曽我美なつめ
音楽、二次元コンテンツ(アニメ/マンガ)を中心にカルチャーを愛するフリーライター。コロナ禍を経て10年ぶりにオタク・同人沼に出戻りました。全部宇髄天元のせいです。
様々な人気タイトルがひしめく2024年秋クールアニメの中でも、多くのアニメファンから話題を集めている『アオのハコ』。原作は週刊少年ジャンプにて連載中の作品ですが、良い意味で従来のジャンプらしからぬ、新しい時代の看板ラブコメ漫画として人気の高い一作です。
今回のアニメ化に際して、物語を彩る主題歌の担当となったのは今や押しも押されもせぬ国民的バンド、Official髭男dism。彼らによる楽曲「Same blue」もアニメのストーリーにぴったりの一曲だと、大勢の視聴者から熱い注目を浴びているのだとか。
そこで今回はアニメ『アオのハコ』主題歌・Official髭男dism「Same blue」の魅力を、ガチオタ兼約10年のミュージシャン歴も持つ音楽ライターの曽我美なつめが解説。ポップでありながらも玄人向け要素が随所に光る、ヒゲダンらしい聴き所が満載の1曲なのです。
INDEX
「ノーダウト」「Pretender」など数々の名曲を生み出した、超人気バンド・Official髭男dism。最近では『東京リベンジャーズ』シリーズの「Cry Baby」や「ホワイトノイズ」、『SPY×FAMILY』シリーズの「ミックスナッツ」や「SOULSOUP」など、様々な作品の主題歌を担当しています。
彼らがアニソン界でも引っ張りだこなのは、今や子どもからお年寄りまで幅広い層に知られる知名度の高さだけが理由ではありません。いろんなアニメに対し、作品の世界観を反映した愛のある主題歌作りに定評がある点も、おそらく人気の理由のひとつです。
これに関して最も有名な逸話は、やはりアニメ『東京リベンジャーズ』主題歌「Cry Baby」制作時のエピソード。原作者の漫画家・和久井健先生とバンドのボーカル・藤原聡さんの対談にて、楽曲制作時にたまたま生まれたミスをきっかけに、曲中の「転調」を作品の大きなカギとなる「タイムリープ」に準えて多数盛り込んだことが明らかともなっています(※)。
※アニメ『東京リベンジャーズ』公式サイトより:https://tokyo-revengers-anime.com/special/taidan/
意外と知られていませんが、元々藤原さん自身もこれまでいろいろなアニメやマンガに影響を受けてきた方です。過去にはSNSで『進撃の巨人』や『とらドラ!』に言及していたり、先日主題歌担当が決まった実写映画『はたらく細胞』も、元は原作マンガのファンだったことが明かされていますね。
バンドの代表曲「Pretender」も映画主題歌でありつつ、アニメ「Steins;Gate」から影響を受けて作られたことも、今や知る人ぞ知る裏話です。
昔からそうやって、数々のアニメ&マンガにも親しんでいる藤原さん。だからこそ、物語の世界観やストーリーに沿った作品にぴったりのタイアップ曲を多数生み出すことができるのでしょう。
そんなOfficial髭男dismが主題歌「Same blue」を担当したアニメ「アオのハコ」。先述の通り、原作は週刊少年ジャンプにて絶賛連載中の三浦糀先生によるマンガです。
ジャンルとしては青春モノや、いわゆるラブコメにも該当する本作。ですが少年ジャンプのラブコメ作品といえば、『いちご100%』や『To LOVEる』、『ゆらぎ荘の幽奈さん』など、これまではお色気要素の強いマンガが有名な印象だった、という人も多いはず。
ですが「アオのハコ」は、従来のラブコメ作品と違いお色気要素はかなり少なめ。その代わり男子高校生ならではの恋愛に浮き立つそわそわとした心情や、想いを寄せる先輩への憧れにも似た好意を、女性漫画家さんらしいみずみずしく爽やかで繊細なタッチで描いているのが大きな特徴です。
少女マンガ的なドキドキとも少し違う、高校生らしい純粋で不器用な恋愛模様。そして恋愛だけでなく、部活をはじめとした“自分のやりたいこと”にも夢中になりつつ、時にそれらと恋愛、友情、そして将来の夢の狭間で悩みもがく青春の日々。
そんな等身大の10代のスクールライフを鮮やかに描いた点が、年齢・性別を問わず大勢に支持され、作品は今回のアニメ化へと繋がっています。
物語の大きな人気要素となる淡くもどかしい、時に切ない恋愛感情。それを音楽に乗せるアニメ主題歌の担当として、ずばりOfficial髭男dismはぴったりのハマり役。
なぜかといえば彼らの一番のヒット曲「Pretender」もまた、男性側の女々しくも切ない好きな人への想いを描いた歌詞が、非常に多くの人に支持された曲だからです。
もっとそばにいたい。そう願っても、想いを寄せる相手とは一緒にいられない。それでも結局、相手の事を好きだと想う気持ちは止められなかった。「Pretender」の歌詞にはそんな“ままならなさ”や、好きな人への未練が切なくも美しく描かれています。
「Same blue」の歌詞もまた、理想の相手に釣り合わない自分への自信の無さや、一生懸命に好きなものへ打ち込むがゆえの「あの人が好き、だからこそ辛い」という“ままならなさ”を、非常に鮮やかに描いています。
重ねて恋愛だけでなく、部活という自分が夢中になれるものへのひたむきさがしっかり描かれている点も、この主題歌の魅力でしょう。ボーカル・藤原さんも今曲には、恋愛への“青さ”と何かに夢中になる“青さ”、そのどちらもを込めたことを制作秘話として明かしています(※)。
※[Behind The Scenes] Official髭男dism - Same blueより:https://www.youtube.com/watch?v=DwW8bE7C-JA
相手のことが大切で、ずっと一緒にいられたらこれ以上ないくらい幸せ。しかし相手を好きだからこそ、こんな自分が隣にいていいのだろうか。相手を想うといろんなことを頑張れる。けれどやっぱり自分が釣り合う自信はない。それなら自分は身を引いた方がいいかもしれない。離れた方がきっと楽になれる。でも、やっぱり好きな気持ちを諦めることはできない。
幸せ一辺倒ではないリアリティのある、誰かを、何かを全力で想って揺れ動く気持ち。『アオのハコ』の物語におけるそんなキーポイントを落とし込んだ音楽を作るアーティストとして、Official髭男dismはこれ以上ない適役だったと言えるでしょう。
さらに今曲最大の聴き所なのが、非常にポップなナンバーであると同時にかなり玄人向けな音楽要素がぎゅっと詰め込まれている点! ある意味でそれこそが、ヒゲダンというバンドの唯一無二性が極めて光るポイントでもあります。
曽我美なつめ
音楽、二次元コンテンツ(アニメ/マンガ)を中心にカルチャーを愛するフリーライター。コロナ禍を経て10年ぶりにオタク・同人沼に出戻りました。全部宇髄天元のせいです。
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