現役芸人が『カミシモ』のリアルを語る。鳥越裕貴の漫才が上手すぎる問題を考えてみた

売れている先輩たちはこのどれかを極めているし、若手芸人たちはどれかをモノにしてブレイクしようとして試行錯誤している。人気で格好良い俳優さんたちを揃えてポップにデフォルメしながらも、描いているテーマが芯を食いすぎている。

「お笑いファン」にも見てほしいと言ったが、お笑い芸人や芸人をめざしている人こそ『カミシモ』は見た方がいいかもしれない。

『あいつが上手で下手が僕で シーズン2』日本テレビ公式サイトより

『あいつが上手で下手が僕で シーズン2』日本テレビ公式サイトより

そして『カミシモ』は容赦がないので、主人公コンビが苦手な分野では最下位を取ってランキングが急落したりする。絶対に自分のせいなのに相方や周囲を責めたり、笑わない客のせいにしたりする様子なんて、全若手芸人が寝込むくらいのぶっ刺さり方をすると思う。

寝込みたくなるほど、芸人の苦悩を的確に表している

また、「細かいけどそこを突くのか!」と感心してしまったのは第5話。染谷俊之さんと和田琢磨さんが演じる「ラストワルツ」は芸歴15年で、かつて若手実力派として注目を集めていたが、今ではすっかり迷走中だ。

第5話では、賞レースのラストイヤーとなるラストワルツのテレビ出演と3回戦の日程が被ってしまう様子が描かれる。こんな究極の選択、芸人なら想像するだけで悶絶してしまう。

シチュエーションも超リアルで、例えば「賞レースの決勝」と「番組出演」なら芸人は満場一致で「賞レースの決勝」を選ぶ。賞レースの決勝に出れば売れる可能性が非常に高いからだ。しかし「3回戦」は一番迷うラインだ。例えばM-1だと準決勝くらいまで進出すると芸人として大きく箔がつくが、3回戦進出くらいでは「箔がつく」とは言い難い。

だが実は賞レースは「2回戦」が鬼門であり、M-1だと2回戦の倍率はプロで約10~12%、アマチュアだと1%以下だとも言われている。

つまり2回戦を突破して3回戦に進出した時点で、「今年は行けるかも」と強く感じてしまうのが芸人のサガだが、その上には準々決勝、準決勝、決勝と信じられないくらい高い壁が立ちはだかっている。

それくらいなら現実的に「番組出演」を選んで、番組で爪痕を残す方が有益ではないか……という「究極の選択」である。ましてやラストイヤーの「ラストワルツ」の苦悩は、見ている私まで倒れそうだった。

鳥越裕貴の漫才が上手すぎる問題を考える

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住岡

アニメ、漫画、2.5次元・アイドル・声優などのジャンルを一通り嗜むライター。自宅が商業BLの山に埋もれている。お笑いも好き。

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