佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

あなたにとって愛着のある土地はありますか?
生まれ育った町、たまの休みにしか訪れない場所、刺激的な思い出がある旅の地……思い浮かぶ土地はさまざまでしょう。

「私は、15年間育った町」
こう答えるのは、声優の佐倉綾音さん。「声優の仕事を志した地であり、思春期特有の苦楽を共にした地でもある」と言います。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

そんな佐倉さんは、生まれ育った町に人一倍愛着を持つ少女、長編アニメ『クラメルカガリ』の主人公・カガリを演じます

カガリが暮らすのは、日々迷宮のように変化する炭鉱の町“箱庭”。変わりゆく街並みを地図に書き留める“地図屋”として生きるカガリと風変わりな町の人々との営みが描かれている『クラメルカガリ』にちなみ、佐倉さんにとって思い入れのある土地、暮らしを豊かにするために欠かせない存在を聞きました。

また、『クラメルカガリ』で描かれる幻想と現実が入り混じったようなレトロな世界観、少ない情報量でありながら個性溢れるキャラクターデザイン……「まるで幼いころに自分が思い描いていた作品」と話す佐倉さん。

「この世界に入れたらきっと楽しいだろうな」と思いながら、自宅のクローゼットでオーディションテープを収録したそう。

「1番素に近い“飾らない声”で演じた」というカガリのキャラクター性や演じる上で意識したこと、「成田(良悟)作品がすごく好き」な佐倉さんが印象に残っているキャラクターなど、『クラメルカガリ』の魅力を余すことなく語っていただきました。

▼「numan」公式インスタでは、撮り下ろし未公開カットを公開中! さらに、サイン色紙のプレゼントキャンペーンも♪
https://www.instagram.com/numan_media/

セピアな色合い、紙のような質感…レトロな雰囲気に「この世界に入れたらきっと楽しい」

――キャストコメントに「オーディションの時に頂いた資料を見て『私の大好きな世界だ…』と感じた」と記載がありました。まずは佐倉さんが『クラメルカガリ』の世界観で一番刺さったところについてお聞かせください。

佐倉綾音(以下、佐倉):
オーディション前に、設定資料とキャラクターデザインに加え、作品の世界観が分かる場面写、コンテのVTR、オーディション用の原稿をいただきました。それらの資料を見た時、茶色がかったセピアな色合いや紙のような質感の世界観に、「大好きな世界観だ……」と思ったんです。

幼いころから絵を描くことが好きだったのですが、デジタルで絵を描くことを覚えてからずっと紙のテクスチャを必ず使って絵を描いていたほど、ああいった質感が大好きで。世界観のレトロな雰囲気と自分の幼い頃の思い出が重なり、とても懐かしい気持ちになりました。

こんな絵を描ける人に憧れていたこともあり、「この世界に入れたらきっと楽しいだろうな」と思いながら、自宅でオーディションテープを録りました

――世界観のほかに『クラメルカガリ』の中で刺さったポイントはありましたか?

佐倉:
キャラクターデザインがかなり好みでしたね。

私は極端な性格なので、たくさん描き込まれているデザインか、引き算して洗練されたデザインが好みなのですが、『クラメルカガリ』のキャラクターデザインは、「私が好きな引き算されたデザインだ!」と感じました。

特にカガリは片目が隠れていたり、ミステリアスな雰囲気がデザインから読み取れたんです。「この子のこと、とても好きになれる気がする」と思いました。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

――そんなカガリのオーディション、どのように演技プランを組み立てて臨んだのでしょうか。

佐倉:
声優として培ってきた技術を少しずつ捨てるようなお芝居を意識しました

私はキャラクターを構築する時に、そのキャラクターが持っている信念や向かっていきたい方向性、叶えたい夢など人間の原動力になっている部分を見極めようとする癖があるのですが、カガリからはそういったものがあまり読み取れず。

一方で、カガリのマイペースさが押し出されたオーディションのセリフや少しタレ目なキャラクターデザイン、そして資料のVTRに入った監督の声を聞いて、「もしかしたらカガリはかなり緩く構築してもいいのかもしれない」と思いました。

なので、パキッとした色使いの作品だと画に負けてしまうくらいのゆるい発声、滑舌感……ダラッと肩の力を抜いているような、家にいる時のかなり素に近い状態の声がいいだろうと考え、クローゼットの中でオーディションテープを録りました。

――へえ! クローゼットの中でオーディションテープを録音したとは……!

