【第4回/最終回】『鬼平』や『ジョーカー・ゲーム』での挑戦、そして/堀内賢雄さん60th独占インタビュー(3/3)

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――『フルハウス』や『ER 緊急救命室』でも歌や新たな演技に挑戦なさってきたわけですが、最近でも現場で緊張することはあるのでしょうか?

賢雄 TVアニメ『鬼平』(※23)でしょうか。説得力や心の余裕、遊び心だったり、が必要になりますからね。それに加えて、いろいろな人が「鬼平はこうあるべきだ」とプレッシャーをかけてきたんですよ。
自分の中で鬼平を作らなきゃならないのに、余計なことを考えすぎてしまって、それがすごく狙っている鬼平になってしまうんですよね。サンプルテープ、プロモーションのときは何も考えなかったのに、一発目で気負い過ぎてダメ出しの雨あられでしたよ(苦笑)。

――若手時代と同じような苦労をなさったのでしょうか?

賢雄 音響監督の三間(※24)さんは「何もしないでいい。賢雄さんのままでいい」って仰るのですが、またそれが難しい! 熱い方でね、納得するまでとことんやるんですよ。僕の他にゲストで羽佐間道夫(※25)さんとか、筈見純(※26)さん、飯塚昭三(※27)さんといった大ベテランの方々も出演なさっているんです。
筈見さんの収録が終わった後、僕は若い頃から本当にお世話になっていたので「賢雄、飲みに行くぞ」と誘ってもらって。そこで「俺は鬼平に出たかったんだよな、よかったなぁ」という話をされていました。
この筈見さんのでき上がりが素晴らしくて、あのオンエアの完成度にこの人の人生とお芝居が、重なりあっているのだなと感じました。僕も改めて筈見さんのように生きたいなと思いましたね。

――チャレンジという意味で、『ジョーカー・ゲーム』(※28)の結城中佐役は、賢雄さんが演じていることに驚いた人が多いのではないかと思いました。

賢雄 そう! マイクの前でウィスパーでボソボソ喋るというのは、僕の人生に無かった。それまでは「声を張れー! 張れー!」、「声を出せー!」って先輩や監督に怒られてきているのに、『ジョーカー・ゲーム』は「賢雄さん、声出さないでくれる?」って(笑)。
確かに芝居は大きくないけど、結城中佐はアレでいいんだな、って勉強させて頂いたと思います。人間は芝居しようとしちゃうんですよ。いろいろな目にあって「芝居しろ!」って言われて吸収してきたものを、今度は逆に、枝葉を削ぎ落とすところに来ているんだなぁ、と痛感しました。ああ、これも芝居なのかなーってね。

――キャリアを考えると、賢雄さんは押しも押されもせぬベテラン声優、というお立場ですが、それでもまだインプットすることがあるのでしょうか?

賢雄 いやいや、僕なんてまだひよっこですよ! 『鬼平』の収録の時に、あの羽佐間さんは80代になってなお『俺が鬼平役をやりたい』と仰っていました。さすがですよ。還暦の僕だって、あの方たちからすればひよっこですよ。永遠に「相変わらずうまくねぇなー!」って言われることは結局、この世界を選んだことの宿命だと思います。とにもかくにも先輩たちに元気でいてほしいです。前を歩いてくれている人がいなくなることは、本当に寂しいですし。

――賢雄さんをひよっこ扱い……。声優である一方で、事務所の代表として若手を育てていくお立場になりますね。

賢雄 たてかべさんは“見切り千両”以外に“恩の順送り”という奥義を持っていたんです。「いいか、俺がお前によくしてやるから、お前は下によくしてやれ」と。そうありたいし、若手にもそうあってほしい。この前の対談で、僕は寺島(惇太)が後輩におごったという話を聞いて、そういう気持ちがあることに嬉しくなりました。

――たてかべさんの恩の順送りが賢雄さんへ、そしてそこから下の世代へ伝わっていくのですね。

賢雄 僕は人と人の絆というもので生きてきたので、この人いいな、っていう人に触発されながら深く付き合っていき、何かを吸収するということが大事かなって思います。順送りで若い世代の人に伝えるならば、一生いい声、張りのある声は出ないだろうから、“人間”というものを見ていってほしいな、って思いますよね。
それはやっぱり、先輩たちや、いろいろな人たちから学んでいくことも大事だと思います。ベテランのいる現場で話相手になるような気を回してもいいと思う。おじさん大事だよ~(笑)。「芝居が違う」って説教モードに入る悪い癖もあるけど、それも愛情ではあるはず。

――長らくお時間ありがとうございました。それでは最後に、ご自身のこれからの目標をお願いします。

賢雄 いわゆる“大御所”にならないように努力するというのが一番かな。そういう意味で60周年の還暦イベント名を”生まれ直し”にしたんです。洋画でブラッド・ピットの声のイメージとか、染み付いた色があるのは仕方ないかもしれないけど(笑)、自分の中で生まれ直していく、という意味で、この先は自分を鼓舞して、新たなものを一から謙虚な気持ちで作れたらいいかなと思います。




(※23)『鬼平』……池波正太郎の人気時代小説『鬼平犯科帳』初のアニメ化作品(2017年1~4月(最終回は4月2日)放送、全13話)。
(※24)音響監督の三間……三間雅文氏。有限会社テクノサウンド代表。『ポケットモンスター』、『僕のヒーローアカデミア』などの音響を担当。
(※25)羽佐間道夫……シルヴェスター・スタローンの吹き替えを担当。声優界の黎明期を支えた重鎮の一人。
(※26)筈見純……吹き替えを中心に活躍。こちらも声優界の黎明期を支えた重鎮の一人。『鬼平』の朗読会も行っている。
(※27)飯塚昭三……『特攻野郎Aチーム』のコング役、特撮やアニメ番組では名だたる悪の組織の親玉や怪人の声を演じるケースが多い。
(※28)『ジョーカー・ゲーム』……柳広司によるスパイ・ミステリー小説をアニメ化。2016年放送。賢雄さんは帝国陸軍のスパイ養成部門”D機関”の設立者・結城中佐の声を演じる。



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