「病みかわいい」原宿から、世界へ!江崎びす子インタビュー|『原宿系ジェンダーレス男子と大型犬カレシ』『メンヘラチャン』

「メンヘラチャン」がHarajukuカルチャーのアイコンに

江崎びす子さんを招待したオーガナイザーによると、「『2018年、ゲストを呼ぶなら絶対にびす子さんだ』と、スタッフが満場一致だった」とのこと。これほどまでの支持と、ご自身の作品がアメリカで評価される理由を、びす子さんは「Harajukuカルチャーが注目されている流れのひとつとして、アイコン的に『メンヘラチャン』があるのかなと」と語ります。

「AX2018に声がかかる少し前から、『海外の人にも見てもらいたい』と思って、InstagramやTumblrを英語で投稿するようにしはじめたんです。それがうまく行ったのか、海外でも見てくれる人が増えて、それで声がかかったのかなと思うとうれしいですね」

もともと英語ができるわけではなかったというびす子さん。SNSに投稿する英語は、「Google翻訳でまず日本語から英語にして、それが正しいかを確かめるためにまた英語から日本語に翻訳をかける。何回翻訳しても絶対間違いがないようになったらそれで投稿する」という方法で書いているそう。
「時間が余ったときは、自分が翻訳した文章を朗読して、ちょっとでも多く単語を覚えようとしています」と勉強熱心な一面も。サイン会や似顔絵セッションでも、「知っている言葉は少ないけど、単語でなんとかファンとコミュニケーションが取れた」と満足気でした。

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー02

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー02

日本のファンとアメリカのファンの違いと共通点

びす子さん曰く、日本のファン向けにはTwitter、海外向けにはInstagram・TumblrとSNSを使い分けているそう。Instagramでは、びす子さんが投稿するたびに海外のファンたちが「Kawaii!」「So cute!」とコメントしてくれる様子が見られます。

「日本のファンは、リツイートはするけど、コメントは怖がってあまりできない。海外のファンは、Instagramだから拡散はできないけど、気さくにコメントを載せてくれる印象です。励ましの言葉が届きやすくて、勇気付けられています」

会場でのサイン会や似顔絵セッションには、「メンヘラチャン」のコスプレをして来てくれた現地のファンも多く、中には大量のプレゼントを用意してくれたファンも! びす子さんの大好きなアニメ『パワーパフガールズ』やいちごのアイテムなどを、袋いっぱいに詰め込んで持ってきてくれたそうです。

「私の好みを調べ尽くしているんだなと思いました。しかも、日本になさそうなものをちゃんとセレクトしてくれているんです」

そんな日本のファンとの違いを実感しながらも、「日本のファンも海外のファンも、本質的には変わらない」と語るびす子さん。

「アメリカのファンは、SNSでは日本の子たちよりフレンドリーに接してくれるんですけど、実際に話してみると、みんなガチガチになっちゃう。サイン会や似顔絵セッションでは、『Relax!(リラックスして)』とよく声をかけましたね」

また、今回のアメリカ訪問では、ファン以外からも声をかけられることが多かったと言います。

「会場を歩いていると、積極的に『写真撮って!』と言われて。あと、ビバリーヒルズでショッピングしたときに、ファッションを褒めてくれる人が結構いましたね。セレブのイメージがあったので、『えっ、ここでも褒めてくれる人がいるんだ!?』と驚きました」

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー 01

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー 01

ファッションショーでは、ご本人&現地ファンもモデルで登場!

AX2018では、原宿ファッションブランド「ACDC」(http://www.acdcrag.com/)とコラボしてのファッションショーを実施。アメリカのHarajukuファッションが好きな女の子の中からステージに立つモデルを募集したところ、Instagramでつながっていたファンも参加してくれたと言います。

「彼女たちとは、『やっと会えたね〜!』と大喜びでした。私も英語が話せないなりに、楽屋でコミュニケーションを取って。たとえば、『今、日本ではこんなハートポーズ(手全体で作るポーズではなく、指だけで作るポーズ)が流行ってるんだよ』と教えてあげたりしました」

ショーには、びす子さん自身もモデルとして参戦。雑誌のモデルとしても活躍するびす子さんですが、ファッションショーは初めてだったと言います。

「ステージに立つ前はすごくドキドキしました。本番直前まで、ウォーキングもポージングも練習したことがなかったので。でも、カッコつけずに自然体でやろうと」

いざステージに立つと、客席からは大歓声が! 作品だけではなく、びす子さん自身のステータスもまた、海外のファンが惹かれる魅力のひとつなのです。

「いざステージに上がってみたら歓声がすごくて、みんなが笑顔で手を振ってくれるから、『あ、全然大丈夫だ』と思って。リラックスして歩けたし、ファンサービスをしながら楽しくできましたね」

