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『聖☆おにいさん(1巻)』アイキャッチ

マンガ『聖☆おにいさん』はマニアックなネタの宝庫「読めば読むほどクセになる」【numan編集部員 今週の推し作品】

人生に潤いを与えてくれる存在である“推し”。「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てていくnumanで、マンガ・アニメ・映画好きの編集部員が推し作品を週に1本紹介していく「numan編集部員 今週の推し作品」

今回紹介する作品は、中村 光先生によるマンガ作品『聖☆おにいさん』(講談社『月刊モーニングtwo』連載中)。

『聖☆おにいさん(1巻)』書影

『聖☆おにいさん(1巻)』中村光 著/講談社

世紀末を乗り越えた“目覚めた人”ブッダと“神の子”イエスが有休を取り、下界である東京都立川市のアパートでルームシェアをしながらバカンスを過ごすコメディ作品です。

2024年12月20日(金)には、ドラマ版(2018年「ピッコマTV」配信)の続編となる実写映画の公開が予定されており、2006年の連載から今に至るまで衰え知らずの人気を誇っています。

本作の推しポイントは、なんといっても“マニアックな笑い”と“キャラの濃い登場人物たち”。宗教や神話を知っている人でも、知らない人でも笑えるネタ。史実とは一見かけ離れているようで、忠実なキャラクターたちは、読めば読むほどクセになり、気づけば何度も読み返したくなります。

悟りのブッダ、深い愛をもつイエス…史実を調べてからもう一度読みたくなる、マニアックなネタ

『聖☆おにいさん』の推しポイントをひとことで言うなれば、“マニアックな笑い”を提供してくれるところ。

優しさと細かいことを気にしないおおらかさを持ち、欲望に忠実であるイエス。修行や徳の高いことを考えてしまう真面目な性格で、バカンス中でもお金の管理を気にする主婦力高めのブッダ。そんな二人がバカンスを過ごす中、いたるところにブッダとイエスのマニアックなネタが散りばめられています。

史実によると、ブッダ(仏陀)は出家をして苦行とも言われるたくさんの修行を積んだことで悟りを開き、仏教を創設した人物。例えば『聖☆おにいさん』のブッダは、暇な時間ができるとキッチンの掃除や洗濯物などの家事をして暇をつぶし、何か起こるとすぐ修行に繋げて新たな悟りを開こうとします。また、彼の趣味である座禅、読経、Tシャツにシルクスクリーンで文字を入れることを踏まえると、“ひとりで黙々と何かをやる”という史実に近いイメージで本作のブッダは描かれています。

個人的に笑える本作のブッダのシーンは、第4話「初舞台」でイエスがわがままを言った時、ブッダが笑顔で指を3本、2本と減らし、カウントダウンをしていく描写。「仏(ほとけ)の顔も三度まで」を本物の仏であるブッダが体現しているというネタが表現されているのです。ほかにも、「史実上のブッダ(イエス)も言いそう!」と思わず声に出してしまうようなセリフが多くあります。

それは第1話「ブッダの休日」から描かれています。「ジョニー・デップに似てると言われた」とコンビニから帰ってきて話すイエスと、有名人に似ていると言われたことを羨ましく思うブッダ。自分も誰かに似ていると言われたいがために、「ちょっと線香買ってくる」と言い訳をしてコンビニへ向かいます。史実で長い修行の上に煩悩を取り払ったと言われるブッダが、「自分も有名人に似ていると言われたい」とは素直に言わないだろうと察することができます。「ちょっと線香買ってくる」という言い訳に、ブッダらしさがにじみ出ており、クスっと笑わせてくれるのです。

一方、イエス・キリストは、史実によるとどんな人に対しても深い愛と同情心と優しさを持ち、数々の奇跡を起こした神の子。しかし『聖☆おにいさん』で描かれるイエスは、史実からイメージされる人物像よりも陽気に描かれています。「有名人に似ている」と言われると浮かれ、どのコンビニのアイスを食べるか悩み、日本特有の文化を体験してはしゃぐ。

第11話「ホスピタル フィーバー」では風邪で寝込むブッダが「治るまで一週間はかかる」と伝えると、1週間で世界を創造した神である父と比べて「父さんだったら世界創っちゃえるじゃない!」と発言。深い愛をもつ清らかな聖人“イエス・キリスト”の印象からは少し異なります。それでも、違和感なく『聖☆おにいさん』のイエスを受け入れられるのは、“イエス・キリスト”の「深い愛を持ち万人に優しい性格」が感じられるキャラクターだからかもしれません。また、ブログやオンラインゲームでいろんな人と交流することが趣味なのは、キリスト教を布教したことに由来するのではという考察もはかどります。

イエスのネタで筆者が好きなのは、作中で何度も描かれる、嬉しいことや楽しいことで幸せを感じると“奇跡”を起こして、石をパンに、水をぶどう酒に変えてしまうというネタです。ほかにも、嫌なことをされても免罪符で許したり、第16話「納涼ハンター」でイエスが発言した「汝の敵を愛せよ」などイエス・キリストの名言がネタとしてたくさん作中に登場したりするのも、思わずクスッとしてしまいます。

さらに、イエスとブッダが日常で着ているTシャツ。所有しているTシャツの3割はブッダのお手製とのこと。そこには「アーメン」「ニルヴァーナ」など宗教にまつわる言葉が書かれています。宗教や神話を知っている人は、「イエスの着ているTシャツに“アーメン”って書いてある!」と思わずクスリとしてしまうことでしょう。

推しキャラクターは、恋愛遍歴をネタにされるゼウス

イエスとブッダだけでなく、『聖☆おにいさん』にはたくさんの天界キャラクターが登場します。しかも、どのキャラクターも濃い上にネタが細かい!

中でも筆者の推しキャラは、ギリシャ神話の最高神・ゼウスさま。作中にたびたび登場しては、史実で語られている恋愛遍歴をネタにされています。第136話「めぐりあい天界(そら)」では男女問わず美しい人が好きなゼウスさまが、「ナルシスト」の語源となった美しい青年“ナルキッソス”にアプリでメッセージを送る話があります。

そのメッセージの内容が、まさに絵に書いたような「おじさん構文」なのです!そして、ゼウスさまからの熱烈なアピールは、ナルキッソスにかわされてしまいます。情熱的で恋多き性格を持ち、たくさんの神々や人間との間に子をもうけたと記されるゼウスさまらしいキャラクター設定とエピソード。クスッとした笑いが多い中、この回は爆笑してしまいました。

ほかにも、ブッダの弟子たちがブッダに対して礼儀を重んじていたり、イエスの弟子たちがイエスをジョークのネタにしていたりと、イエスとブッダの史実上の人物像に合わせて、周囲のキャラクターのノリの違いが明確に描かれています。例えば、第16話「納涼ハンター」でイエスの弟子・ペトロがブッダに伝えた「感動しちゃって、もう仏門に下る勢いっスよ(笑)」はノリが軽すぎて、ブッダと共に私も戸惑いました(笑)。このように、登場するすべてのキャラクターが個性的なのです。

ほのぼのとした日常の中に描かれたマニアックな宗教ネタだからこそ、爆笑するというよりも思わずクスッと笑ってしまう『聖☆おにいさん』。その“芸の細かさ”が、本作の推せるポイント。読めば読むほどクセになり、気づけば何度も読み返したくなる。そんなジワっとクセになる笑いを、numan読者の皆さんもぜひ体感してみてください。

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羽賀こはく

横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。

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