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オタク女がドイツに移住したら…屈強なアニオタどもと宮殿で『ゆるキャン△』談議に花を咲かせた話

お店に入るとまず大量の漫画や雑誌が並んだ複数の棚が。お店の奥には、ラバーストラップやキーホルダーなどの小物やぬいぐるみから、フィギュアにゲームソフトまで、あらゆるものが雑多に陳列されていた。

ドイツのアニメショップ

 

ドイツのアニメショップ

当たり前だが、どれもこれも日本より値段が高い。2倍か、2.5倍くらいはするのではないだろうか。円安ユーロ高が続いているのもあるが、それでもアニメ・漫画オタクとして日本に生まれたことを喜ぶべきだと感じた。

そうして筆者がひとり店内を物色しているとき、サークル参加者は何やらガンプラを手に、誰がそれを買うか楽しそうに話し合っていた。屈強なドイツ人男性がガンプラを前にはしゃぐ姿は、少し可愛らしくも感じられた。

宮殿の庭でアニメ談義に花を咲かすドイツ人

さて、アニメショップの次に向かったのは街のシンボルである宮殿だ。1715年にとある辺境伯によって建てられたバロック様式の宮殿は現在州立博物館となっており、宮殿内を見学することができる。しかしアニメサークルが宮殿内を見学するわけがなく、我々が向かったのは宮殿の広大な庭だ。

カールスルーエ宮殿

カールスルーエ宮殿

写真を見てわかる通りこの日は雲一つない快晴で、宮殿の庭はピクニックや散歩を楽しむ人々で賑わっていた。そんな中、アニメサークルのメンバーは庭に到着するやいなや、各々のカバンからおもむろにピクニックシートを取り出し、円になって座り始めた。

まず始まったのはメンバーの自己紹介。なぜさっきのレストランでしなかったのかという疑問はさておき、メンバーはそれぞれ今観ているアニメや漫画、おすすめしたい作品を挙げていく。ちなみに日本人のオタクと同様ドイツ人オタクも総じて話すスピードが速いが、そもそもドイツ人は基本的に早口なので、アニオタだからというわけではないかもしれない。

そこでおすすめされた作品のひとつが『ジャンボマックス(JUMBO MAX)』。幻のED薬を作ることを決意したEDの男が、ED薬を巡って危険に巻き込まれていく姿を描いたクライムストーリーだ。

青年コミック誌「ビッグコミック」にて連載されている本作。決して作品を貶めているわけではないのだが、恐らくnuman読者でこの作品を知っている人はなかなかいないのではないだろうか。

当該雑誌が販売されている日本ならまだしも、本作をおすすめしたドイツ人はどこでこの作品を知ったのか。聞くところによるとインターネットでたまたま発見したらしい。好感の持てる主人公と、彼を利用しようとする人たちのやり取りが刺激的なんだとか。

もうひとつ、他のメンバーによりおすすめ作品として名前が挙がったのは映画『ゆるキャン△』。これは筆者も視聴済みだ。本作をおすすめした彼はもともと本作漫画とアニメのファンであったそうだが、彼が映画で何より感銘を受けたのは大人になった彼女たちの姿だ(※以降、『ゆるキャン△』の若干のネタバレを含む)。

映画では登場人物が教師として働いている学校の閉鎖や、キャンプ場作りの断念など、さまざまな困難に直面する。決してハッピーエンドなだけでないが、彼女たちはそれを受け入れ、試行錯誤し前へと進んでいくのだ。それは人生においてとても大切なことだと、彼は言った。もう……わかりみがマリアナ海溝。

Blu-ray『映画 ゆるキャン△』(フリュー)

Blu-ray『映画 ゆるキャン△』(フリュー)

ひとしきりアニメ談義に花を咲かせ、筆者も多少彼らとの交流に慣れてきたところでふと我に返った。

周りを見回せば、かたやひとりは先ほどアニメショップで買ったゲームを何やら真剣に見つめ、かたやひとりはヴァイスシュヴァルツ(Weiβ Schwarz)のカードを取り出し並べ……立派な宮殿の新緑まばゆい広大な庭で、何ともシュールな絵である。

日本で言えば、皇居や姫路城の庭園でヴァイスシュヴァルツを広げているようなものではないか?(いやちょっと違うか)

ちなみに余談だが、ヴァイスシュヴァルツという名前についてどう思うか彼らに聞いてみた(※ドイツ語で白「Weiβ」と黒「Schwarz」という意味)ところ「最初『ポケモン』のゲームかと思った」「カードに白と黒の要素なくない?」「日本人はドイツ語が好きだからね」とのことだ。

カールスルーエ宮殿の庭

カールスルーエ宮殿の庭

部屋の一室でクイズ大会、あらゆるアニメを網羅しているドイツ人たち

さて、最後の催しとして向かったのは、学生向けのカルチャーセンターのような場所の一室。

いつもここでアニメや漫画に関連したクイズ大会や、アニソンカラオケ大会をしているらしい。ちなみにカラオケはもちろん日本語だそうで(日本語を話せる人はあまりいないのだが)、ぜひ一度彼らの歌を聴いてみたいものだったが、今回おこなわれたのはクイズ大会だった。

クイズ自体は「アニメミュージッククイズ」という名前のインターネット上にあるもので、アカウントを登録すれば誰でも遊ぶことができるようだ。サイトはすべて英語表記だが、気になる人は検索してみてほしい。

さて、そのクイズではアニソンの一部が流れ、提示される4択の選択肢から正しいものを選択するといったものなのだが……。最近のアニメはあまり出題されず、古いものは恐らく1960年代頃ものから、新しいものは2000年代~2010年代前半のものが多かったと思われる。

しかし、彼らはどこでそんなにたくさんアニメを観ているのか、当てても当てられなくても「ああ、それね」といった反応。このクイズ大会でも思ったが、今回のサークルに参加している彼らは、総じて私よりもアニメに詳しい。アニメライターとして、なんだか悔しい結果となってしまった。

そんなこんなで夜も更け、別の街に住んでいる筆者は他の参加者よりも早く帰路についた。最初はあまりの宇宙人状態にミスディレクションを発動しそうになったが、皆とても親切で優しく、アニメに国境はないなと改めて思わせてくれた機会となった。

ちなみにこのあと、自分が住んでいる街にもアニメサークルがあることを知った。もし機会があったら、今度そちらのサークル活動にも参加してみたいと思う。

(執筆:ヤマコシショウコ)

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ヤマコシ ショウコ

フルート奏者兼Webライター。好きなショタは小夜左文字、アイドルはランカ・リー、RPGはドラクエ。

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