ふくだりょうこ
大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。たれ耳のうさぎと暮らしている。ライブと小説とマンガがあったら生きていける。
いくつになっても、“初めてのこと”というのはワクワクする。
普段は主にボーイズグループのライブに行くことが多い自分が、生まれて初めて「歌い手」として活動するアーティストのライブに足を運んだ。
彼の名前は「Sou」。ニコニコ動画をはじめとしたネット上での活動がメインで2015年にメジャーデビューしている。検索しても、「Sou」自身の顔を出したリアルな姿というのはどこにもない。
歌い手を何も知らない身としてはまず、「どんなふうにライブを展開していくのか」に興味が湧いた。「とりあえず楽曲に触れなければ」とサブスクで人気曲をチェック。何曲かお気に入りの曲を見つけ、いざライブ会場となるZepp Hanedaへ。
Souのつくり上げる世界観、ファンの熱量に触れて実感したのは、“リアルな歌声は心に響く”ということ。心に響けば、「その世界観をもっと知りたい」と思うのは当然だ。
そんな歌い手初心者の筆者がより歌い手の世界を知りたくなった、2024年1月19日(金)開催『Sou LIVE 2024〜inside〜』のライブレポートをお届けしていく。
INDEX
普段と違うジャンルのライブ会場というのは、少し落ち着かない。
Zepp Hanedaの2階、一番後ろの席に腰をおろす。2階席にもかかわらず、後ろの方まで立ち見の人もいて、Souの人気の高さが伺える。
定刻になると暗転――。
OPNING SEが流れ、ふわっと空気が変わったことが分かった。
ステージ上にはバンドメンバーが登場。そして、ゆっくりとSouが姿を現すと、会場からは大きな歓声が上がった。
Souの「みんな、飛ぼう?」という声かけで始まった1曲目は「人マニア」。客席では青を基調としたペンライトが揺れる。
2曲目は「新興宗教」。優しい歌声が広がっていくが、曲のタイトルからしてインパクトがある。ステージに設置された大きなスクリーンにはMV映像と歌詞が映し出されているので、つい、その歌詞を追うことに没頭してしまいそうになる。
今年初めてのライブだそうで、「あけおめー」から始まったMC。「緊張しいだ」というSouは、「まだ今年が始まっていない感がすごくて。今日のワンマンライブをとおして、スタートをきれたらいいなと思っています」とゆるりとした感じではあるが、意気込みを語った。
続けて、「ライブでやったことがない曲ばかりなので、ノリ方とか分からなかったりすると思うけど、みんな各々楽しんでくれたらいいな、と思います」と、途中、噛んでしまったことに恥ずかしそうにしているのも印象的だった。
思わず、体が自然と揺れる「ラグトレイン」、イントロ時点で会場から大きな歓声が上がった「ヴィラン」。重低音が響き渡り、それまでとまた少し世界観が異なったように感じられる。
さらに、印象的なベースラインが心地よい「命辛辛」。メロディに言葉遊びのような歌詞が乗り、ついその言葉を追わずにはいられなくなる。
メロディと言葉を追っているうちに、その曲のことしか考えられなくなる。シンプルにそれが楽しい。ライブに来るのは、そのアーティストの世界観に浸りたくて来ているのだから。
ただ、MCはあまり得意ではないらしい。MC冒頭で「何を話そうとしたか思い出そうとしていますよ」とポソリと言って始まるのがなんともかわいく微笑ましい。
「ライブの楽しみ方って難しいんですけど、僕もそんな『かかってこいや!』みたいな感じではないので……せっかくのライブ会場で、音を直接浴びられるのは楽しいじゃないですか。踊ったり、自分が知っている曲だったら口ずさんでみたり。『ここは手拍子がいけるんじゃないか?』みたいなところがあったら、僕を無視してやってほしいです」とライブの楽しみ方をレクチャー。
「そんな感じで慣れないMCはほどほどにして……」と早々に次の楽曲へ。
