加藤日奈
アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。
2024年もいよいよラストスパート! 今年もnumanではアニメ、声優、アイドル、2.5次元俳優など…幅広いジャンルの“推し”を深掘りし、さらなる魅力をお伝えしてきました。きっと皆さんも、さまざまな推しに魅了されてきたことでしょう。そんな皆さんにとっての推しを振り返り、さらに掘り下げるために、スペシャルな年末特集を実施。今年1年の推しへの感謝とともにお楽しみください。
早くも時は師走。振り返ってみると、今年も様々なジャンルで数多くのBL作品に触れてきました。そこで今回は「2024年BL総決算」として、ガチ腐女子ライターが今年印象に残った5作品をご紹介します!
INDEX
2013年にキヅナツキ先生が連載を開始した『ギヴン』が初めてTVアニメ化されたのは2019年。続く2020年にシリーズ初となる『映画 ギヴン』が公開、翌年2021年には実写ドラマ化、舞台化とメディアミックスが広がっていきました。
待望のアニメ続編となる映画2部作前編『映画 ギヴン 柊mix』を経て、ついに本作『映画 ギヴン 海へ』が今年9月に公開され、原作完結までを描くという、この上ない経緯を辿ってきた至高の一作!
何はさておき本作は真冬がもがき苦しみ悩みながらも自分と向き合い、答えを出していくことを軸に進む物語。冒頭、亡くなった元恋人・由紀との夢と回想から始まり突然のエモ供給。いきなりオタクは涙の海で溺れそうになり「どうしたことか」状態です。
この作品の最大の魅力は恋だけでなくすべてにおいて等身大の悩みや共感したり共鳴できる心情に溢れていて、それを音楽という熱いコンテンツで魅せてくれるところ。また、本作の大きな見どころのひとつとして外せないのが、真冬の今まで経てきた全てを受け止めるごとく、不器用でも実直な男らしさを貫く立夏の度量の大きさ!
立夏が真剣に真冬のために、亡くなった由紀が遺した音楽を完成させて真冬に返してあげるという愛の深さが、映像と音楽にした時により伝わってきた気がしました。その想いが大きく現れた場面は、やはりライブシーン!
漫画では未完成だった劇中歌『海へ』は、いったいどんな音色なんだろう?と想像するしかなかったのですが、本作も今までどおりアーティスト・温詞のソロプロジェクト・センチミリメンタルが作詞・作曲・編曲を全面的に手掛けた圧巻のライブシーンで耐えていた涙腺は大崩壊。
漫画では表現できない部分に“正解以上”の本当に素晴らしい答えを映画館のスクリーンで出してくれたことに感謝しながら、目と耳に焼き付けて観ることができました。
この素晴らしいを越える極上で全ての五感を持っていかれるようなライブシーンは観た人の心に強く残る歌詞とメロディーで、物語だけでも印象深い作品が音楽によってさらに登場人物ひとり一人の境遇や印象を深めていると確信。ボロボロ泣きながらステージを見つめる真冬を、演奏しながら立夏が見つけたときのあの愛おしそうで優しい笑顔!
その表情だけでも立夏と真冬の関係性が現れていて、尊さに涙が止まらず嗚咽待ったなし。全てを乗せた想いが真冬に届いて欲しいと思うとあの優しいコーラスと表情になるのでしょうか。涙で前が見えません。
ちなみに毎週更新された描き下ろし特典も本当に豪華でキヅナツキ先生にも感謝しかないです。映画のためにこんなに描いてくださって……オタクは幸せでした!(大号泣)
『ハッピー・オブ・ジ・エンド』の原作を手掛けるのは、圧倒的画力と繊細かつリアルな人物描写、多彩なストーリー展開で読者の心を掴み続けるBL界のレジェンド・おげれつたなか先生。本作が初の実写化となりました。
今やBLドラマ全盛期ですが、数あるなかでも本作の話題性と注目度は抜群でした。2人の男が互いの過去や心の傷を愛で満たしていくさまを描くラブストーリーを演じたのはボーカルユニット・ONE N' ONLYの沢村玲さん(ケイト/浩然)と、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」の別府由来さん(柏木千紘)!
このお二人の瑞々しくも壮絶な演技、そして印象深く美しいビジュアルで目も心も釘付けになり、あっというまに虜になってしまったのが記憶に新しく感じます。
ゲイであることを理由に家族から拒絶され、全てを失った人生どん底の柏木千紘(別府由来)は、ある晩行きつけのバーで浩然(沢村玲)と出会います。クールな美青年に見える浩然は、壮絶な生い立ちからトラウマを抱えていました。
なかなかに容赦ない作品なので、この地獄のような生い立ち、トラウマの場面については観ていて胸が痛み目をつぶりたくなるほどで、それに対峙して立ち向かう沢村玲さんの迫真の演技の凄みには、思わず飲まれてしまいました。
成り行きで始まったこの二人の共同生活は衝突やすれ違いもありましたが、千紘の手料理に浩然が感動したり、浩然がくれた玩具のネックレスを千紘が本気で喜んだりと、穏やかな日常を送るうちに、互いに本気で深い愛情で結ばれるようになります。
ここで特筆したいのが千紘を演じる別府由来さんのくるくる変わる表情の豊かさ! 千紘は人生どん底のヒモですが、喜怒哀楽すべてに素直で裏表のない可愛げが見ていてたまらなくキュート!
