numan編集部
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進化が止まらない商業BLの世界。
昨年2023年には3900タイトル以上発刊されており、最近では「オメガバース」「Dom/Sub」など特殊な設定があるもののや、獣人や異世界モノなど独自の世界観を持つ作品も多く生まれています。
そんな中、BL好きのnuman編集部員が特に「新しい!」と感動したのが、“感覚系”BL作品。視覚や触覚、嗅覚などを五感(+α)をテーマにしたものを指します。
読み手である私たちの五感までも刺激してくるかのような生き生きとした“リアル”な表現に、即効ハマること間違いなし……!
今回は、その中から「嗅覚」「味覚」「視覚」「聴覚」「触覚」5つの“感覚系”BL作品をご紹介します。
INDEX
まず紹介するのは、昨年にドラマ化した『体感予報』 (ビーボーイコミックスデラックス)の鯛野ニッケ先生による“匂いフェチ”BL作品。2016年に初版が刊行され、その後22年に特装版が発売されました。
主人公は、嗅覚が超過敏な理系大学生の高階。香水や酒など苦手な匂いが非常に多く、息を詰めながら耐える日々を送っています。
しかし、同じ研究室に所属する1つ上の先輩・有路の体臭だけは特別。 むしろその甘美な香りに「嗅ぎたい」衝動を抑えられず、「研究を手伝う代わりに、1日5分体臭を嗅がせてください」とねだるようになって……?
本作の魅力は何といっても、高階が有路の匂いを嗅ぐシーンでの描写。
ただ体臭を嗅がれているだけなのに、つい頬を赤らめてしまう有路の表情に尊さが溢れて止まらないんです。
その破壊力は、次元を飛び越えてこちら側にも甘美な匂いが伝わってくるほど……?
高階の呼吸に合わせて深呼吸しながら、心を落ち着けて楽しみましょう。
匂いを嗅ぎたい衝動に駆られた高階のちょっぴりSな攻めっぷりも最高な作品なので、匂いフェチな方はもちろん、Sっ気のあるキャラが好きな方には特におすすめです。
<作品情報>
『君香シャーレ』作:鯛野ニッケ
出版社:KADOKAWA
レーベル:あすかコミックスCL-DX
作品URL:https://www.kadokawa.co.jp/product/322207001204/
『オオカミくんはこわくない』(KADOKAWA)を始めとした「けもみみシリーズ」でお馴染みの、佐倉リコ先生によるケーキバース作品。
自身がフォークであることに嫌悪感を抱き、他人との接触を極力避けていた主人公・朱羽。ある日同級生の楓(ケーキ)と出会い、彼が放つ甘い匂いに誘われるがまま求めてしまったことで二人の“甘い”関係性がスタートします。
初めは「(朱羽がフォークである)秘密を口外しない代わりに、遊び相手になること」を要求した楓でしたが、段々と心の距離が近づいていって……?
オメガバースの派生として注目を浴びているケーキバース。
どちらかと言うとフォークが受けの場合が多い印象ですが、こちらの作品は俺様なケーキ・楓×気弱なフォーク・朱羽と、「フォーク受け」であるのが特徴です。
その理由として、佐倉先生は本書のあとがきで「美味しくて幸せそうな顔をしている受けを描きたかった」と話しています。
まさにその幸福と快感に満ちた朱羽の顔がたまらなく、見ているこちらもいろいろな意味でお腹いっぱいになれますよ。
楓の体液を「はちみつのような甘い味がする」「キャラメルみたいな匂いがする」などと表現し、恥じらいながらも可愛く味わう朱羽の姿には、母性本能がくすぐられること間違いなし!
おやつタイムの休憩に甘いスイーツとともに読めば、より甘々なひと時を楽しめるかもしれません。
<作品情報>
『ストロベリーキス・メルト 1』作:佐倉リコ
出版社:フロンティアワークス
レーベル:ダリアコミックス
作品URL:https://www.fwinc.jp/daria/detail/?code=978-4-86657-732-6
大学生で俳優の藤永は、オーディションに落ち続けて自信を失っているところに先天性難聴の青年・ケイトに出会う。
初めて触れる手話に、最初は驚きを隠せずにいた藤永でしたが、演技を通して「伝える」ことへの思いを強く抱いていたため、だんだんと手話の学習にのめり込むように。そして同時に、ケイトとの距離も縮まっていく……というハートフルなラブストーリーです。
「2024年 BLアワード」総合コミック部門とエモーショナル部門にWノミネートされており、発売から2ヶ月ほどで第3刷目の重版が決定するなど大きな話題を呼んでいる作品です。
作中で印象的なのは、二人の会話シーンでの手話の描写。作者の厘先生は自身の手をモデルにして丁寧に描写したため、「ペンを持つ時間より手を観察してる時間の方が長かった」とあとがきで語っています。
まだ手話を完全には習得していない藤永のために、普段は言葉を織り交ぜてコミュニケーションを取っている二人。
ですが、1巻のラストシーンではあえて手話のみでお互いの気持ちを伝えており、なんといってもその手の描写が美しいのです……!
