ふくだりょうこ
大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。たれ耳のうさぎと暮らしている。ライブと小説とマンガがあったら生きていける。
「上田さんって、お芝居で空気を引っ張っていく方なんですよね」
「坂さんは器用なイメージはないのに、完成したものはそつなく聞こえるから、すごく努力しているのかなと思う」
今をトキメク実力派声優、坂 泰斗さんと上田麗奈さん。互いの演技について印象をお聞きすると、リスペクトする言葉が次々と飛び出します。
そんなおふたりが共演しているのは、TVアニメ『俺だけレベルアップな件(以下、俺レべ)』。原作から引き継がれた設定のおもしろさに加え、アニメーション(特にアクションシーン)のクオリティの高さ、物語を引き立てる音楽のカッコよさ……さまざまな点で話題を集めていた本作。
中でも特筆すべきポイントは、主人公・水篠 旬の身体的&精神的な変化に伴う、坂さんのお芝居の変化。「本当に同じ人が演じているの!?」と多くの視聴者を驚かせたのではないでしょうか。
さらに、これまでも数多くの作品で高く評価されてきた上田さんが演じるのは、凛とした“強い女性キャラ”向坂 雫。ご自身は「あまり演じたことのないタイプのキャラ」と話しますが、そんなことは感じられないほど、お芝居から強い存在感を放っていました。
そこで、本作のSeason 2であるTVアニメ『俺だけレベルアップな件 Season 2 -Arise from the Shadow-』の放送を記念し、おふたりへインタビューを敢行。Season 1のお芝居を振り返るとともに、Season 2でのお芝居がどのように“レベルアップ”しているのかお聞きしました。
INDEX
——坂さん演じる水篠 旬は、Season 1の序盤と終盤ではかなり変化があるキャラクターかと思います。改めてどのようにアプローチされていたのかお聞かせください。
坂 泰斗(以下、坂):
僕の中で特にプランニングはしていないんですよね。姿勢や体を向ける方向で音として出るものが変わってくるため、シーンによって旬の体の向きだったり、マイクの高さだったり、という技術的な変化はつけていきました。
心情的なところでは、「生き残る」「強くなる」という生や強さに対する乾きや貪欲さは、序盤も終盤も一貫して変わらずにありました。それ以外の心情面は、力をつけていくことによって客観的に周りを見ることができるようになっていくなど、彼の成長に合わせて自然と変化していったんじゃないかな、と思っています。
——キャラクターの成長に合わせて、お芝居も自然と変化していった感覚なのでしょうか。
坂:
そうですね。「このくらい強くなったから、こういうふうに言ってもいいだろう」というわけではなく、彼の成長によってお芝居が引き上げられていったのだと思います。
また、旬の成長だけでなく、会話をしているほかのキャラクターとの空気感のおかげで、その場その場の状況に合わせて自然な変化へ繋げられたという感覚はあります。
——上田さんは、坂さんのお芝居の変化をどのように感じていらっしゃいましたか。
上田麗奈(以下、上田):
旬はメンタル的にも肉体的にも変化が大きいキャラクターだと思うんですけど、1話ごとに少しずつ変化していくところをしっかりと演じ切っていた印象があります。メンタルの部分を理屈で考えすぎず、自然とお芝居へ繋げていけたというのも、本来の坂さんの経験や性格が旬くんと似ている部分があるからなのかな、と思いながら今お話を聞いていました。旬くんのことがわかるからこそ、こねくり回さなくても自然に出てきた表現が説得力を帯びるのだと思います。
それはもちろん、坂さんを見つけてきたキャスティングの力もありますし、坂さんが自身の経験を自分の引き出しとして出し切って表現できる役者さんだったからというのもあると思うんですけど、そのリンク感は凄まじいですよね。肉体的な変化に伴う筋肉量の変化で声の出し方が変わることはもちろん、自信がついていくことで声の張りも変わります。そこを細かく技術的に調整していることによって、パッと聞いて変化がわかるのが素晴らしいなと。本当に、坂さんはギャラを3倍にしていただいたほうがいいのでは……。多めにもらったほうがいいですよ……?