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー03

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー03

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー04

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー04

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー05

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー05

作品で海外に“媚びる”ことは絶対にしない

海外に向けて積極的に作品を発信し、満を辞してアメリカのイベントに参加。ところが、「今回の経験が今後の作品に影響を与えそう?」という質問については、「日本にいたときに既に感じていたアメリカのファンシーな要素は、そのまま入れ続けようと思います。でも、新しく『アメリカ人ウケするようなもの』を考えるようなことは絶対にしないでおこうと」
と首を横に振ります。

「それはもう私じゃなくなっちゃうし、MADE IN JAPANのコンテンツだからこそ海外の人たちがいいって言ってくれているわけで、そこに自分たちの近くにあるものが入っちゃうと『なんかちょっと違うな』ときっと思うだろうから……。日本にしかないような要素をふんだんに使って、なるべく新しいものを見てもらうつもりです」

一方で、現在連載中の、同性の恋人とのエピソードを描いた実録エッセイ漫画『原宿系ジェンダーレス男子と大型犬カレシ』(https://www.comic-essay.com/episode/183)のネタとして、AX2018のエピソードは使えるかもしれないと考えている様子。

「今回初めてアメリカに来て、日本と違うところにたくさん気づいたので、そういうネタは描けるかもしれません。トラブルがたくさんあって大変だったんです。たとえば、ホテルのシャワーの使い方がわからなくて、母と『シャワー出なくない?』って言ってたんです。あれこれ試して、三日目になってようやく使えるようになりました(笑)」  

注目の新キャラも続々。目指すは「サンリオ」!

今回の訪米に関連して、びす子さんはロサンゼルスにある日本人街「リトル東京」ともコラボを実施。ガイドブックにもイラストを提供し、AX2018の会場でも頒布しました。

「(Anime Expo 2018に来る人以外にも)目にしてくれる方々が増えるので、いいチャンスですよね。日本にいるファンに向けて、今回のことを写真付きで発信したら、みんな『アメリカではそんなことになってるの!?』って褒めてくれて。日本のファンも喜んでくれるし、アメリカのファンも喜んでくれるし、今回の取り組みは本当によかったと思っています」

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー09

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー09

そんなびす子さんの今後の目標は、ご自身のキャラクターを集めたプラットフォーム「atelierM.U(アトリエ・ムゥ)」を拡大していくこと。

「ゆくゆくは『サンリオ』みたいにしていきたいなと。日本では『激動のまなぴす』や『原宿系ジェンダーレス男子と大型犬カレシ』などのキャラクターも知られていますが、アメリカでは『メンヘラチャン』くらいしか認知されていません。もうちょっと海外進出できるようなキャラクターを増やしつつ、日本国内でもコンテンツを増やしていきたいと思っています」

実は現在、新しいコンテンツとして「ゆめかわ男子」(https://twitter.com/yumekawaboys)というコンテンツを進めているといいます。ファンシーなびす子さんらしさがありながらも、やや頭身が高く、イケメンテイストの絵柄で、また新たなファンを獲得しそうなキャラクターです。

「Twitterアカウントを作って、キャラクター設定やストーリーのイメージを流したら、何千もリツイートされて。アクリルキーホルダーはすぐ完売してしまったし、海外の人がもうファンアートを描いてくれたりして、『フライングすぎるでしょ! まだ走らせてないよ!』みたいな(笑)。アニメでいうとビジュアルしか公開していない状態なので、これからきちんと作品を作っていきたいですね」

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー06

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー06

日本と海外両方の視点を持ちながら、自分らしさを失わず精力的に活動しているびす子さん。その姿は、ファンはもちろんのこと、同じ道を目指す未来のクリエイターたちにも希望を与えています。
原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー00

原宿から、世界へ! 江崎びす子インタビュー00

■プロフィール
江崎びす子(えざき・びすこ)
原宿系ジェンダーレスイラストレーター、マンガ家。Twitterフォロワー数16万人以上。
「メンヘラチャン」「激動のまなぴす」などの作品で、「病みかわいい」というジャンルを生み出す。同性愛者であることを公表し、恋人との実録エッセイマンガ『原宿系ジェンダーレス男子と大型犬カレシ』(https://www.comic-essay.com/episode/183)を連載中。

●取材:飯塚ゆとり
●取材協力:Anime Jungle / Fickle Wish - Kawaii Shop -
●撮影:Jeremy Rafanan、飯塚ゆとり

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numan編集部

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