宮本デン
音楽と酒とネット文化、そしてアニメ・ゲームに心酔するサブカルライター。大衆が作り出すカオスがどこまでいくのか見届けたいという思いで、日々執筆活動を行っています。表現に対する深読みや考察が大好きなオタク。あなたの好きなカルチャーを、深く独自に掘り下げます。
またその他にも小さい頃は女の子らしく育てられて...とか、胸があって男装が...という描写も全く私と同じ境遇でした。
また、そんな保が好きなファッションを実現している紗織に対し、卑屈となってしまうのもなんだか身に覚えがある気がして、心が痛んだのを覚えています。
そんな保が乗り越えるきっかけとなったのが、人知れずコスプレを楽しんでいたギャルグループのうちの一人、装間ユキです。
男装の入口がコスプレ、というのも実は身に覚えがあります。今回は男装に焦点が当たりましたが、日々コスプレの中で進化し続ける魔法のようなメイクや体格を変える技術は、あらゆるファッションに活かせるのではないでしょうか...!?(実際に、コスプレイヤーのユキはファッション全方位特化型ですね)
保がユキの力を借りて男装を完成させたときの高揚感は、初めてベリーショートにしたときのことを思い出して胸が詰まりました。
先ほど男装について語りましたが、実は着物にもルーツがあるので紗織の姿や着物に対する想いを見ると「わかる!」と感じます。
私の祖母が踊りをやっていたこともあり着物愛好家。毎年の浴衣はもちろんのこと、成長したら自分が持っている着物をいっぱい着せたいとよく言っていたのを覚えています。今は亡くなってしまいましたが、成人式で着たのは祖母が遺してくれた金の刺繍に総絞りの振袖でした。
とはいえ、イメージ通り暑くて重いし、何よりお手入れが大変なのは間違いありません。そんな大変なことを「好きだから」とこなし、背筋をピンと伸ばして座る紗織の姿を見て、着物をきちんと着られたときのテンションが上がる気持ちを思い出しました。
前述のとおり、紗織と美絽はお互いのファッションのテイストを近づけて楽しんでいます。主に紗織が美絽のテイストに寄せることが多いのですが、その時に出てくる現代柄の着物が特に可愛いのです。
もちろん紗織が好む古典柄もとても素敵ですが、現代柄を合わせると一気に印象が変わります。実は着物はシンプルだからこそ最もアレンジしやすく、どのジャンルにも幅広く対応できるファッションなのではないでしょうか。
古典も現代も、和風も洋風も全てを網羅できる着物。本作で改めてその魅力と可能性を感じました。今では着る機会が少なくなったものの、今後着る機会があれば現代風の柄にも挑戦してみたいし、着る機会を逃さないようにしたいと思います。
自分の好きも他人の好きも否定しないことを教えてくれる『着物ちゃんとロリータちゃん』。現代のファッションにおいては重要な、TPOを大切にしたいという葛藤も肯定してくれる、一歩踏み出す勇気をもらえる漫画だと思います。
登場人物の友情とファッションの描写は、読むだけで心が温かくなり幸せになれること間違いなし。少し肌寒くなり、服も選びやすい秋の季節、好きなファッションに挑戦してみてはいかがでしょうか。
(執筆:宮本デン)
宮本デン
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