曽我美なつめ
音楽、二次元コンテンツ(アニメ/マンガ)を中心にカルチャーを愛するフリーライター。コロナ禍を経て10年ぶりにオタク・同人沼に出戻りました。全部宇髄天元のせいです。
これまでにもキャッチーでありながら難解な音楽性という、一見相反する二つの要素を絶妙なバランスで両立してきたOfficial髭男dism。従来の曲では、中でも先述の「Cry Baby」が特にその顕著な一例ともなっています。
人気作品の東リベ主題歌であると同時に、楽曲の難しさも実は当時音楽好きの間でかなり話題になった「Cry Baby」。その理由は、先ほどの話題でも少し触れた転調の多さ!
曲中で音楽の調(キー)が変わる転調は、通常曲中にせいぜい1~3回が限度。ですが「Cry Baby」はその回数があまりにも多すぎるため、「歌が難しすぎる!」「普通こんな曲を作ろうとは思わない」と、大勢のリスナーやミュージシャンの頭を抱えさせた曲でもありました。
数々のヒゲダン曲の中でも、最強の難易度楽曲とされた「Cry Baby」。ですが今回の「Same blue」は、そんな「Cry Baby」を大きく超える歴代最強の難しさだと、音楽に詳しい人々の間では今非常に話題ともなっているんです。
その一番の理由は、専門的な音楽用語で“変拍子”と呼ばれるリズム感にありました。世の中の音楽のうち、その大半は“4拍子”と呼ばれる4カウントで進行する曲です。ですが今回の「Same blue」は4拍子ではありません。非常にイレギュラーなリズムである“5拍子”と“6拍子”、さらにその二つが入り乱れる構成で作られているんです。
楽曲を少し詳しく見てみると、イントロは終始5拍子で展開。そこからAメロに入った瞬間6拍子に変わり、加えてAメロの途中で一瞬だけ5拍子が紛れ込みます。
さらにBメロも最初こそ6拍子で進むものの、サビの直前でところどころ5拍子に変化。そしてサビに入ると今度は5拍子がメインとなり、先ほどとは真逆でところどころ6拍子に切り替わりながら進行していきます。
1番だけでもそんな複雑な造りなので、おそらく音楽に詳しい人ほど、この曲を初めて聴いた瞬間頭の中はハテナマークでいっぱいになったはず。拍子の頭と歌詞のフレーズの頭が絶妙にズレている点も、楽曲をより難しくしているポイントのひとつでしょう。
ヒゲダンのバンドとしてのすごさは、音楽に詳しい人がよく紐解くとそんな難解な曲であるにも関わらず、普通の人が聴いてもその難しさを微塵も感じさせない、なめらかでダイナミックなメロディでキャッチーな曲として成立させている点。そういった意味では、見事なまでの彼らの真髄が光る曲。それがこの「Same blue」でもありますね。
また当然ながら、この難解な造りもきちんと理由があってのこと。楽曲制作の背景を明かす公式動画にて、ボーカル・藤原さんはこの曲のイレギュラーなリズム感で、“青春特有の前のめりさ”や“何かに夢中になって時間があっという間に過ぎるさま”を表現したかったと語っています。
学校での勉強に部活、友達とのやりとりや恋愛…。思い返せば学生の頃は日々何かしらの出来事や事件が起こり、激動の毎日だったという人もきっと多いはず。とはいえ大人になってからも、今目の前にある仕事や生活、あるいは趣味や好きなことに、時間も忘れて夢中になった経験もあることでしょう。
年齢や立場、状況を問わず、何かに夢中になることの素晴らしさや尊さ。青春ストーリーや恋愛モノの枠に囚われず、それらを描いた『アオのハコ』、そしてOfficial髭男dismの主題歌「Same blue」。
物語と楽曲どちらにも通ずる魅力やメッセージに改めて思いを馳せつつ、アニメや漫画で引き続き作品を楽しんでくださいね。
(執筆:曽我美なつめ)
曽我美なつめ
音楽、二次元コンテンツ(アニメ/マンガ)を中心にカルチャーを愛するフリーライター。コロナ禍を経て10年ぶりにオタク・同人沼に出戻りました。全部宇髄天元のせいです。
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