音のないシーンだからこそ、真っ直ぐ、ありのままに感情が伝わってくるのかもしれません。
感覚や言語、身体表現などさまざまな手を尽くしても、自分の気持ちを他人に伝えることは難しい。
それでも、自分らしい表現で懸命に伝えようとする二人の姿を見ていると、「伝える」ことの尊さを改めて実感することができますよ。
<作品情報>
『カメレオンはてのひらに恋をする。』 作:厘てく
出版社: スクウェア・エニックス
レーベル:ガンガンBLiss
作品URL:https://magazine.jp.square-enix.com/top/comics/detail/9784757587519/
人気男性声優の吉野鷹臣を密かに激推ししている主人公・大神飛鳥。そんな飛鳥がある日バイト中に不審な男を発見し、声を掛けると、なんと正体はその推し声優(吉野)であることが発覚!
酔いつぶれる吉野を介抱するため自宅に連れて帰ると、突然唇を奪われてまさかの展開に……?
泥酔した吉野の“勘違い”をきっかけにスタートした、二人の秘密の関係。
「純粋なファンでいたい」と最初は抵抗していた飛鳥ですが、耳元で甘い言葉を囁かれる度に、タイトル通り“抗えない”状態になってしまいます。
家に帰った後も吉野のイケボが耳に反響し、耐え切れずに一人で悶々とする様子が最高に可愛いんです。
個人的に最も感覚に訴えかけてくると思うシーンは、吉野が出演するBL作品のセリフを耳元で朗読する場面。
低音ボイスが魅力の売れっ子声優とのことで、音声はなくともこちらの脳内でも声が響してくるような錯覚に陥ります……!
ぜひ皆さんも、飛鳥のように“抗えない”状態を楽しんでみてはいかがでしょうか。
<作品情報>
『その声には抗えない』作:咲みなん
出版社:ジーオーティー
レーベル:Bivy comic
作品URL:https://medu.gotbb.jp/comics/separatevolume/bivycomic/sonokoe
最後に紹介するのは、「五感+α」を楽しめる作品。
ストレスや緊張を感じると極度に汗をかいてしまう「心因性多汗症」に悩む主人公・佐富は、ある日満員電車の中で症状が過剰になり、パニックに陥りかけてしまいます。するとそこに、同じ大学の同級生・安東が手を差し伸べてくれて……。
佐富は多汗症に加えて「触覚」も過敏で、腕を掴まれたり強く握られたりすると赤く跡が残ってしまうほど敏感な肌の持ち主。
そんな自身の体質を気にして、常に他人と距離を置いてしまっていましたが、「コミュ強・爽やか陽キャラ」な安東の寛大な心に触れるうちに心を開いていきます。
そしてそれは、安東の「汗」に対しても同様。密着度MAXの満員電車内でお互いの気持ちを確かめるシーンでは、“好きな人”の肌で輝く汗にときめく佐富の気持ちが描かれています。
そんな二人の距離が近づいていく過程も尊いのですが、多汗症かつ触覚も過敏な佐富がちょっとした刺激に反応してしまう表情も見どころの一つ。
汗で濡れてしまった佐富の肌をタオルで拭ってあげたり、赤くかぶれてしまった患部に薬を塗ってあげたり……。安東にとってはただの触れ合いでも、過剰に反応してしまう佐富がまたかわいらしいのです(本人にとっては深刻な悩みなのですが)。
触覚と汗の表現、加えて満員電車での密度MAXなシチュエーションでの吐息の表現もすばらしい作品。一味違ったBLを楽しみたい方は要チェックです!
<作品情報>
『濡れ肌にキス』作:よも灯
出版社:新書館
レーベル:ディアプラス・コミックス
作品URL:https://www.shinshokan.co.jp/book/b618373.html
BL作品における表現の幅は、これからさらに広がっていくことでしょう。
今回は五感+αをテーマにした作品をご紹介しましたが、泣き顔が好きな筆者的には「涙」を題材にした作品も読んでみたいな……と思っています。ますます発展していくBLの世界に、今後も目が離せません!
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