坂:
そんなことはないですよ! お金には代えられない経験値をたくさんいただいているので大丈夫です(笑)。
——逆に、坂さんから見た上田さん演じる雫はどういった印象でしたか。
坂:
雫というキャラクターを「こういうキャラクター」として括るのは簡単だと思うんですよ。でも、上田さんは「こういう感じのキャラクターだから」というアプローチを絶対にしない方だな、と今回アフレコをご一緒してお話して感じました。
上田さんって、演じるキャラクターととことん向き合う方なんですよ。基本的に自分以外の人間のことを考えるって、すごくメンタルを削る行為だと思うんです。演じるだけじゃなくて、「自分の演じるこの人はどう思っているんだろう」と考えるだけでも疲れるじゃないですか。
——たしかに、他者について考える時間が長いほど消耗します。
坂:
それをとことん詰めに詰めて、自身のエネルギーを削ってキャラクターと向き合おうとされているなと感じました。本収録の前にテスト収録があるのですが、そこから「この表現が果たして合っているのか」と頭をフル回転して考えていらっしゃる。見ていて熱量を感じましたし、それだけ真剣に一つのキャラクターに取り組んでいらっしゃる姿勢がすごいな、と。
向坂 雫はSeason 1での登場回数は決して多くないのに、キャラクターの説得力を感じるのは、それだけ深く自身を削って作り込まれているからこそだろうな、ということは感じましたね。
——上田さんご自身は、身を削ってお芝居をしている感覚はあるんですか。
上田:
実はないんですよね……。私は努力とか、がんばることができていない人間だと思っていて。
坂:
そこが他者から見ると、とんでもなくストイックに見えるんですよね。
上田:
そうなんですね……! 私は「こんなに全然できていないのに!」という気持ちなんです。「もっと努力していれば、もっといろんなアプローチを提案できたのではないか」と思い悩むことが多かった気がします。
ほかの作品もそうですけど、TVアニメSeason 1の時はコロナ禍でキャスト皆さんと一緒にアフレコができなくて、客観視をすることがすごく難しかったんです。バランスを図りながら、みんなの呼吸感の中で、雫のポジションを測れなかったのも大きかった。雫は今まで私があまり演じたことがないタイプだったんですよね。人によってあまり態度を変えないとか、凛としていて弱みをあまり見せないようにしている感じとか。私とは真逆なので、思い悩むことは多かったな、と思います。
坂:
一緒に録っている側からすると、その悩んでいるのがすごくよかったです。でも、さらにその上を捻り出そうとされている感じがあって。貪欲さっていうんですかね。いいものを作ろうとする熱量を感じるし、その熱量はないといけないな、と思います。
——坂さんも、自分自身に貪欲さを感じていらっしゃいますか?
坂:
貪欲さの塊ですよ。このエゴをどうやって殺すか、という人なので、ずっと満足しないですね(笑)。エゴをぶつけることが正解ではなく、作品をよくすることがあくまで我々の究極の答えというか……自分自身の考えを乗せすぎると、それはそれで作品を壊してしまうんですよね。
というところを考えながら演じているんですけど、この作品に限ってはエゴをぶつけないと作品の魅力が出ないと思ったんです。とにかくエゴをぶつけて「こう思うんですけど、どうでしょうか」という提案を何度もしました。その上で、監督たちとディスカッションをして作り上げていくことができたのは、ほかの作品ではなかなかできない経験だったんじゃないかなと思いますね。
――坂さんがエゴをぶつけられたと思うのはどのシーンなのでしょうか。
坂:
1話の神殿のシーンと、2話の最後のシーンですね。物語序盤のシーンでもありましたし、彼の根幹でもあるマイナスの感情は最初に示しておかないといけないなと。もっと淡々とセリフを言うことも可能だったと思うんですけど、音が潰れたかもしれない、というくらい感情優先で演じました。結果、その熱量というか……泥臭かったり、劣等感だったり、音が潰れることよりも負の感情を優先してくださったと思っています。
上田:
特に劇場版アニメ『俺だけレベルアップな件 -ReAwakening-』を見た時には、坂さんの熱量たっぷりのお芝居が最初のほうにくることで、一気に『俺レべ』の物語へ引き込まれる感じがありました。「旬ってこういう子なんだ」「ここからレベルアップしていくということなんだ」というベースが見えたのがすごくよかったです。この作品、すごくおもしろい!と思わせられました。
坂:
わあ……嬉しいですね……。
――そこからのSeason 2ですが、どういったところがさらにレベルアップしていると思いますか?
坂:
表現の仕方も大きく変わっていますし、技術面ではスパッと聞こえる、マイクに乗る音を使うようにしていました。旬は成長していたり役割や立場が増えていたりするので、「声の輪郭を強調させたいな」「声の厚みや響きがうまく乗ったらいいな」と思って演じています。細かなところではあるんですけど、そういう変化はつけました。
――上田さんはいかがですか?
上田:
みんなと収録できるようになったことで 1番助かったのがボリューム感なんです。どのくらいの音量や距離感で声が統一されている現場なのかがなんとなくわかったことで、雫の声の出しやすさに繋がっています。「もっと雫は声を出してもいいのかも」「逆に旬がこのくらいのボリューム感だから、もっと小さくしてもいいのかも」とか。そこが分かりやすくなりました。
坂:
僕が想像以上に小さい声でしゃべっていたりしますからね。
上田:
そうなんです。完パケを聞いていると、みなさんのお声も調整されていて、全員聞き取りやすくなっているんですけど、アフレコブースだと 本当にボリュームとしては小さい、でも響きとしてはすごく大きくて広い、みたいなこともあって。空気の振動がわかるだけで、自分がどう声を発したらその場に馴染むのかが、1人で録っているときよりわかりやすく感じました。
坂:
感じられることが全然違いますよね。
上田:
みなさんと一緒に録ることで、「Season 2のほうがより雫本来の声になったのかな」と思っています。
――上田さんの中で精度が高まったみたいな感覚なんですね。
上田:
そうですね。
坂:
ほかの人と録ることで、空気感がわかるのは僕自身もそうだったかもしれません。ひとりでしゃべるモノローグが多かった中で、ほかの方と話すと、自然と違いが出てきました。
上田:
きっとそれぞれに良い影響を受けていたんですね。
――本作は俺TUEEE系作品だと思います。最後にお互いのお芝居に対して、「強いな」と思うところを教えてください。
坂・上田:
「強い」かあ……(笑)。
坂:
僕からいいですかね? 僕は冗談抜きで(上田さんの)ファンなので(笑)。
上田:
ええ……!
