監督としてこだわった、キャスト陣へのディレクションや音づくりについてもお話いただきました!
INDEX
――宮村さんは、演者のほかに専門学校の講師や音響などの仕事をされていますよね。出産、育児、闘病などが重なったことでキャリアの幅を広げたのでしょうか?
宮村優子(以下、宮村):
実は、第一子を出産する前の2002年頃から音響監督の下で勉強をしたり、アシスタントとしてお手伝いをしたりしていました。大きな理由としては、プライベートのことよりも「作品づくりに深く関わりたい」と思ったからです。
役者としての仕事も好きなのですが、声優は作品づくりのほんの一部にしか関わることができません。私はずっと舞台をやっていましたけど、舞台の場合、役者であっても舞台をつくり上げる時間の方がお客さんの前に立ってお芝居する時間よりも多いほど。一方、声優は台本を読みながらお芝居をするだけで終わります。
監督や音響監督の方がもっと作品づくりに深く関わることができるので、挑戦したいと思うようになりました。
また、「女性向け作品は女性のチームで音を制作したい」という思いもありました。女性がドキドキしたりキュンとしたりする音や音楽などは、同性の方が勘所がわかると思うんですよね。当時は、まだまだ男性スタッフの方が女性よりも多い時代でしたので、そういう環境を作りたいと思ったこともありましたね。
――2000年代のエンタメ業界の裏方仕事は、今と比較すると男性社会だったかと思います。女性がその中に入っていくのは、それなりの覚悟も必要だったのではないでしょうか。
宮村:
そうですね……。私が音響の仕事を始めた時は、女性が活躍できる環境が整うちょっと前だったと思います。エンターテインメントを支えてきた素晴らしい美術屋さんやアニメーターさんなど、“職人”と呼ばれる方たちが活躍し、業界をけん引してきていました。
その状況を役者の立場から見ていた時は、「うわ……すごく厳しい世界だな」と感じていました。今ではあり得ないのですが、「仕事は見て覚えろ!」「徹夜で仕事をするのが当たり前!」という時代。例えるなら、劇画調の世界だったんですよ。
だけど、私は昔から女性たちがこの業界をけん引していくと思っていたんですよね。
――昔から女性がエンタメ業界で活躍できると思っていたのには、どんな理由が?
宮村:
私、実は“古のオタク”なんです。
まだ「BL」という言葉がなく、「やおい」と呼ばれていた時代から同人即売会に行っていたくらいBLがとても好きで。原作には存在しないキャラクター同士の関係性をお姉さま方が妄想して作品に落とし込んでいるわけですよ。今でいう二次創作の中に、素晴らしい神作品がたくさんありました。
私も描きたいと思っていた時期もあったのですが、絵がとても下手で描けず、友人の作家さんの手伝いをしていたこともあるんですよ(笑)。
そうやって身近でお姉さま方の熱量やクリエイティブ能力の高さを見ていたので、エンタメを含めたクリエイティブな業界で女性たちが活躍する時代が来るのは、そう遠くないと思っていました。
――まさか「やおい」文化に触れていたことがきっかけで、業界の未来を見据えていたとは……。
宮村:
技術屋さんや職人さんの手によって長年かけて培われてきた劇画調の世界がある一方で、自分の思いの長けをぶつけて新しいクリエイティブを生み出していく世界もある。後者の世界にいる人たちはみんな、作品愛やキャラクター愛の熱量が高かったから、この熱量を生かせる未来が必ず来るだろうと思っていました。
実際に私が初めて音響監督を務めたTVアニメ『LOVELESS』(2005年放送)は、比較的女性が多いチームで制作されました(※)。男性スタッフもたくさんいましたが、女性チームの意見と男性チームの意見を交えて進めていきましたよ。
そこからの業界の変化は速かったと感じています。2008年からオーストラリアのメルボルンに住んでいたので、一度音響の仕事から離れて、今回TVアニメ『チェリまほ』の現場に戻ってきましたけど、女性が働きやすい環境になっていて「すごく変わったな!」と思いました。
(※)三間雅文と共同監督
――具体的にどんな変化を感じていますか?
