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廣瀬智紀(以下、廣瀬) 普段生活している中で少女漫画を読むことはあまりなかったんですが、今回『カレフォン』を読んで思ったのは「やっぱり女の子ってこういう男の子が理想なんだな」ってこと。そういう女の子が可愛いなって思ったし、この年になって久しぶりにキュンキュンしました(笑)。
――漫画自体もあまり読まれないのですか?
廣瀬 漫画を読むのは苦手なのかもしれない……。すぐ眠くなっちゃって、大体2冊目くらいで寝ちゃうんです。しかもウトウトしているから内容が頭に入ってないし、続きが気になるからまた読みに行っても、話を覚えていなくて読み直すところから始めるから全然進まなくて(苦笑)。
――(笑)。舞台の台本も拝見しましたが、漫画版よりも駿が掘り下げて描かれているなと感じました。
廣瀬 台本が上がってくるまでは、ラブファンタジーをテーマにした作品だと思っていたんです。でも、実際に台本を読んでみたら、ラブファンタジーを超えた人間ドラマで。
駿ってすごく真っ直ぐで、ある意味純粋で、それ故に崩れてしまった部分があると思います。野球だけに必死になって生きてきたのに、大人たちに裏切られて……。野球以外のものを見つけられなかったのは、駿の性格もあるけど、周りの環境が助けにならなかったんじゃないかな。駿に寄り添って見ていると、泣きそうになるくらい可哀想に思えて仕方ないです。
――主題歌『Dear, you』を大塚 愛さんが担当したことも話題になっています。聴かれてみていかがでしたか?
廣瀬 大塚 愛さんが曲をすぐに上げてくださったので、ありがたいことに台本ができる前に聴くことができたんです。「歌詞も素敵だな、きっと世界観に合うんだろうな」と思っていたんですけど、台本ができてから改めて聴いたら、もうまさにこの作品の大事なところが全部詰まっている曲で!
とくに2番の歌詞は駿目線の部分もあって、大事に作ってくださった想いが読み取れてすごく感動しました。舞台で流れるのが僕も楽しみです。
廣瀬 一番難しいのは、駿の性格が大きく分けて4つ、ガラリと変わっているところ。夢に向かってキラキラしている高校生の駿。肩を壊して殻に閉じこもって東京に出て、全く別人のようになった駿。茜と出会って、茜がその殻を破ってくれて本来の自分を取り戻せた駿。病気になって亡くなって、幽霊として現れた駿……全部違うんです。
シーンが断片的になっているところもあるので、その違う感情を行き来しなきゃいけなくて、そこにまだ慣れていない自分がいます。しかも、それらの感情が妙にリアルなんです。全く嘘のない感情でやらせていただけるので、「気持ちを作らなきゃ」じゃなくて、「自然とその気持ちに入れるようにしたい」とは思っているんですけど。
今は感情が全然切り替えられていないから、ちょっと情緒不安定です。普段はオンオフを切り替えられる方だと思うんですが、今回はそのスイッチングができなくて。それだけ役を引きずっているし、言いかえればそれほど(鈴木)おさむさんの脚本に魅了されているんだと思います。
――原作・演出を手がける鈴木おさむさんとの付き合いは長いですよね。
廣瀬 ドラマ『私のホストちゃん~しちにんのホスト~』で初めて一緒にお仕事させていただいて、それからもう7年ほど経ちます。そのあと舞台版でもご一緒しましたが、おさむさんは総合プロデュースという立ち位置だったので、こうやってガッツリ絡むのは実は今作が初めてなんです。
この間、おさむさんと”甲子園”の話になって。僕は舞台『ダイヤのA』(降谷 暁役)をやってから見るようになったんですけど……甲子園ってドラマがたくさんあって感動するじゃないですか。でも、おさむさんは「あまり好きじゃない」と仰っていたんです。メディアによって取り上げられて持ち上げられて、人生のピークをそこで迎えてしまっているような気がして、球児が可哀想に思えるんだそうです。
そういう着想があるからこそ、駿というキャラクターが生まれているのを感じました。おさむさんの物の見方、読み方って本当にすごいなと思うことがたくさんで、自分が薄っぺらいなと思うことばかり。だからそういう見方の勉強もさせていただきたいなと思っています。
廣瀬 川栄さんはスイッチングが上手で、パッと切り替えられる方。ものすごく自然に茜になっている印象があります。自分は役を引きずってしまっているので、まだまだ甘いなと思いました。二人の恋愛がこの作品の肝なので、パートナーとしてしっかり信頼を勝ち取っていきたいです。
戸塚くんが演じる陸は御曹司で、女子の誰もが憧れる存在なので、彼も「笑いやコメディの要素は封印だ」と意気込んでいたんですけど……。実は少しキャラが変わっていて、舞台ならではの陸が見られます!
「こっちの方が絶対にいい。こうじゃないと、茜が前に進む一歩になれない」とおさむさんも仰っていて……詳しくは秘密です(笑)。これは本当に実際に観ていただきたいです!
――茜は「生きていても楽しくない」と感じていますが、廣瀬さんもそう感じたことはありますか?
廣瀬 そこまではないですけど、この仕事を始める前は「なんか毎日がつまらないな」という感情はありました。同じ日常の繰り返しで、「何か楽しいことはないかな」と思っていたところ、周りが薦めてくれたからこの世界に興味を持てたんです。今は毎日が刺激的な世界なので、つまらないと思う暇はなくなりました。
廣瀬 アドバイスになるのか分からないですけど、茜と一緒で、「一歩を踏み出す勇気」だと思います。何かに興味を持つこと、興味がなかったら無理やり何かに興味を持ってみればいい。
それこそこの舞台を観に来てくだされば、何かが変わるかもしれません。単なるラブファンタジーではなく、いろいろなことに気付かされるし、痛いところを突かれるかもしれないし、自分を見直すきっかけにもなる作品になっているので。
――最後に、メッセージをお願いします!
廣瀬 仕事に、人生に疲れている女性の方々、たくさんいらっしゃると思います。茜だけでなく、そんな方々も駿という人物を通して癒してあげたいです。茜の目線になって楽しんでいただければ嬉しいし、僕も皆さんとも寄り添えたらなと思っています。ぜひ劇場に来てください!
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