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『さよなら絶望先生』17巻(講談社)

“可愛い”の解像度が高いのは何故?『さよなら絶望先生』『かくしごと』久米田康治が描く女性のファッションを深堀する

ファッションに着目する流れになると、度々ファッションの意義というものが語られます。その中でも印象に残っているのが『かってに改蔵』における「ファッションとは、成り立ちにおいて機能美という理由を持つのだ」という言葉です。

『かってに改蔵』11巻(小学館)

『かってに改蔵』11巻(小学館)

作中では「セーラー服に襟があるのはなぜか」「チェック柄はなんのためにあるのか」とギャグテイストでファッションと機能性に関する知識が繰り広げられますが、私はそこに久米田先生のファッションに対する哲学を垣間見たような気がしました。

久米田先生は少女漫画で描かれるようなキラキラした華美な服装よりも、その辺の女の子が日常的に着ているような普遍的な服装を描くことに長けていると感じます。それでも「久米田先生の漫画に出てくるキャラクターは服装がおしゃれ」と言われるのは何故なのか。

現代において「普遍的で日常的な可愛い服装をキャラクターに毎話着せてあげる」こと、加えて「ファッションで読者に余計なノイズを与えない」こと自体そのものが漫画表現におけるファッションの価値であり、その機能を発揮できているからなのではないでしょうか。

「ファッションとは機能性」という哲学がベースにあるからこそ「シンプルでおしゃれ」を実現したような、あの久米田先生独特のスタイルが描かれているのかもしれません。

『スタジオパルプ』1巻(白泉社)

『スタジオパルプ』1巻(白泉社)

どの漫画でも鋭く世の中を切り、ちょっとほの暗い笑いをさわやかに届けてくれる久米田先生。作中でも描かれる時事ネタは時代に追いついていないと描けない題材なので、同時にファッションも追っていると考えればその長年の研究心とセンスの磨きっぷりにも納得がいくような気がします。

現在連載中の『シブヤニアファミリー』は『週刊少年サンデー』で連載中。作中のファッションにも注目しながら、これからも久米田ワールドを存分に楽しもうと思います。

(執筆:宮本デン)

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宮本デン

音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。

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