音楽特集BL_アイキャッチ

ガチ腐女子が身悶えした「音楽BL」漫画5冊を紹介する。リアルすぎるクズバンドマン、男前ギタリストに腰が砕けました…

『隣のメタラーさん』マミタ:「メタル」への親近感が沸く!豆知識も楽しい

『となりのメタラーさん』(徳間書店)

『となりのメタラーさん』(徳間書店)

貧乏大学院生の遣斗(けんと)は大雪の日に家で凍死しかけたところを隣人の壮志(そうし)に助けられる。真っ黒な服を身に纏い、無口で強面な見た目は近寄りがたいけれど、表情を隠すように伸ばした髪からのぞく瞳は、何かを訴えるように揺れている。その日から毎日ご飯を作ってもらい、一緒に食べるようになって一年。この穏やかで幸せな時間が壊れていまうのが怖い――実は自分がゲイであることを隠し、膨らむ気持ちに蓋をしながら過ごす日々で…?!(コミックスあらすじより)

それは、俺と壮志さんが出会って2度目の春を迎えるまでの物語――
【カップリング属性】年下貧乏大学院生×寡黙で健気なメタルお兄さん

小さい頃から言葉が上手く出て来ず、人と話すのが怖くて周囲から孤立してきたメタル好きの青年・壮志が、極寒の雪の日、凍死しそうになっていた隣室の貧乏大学院生・遣斗を救ったことがきっかけで、朝夕のごはんを一緒に食べるご近所づきあいがはじまります。

遣斗はゲイで、寡黙でも親切な壮志にがっつり胃袋を掴まれて以降、壮志自身にも惹かれていきます。相手の好きなものを知りたいと、興味のなかったメタルのライブに一緒に行って、今までやったことのないことを体験してみるなど、他人と接するにあたって壁を作らないところがとても素敵で優しい印象を受けましたが、ここでマミタ先生の表現力と設定が冴えていることに気づきます。

言葉がつっかえてしまう壮志は上手く話せないのですが、遣斗は幼児教育の研究をしている大学院生なので落ち着いて壮志に耳を近づけて話してくれるのをゆっくり待ちます。人に思いを伝えるのがうまく出来ない、すぐにいっぱいいっぱいになってしまう壮志に合わせたペースで寄り添える遣斗はさすがプロの対応。子どもにも好きな人にも寄り添える遣斗のキャラ設定はとても良く活かされていて、胸がホッコリ。穏やかで優しい遣斗に胸キュンです。


また、カバー下のあとがきにもギッチリ書き込まれていましたが、マミタ先生が大のメタル好きということもあり、作中に出てくるメタル情報やメタルライブ参戦のたしなみなども、分からない読者向けに丁寧に分かりやすく解説してあり、メタルについても思いきり楽しめます。ちなみにメタルを聴くと元気になるので寒い北欧の方たちは老若男女メタルを聴いている、などの豆知識も得られ、一気にメタルへの親近感も湧きました。

無口で口下手で目つきが怖い壮志には、なぜメタル好きになったのか、髪の毛を伸ばしてせっかくキレイな顔を隠しているのか、あえてネタバレを避け詳細は控えますが切なくて哀しい理由があります。途中で何度も涙が出そうになりますが、この穏やかで切なくてポカポカな温かい気持ちになれる作品の世界観を実際に読んで味わって頂きたい。読み終えたあとの感動と心の余韻も優しく、オススメの一作です…!

『よるとあさの歌』はらだ:臨場感モリモリでおったまげました。

『よるとあさの歌』(竹書房)

『よるとあさの歌』(竹書房)

女にモテたくて仲間とバンドを始めた朝一。そんな朝一がボーカルを担当している弱小バンドにサポメンで入ってきたヨル。ライブの後のちょっとした「お遊び」の時に起こった一度のアヤマチ。それをきっかけに、ヨルは朝一への想いを明らかにしていく。「男同士なんて気持ちワリィ…」と嫌悪感しかなかったはずの朝一なのに、衝撃的なヨルの歌声に思わず欲情しカラダを求める日々へと変わる。朝一を一途に想い続けるヨルを軸に、めまぐるしく加速する欲望、暴走する嫉妬、それぞれのキモチの行方は……?(コミックスあらすじより)

アイツの歌声を聴いてから、うるさく響く心臓、滾る欲望。
【カップリング属性】ゲスでヘタレなボーカル×一途な美人才能アリなベース

出ました進化し続ける鬼才・はらだ先生、本作はバンドもの! はらだ節炸裂の絶好調っぷりでイキイキと下衆攻め×一途な健気受けが鮮やかに描かれています。

攻めの朝一はびっくりするほどリアルなクズバンドマンです。少々リアル過ぎて、バンドやライブ、バンドマンと出待ち常習ファンや貢ぎ物上等認知厨ファンとの関係を見事に描ききっていて、実際に小さい箱のライブに行ったことのある人間にとっては読んでいてその場にいるかのような臨場感におったまげるかと思います。

弱小バンドのボーカル朝一のコンプレックスは、才能に溢れるヨルが自分よりみんなからモテること。このように根っこの部分が下衆で小心者の朝一は、ともするとあまり共感が得られなくなりそうで、下衆攻めには賛否両論あるようですが、どれだけゲスくても思わず情が湧くようなキャラを描けるのがはらだ先生の素晴らしいテクニック。

若さゆえの自信過剰・イキがりとともに(どんなに魅力的でも男(ヨル)なんかに堕ちるなんで絶対に認めない!)という強がりも巧妙に描かれていて面白いです。

『よるとあさの歌 Ec』(竹書房)

『よるとあさの歌 Ec』(竹書房)

一方、受けのヨルは美人系長身イケメンで天然、憂いのある色気があり一途で奇跡の歌声を持ち、たまらなく魅力的なキャラ。ライブ中の格好良さと、大好きな朝一の前では恋する乙女のような態度のギャップもまた可愛らしい!

中盤まで攻めである朝一がクズ過ぎるのでどうしようかと思いましたが、こういう脇アマでイージータイプがどんどん魅力的な受けであるヨルに堕ちていく姿は最高ですね。滾ります。はらだ先生の作品が大好きで、特にはらだ先生作品特有の薄暗さであったり、ねじ曲がった人間の汚いところや、ぐちゃぐちゃな部分が好きな人にはたまらない場面もあります。これも読み応えと、醍醐味のいち部分だとも思えます。

また、ヨルは元々のバンドでボーカルをしていたので、歌うシーンは圧巻。艶やかな表情と眼差しでマイクに向かう姿は魅入ってしまうほど!いったいどんな声なのかとコマを凝視して聴きたい欲求をひたすら想像で補うしかないのが残念です。

はらだ先生持ち前の表現力は本作でも存分に発揮され、「男も女も惚れる歌声」という設定によって、ライブ感、躍動感はもちろんのこと、飛び散る汗、なびく髪、むき出しの歯や舌、涙、体から出るものすべてが勢いよくほとばしっていて生々しい!

これでもかと迫力のある歌声や演奏シーンが描かれて、どの描写ひとつとっても、読み手に臨場感モリモリで伝わってくるところが最高の一作です。

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以上、上記5作品を「音楽を感じるBL」としてピックアップしてみました。コマから噴き出してきそうなほどの熱い音楽の情熱を感じる作品や、どんな音なのか知りたくてのたうち回った作品、ポカポカ癒やされ作品等々、音楽BLにももっともっと色んなタイプの作品があるのでは? さらに調べたくなってくだされば幸いです。

(執筆:加藤日奈)

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加藤日奈

アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。

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