加藤日奈
アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。
「妄愛ショコラホリック」(白泉社)
“三軒茶屋でカフェを営む佐倉頼朋の前に、突如舞い戻った由利高晴。超イケメン&世界一のショコラティエとなったその男は、昔、頼朋がバレンタインにこっぴどく振った、冴えない後輩だった。驚愕の独善解釈で十有余年想い続けていたという高晴は戦慄もののド変態で、疎遠中も謎のルートで頼朋の写真や物品を蒐集、コレクション部屋を作り、それを守る番犬の名はヨリトモ(アフガンハウンド)――はたして頼朋は一途な男の妄愛をかわしきれるのか?!”(あらすじより)
この超イケメン世界一ショコラティエが、過去にフッたアイツ!?
【カップリング属性】超一途で純情一直線イケメン世界一ショコラティエ×ほだされ美人のカフェオーナー
この小説は主人公・頼朋(27)が中学三年だった時のバレンタインデーから始まります。なんだかダサくて、イモっぽい後輩・高晴がド緊張しながら手作りのなにやら異臭を放つ最悪のチョコを差し出してくるので憐れに思いひと口かじると、ネトネトしたとんでもないシロモノが…キレた頼朋は決死の告白とともに迫るダサイモ後輩・高晴に頭突きを喰らわし…と散々なオープニングです。
しかし、ダサかった高晴、その後は先輩の拒否の言葉を前向きに受け取り、愛する先輩に認めてもらう男になろうと決意して世界的なショコラティエにはなり、見た目もちゃんと鍛えて格好良くなり、あれこれ勉強して片っ端から資格や技術を会得し、洗練されたショコラトリーを開店させ…というかなり高スペックな仕上がりに。
冴えない攻めが猛烈に、行き過ぎレベルで努力した結果とんでもないパーフェクトな男として再び登場。今はカフェオーナーとして祖父から引き継いだ店を切り盛りする頼朋の前に現れたのでした。
十年以上も頼朋を想い続けた高晴は、どれだけ見た目やスペックが変わったといえど何といっても頼朋への執着が凄まじいのです! 執着というか妄執というか、もう軽く引くぐらい突き抜けています。
RT 『妄愛ショコラホリック』&『糖酔バニラホリック』読んでいただけるのであればぜひご一緒に☆
どちらもスイーツが出てくるところは共通してます。変態は高晴(妄愛~のショコラティエ)ひとりで充分ですね😁 pic.twitter.com/kGeELRHuJZ— 川琴ゆい華 (@KawakotoYuika) February 16, 2022
中高の制服はもちろんのこと、タオルやパンの袋、壊れたシャープペン…。写真に等身大抱き枕なんかもある。その妄愛ぶりは十年以上もしっかり続き、むしろ中学生だった当時よりも激重感情で大人になった今の頼朋を呆れさせたり困惑させたりマイペースで“推ししか勝たん”全開です。
頼朋の存在が高晴の行動原理で、行動のすべてが頼朋に繋がるという徹底した“待てができるようになった”変態狂犬っぷりがコミカルで読みながら思わず吹き出してしまいました。
印象的な場面として、かつてのバレンタインデーでは散々な手作りチョコレートを渡してきた高晴でしたが、十年以上を経た今では努力の結果世界一の称号を持つショコラティエと成長しているので、再び妄愛している頼朋に贈られたのはつややかで宝石のように美しい手作りチョコレート。
文句を言いながらもひと口かじれば驚くような美味しさで、風味も豊かで贅沢な“世界一ショコラティエ”が創り上げた芸術品のような仕上がりに黙るしかなかった頼朋なのでした。
物語はその後、頼朋に様々な困難が待ち受けている展開なのですが、“推ししか勝たん”高晴の奮闘と併せて読み応えのある内容となっているのでぜひご一読をオススメします。
「タフ2 Valentine Kids」(リブレ)
“凶暴かつ横暴、プラス傲慢な刑事、神蔵響。好奇心と向こうっ気だけは人一倍強い天然トラブルメイカーの平間シンゴ。8年間の絶縁と過去の傷を無視するように、強引に距離を詰めてきた響は事件解決に助力した貸しをちらつかせ、シンゴの部屋に転がり込む。抵抗しつつも拒みきれず、不本意な同居生活を続ける中、またまた起きた事件を通して二人の距離は縮まって…。”(あらすじより)
再来週の日曜は空けておけよ。――二月十四日?俺の誕生日。
【カップリング属性】凶暴かつ横暴プラス傲慢な危険な刑事×超絶美人で天然トラブルメイカー
8年間の絶縁と過去の傷を無視するように、強引に距離を詰めてきた凄腕刑事・神蔵響と好奇心と向こうっ気だけは人一倍強い天然トラブルメイカーのグラフィックデザイナー・平間シンゴ。この二人を中心にストーリーが進んでいく岩本薫先生の小説『タフ』シリーズはEXTRA編も入れると全7巻というボリュームのある作品。
トラブル体質の小悪魔系美青年シンゴと野獣系の刑事響が巻き込まれる、日常のちょっとした事件を背景に、男二人因縁こじらせ系カップルの腐れ縁ぶりをじれながら鑑賞するタイプの小説です。一話完結もので、世相を反映していたり、料理のシーンも多いので、「きのう何食べた?」の形式に近いかもしれません。
今回ピックアップしたのは第2巻のうち『Valentine Kids』の章。響とシンゴの前に響の同僚でシングルマザーの女性刑事・斎田かおりとその息子・大地が登場します。一見コワモテの響ですが、シンママ刑事斎田の息子・大地には良く懐かれている様子で、仲が良いさまを見て、なんだか胸がツキッとくるシンゴ。
「タフ1 Troublemaker」(リブレ)
そんなシンゴに響は「再来週の日曜は空けておけよ。メシを食いに行こう」と日にち限定で誘ってきます。その日は二月十四日、バレンタインデーであり、なおかつシンゴの誕生日当日でもありました。ですが、響に懐いている子ども・大地の誕生日も偶然にもシンゴと同じバレンタインデー!
当日は響と自分の母親・斎田かおりと三人で遊園地に行きたいと言いだし、響は先約があるからと断っても大地は“とあるこだわり”がありガンとして譲りません。それどころか大地はシンゴに「響兄と母をくっつけて、二人に結婚してほしい」とナイショで打ち明ける純粋さ。
当の本人、響はシンゴとの約束を取りつけたため「先約がある」と、出かけたい思いでいっぱいの粘る大地に大人げないほどに冷たくはねのけます。
代々警察関係者の由緒あるけれど家族関係が冷えた家庭で育ってきた響にしてみれば、大切なシンゴが二月十四日・バレンタインデーの日に生まれなければ出逢えなかった特別な日…そんな誕生日を一緒に過ごすことに特別な意味を見いだそうとしていたのかもしれません。
必死に頼みこむ子ども・大地に遠慮してシンゴは「俺はいいよ、遊園地に行ってきなよ」とお人好し丸出しな部分が響をイラつかせます。その後の展開はかなり意外なもので、読み応えも甘さも充分! ネタバレ回避でぜひこの結末を読んでいただければと思います!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
2月14日は「バレンタインBL」をじっくり読んでみるのはいかがでしょうか? 甘々だったり、素朴だったり、一途な想いのこもったBL作品からもバレンタインの気配を感じてくだされば幸いです!
(執筆:加藤日奈)
加藤日奈
アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。
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