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ただこれは、ネガティブなメッセージではありません。数多く存在する気持ちを表に出す方法のなかでも、音楽は形になるまでの時間がかかるものです。
それでも“伝えることがへたくそ”な若者たちは、音楽に思いが“伝わる”“届く”可能性を信じて、目の前の大切な人と真剣に向き合って、前に進んできました。その姿を見るたびに、作品の外にいるいち鑑賞者である筆者も音楽が持つ“人の背中を推す”大きな可能性を信じたくなるのです。
さて真冬の成長を通して描かれてきた音楽の“可能性”ですが、さらに広がりを見せるのかと思いきや、劇場版2作目『映画 ギヴン 柊mix』で停滞を見せます。
真冬の成長が止まった理由の1つは、孤独感。真冬の幼馴染みでありライバルバンド・syhのメンバーである鹿島 柊と八木玄純がプロデビューを決め、そのサポートギタリストに恋人の立夏が選ばれたことで、ギヴンとしての活動はおろか、大切なパートナーとの時間が取れなくなっていきます。
そして、真冬はしばらく上手に距離を置けていた「さみしさ」を実感。この気持ちが引き金となり、音楽か恋かの天秤に再びじわじわと心が侵食されていき、真冬は自分がどう歌っていたかすら忘れてしまうのです。
さらに劇場版3作品目『映画 ギヴン 海へ』では、この天秤に「仕事」という新たな重しが追加されます。サポートとはいえ恋人がプロステージデビューが決定。さらに自分自身のバンドにもメジャーデビューの声がかかる…。音楽を楽しむだけではいられなくなるかもしれない不安や焦燥により、真冬は自分の殻の中にますますこもりがちになっていきます。
そんな真冬に音楽を拒絶されながらも、自身がサポートとして入るsyhのステージ上から彼を引っ張り上げようとするのが恋人の立夏です。彼は真冬を再び音楽の世界に導くために、柊から託された由紀が作りかけていた楽曲を「真冬に聴いてほしい」という一心で完成させます。
真冬をかつて愛した人が伝えようとした気持ちを、今愛している人がどう表現するのか。またこれまではエゴを出す側だった真冬がぶつけられる側にたったとき、立夏の気持ちを真冬がどう受け止めるのか。
そしてシリーズを通して描かれてきた音楽の“可能性”が、どんな変化を見せるのか。筆者のエゴになりますが、その行く末を見届けてほしいです。
(執筆:クリス菜緒)
原作:「ギヴン」キヅナツキ(新書館「シェリプラス」連載)
■イントロダクション
佐藤真冬と出会い、上ノ山立夏は再び音楽への情熱をかき立てられた。
真冬の歌、立夏のギター――歯車が動き出したバンド「ギヴン」だったが、真冬の過去、立夏への想いが再び交錯するとき、2人の距離はまた開き始めてしまう。
原作は「シェリプラス」(新書館刊)にて、2013年にキヅナツキが連載を開始した『ギヴン』。
フジテレビ“ノイタミナ”初となるBLコミックのアニメ化作品として、2019年にTVアニメが放送、続く2020年にシリーズ初となる『映画 ギヴン』が公開。
翌年2021年には実写ドラマ化、舞台化もされた大人気青春バンドストーリー。
そして、待望のアニメ続編となる映画2部作前編『映画 ギヴン 柊mix』が2024年1月に公開し、後編『映画 ギヴン 海へ』が2024年9月20日に公開。
――音楽が繋ぐオルタナティヴ・ラブ、ついに完結!
映画公式サイト:https://given-anime.com/
公式 SNS(X):https://twitter.com/given_anime
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