宮村:
テクノロジーが進化したことで、自宅でも仕事ができるようになったのは大きいです。
昔は音声を編集するにしても、ものすごく大きなメモリーが必要で、デスクトップPCはすごく大きいものを使って作業していたんですね。私が子どもを産んだのが2004年で、『LOVELESS』で音響監督を担当したのが2005年だったのですが、自宅に帰って作業なんてできないので、編集室に赤ちゃんを連れ込んで作業していましたから(笑)。
それが今ではメモリーもすごく小さくなって、ノートPCで作業ができるように。データもクラウドで共有ができるから、作業がとっても楽になりましたよ。
また、『チェリまほ』の現場は、ほぼ女性スタッフです。「女性の視聴者さんが求めているものをつくりたい」という感性のもと、ディスカッションを重ねてつくられました。「20年前にはできなかったことができている」と感じています。
――今日は、宮村さんの仕事のお話を聞こうと意気込んできたのですが、それ以上に宮村さんのBL遍歴を聞きたくなってしまいまして……。
宮村:
もちろん大丈夫ですよ! なんでも聞いてください。
――ありがとうございます……! 宮村さんはいつ頃から「やおい」や「BL」が好きだったんですか?
宮村:
高校生の頃には同人即売会に行っていましたね。今でこそ本屋さんに「BLコーナー」というものがあって、作品がズラーッと並んでいますけど、私が学生の頃はアニメやマンガ系の本でさえ本屋さんの片隅にひっそり棚があるくらい。
なので、私はそういうジャンルがあるとは知らず、詳しい友達に即売会へ連れて行ってもらったんですよ。
お兄ちゃんの影響で少年漫画が好きで読んでいたけど二次創作は知らない私は、二次創作の同人誌にすごく衝撃を受けました(笑)。
――「知っているキャラクターなのに、何かが違う!」ってなりますよね(笑)。
宮村:
そうそう(笑)。少年誌に描かれているのと同じキャラクターの設定を使って、全く異なる世界で物語が繰り広げられている。その中には、すごくキュンキュンするお話や神作品があったり、自分では考えつかないような発想で物語が描かれていたりするんですよね。
コンプライアンス的に二次創作がグレーだとは知らない年齢ということもあり、創作しているお姉さま方に憧れを抱いていました。
つい先日、私の実家を畳むことになったので、実家に置いている荷物を兄妹と一緒に整理しに行ったんですよ。そしたらすごく昔に買った同人誌が出てきて。妹も同人誌を買っていたから、「このカップリングが好きだったのは私! そっちは妹!」と仕分けして持ち帰りましたよ(笑)。
――持ち帰る選択を取るのが、オタクの鑑……。そこからずっとBLはお好きだったんですか?
宮村:
好きでしたね。本屋さんには置かれていない『JUNE』を注文して取り寄せていました(笑)。
とはいえ、出産、育児のタイミングで趣味に割ける時間が物理的になくなってしまいましたけど……。読みたいという欲はあれど、とにかく時間がなくて。子育ては楽しくて好きだけどどうしても疲弊はするから、友達との電話でアニメやマンガやBLの話を聞いてちょっと元気を出すみたいなことはしていました。
でも、今は出産と育児をしても趣味の時間は割きやすくなったと思います。スマホや電子書籍がありますからね……! 私の時代はガラケーでしたし、人気マンガの新刊が発売されてから電子書籍になるまで3か月くらいかかっていたので。今は「疲れたな……」と思えば、好きな作品を読んでエネルギー補充できるのはいいですよね。
――たしかに隙間時間にちょっとしたオタ活がしやすくなりましたよね。また、宮村さんはオーストラリアに住んでいた期間が長いと思うのですが、その期間はどうやってオタ活をしていたんですか?
宮村:
シドニーの紀伊國屋書店で日本の3倍の値段でマンガを買うか、日本に一時帰国した時に大量にマンガを買ってコミケ帰りのようにトランクへ詰めてメルボルンに戻るか、みたいなことをしていました(笑)。
私がオーストラリアに行った2008年って、日本ではインターネットが普及していましたけど、オーストラリアはそこまで普及していなくて。しばらくして現地でオタク友達ができてから、まるで日本のようなアニメ専門店が地下とか裏路地にあって、そこに連れて行ってもらって(笑)。海外で日本の作品の二次創作をしているクリエイターさんの存在を知って感動したりとかね。
ネットが普及してからは、電子書籍やサブスクのコンテンツが出てくるようになるわけですけど、長いこと日本の文化が近くになかったせいで、どんどん飢えていって、どんどん元気がなくなっていくんですよ……。私が甲状腺の病気になったのは、そのせいもあったんじゃないかと思っているほど、当時はしんどかったです(笑)。
出産や育児と同じで、今の時代は海外に住んでいても楽しくオタ活ライフが送れるからいいなと思います。
――どんな状況下でもオタ活がしやすくなったことと並行して、商業誌が増えたり実写映像化されたりファン層の幅が広がったりとBLが1つのジャンルとして確立されてきたと思います。その変化について、宮村さんはどう感じますか?
