羽賀こはく
横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。
人生に潤いを与えてくれる存在である“推し”。「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てていくnumanで、マンガ・アニメ・映画好きの編集部員が推し作品を週に1本紹介していく「numan編集部員 今週の推し作品」。
今回紹介する作品は、上山道郎先生によるマンガ作品『悪役令嬢転生おじさん』(少年画報社『月刊ヤングキングアワーズGH』連載中)。
公務員として真面目に働いていた屯田林 憲三郎(52歳)は、ある日交通事故に遭う。そして、気がついたら娘がプレイしていた乙女ゲームの世界に転生。しかも転生した姿は悪役令嬢! 前世での人生経験を活かして、様々なトラブルを解決していきます。本人は頑張って悪役令嬢になりきろうとしますが、意図せぬところで周囲の人々からの好感度が上がっていき……。ゲームのシナリオとは全く違う人間関係が構築されていく、異世界転生コメディ作品です。
TVアニメは2025年1月9日(木)よりMBS/TBSなどで毎週木曜深夜0時26分〜放送中。
本作の推しポイントは、なんといっても主人公・憲三郎ことグレイス・オーヴェルヌの“中年おじさんの悪役令嬢”ならではのズレた発言や行動! 本来であればヒロインにきつく当たらなければいけないシーンでついつい“親目線”になってしまったり、攻略対象のイケメンの名前が覚えられなかったり、老眼などがない快適さに感動していたりする憲三郎に、読み進めるほど笑いが止まらなくなります。
INDEX
『悪役令嬢転生おじさん』の推しポイントをひとことで言うなれば、“中年のおじさん”ならではのズレた発言や行動がおもしろいところ。
#悪役令嬢転生おじさん 雑誌掲載版第1話です(1/8) pic.twitter.com/IgLFZTPvjw
— 上山道郎 (@ueyamamichiro) December 1, 2020
現世で公務員として真面目に働いていた憲三郎は、交通事故に遭い、乙女ゲームの悪役令嬢である、オーヴェルヌ公爵家の令嬢・グレイスに転生します。娘がプレイしていた乙女ゲーム『マジカル学園ラブ&ビースト』の世界だと、すぐに気付いた憲三郎。なぜ乙女ゲームの世界なのかはわからないものの、「転生したからには悪役令嬢としての役割を果たそう」と心に決めます。
第1話「52歳の公務員」では、魔法学園に入学した初日に憲三郎(グレイス)はゲームのヒロインであるアンナ・ドールと出会います。生徒がほぼ全員貴族の学園に特例で入学したアンナに対して、グレイスが身分の違いをクドクドと説教し、家族のことまで侮辱して悔し涙を流させるのが本来のゲームシナリオ。
しかし、憲三郎が放った言葉は、「さぞかし見識のある親御さんに 大切に育てられたのでしょうね……!」などの親目線のセリフでした。子を持つ親としての本音が出てしまった言葉に、アンナは涙を流して感動します。筆者はこのシーンを読んで、「憲三郎、まったく悪役令嬢になれていない!」と爆笑しました。
悪役令嬢転生おじさん・ZERO
おじさんはいかにして悪役令嬢という概念を理解したか pic.twitter.com/XVrXXTyWau— 上山道郎 (@ueyamamichiro) December 19, 2019
この出来事で、敵対するはずのヒロイン・アンナに懐かれた憲三郎。その後も、頑張って悪役令嬢らしく振る舞うも、すべてヒロインの好感度を上げる行為になってしまいます。第2話「優雅変換!」では、初の授業ではしゃぐアンナを叱る憲三郎ですが、“自分の至らない所を叱ってくれる優しい人”と感動されます。
さらに、教科書と教壇を交互に見る憲三郎の姿に“とても熱心で向上心を持っている人”と解釈するアンナ。実際は、老眼など老いからくる不便がない快適さに感動しているだけというズレたところにクスっと来ます。ほかにも、第3話「これが攻略対象か!」では、攻略対象のイケメンたちの名前がすぐに覚えられないという、“中年のおじさん”ならではの描写が。各所に描かれる“中年のおじさんらしさ”は、クセになるおもしろさで、読み進めるほど笑いが止まらなくなります。
スマホを見るおじさんです pic.twitter.com/NFJKFbughp
— 上山道郎 (@ueyamamichiro) June 3, 2022
“中年のおじさん”ならではのズレた発言や行動をするグレイスすなわち憲三郎は、本作での筆者の推し。そんな憲三郎の魅力について2つ語ります。
まず1つ目は、順応力の高さ。そもそも第1話で、すぐに乙女ゲームの世界に転生したことを理解し、悪役令嬢としての役割を果たそうと決めている。52歳のおじさんが、うら若き公爵令嬢に転生したことを、すぐに受け入れているのはかなり順応力が高いです。
加えて、第2話では憲三郎の転生特典能力がわかります。その名も【優雅変換(エレガントチート)】。憲三郎の動作が、上流階級の淑女にふさわしい所作へ自動的に変換される機能です。例えば、学園長に声をかけられた憲三郎が、「これは学園長先生 いつもお世話になっております」とお辞儀した姿。【優雅変換】によって、セリフは「学園長先生におかれましても ごきげん麗しゅう……!」と変換され、お辞儀はきれいなカーテシー(ヨーロッパの伝統的な挨拶)に変換されました。この転生特典の【優雅変換】を、「まあ 異世界転生ってそういうものだしな」と受け入れる。この憲三郎の順応力の高さがおもしろいのです。
#悪役令嬢転生おじさん
単行本1巻大好評&重版出来御礼として、第2話も試し読み公開です!