自分たちは付き合っているのかと尋ねる千紘に対して「分かりきってること、確認してくるな」と塩丸出し対応の浩然に拗ねる千紘に、浩然はしぶしぶのテイで「好きです、付き合ってください」と告白します。そんな浩然の肩にポスンと頭を寄せながら千紘は恥ずかしそうに「よろしくお願いします」と直球の返事。その素直な愛らしさに萌えが大爆発しました。
また、そんな千紘に思わず笑みがこぼれる浩然の“デレ”にも胸キュン! お砂糖ドバァな“デレ”顔と幸せそうな二人の様子に、観ながら口角がどこまでも上がっていくのを感じました。
しかし、そんな幸せな日々も浩然の過去の因縁によって崩れようとしていきます。壮絶な結末のネタバレは避けますが、執着や嫉妬、復讐や罪悪感など複雑な感情が入り混じる2人の関係はどうなってしまうのか。涙なしには観られないエンディングをぜひ体感してください。
今年10月発売。実写ドラマも大好評を博した凪良ゆう先生の大人気シリーズ、本編としては5年ぶりの待望の最新刊です。10年前に刊行された「美しい彼」で結ばれた二人を、「憎らしい彼」「悩ましい彼」と大きな岐路を通してより深まっていく二人の関係を見つめてきました。
番外編集「interlude」からは3年、本編として5年ぶりの今回を迎える間に著者の凪良ゆう先生が一般文芸作品でご活躍になったり、「美しい彼」の映像化が大ヒットするなど本作周りの環境が大きく変化したため、続きは半ばあきらめていただけに発売決定の情報を見たときは大歓喜! 発売日当日に書店に突っ走っていったオタクです。
それにしても「美しい彼」シリーズはBLCD、ドラマ、映画、コミカライズとどのコンテンツも大成功していて、作り手の作品に対するリスペクトや理解度が飛び抜けて素晴らしいのも特徴的です。
さて今回の本作・4巻はこれまでの延長線上にあるものの、平良や清居ら登場人物が大きく飛躍した内容となっていました。人は生きて悩んで学んで、絶望したり乗り越えたり停滞したり歓喜したり、少しもじっとしていない。現実世界と同じなんだなと感じました。
特に、平良も清居も22歳と若いので、日々発見と喪失を重ね不器用に愚直に歩んでいます。ですが4巻は特に二人の成長を感じ、瑞々しさに打たれ、二人の関係性が周囲の大人たちに優しく見守られ、眼差しの温かさや尽力してくれる様子に胸が熱くなってしまいました。
平良が悶々と悩みながらも、自分を奮い立たせ、目の前の現実から逃げることなくカメラマンとしての道を歩んでいく様子には、平良の成長を感じて嬉しくなります。清居も相変わらず平良の“きもうざ”にイライラさせられながらも、平良を見守って時には叱咤して――。
相変わらずな清居は“潔い男前な乙女”ながらも平良を大好きな気持ちが伝わってきて、その深い愛情に何度もキュンとさせられられました。
“きもうざ”平良も圧倒的にレベルアップしていて良い意味でキモさ倍増、大成長。清居への壮大な愛と忠誠を誓いながらも、自分の道を一歩一歩、怖くても足を踏み出していく描写には、心の中で思わず「がんばれ!」と声援を送っていました。そして無自覚ラブラブ度もマシ増し、公認バカップルめでたい! 末永く推しとお幸せに、な気分です。
個人的には今までの「美しい彼」シリーズの中で一番内容が濃く、読み応えがあったのが本作という印象ですが、なにより巻末に添えた書き下ろし「青は藍より」で平良の師匠である写真家・野口大海氏の心情描写を含むターンがあったことが大収穫!
読み終えるのが惜しくて、でも早く読みたくて、の葛藤でもがきました。既刊を大切に読み返しながら、新しい彼らに出会えるその日まで健やかに過ごしたいものです。エターナル!!!!!(両手を広げて声高らかにの絵文字)
加藤日奈
アニメ系やコミック、2.5次元舞台俳優、声優系インタビューやコラムなどWEBメディアを中心に活動するフリーライター。所有するBLコミック小説が3,000冊を超えて増殖し続けている紙派の腐女子。
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