宮村:
「やおい」の時代はあまり表立って言えないような趣味でしたけど、「BL」というジャンルが確立された今は1つの趣味として光が当たって、隠れずとも楽しめる時代になりましたよね。
それはまず1つに、表現する場が広がったのは大きいと思います。私がアニメ業界で仕事をし始めた頃、同人作家さんが商業誌でも描くようになっていたものの、同人誌の良さが商業誌でなかなか生かしきれず苦しんでいる作家さんが多くて。とはいえ、表現の場が同人誌か商業誌くらいしかなかったから、「もっと自由に表現できる場ができればいいな」と思っていました。
だけど今は、自分が描きたい表現で作品を描いたらSNSに投稿して多くの人に見てもらうことができる。クリエイターさんがクリエイティブしやすい環境ができあがっている。私が夢見た理想の世界が来ました!しかも、ユーザーの皆さんが受け入れている。その時代の移り変わりは、すごく嬉しいことです。
また、自分で発信する時代になったからこそ、いろんなワードが生まれたことも「BL」というジャンルで過ごしやすくなった理由の1つだと思っていて。
――いろんなワードというのは、オタク用語やBLならではのキャラクターの属性などのことでしょうか?
宮村:
そうです。昔はカップリングの定義はあっても、「〇〇攻め」「〇〇受け」のような細分化されたワードはありませんでした。同人誌の中にはハリウッドの超大作に匹敵するくらいの神作品がいっぱいあったのに、説明する言葉がなかったんです。
それが今では、多くの人が自分の趣味趣向を分析して言語化しているから、そのワードを共通言語として仲間をつくるようになっていますよね。
それぞれの立場から「私は〇〇が好き」「それもいいけど〇〇もいいよ」とお互いの性癖をアピールし合えるようになりました。しかも、言語化できているからこそ、解釈違いによる争いも減って、それぞれが居心地の良い村に住んでいるような感覚があります。仮に争いが勃発しても、あえて争っているような気がしますしね(笑)。
そうやってオープンにコミュニケーションを取ったり、人生を楽しく生きるための趣味の1つになったり、すごくいい時代になったなと思います。そんな時代になった今、『チェリまほ』の音響監督を務めさせてもらえて、すごく幸せな気持ちです。
――宮村さんは音響監督のオファーが来る前から『チェリまほ』が好きだったんですか?
宮村:
はい。いろいろな作品を読んでいますけど、その中でも『チェリまほ』が1番好きでした。そんな作品に関われたことは嬉しかったと同時に、原作ファンが多い作品だからこそ気を引き締めなければとも思いました。「みんなの思いを胸に頑張るぞ!」って。
――いろいろな作品に触れてきている中で、『チェリまほ』にはどんな魅力を感じたのでしょう。
宮村:
『チェリまほ』で描かれているラブコメの要素が、すごくかわいくて、すごくおもしろい。それが魅力ですね。
しかも、悪い人が一切出てこないんですよ。登場人物全員が幸せな世界だからホッとするし、癒される。神棚に飾っておきたい作品です(笑)。
――宮村さんがおっしゃるように『チェリまほ』は悪い人が出てこないため、どのキャラクターも魅力的ですが、特に好きなキャラクターはいますか?
宮村:
もちろん安達(清)と黒沢(優一)も好きなのですが、私は柘植(将人)と(綿矢)湊の2人がどストライクで……。というか、湊が性癖に刺さってしまっています(笑)。
――宮村さんは湊推しなんですね。
宮村:
そうなんです! 昔からかわいくてちょっとやんちゃな男の子が好きなんです。
というのも、初恋の人が『ドロロンえん魔くん』のえん魔くんで。彼と同じ系統のキャラクターを好きになってしまうし、そういうキャラクターに幸せになってほしいと願ってしまう……。だから、アフレコでも湊への熱がすごく入ってしまいました。
――湊を演じる佐藤元さんのお芝居はいかがでしたか?