1/6(全24ページ) pic.twitter.com/KDlJvdem8G— 上山道郎 (@ueyamamichiro) January 8, 2021
また、転生後の新しい人生を後悔なく精一杯生きようとする憲三郎の姿も、前向きですてきなのです。第3話で魔法の実技授業を受けた際には、魔法を発動させるため、魔法陣に古代文字を書くことに。言葉に含まれる「言霊」の力を使い、魔法を発動させると聞いた憲三郎は、魔法陣に“漢字”を書いて魔法を発動!
古代文字を知らなくても、発想の転換で自身の得意なやり方で魔法をつかう憲三郎。その前向きな姿は感動的で、本作の見所は憲三郎の魅力があってこそだと改めて感じられる描写です。
憲三郎の苗字「屯田林」は大阪の地名「富田林」から取ったのかと聞かれるのですが、半分はそうです。
「とんだばやし」という響きが良いので使ったのですができるだけ実在しなさそうな苗字にするために「富」を「屯」に変えました。#悪役令嬢転生おじさん pic.twitter.com/ICuUAPglL6— 上山道郎 (@ueyamamichiro) April 3, 2022
そして2つ目の魅力は、憲三郎の人柄。見た目はきれいだが、性格がきつい公爵令嬢・グレイス。「見た目は天国 性格は地獄」と言われるほど性格がきつい人物のよう。その中身が憲三郎になったことで、周囲からの評価が徐々に変化していきます。
第3話では、生徒会長で第1王子のヴィルジール・ヴィエルジから「アンナと2人で生徒会に加入してほしい」という旨を伝えられると同時に、平民のアンナが生徒会に入ることについても意見を求められます。そこで憲三郎は、平民だからと貶すことなく「アンナは成績優秀のため、生徒会メンバーに欲しいと考えるのは当然」とヴィルジールに意見を伝えるのです。「(本来の)グレイスならば反対するだろう」と思っていた生徒会メンバーは驚きますが、正当な評価をした憲三郎を称賛します。
優しく良い人で、正しい判断ができ、前向きな性格な憲三郎だからこそ、周囲からの評価が良い方に変わっていく。読めば読むほど、筆者の推しである憲三郎の魅力が描かれていて嬉しく思います。
余談ですが、憲三郎の妻と娘も順応力がかなり高いです。2巻第9話「お父さんだぁ~」では、乙女ゲーム『マジカル学園ラブ&ビースト』の世界で、父・憲三郎がグレイスになっていることに気づいた娘。そして、娘に状況を説明されて「なるほどわかったわ」とすぐに状況を理解する妻。家族全員、順応力が高いところもおもしろいポイントです。
最後に、TVアニメ『悪役令嬢転生おじさん』の魅力についてお伝えします。
まず1つ目に、アニメならではの優雅なエフェクトとアニメーション。作画がきれいなのは言わずもがな、原作の良さを損なわないストーリー展開・カメラワークで、違和感を感じることなく視聴ができます。そして、アニメならではのエフェクトが素晴らしい。
ヒロイン・アンナが登場するシーンや、憲三郎が親目線のセリフを言うシーンで流れる「シャララン」という効果音。第1王子・ヴィルジールの名前が思い出せないシーンでは、憲三郎の困った表情をアップにするカメラワーク。そしてアンナがグレイスの好感度を上げるたびに鳴る「ピコーン」という効果音は、昔ながらのアニメのような効果音と表現でありながら、決して古く感じさせない上品さとおもしろさを感じました。
さらに、転生特典能力【優雅変換】が発動する瞬間の動作が、滑らかなアニメーションとキラキラとした光によって豪華に表現されているのも見所の1つです。
原作のエレガントな世界観とテンポのいい笑いはそのままに、アニメならではの音と映像による表現を取り入れて、魅力がプラスされているのは、原作ファンとしてはかなり嬉しいですね。
2つ目の魅力はグレイスと憲三郎の声のコントラストが絶妙なところ。グレイス(cv. M・A・O)の気品ある女性の声と、憲三郎(cv. 井上和彦)の落ち着いた渋い声の対比が絶妙なのです。グレイスとして周囲に振る舞う場面では優雅な声が際立ち、憲三郎の内面がモノローグで現れる際に、渋い声が重なる。このコントラストが、より作品のおもしろさを際立てているのでしょう。
3つ目の魅力は、グレイス=憲三郎(cv: 井上和彦、cv:M・A・O)が歌うED主題歌『マツケンサンバⅡ』。「アニメ、おもしろかったな」と何気なく観続け、EDで憲三郎がマツケンサンバを踊り出した瞬間、「なんで『マツケンサンバⅡ』なんだ!」と笑った人は多いのではないでしょうか。もちろん筆者も驚きと笑いが止まりませんでした。ノリノリで『マツケンサンバⅡ』を歌って踊るグレイスと憲三郎の姿に、「次回も絶対に観よう」と決めた人は多いはず。
主人公・憲三郎の“中年のおじさん”ならではのズレた発言や行動で、クセになる笑い。そして、憲三郎の順応力の高さと人柄の良さで感動と笑いを与えてくれる本作。読み進めるほど、笑いが止まらなくなるでしょう。異世界転生や乙女ゲームが好きな人だけではなく、コメディや人間ドラマが好きな方にもおすすめの作品です。numan読者の皆さんも、本作を読んでぜひ爆笑してみてください。
羽賀こはく
横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。
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