佐倉:
本番のアフレコテストの時、スタンドマイクで姿勢よく録っていたら、音響監督さんに「もっとダラリとした感じでいいと思います」と調整が入ったんです。

「たしかに家でオーディションテープを録った時は、もっと背中を丸めてちゃんと発声していなかったな……」と思い、クローゼットの景色を思い出しながら収録しました(笑)。いつもはしっかり役づくりをしてアフレコに臨んでいるのですが、カガリを演じる上では“飾らないこと”を意識したので、自分にとって挑戦でした。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

――カガリの声は今お話されている佐倉さんの声のトーンに近い印象を受けました。

佐倉:
たしかにそうかもしれません。ラジオなどではチャキチャキ話すので、パブリックイメージの私とは少し違う印象を抱かれる方もいるかもしれませんが、カメラやマイクが回っていない時はもっとダラダラ話しているので(笑)、そういう意味で「1番素に近いキャラだったかな」と思いますね。

カガリの“成長の過程”が垣間見えたラストシーン「最後の最後に肩の力を入れるお芝居に」

――「もっとダラリとした感じでいいと思います」と言われたほかに、アフレコで印象に残っているディレクションはありますか?

佐倉:
ディレクションではないのですが、アフレコ前半に休憩でスタジオの外に出たら、(塚原重義)監督が私のことを見て「あ、カガリだ」とおっしゃったのはちょっと面白かったです(笑)。「良かった。カガリになれたんだ」という嬉しさもありました。

アフレコでは、「ダラリとした感じで」という最初のカガリの肩の力の抜き方には少し調整の時間をかけてもらいましたが、そのあとはかなりスムーズに進められたと思っています。

ただ、ラストシーンは話し合いましたね。作中唯一カガリが大きな声を発するシーンなのですが、「カガリだし、あんまりやりすぎない方がいいのかな」と話し合っていく中でなったんです。なので、急に大きな声を発するよりは、ラストに向けて徐々に足し算をしていき、最後の最後に「わっ!」と肩の力を入れるようなお芝居で挑み、「OK」が出ました。

あのラストシーンは、「カガリは1歩成長したのかな?」と感じる瞬間でしたね。

――オーディションを受ける段階では「カガリからは信念や向かっていきたい方向性、叶えたい夢など人間の原動力のようなものがあまり読み取れなかった」とお話されていましたが、最終的にはカガリの成長を感じたんですね。

佐倉:
カガリの芯はあまり変わらず、ふにゃふにゃしたままなのですが(笑)。彼女はこの物語の中で大冒険をするので、自分が今まで体感したことのない事象に直面して、もしかしたら「自分ってこんなに大きな声が出るんだ!」と思ったかもしれません。そういう部分から、「この経験で彼女はさらに成長していくのかな」と予感させる。そんな“成長の過程”みたいなものを感じましたね。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

一方で、今思い返すと最初からカガリには頑固さみたいなものがあったのかなと感じていて。のんべんだらりとしていたり、のらりくらりとしていたりするのは、あくまでも彼女の表面的な部分であって、地図屋という仕事を含め、彼女の中にある“興味や好奇心、譲れないものに対して嘘をつけないところ”は、もともと素質として大きいのかなと。

作中に描かれる大冒険を通じて、それがさらに強固になるのか、柔軟性を手に入れてもっと視野の広い大人になるのかは分かりません。けれども、この冒険が彼女の成長のきっかけになっているとは思っています。

成田良悟のキャラデザに「遺伝子レベルで高ぶる気持ちがありました(笑)」

――『クラメルカガリ』には、魅力的で個性豊かなキャラクターが登場します。佐倉さんの中で印象に残っているキャラクターはいますか?