宮村:
佐藤さんは売れっ子でいろんな作品へ出演されているから、『チェリまほ』ではレギュラーとはいえ、最初は飛び飛びで収録していたんですね。それもあってか、佐藤さんの持ち味である熱血ヒーローっぽいところが出てきてしまって。でも、湊は熱血ではないじゃないですか。
最初はちょっとやんちゃで、柘植に対しては猫が「シャー!」ってしているような感じだけど、徐々にツンデレのデレが出てくる。私だけではなくスタッフ全員にその認識があったから、佐藤さんにも頑張っていただきました。
途中から私たちの意図を掴んで、理解してくれて、自分の中で湊を成長させてくれたんです。演出中も、どんどん「はい、OK!!」「それ、欲しかったー!!」となっていきました(笑)。
――どんどん熱が入っていったんですね(笑)。それではメインキャラクター3人のアフレコについてもお聞かせください。
宮村:
最初にオーディションで決まったのが、黒沢演じる鈴木(崚汰)さんでした。黒沢のキャストはスタッフ一同、すごく悩んだんですね。キャラクター同士のバランスもあるので、黒沢が決まらないと安達も決まらない。「どうしましょうか」と悩みに悩んで協議を重ねた結果、鈴木さんになりました。
決め手となったのは(奥田佳子)監督の意向でした。「内面の紳士的な部分がにじみ出ている声がいい」ということで、鈴木さんの声のイメージに “育ちの良さ”を感じたんです。鈴木さんなら、普通に話している時は上品さがありながら、心の中では愛を叫びまくっている黒沢のギャップを上手に演じてくれそうだと思いました。
――黒沢が決まったあとに、主人公・安達役の小林千晃さんが決まったと。
宮村:
ええ。小林さんに関しては、黒沢が決まった段階で「安達は小林さんがイメージに合うのではないか」とスタッフは満場一致でした。
『チェリまほ』のオーディションで、声優さん方にはお芝居のほかにフリートークをしていただいたんです。それも監督の意向で、「演技だけで決めるのが難しいから素でお話してもらって、1番キャラクターらしさがある人にしましょう」と。小林さんのフリートークには、安達の真面目な部分がにじみ出ていたので、安達役に決まりました。
実際の収録では、アフレコ後にやるオフィシャル用の座談会とかの仕切りもすごく真面目で(笑)。「安達っぽくて素晴らしい!」と思いました。
もちろんお芝居にもすごく真面目な方。安達の気持ちの変化を丁寧に演じてくださいました。最初の安達は恋愛経験がないから黒沢の好意に振り回されていますけど、どんどん安達が黒沢を包み込んでいくんですよね。そういう安達の心のやさしさ、感情の変化をとても掴んでくれました。
――小林さん演じる安達と、鈴木さん演じる黒沢の掛け合いが見どころの一つだと思いますが、おふたりのお芝居の相性はどのように感じましたか?
宮村:
黒沢と安達の掛け合いは、とても良くて癒されました……。同僚という関係性から、安達が魔法を使えるようになったことでだんだん仲良くなっていく変化を、すごくナチュラルに演じてくださったんですよ。“BLっぽさ”が出ているというより、自然と仲良くなっていく感じ。
最近の売れっ子声優さんは、BLドラマCDへ出演されているから、それぞれの作品で求められている役回りを理解しているのだろうと思います。「この作品では、こういう表現が欲しいんですね」とキャッチする能力がすごく長けている。演出上の細かい要望にも、バッチリ応えてくださいました。
――では、宮村さんの推しキャラ・湊の相手役であり、主人公・安達の親友である柘植を演じた古川慎さんについてはいかがでしょう。
宮村:
実は、オーディションの段階では、黒沢役を鈴木さんにするか古川さんにするかスタッフみんなで悩んでいました。ただ、私の中では古川さんが黒沢を演じるのもいいんだけど、柘植は古川さん以外できないのではないかと思っていたんですね。
柘植って『チェリまほ』の中でもコミカルなシーンも多いので、真面目な人間が恋をしたことでアタフタしてしまう姿がおもしろい。だからこそ、安心して任せられる人でキャスティングしたかったんです。
そのため、私の中では「柘植を演じるなら古川さんが1番いい」と。ほかの作品を見ている中で、古川さんのコメディセンスにはものすごく信頼を置いていたので、「絶対に大丈夫だな」と思ったんです。
皆さんとディスカッションを重ねた結果、黒沢は鈴木さんに演じていただくことになって、「古川さんにはぜひ柘植を!」という声が多かったので選ばせていただきました。推していた私としては、内心「ナイス!」って(笑)。
アフレコもすごくおもしろくて、古川さん演じる柘植が喋っているコミカルなシーンの収録では、監督がすごく喜んで笑っていました(笑)。
――また、宮村さん自身がTVアニメ『チェリまほ』の音響監督として意識したことはありますか?