どこかメロウな音で始まる「ミルキー」。生と官能と絶望を感じさせるような言葉たちに圧倒されていると、ガラッと雰囲気が代わり、どことなくポップな「ホワイトハッピー」へ。
会場も一体となってペンライトを振り上げる。が、ポップさの一方でなんとなく不安になるメロディが挟み込まれ、不安定さを醸し出す。
さらに弾むピアノのメロディから始まる「タイニーバニー」、どことなくおとぎ話のような物語を感じさせるMVをバックに歌う「ゼロトーキング」へと続く。セットリスト中盤はどちらかというと、明るさを感じさせるような楽曲が多いようだ。
「ついてこれてますか」と会場に呼びかけるSou。本当にMCは苦手なようで、「MC全部これで入ろ」と言い、客席を微笑ませた。
ここで触れたのは『Sou LIVE 2024〜inside〜』のコンセプトについて。
「アルバムを出したあとのライブとかだとどうしてもアルバム曲をねじこまないといけなくて。とはいえ、みんながお金を払って遠くから観にきてくれるのだから『この曲は違うかな』と思うこともあるんですよね」と普段のライブについて感じていた思いを打ち明ける。
続けて「もちろん好きな曲は入れさせてもらっているんですけど、『もっとやりたいことがあるんだよな』と思うこともあるんですよ。だから今回は、『やりたい曲やったれ』みたいな感じのコンセプトとなっているわけなんです」と語った。
「このあとのセトリも楽しみにしてもらえたら」と、後半戦への期待を煽りつつ、コールした次の楽曲のタイトルは「囮と致死毒」。客席からは驚きにも似た声が漏れる。切なく響く声。その声がMVの世界観とリンクしていく。
次の楽曲「淡々、回想」もMVがスクリーンに映し出されただけで客席のあちこちから歓声が起こった。とつとつと歌声が響き、聴く人の心に言葉を落としていく。曲を聴いているはずなのに、どことなく静けさも感じられる。
そのまま静かに曲が終わると、Souにピンスポが当たり、「チョコレートミルク」へ。かわいいタイトルだけれど、どことなく寂しさも感じる。続く「おくすり飲んで寝よう」もピンクを基調としたMVがキュートでありながら、ダークさも感じられてクセになりそうだ。
次のMCでも、先ほど予告したとおりに「ついてこられていますか」から入るSouに客席からは温かい笑みが漏れる。
一応、MCで何を話すか考えてきているそうだが、「結局ぐしゃぐしゃなまま来ました」というSouに、「かわいい!」の声が飛び、「それで許してもらえるなら、もうそれで許してもらおう!」とおちゃめな様子を見せた。
そして、「あれやる?」と問いかけ、Souのライブではおなじみらしい会場とコール&レスポンス。
男子、女子とそれぞれに呼びかけて楽しげな笑みを浮かべた。
ライブは早くも終盤戦。
「盛り上がる曲を用意してきたので」と「CH4NGE」、さらに「みなさん、声出せますか!」と呼びかけ、米津玄師の「KICKBACK」のカバーを披露し、テンションを上げていく。さらに、「バグ」「ノウナイディスコ」と畳みかけていく。
「なんだかんだであと2曲だよ」とSouが言うと、会場からは「えーっ!」という声が。「ライブはまたやりますから」と微笑んだあと、あらためて来場したファンに感謝の気持ちを伝えた。
「ずっと歌ってみたを家でポチポチ投稿していたから、もともとライブをするつもりは全くなくて。そんな僕が、こうしてみんなの前でライブができるようになったのは本当にみんながいてくれたからというか……」と話していると、サポートメンバーがBGMをつけ始める。それにSouも乗っかり、「エモいMCです。覚悟して聞いてください」と微笑む。
そして、「人前に立つのが本当に苦手で、毎回言っている通り、やばいくらい裏で緊張しているんですよ。今日もずっとメイクさんに励まされていて……すごかったです」と明かした。
「それでも、ライブをやるのはファンから声があるから」とSou。
「僕が逆に元気をもらっているというか。本当は僕がみんなのことを楽しませて、『また明日からがんばれよ』ってしなきゃいけないし、やろうとは思っているけど、みんなから直接元気をもらっているのは僕のほうで。本当にありがとうございます」と思いを伝え、「不器用にこれからも頑張っていくので、よかったら応援してあげてください」と言うと大きな拍手が沸き起こった。