佐倉:
成田(良悟)作品がとても好きなので、成田さんっぽいキャラクターデザインに遺伝子レベルで高ぶる気持ちがありました(笑)。

伊勢屋は子どもの頃の私が見たら「ああいう風になりたい」と思うような、クールで中二病心を掻き立てられる存在でした。カガリと会話するシーンも多かったのですが、あの煙に巻く感じは喋り方を含めてすごく格好いい。

この作品の中では伊勢屋に心を奪われる人がかなり多いんじゃないかなと感じていますね。等身大の幼い少年であるユウヤと大人の男性である伊勢屋の対比も含めて、いろんな意味で気になるキャラクターでした。

登場人物の人数自体はそこまで多くないので、各キャラクターにちゃんと見せ場があるのもいいですよね。「もっと知りたい!」と思えるキャラクターがたくさん出てくるので、焦点を当てるキャラクターが違えば、また1つ物語ができそうだなと思いました。

――たしかに、一人ひとりのキャラクターが個性的だからこそ、どのキャラクターをメインに置いても物語が成立しそう。

佐倉:
ですよね。みんなの過去も気になります。何か腹に一物を抱えていそうなキャラクター、設定として美味しすぎるキャラクターも登場するので、観ていてついつい好きになってしまう。

あくまでも自論なのですが、登場する大人や老人が面白く描かれている作品って名作だなと思うんですよ。『クラメルカガリ』には老若男女のキャラクターが揃っていて、かつ面白く描かれているので「とてもいいな!」と思いながら観ていました。

――ちなみに……作中で、カガリはユウヤとの絡みが1番多かったと思います。ユウヤへの印象もお伺いしたいです。

佐倉:
ユウヤの印象……「1人で青春映画をやっているな……」ですね(笑)。

――(笑)。

佐倉:
1人で突っ走ってしまう気持ちはわかるけど、「彼が大人になった時、この時のことを思い出して恥ずかしくならないといいな……」と思いました(笑)。突っ走るユウヤにカガリがついていける子だったら良かったのですが、そういう子ではないので……。カガリに途中でハシゴを外されるユウヤを見て、面白さと同時に少しの憐れみを感じてしまいました。

また、観る人の年齢によってユウヤの捉え方が変わってくるかもしれないと思っています。例えば、小中高生が『クラメルカガリ』を観たら、ユウヤのことを「カッコいい!」「なんでカガリはついてきてくれないんだろう?」と思うかもしれない。

一方、かつてユウヤだった大人が『クラメルカガリ』を観ると「 あちゃー……」「いつかその選択を悔いる時が来ると思う……」と感じるかもしれない(笑)。ユウヤが「良い思い出だったな」と笑いに変えられる素敵な大人になる可能性もありますけどね……!

少し達観したカガリや周りのキャラクターたちよりも、ユウヤの“青さ”は”等身大な子ども”という感じが出ていて面白かったです。カガリとユウヤはデコボココンビで、私はすごく良いペアだなと思っています。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

――ユウヤからはカガリに対する好意が見えますが、佐倉さんがカガリを演じる際にカガリはユウヤをどう思っていると感じていましたか?

佐倉:
物語の中でカガリにユウヤへの好意が芽生えてもいいのかなと思っていたのですが、スタッフさんに聞いてみると「別にカガリはユウヤをなんとも思っていない」という感じだったんですよ(笑)。

「なるほど。そんな感じでいいんだ」と思い、収録をしていました。

カガリ自身はまだ子どもで、自分の興味や好奇心以外にベクトルが向いていないのだろうなと。ユウヤが大切な人であることに変わりないけれど、 カガリがそれ以上の感情に気付くのはもっと後の話なのだと思います。

BGM付きコンテでアフレコに挑戦「アニメの現場が全部こうだったらいいのに(笑)」

――完成した『クラメルカガリ』を実際にご覧になっていかがでしたか?

佐倉:
絵と音楽の相性がとても良くて衝撃を受けました。「薄暗い雰囲気をまとった映像と、転がっていくようなテンポ感のある音楽ってマッチするんだ!」と意外でした。その意外性が観客の皆さんを飽きさせないようにしているなと。「この音楽、楽しい!」と感じてもらえるのではないかと思います。

監督曰く、作品を1つのお祭りに見立てて、音楽にちんどん屋感を出したそうなんです。その話を聞いて、すごく納得しました。ちんどん屋のお祭り感のある音って日本人の遺伝子に組み込まれていると思っていて、音を聴くだけで「なんだか楽しい!」という気持ちが掻き立てられるのだろうなと(笑)。

――オーイシマサヨシさんによる主題歌「僕らの箱庭」も劇中に流れるBGMも、聴いているだけで自然とワクワクしてしまいますよね。

佐倉:
魅力的ですよね!