宮村:
音響監督の仕事は、アニメ監督がつくりたいものを音の面で具現化していくことです。今回、監督からは、「トレンディドラマや韓国ドラマのような王道な演出で進めたい」と最初に言われて。というのも、監督はBLも好きなのですが、同じくらい少女マンガも大好きなお方なんです。なので、少女マンガ的な演出も多くあり、できる限り応えていくことを意識しました。
例えば、作中に流れる音楽を作曲家さんへ依頼する際には、「切ない雰囲気のメロディで」とお願いして、たくさんつくっていただいたり。
TVで放送することもあり「あまり生々しくしない方がいい」という監督の意向があったので、生々しさとはまた違うドキドキを視聴者の方たちへ感じてもらいたくて、あえて音楽を乗せなかったり。
好きな人が近くにいる時って、相手の息遣いや鼓動、体温を感じると思うんですよ。音楽なしにしたことで、よりドキドキするようなシーンにできたと思います。
――放送がとても楽しみです! それでは最後に、TVアニメ『チェリまほ』を楽しみに待っている方たちへの思いを教えてください。
宮村:
日々頑張っている女性の皆さんが、「明日も頑張ろう」と元気になってもらえる作品になればいいなと思っています。
スタッフ一同、原作をたくさん読んで、研究して、原作ファンの方たちはこういうイメージで読んでいたのではという演出になっていると思います。
また、原作ファンの方だけでなく、先日開催した先行上映イベントでは、原作を知らずにアニメから『チェリまほ』に触れる方もいらっしゃいました。アニメの雰囲気と原作の雰囲気が大きくかけ離れていないのがTVアニメ『チェリまほ』の良さだと思っているので、アニメを見て原作を読んで、原作を読んでアニメを楽しんで……と、どちらの世界に行ったり来たりしてもらえると嬉しいですね。
(取材&執筆:阿部裕華)
宮村優子(みやむら・ゆうこ)
1972年12月4日生まれ、兵庫県出身。O型。
公式X(旧:Twitter) https://twitter.com/386miyamura
YouTubeチャンネル「宮村優子の好きなことやってるやつ」 https://www.youtube.com/@user-hp5mc8gw1m
【原作】
「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」
豊田悠(掲載「ガンガンpixiv」スクウェア・エニックス刊)
【スタッフ】
監督:奥田佳子
キャラクターデザイン:岸田隆宏
シリーズ構成:金春智子
美術設定:古宮陽子
美術監督:佐藤豪志
色彩設計:中山久美子
撮影監督:久保田 淳
編集:兼重涼子
音響監督:宮村優子
音響効果:小山健二
音響制作:ダックスプロダクション
音楽:長谷川智樹
音楽制作:エイベックス・ピクチャーズ
アニメーション制作:サテライト
【キャスト】
安達 清 CV.小林千晃
黒沢優一 CV.鈴木崚汰
柘植将人 CV.古川 慎
綿矢 湊 CV.佐藤 元
ほか
【放送情報】
テレ東ほかにて2024年1月10日(水)~放送開始!
【放送情報】
テレ東:1月10日(水)から毎週水曜深夜24:00~
テレビ大阪:1月10日(水)から毎週水曜深夜25:35~
テレビ愛知:1月10日(水)から毎週水曜深夜25:30~
BSテレ東:1月10日(水)から毎週水曜深夜24:30~
【原作情報】
「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」
「ガンガンpixiv」(スクウェア・エニックス刊)にて好評連載中
コミックス第1巻~第12巻発売中!
最新13巻12月21日(木)発売予定
【公式ページ】
・公式サイト: https://cherimaho-anime.com/
・公式X(Twitter):@cherimahoanime
©豊田悠/SQUARE ENIX・アニメ「チェリまほ」製作委員会
阿部裕華
編集者/インタビューライター。映像・漫画・商業BL・犯罪心理学の沼に浸かる者。推しは2次元の黒髪メガネキャラ・英国俳優・BUMP OF CHICKEN・愛猫2匹。共著「BL塾 ボーイズラブのこと、もっと知ってみませんか?」発売中。
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