「次の曲はみんなも一緒に歌えるところがあるし、恥ずかしいかもしれないけど、誰かが声を出せば歌うから。よかったら一緒に口ずさんでください」と「妄想感傷代償連盟」「少女A」を立て続けに歌い、最後はSouの「飛んで!」の声に合わせて全員でジャンプ。本編を締めくくった。
もちろん、これで終わりではない。会場からの大きなアンコールに応えて再び登場したSouは「ナンセンス文学」からスタート。勢いが増していく歌声に、客席もクラップとペンライトで応える。
アンコール1曲目を歌い終えると、改めて感謝を伝え、「アンコールってさ、分かり切っているから恥ずかしいよね」とはにかんだ。
「好き勝手な選曲」というアンコールのセットリストは、「炉心融解」「バブル」と続く。
最後に「今日、このライブを期に、いいスタートが切れそうな気がします」と言ったあと、「もっとぶちあがりたくないですか?」と問いかける。「もちろん!」というように客席からは歓声とペンライトが上がる。
「アガる曲、持ってきたんで」とコールされたタイトルは「ノイド」。激しく瞬くライティングの中で疾走感のある楽曲を熱唱。言葉通り、ぶちあがってライブを終えた。
最後はステージの端から端まで歩き、遠くにいるファンにも丁寧に手を振っていたSou。「また会いましょう」と再会を約束し、ステージから立ち去った。
歌声に圧倒されたのはもちろんのこと、スクリーンに映し出されたMVや歌詞によって、楽曲の世界観が多角的に表現されており、気がついたらSouの世界観に没頭していた。ライブが終わったあとは、楽曲それぞれを深堀りしたくなっている自分がいた。
何より感じられたのは会場がとても温かな空間だったということ。最後、客席からはステージ上のSouに向かって「ありがとう」の声が多く飛んでいた。それだけで、Souとファンの相互の素敵な関係性を垣間見られたように思う。
楽しみと共に、「歌い手ライブ初心者の自分が訪れても良い場所なんだろうか」と若干の不安も抱えつつ訪れたライブ。しかし、音楽と熱量さえあれば、そんな不安はあっさりと消えていく。残るのは「楽しかった!」というシンプルな想いだ。
「このライブを通していいスタートを」と話していたSouだが、ライブの空気に身をゆだねていた側としても、背中を押してもらえた気がする。
(執筆:ふくだりょうこ、編集:阿部裕華)
SE
M1 人マニア
M2 新興宗教
-MC-
M3 ラグトレイン
M4 ヴィラン
M5 命辛辛
-MC-
M6 ミルキー
M7 ホワイトハッピー
M8 タイニーバニー
M9 ゼロトーキング
-MC-
M10 囮と致死毒
M11 淡々、回想
M12 チョコレートミルク
M13 おくすり飲んで寝よう
-MC-
M14 CH4NGE
M15 KICK BACK
M16 バグ
M17 ノウナイディスコ
-MC-
M18 妄想感傷代償連盟
M19 少女A
アンコール
EN1 ナンセンス文学
-MC-
EN2 炉心融解
-MC-
EN3 バブル
-MC-
EN4ノイド(2024.01.19 Zepp HANEDA(TOKYO))
EN4 愚者のパレード(2024.01.21 Zepp Namba(OSAKA))
Sou公式HP:https://sou-official.jp/
Sou X(旧:Twitter):https://twitter.com/Nico_nico_Sou
Sou Staff X(旧:Twitter):https://twitter.com/sou_staff_mg
ふくだりょうこ
大阪府出身。大学卒業後、フリーランスのライターとして執筆活動を開始。ゲームシナリオのほか、インタビュー、エッセイ、コラム記事などを執筆。たれ耳のうさぎと暮らしている。ライブと小説とマンガがあったら生きていける。
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