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角由紀子さんインタビュー

なぜ人は恐怖にハマる? オカルト研究家・角由紀子が語るホラーの魅力 「ファブリーズ除霊」の効果から“超リア充”がスピる理由まで

「アナタの推しを深く知れる場所」として、さまざまな角度で推しの新たな一面にスポットを当てていくnuman。2024年8月の深堀りテーマは“ホラー”。苦手と言いつつ、ついつい見たくなる・聞きたくなる「ホラーを推す」特集を実施中。

ホラーを推す2024 カバー画像

8月も終わりに近づいているのに、涼しくなりそうな気配もない。なかには、あの手この手で“涼”を得ようと模索した末に「オカルト」にたどり着いた読者の方もいるのではないでしょうか……。

じつは近年、ホラー映画『変な家』の大ヒットをはじめ、人々の恐怖体験を元にした「実話怪談」が人気を博すなど、不思議で怖い“オカルトの世界”に注目が集まっています。

そこで今回は、漫画『オカルト異世界ばなし』(竹書房)で原作を担当したオカルト研究家・角由紀子さんにお話を聞きました。

“リア充”はハマりにくい? オカルトにハマる人の傾向

角由紀子さんインタビュ^

オカルト研究家・角由紀子さん

――まずは、昨今のオカルトブームの特徴について教えてください。

角由紀子さん(以下、角):かつてのオカルトといえば、“マニアックな趣味”という印象が強くありました。オカルト雑誌の『ムー』(ワン・パブリッシング)や、山口敏太郎事務所の山口敏太郎さんといった、オカルトの専門家が発信する心霊や都市伝説、宇宙人などの情報を愛好家がひっそりと楽しむものだったんです。

時を経て、ストリートにもオカルトが波及しました。ライト層はオカルト系YouTuberが心霊スポットを訪れる映像など、ドキュメンタリー形式の映像を楽しむ人が多いですね。今回のブームによって“人が心霊スポットに行くだけ”でもコンテンツとして成立することが証明されました。

また、同じオカルトファンでも年代によってオカルトの楽しみ方に違いがあるのも特徴です。幼い頃から心霊や宇宙人などの話題が身近だった40代の人は、かつてと同じくオカルト関連の情報収集がメイン。一方、20代の若い世代の場合は、怪談師(実話怪談を話すプロ)や、オカルト系YouTuberなどの“推し”の応援が、趣味の中心になっているんです。

――怪談師が推し活の対象なのは興味深いですね。世代によって楽しみ方は異なりますが、不思議な世界に惹かれる人には共通点があるのでしょうか?

角:あくまで私見ですが、人間は刺激を求める生き物であり、それらの刺激のなかでも“恐怖心”は、人が持つ根源的な欲求のひとつだと思っています。
誰もが抱く欲求ではありますが、オカルトで刺激を求める人は「自分の人生にスパイスがほしい」と感じて、オカルトの世界に魅了されていく印象です。

ちなみに、“リア充”な人は、オカルトにハマりにくい傾向がありますね。ただ、例外もあって仕事もプライベートも充実している“ガチの超リア充な人”は、さらなる高みを目指して、スピリチュアルな世界に足を踏み入れることもあります。世間的に成功している経営者や芸能人のなかには、ゲン担ぎとしてパワーストーンのブレスレットをしている人もいますよね。

オカルト研究家・角由紀子さんインタビュー

――たしかに、某大御所芸人さんも、手首にパワーストーンのブレスレットを巻いているのを見たことがあります! 向上心の現れだったんですね。

角:その芸人さんが身につけているブレスレットは100万円で購入した、なんて噂もありますよね。パワーストーンの種類や、ブレスレットを作る人が込める“念”によって価格が変化するのもスピリチュアル界の特徴です。いわゆる霊感商法のひとつですが、経済的に余裕がある人にとっての100万円が、一般人にとっての1万円くらいの価値であれば、大きな問題にはなりません。

しかし、自分の経済状況に見合わないものを買うのは危険。スピリチュアルなアイテムには「幸せになる」「運が良くなる」などの触れ込みがあるので、経済状況が苦しいときに頼りたくなってしまう気持ちもわかりますが、無理をして買うのはやめましょう。

――身の丈に合った方法で楽しむのがコツですね。

幼少期から「幽霊」の存在を認識していた

――令和になり、にわかに活気づいているオカルト業界ですが、角さんがオカルトや異世界に興味を持ったきっかけとは?

角:私の場合は、父の影響が大きいですね。父もオカルトが好きで、なおかつ霊感が強い“視える人”なんです。普通に道を歩いていても「そこに幽霊がいる」とか「ここは雰囲気が悪い」とか、よく話していたので、興味を持つ以前にオカルトが“家族の日常”でした。じつは、私が小学校3年生のときに実家でポルターガイスト現象が起きたんです。

――えっ! 何もないところで音が鳴ったり、モノが落ちたりするという、あの……?

角:はい。我が家では、扉が突然開かなくなったり、テレビが映らなくなったりと、不思議な出来事が連続して起きました。そこで、父が心霊研究家の方に相談をして霊能者の方にお祓いをしてもらったところ、ポルターガイストがピタリと止んだんです。今でも「あれは何だったんだろう」と、疑問を抱いたのをよく覚えています。

「オカルト異世界ばなし」(竹書房)より

「オカルト異世界ばなし」(グラハム子作画、角由紀子原作/竹書房)より

また、小学生の頃に観た『ツイン・ピークス』という海外ドラマも、今につながっています。超常現象や異次元を扱ったドラマで、異次元や摩訶不思議な世界を好きになるきっかけになった作品です。実際に家庭でもオカルトな体験をしたので「これは実話をベースにしたドラマなのでは……」なんて思いながら観ていました。

――現在はリアルで起きる心霊現象や超常現象を研究している角さんも、フィクションがお好きだったんですね。

角:私はもともと、フィクションのオカルトが好きなんですよ。小さな頃から映画監督になるのが夢で、大人になったらホラー映画を作るつもりでしたが、いろいろな事情があり白夜書房という出版社に就職したんです。

そこで、スピリチュアル系の雑誌や本を担当してキャリアを積み、転職したサイゾーでも占いサイトを運営したり、オカルト情報を発信するサイト「TOCANA」の編集長になったり……。そうこうしているうちに、気がつくとオカルト研究家になっていました。

新宿や三軒茶屋…身近なはずの場所で心霊体験

――いつの間にかオカルト研究家になる人生もあるんですね……。趣味と仕事が一致した生活を送っているからか、角さん自身も不思議な体験をすることも多いとか?

角:ありますねえ。父と違って、私自身は霊感が高いタイプではないのですが、振り返ると「あれって幽霊だったのかな?」と感じることはよくあります。「幽霊はいる」という前提で生活しているので、よりアンテナに引っかかりやすいのかもしれません。

新宿駅の地下通路を歩いているときに、全身真っ黒な服を着ている人が目に入ったんです。その人は、異常に体がやわらかく、人であれば、胸の高さくらいの位置から地面に向かってぐにゃっと腰を曲げていました。

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とみたまゆり

ライター。ブックレビューサイトで書籍・漫画のレビュー等を執筆。好きな漫画がだいたい地獄展開になっていくのが悩み。画像は私が考えたかっこいい最強の剣。

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