坂:
唯一無二な表現をされているんですよね。それをご自身は「納得していない」と言われていて、「じゃあ僕が感じていることはどうなっちゃうの?」って思ってしまいます(笑)。でも、一つひとつの言葉の意味の繊細さを突き詰めている方だし、自分もそうあるべきだな、と思います。僕が理想とする役者像にすごく沿っている方なんです。
あと、とても優しいです!
上田:
ふふふっ(笑)。
坂:
現場が和みますよ。本当に影で支えてくださったな、と思います。
上田:
全然ですよ……!
上田:
坂さんは痒いところに手が届く演技をする人ですね。この作品をやっていると、その熱量や誠実さがすごく伝わってくるので、そこも魅力だなと思うんですけど、どの作品でも、どのポジションのキャラクターでも、絶対に馴染むんです。その上で、痒いところに手が届くというか。「このキャラクターってこういう個性があるよね」というのを、ちゃんとお芝居で表現されているから、例え出番が少なくても「このキャラクターってこういう人だよね」ということがわかるのがすごく素敵なところです。
キャラクターを客観的に見ることもそうですし、本人を深掘りしたり、たくさん考えているのが伝わってきます。そこが“強いな”と思うところですね。でも一緒にアフレコしていると、器用なイメージはないんですよね。
坂:
たぶん、不器用な方だと思います。
上田:
その上で、完成したものはそつなく聞こえる。だから、すごく努力しているのかなと思わされるんです。
坂:
ははは!
上田:
そこにグッと来ます。こうありたいです。
坂:
いやいやいや! あ、それはでも、もうオウム返しになるんですけど、上田さんって、お芝居で空気を引っ張っていくんですよね。意図せず牽引する力があるのは間違いないと思っています。それは誰にでもできることでは絶対ないですし、僕みたいに考えて考えて考えて出す人とは、また少し違う到達点にいらっしゃるのは間違いないと思います。吸う息の一つにも意味がたぶん込められているんじゃないかなと思うし、それでいてご自身が満足もしていないのはすごいですよね。
(執筆:ふくだりょうこ、取材・編集:阿部裕華、撮影:小川遼)
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2025年1月より放送開始。
●スタッフ
原作:DUBU (REDICE STUDIO)、Chugong、h-goon(D&C MEDIA 発行)
監督:中重俊祐
シリーズ構成:木村 暢
キャラクターデザイン:須藤智子
サブキャラクターデザイン:古住千秋
モンスターデザイン:徳田大貴
プロップデザイン:白石創太郎
アクションディレクター:菅野芳弘 丸山大勝
キーアニメータ―:鳥居貴史 中川 肇 橋元快斗 米澤 篤
美術監督:奥村泰浩
色彩設計:中野尚美
撮影監督:井関大智
CG監督:森岡俊宇
モーショングラフィックス:大城丈宗 (Production I.G)
編集:近藤勇二
音響監督:田中 亮
音楽:澤野弘之
アニメーション制作:A-1 Pictures
●キャスト
水篠 旬:坂 泰斗
向坂 雫:上田麗奈
最上 真:平川大輔
白川大虎:東地宏樹
後藤清臣:銀河万丈
犬飼 晃:古川 慎
諸菱賢太:中村源太
水篠 葵:三川華月
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』公式HP:https://sololeveling-anime.net/
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』公式X(旧Twitter):https://x.com/sololeveling_pr
TVアニメ『俺だけレベルアップな件』公式TikTok:https://www.tiktok.com/@sololeveling_pr
© Solo Leveling Animation Partners
坂 泰斗(ばん・たいと)
1992年12月18日生まれ、福岡県出身
坂 泰斗 公式 X(旧:Twitter):https://x.com/taitob_1218
上田麗奈(うえだ・れいな)
1994年1月17日生まれ、富山県出身
上田麗奈 公式 X(旧:Twitter):https://x.com/reinaueda_staff
上田麗奈 公式Instagram:https://www.instagram.com/reinaueda_staff/
上田麗奈 オフィシャルサイト:https://www.lantis.jp/reinaueda/
ふくだりょうこ
大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。たれ耳のうさぎと暮らしている。ライブと小説とマンガがあったら生きていける。
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