実は、アフレコの時にすでにBGMがついていたんですよ。私がこれまで行ってきたアフレコでは、手探りでどういう空気感なのか考えたり、スタッフさんにヒントをもらったりしていたので、かなり衝撃的でした。音楽を聴きながらお芝居ができるという画期的なアフレコで、世界観を掴むのにものすごく助かりました。「アニメのアフレコ現場が全部こうだったらいいのにな」と思うほど(笑)。

おそらく『クラメルカガリ』において、塚原監督の方向性がかなり明確だったと思うので、 音楽で引っ張ってもらった感覚が強く、カガリをしっかり演じることができた要素として、とても大きかったです。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

“初心に返れる”育った町、“オフを楽しめる”今暮らす町「どちらも愛着のある土地です」

――ここからは『クラメルカガリ』にちなんだいくつかの質問をさせてください。佐倉さん演じるカガリは炭鉱町“箱庭”に人一倍愛着を持っていますが、佐倉さんにとって愛着のある土地はありますか?

佐倉:
1番思い入れがあるのは、15年くらい育った町ですね。両親は私より何倍も生きてきているから、いろんな土地に思い入れがあると思うけど、私は1番長く住んだその町がとても好き。思春期の感受性豊かな年頃をその町で過ごし、幼馴染たちもたくさん住んでいて……苦楽を共にした土地なんです。

18歳か19歳の時に引っ越してしまったのですが、たまに育った町に帰りたくなってしまう時があるんですよ。別の地域になってしまったので、親と喧嘩をした時は自転車をガムシャラにこいで育った家の前に行ったことがありました。

――別の地域ということは結構な距離がありますよね。それを自転車で行くのはすごい。

佐倉:
たしかに、かなり距離はありました。1時間以上はかかったと思います。何をするわけでもなく、一息ついて、頭を冷やして帰りました(笑)。

この時だけではなく、たまに無意味に育った町を訪れることがあります。

――それは、「初心に返れる」という感覚を得られるからでしょうか?

佐倉:
まさに「初心に返る」という言葉がピッタリですね。学校が大好きな時期と大嫌いな時期をその土地で過ごして、「環境が変わったわけじゃなくて、私が変わったんだな」と思い出させてくれます。

また、声優に憧れていた時期を過ごしていたのもその町で。当時抱えていたいろんな悩みや苦楽が、その町へ行くことで新鮮に思い出せる。そして、その思い出がまた原動力になるんです。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

――今、住んでいる町は育った町を更新して好きになる可能性はありそうですか?

佐倉:
もちろんあります。今暮らしている町は、暮らしている年数的に徐々に育った町と変わらなくなってきますしね。今でもすごく好きな町なので、「ずっとこの町に居たいな」と思っています。

私、休日はあまり知り合いに会わず完全にオフの日にしたいタイプなのですが、最近、近所に住む友達が増えてきて(笑)。でも意外とそれがすごく嬉しいんです。

――いざ友達が近くに住み始めると嬉しいですよね。

佐倉:
そうなんですよ! あまり外出したくない休日でも近くに住んでいる友達なら自分の家に来てもらえるし、何かあった時に頼れるし……近くに友達が住んでいると安心できて、すごく嬉しいです。

先日も友達から「今起きてる?」「近くの歯医者に来てるから、家に寄ろうかと思ったんだけど」と連絡がきて。「私もちょうど起きたから会おう!」となり、私の家に立ち寄ってくれたんです。「友達が近くに住んでいるってこんなに楽しいんだな……」と最近知りました(笑)。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

佐倉綾音にとってかけがえのない4匹の猫「心の豊かさを与えてくれる存在です」

――また、カガリにとって地図屋として新しい道を探して地図に書き留めること=自分の暮らしを豊かにすることだと感じました。佐倉さんがご自身の暮らしを豊かにするために欠かせないことを教えてください。

佐倉:
暮らしを豊かに……ですね。ここ数年で猫が4匹ほど増えたんです。それはもう豊かになってしまって(笑)。もともと3匹の猫と暮らしていたところ、2匹引き取り、そのあともう2匹引き取り。全員保護猫です。

――計7匹の猫ちゃんと暮らしているんですか!?

