宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
蘭丸がどういった名を名乗って新選組に所属していたかはまだ明かされていないため、明確にどのような立場だったかは断言できません。しかし、土方歳三に対して砕けた言葉で話す蘭丸からは、少し甘えたような雰囲気が感じ取れます。上司部下という厳格な上下関係というよりは、まるで仲の良い先輩後輩のよう。
『ババンババンバンバンパイア』8巻(秋田書店)
この先輩後輩のような二人の関係性が、主従とも竹馬の友とも違ってまたキュンとしてしまうのです。土方歳三と坂本龍馬の間、理想や恩義や友情に葛藤する蘭丸を思うと、あらゆる妄想がブワッと膨らんでしまうのです。
蘭丸という1人の人物を使って、ここまで幅広い関係性萌えを生み出してくるなんて、どこまで楽しませてくれるんだ『バババ』...!
そして再び時を越えて蘭丸が恋に落ちたのは昭和の文豪・太宰治。本作におけるこの関係にはまた「恋の好敵手」と呼ばれる人物が存在します。その人物こそが、同時代に活躍した詩人・中原中也なのです。
もちろん、蘭丸と太宰は生きた時代が違うため史実とは異なりますが、太宰と中原と言えば史実においても交流があった関係。エキセントリックな中原の奇行や暴言に震えて布団に隠れる太宰のエピソードが印象的な関係で、お互いを嫌いあっていたとよく言われます。
しかし、彼らの交流やお互いに対する評価を見ていると、そこには嫌いという感情を超越した何かを感じずにはいられないというのも、オタクの性ではありました。
その何とも言えない感情のある関係に、本作では蘭丸を加えることで明確に恋の三角関係にするなんて、ロマンがありすぎて胸キュンしてしまいます。
また、蘭丸がこの時代にどんな人物だったのかはまだ掘り下げられていませんが、描かれた一コマから察するに、蘭丸は太宰治の心中相手のようにも受け取れます(吸血鬼である蘭丸は入水では亡くならないので、太宰だけが死亡)。しかし、蘭丸が太宰治と心中した人物を名乗っていたとすれば、少々疑問も残るのです。
史実では、太宰治と心中したのは山崎富栄という美しい女性です。しかし作中で太宰の隣に描かれた蘭丸は女装も特にしておらず、少し洒落た文豪のような雰囲気を漂わせています。
また史実上、富栄と太宰が出会ったのも中原が亡くなったあとですし、純粋に蘭丸=山崎富栄そのものとして描かれた可能性は低いように思えるのです。もしかしたらあるときは友人、あるときは愛人として、何度も姿と名を変えて太宰の近くにいたのかも...?
太宰と中原という一筋縄ではいかない関係に、異分子となる蘭丸を加えてさらなる最高のBLを紡ぎ出しそうな『バババ』...ぜひこの関係性も今後掘り下げてほしい!
このようにハチャメチャな現代のラブコメと同時に、ロマンあふれる偉人ラブコメも楽しめてしまうという、夢のような作品である『バババ』。
今後、まだ明かされていない偉人たちとのブラッティ・ラブコメ(BL)が、さらに掘り下げられることはあるのでしょうか? 作者である奥嶋ひろまさ先生のX(旧Twitter)で「幕末期の龍馬と土方歳三を同時に愛した吸血鬼の番外編BL描きたい」と発信されていたこともあり、期待が膨らんでしまいますね!
近日、実写版の映画も公開される予定の『ババンババンバンバンパイア』。今後の展開も目が離せません。
(執筆:宮本デン)
宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
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