numan編集部
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「ガチ恋」(がちこい)とは、真剣に恋をしていること。
とくに、俳優やアイドルなど芸能活動をしている者に対して、ファン心理を越えた、本気の恋愛感情を抱くことを指す。ガチ恋している人を指して「ガチ恋勢」と呼ぶことがある。
由来はそのまま、真剣に(ガチに)恋をしているから、ガチ恋。
人間誰しも、推しには特別な感情を抱くもの、むしろ特別な感情があるから推しと呼ぶ。しかし、その推す対象が俳優やアイドルなど生きた人間であっても、二次元の推しと同様直接の人間関係を形成することはできない。違う世界に生きる者だとして、夢と現実の間で一本の線を引くファンがほとんどである。どれほど課金し、どれほど応援しても、提供されているコンテンツはあくまで商品だからだ。むしろ違う世界の存在だからこそ、安心して消費できる存在とも言える。
しかし、なかには推しの魅力に心奪われ、本気の恋心を抱いてしまう者もいる。それがガチ恋である。ただ恋をしているだけなら、普通の片思いと変わらない。しかしガチ恋の言葉にネガティブなイメージが付きまとうのは、その想いが時に暴走してしまうからである。
推しが好き、愛している。ただの1ファンに留まらず、ひとりの人間として認知され恋人になりたい、結婚したいとの欲にかられて直接関係を結ぼうと、ファンと芸能人の垣根を乗り越えてしまうのだ。極端なファンに至っては、ストーカーとして訴えられる場合もある。
ガチ恋勢の歴史は古く、能、歌舞伎、花魁など芸能を売り物にする者の影には、必ずと言っていいほど存在する。歌舞伎の演目「道成寺」に至っては、演目そのものが「説法にきた僧侶にガチ恋した娘が、釣鐘ごと僧侶を殺した」話である。
推しごとの業が深すぎる。
かつて、芸能人のコンテンツはテレビやレコードの中の話であり、別世界の存在というイメージが強かった。そのためファンに含まれるガチ恋勢の割合は非常に少なかった。
しかし、インターネットの普及により芸能人の推し方が多様化。さらに、AKB48を始めとする「会いに行ける」地下アイドルが登場。握手会や撮影会など接触の機会が増えることで、推しをより身近な存在と感じるようになった。さらにYoutubeなど個人がコンテンツを配信できるようになったことで、「半芸能人化した一般人」が誕生。芸能人とファンを隔てていた垣根が低くあいまいになった。結果、本気で恋人の座を狙えそうなガチ恋対象が多く生まれることとなったのだ。
もちろん、どんなに身近に見えても推しは推し。ファンに見せている顔はお仕事用であり、提供しているコンテンツ以上のことを求めるのは絶対の禁忌である。
とはいえ、禁忌だからといってやめられるファンばかりではない。日々現場では暴走するガチ恋勢が芸能人の生活を脅かしている。2023年にドラマ化された漫画『ガチ恋粘着獣』では、これらの激しすぎるファン心理を的確に描いていると人気を博した。推される側もプロダクションに管理されない「有名動画配信者」であり、絶妙な脇の甘さが物語にガンガン燃料を継ぎ足している。
現実でも推し事でも恋愛は相手あってのこと。ガチ恋の狂気に飲まれ、推しを悲しませるようなことだけは、あってはならない。
「推しの結婚が発表された……へこむ……」
「え? 結婚がショックとか、そんなガチ恋勢だったっけ?」
「自分ではもっとライトに推してるつもりだったんだけどね。思ってたよりリア恋寄りだったみたいだわ……彼氏と別れたのよりつらい」
「強く生きな……」
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