佐倉:
プラス犬が1匹います(笑)。我が家はもともと犬派だったんですよ。というのも、私の母はもともと猫が苦手で。母はもともとヘビが嫌いなのですが、「ヘビの『シャー』と言う時の顔と猫が『シャー』と言う時の顔が同じだから、絶対に飼いたくない」とずっと言っていたんですよ。

ゴキブリは手で掴める人なのに、「ヘビが嫌いだから猫が苦手」って……「ゴキブリの方が嫌じゃない?」と私は思うんですけど(笑)。

ただある日、母が犬と散歩中に弱った猫の家族を見つけてしまったんです。猫が苦手なはずなのに、命を見捨てることができなくて母猫と子猫4匹を「保護するわよ!」と言い出して。ボランティアさんの手を借りて無事に猫を保護してから、母も猫の魅力に気づいて猫を可愛がるようになりました。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

――「苦手」という気持ちよりも、命を優先するお母さまがとても素敵……。

佐倉:
私の人生の道しるべとして、母親の存在がかなり大きいんです。母親とは別のベクトルで私や家族を引っ張ってくれている父親も尊敬していますが、母は同じ性別だからというのも相まって母が自分の中で指標になっています。猫を保護した時も、「年齢を重ねても自分の価値観の書き換えられるって素晴らしいな」と思いました。

そんな母の影響もあってか、ずっとボランティア活動に興味があったんですね。なので、保護猫と暮らし始めたのをきっかけに、保護猫のボランティア活動を始めました。

知り合いのボランティアさんやお世話になっている団体さんから猫を引き取ったり、保護した猫を譲渡したり……そんな活動をしている中、新たに4匹の猫を迎えました。

――素晴らしい……! そんな猫ちゃんとの暮らしの中で、1番癒される瞬間は?

佐倉:
新しく迎えた4匹は全員人懐っこくて甘えん坊で、私が動くとみんなで大移動するんですよ。私がキッチンに行けば全員キッチンに、ソファーに行けば全員ソファーに、寝室に行けば寝室に……常に私の周りに集まって、体のどこか一部分を私にくっつけて寝ています(笑)。

寝る時にも私の周りに密集するので、寝返りがうてなくて体がバッキバキになるのは大変なのですが(笑)、心の豊かさを与えてくれる存在です。猫たちから、かけがえのない、計りようのないものをたくさんもらっていると思います。

佐倉綾音に聞く、苦楽を共に育った愛着ある町「変わったのは環境ではなく私だったと気づける場所」【劇場アニメ『クラメルカガリ』インタビュー】

(執筆:羽賀こはく、取材・編集:阿部裕華、撮影:小川遼)

劇場アニメ『クラメルカガリ』作品概要

2024年4月12日(金)全国劇場にて公開。

■スタッフ
原作・脚本・監督:塚原重義
シナリオ原案:成田良悟
キャラクター原案:七原しえ 皆川一徳 キツネイロ
作画監督:松田K子 可否
特技監督:maxcaffy
操画監督:アカツキチョータ
美術設定:ぽち
美術監督:大貫賢太郎
音響監督:前田茜
音響効果:中野勝博
音響制作:東北新社
音楽:アカツキチョータ
主題歌:オーイシマサヨシ「僕らの箱庭」
プロダクションプロデュース:EOTA
アニメーション制作:チームOneOne
配給:東京テアトル ツインエンジン
製作:クラガリ映畫協會

■キャスト
カガリ:佐倉綾音
ユウヤ:榊原優希
伊勢屋:大塚剛央
栄和島:細谷佳正
シイナ:森なな子
飴屋:悠木碧

アニメ公式HP:https://www.kurayukaba.jp
アニメ公式X(旧:Twitter):https://twitter.com/kurayukabainfo

(C)塚原重義/クラガリ映畫協會

IMAGE

羽賀こはく

横浜市出身。インタビュー記事をメインで執筆。愛猫2匹に邪魔をされながらゲームや漫画を楽しむことが生き甲斐。

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合がございます

オタ腐★幾星霜